城塞都市ゴルグから、やや離れた位置にある、とある小国の地下砦にて、多くの兵士が傷病に苦しめられていた・・・
「ううぅ・・・ぐる・・・しい・・・。」
「俺の腕は?腕はどこに行った?」
「炎が・・・俺の足を・・・食いやがった・・・」
削った岩の上に獣毛を敷いただけの簡易ベッドに沢山負傷した兵士が並べられ、血生臭い悪臭が漂っている。
「ニッパ族めっ!!小癪な真似をしてくれる!」
「ゴルグガニアを手中に収め、大陸に覇を唱えんが為に、城塞の強化を行っていると聞いたが、ここまで完成されているとは・・・。」
「このままでは、巨大防壁の完成は時間の問題だ!少しでもニッパニアの魔術師を削らなければ、次は我が国が狙われる!」
「圧倒的な魔導によって、接近すらままならなかったのだぞ?削るにしても弓すら届かぬ長射程・・・手の打ちようが無いぞ?」
「遠目から確認したが、ニッパニアの魔導士が筒の様な魔導具を用いて爆炎魔法を打ち出している様だったな」
「恐らく1発1発に魔石が仕込まれているのだろう、ゴルグガニアで討ち死にした魔導士から抜き出したものに違いない」
「それにしたって多すぎる、ニッパニアには、大規模な魔鉱石の鉱脈でも存在するのだろうか?」
「魔鉱石の精製にどれだけ手間がかかると思っているんだ?あまりにも非現実的すぎる」
「密偵によると、ニッパニアには億を超える人々が、狭隘な国土にひしめいているらしい・・・かの蛮族自身から聞き出した事らしいが・・・」
「ハッタリの誇張表現・・・と思っていたが、無尽蔵ともいえる魔導力を目の当たりにすると信じざるを得ないな・・・。」
「自国民達から魔石を引き抜いて、大陸を我が物にせんとする・・・征服欲の塊だな・・・。」
「何にせよ、あれだけの火力に晒されては一たまりもない・・・どうにかせねば・・・・うん?」
不意に扉が開かれ、血相を変えた伝令の兵士が部屋に転がり込んできた。
「ほ・・・報告です!ゴルグガニアの城壁が完成しました!ニッパニアの鎧虫が、城塞都市に集結している様です!!」
「なんだとっ!?」
「は・・・早すぎる!」
「防壁が完成し、市街地や旧城に次々と物資が運ばれている様です・・・恐らく城塞都市の防衛機能の強化を・・・がっ!!」
突如、伝令の兵士が口から血を吐くと、胸を押さえながら地面に転がった。
「何事・・・がはぁっ!!」
「ぐわああぁぁぁっ!!?」
連続した炸裂音と共に、部屋にいた兵士たちが次々と血を吹き出し倒れ、無力化される。
「クリア!!」
「この部屋で最後ですね・・・・。」
「天然洞窟を利用した地下砦か・・・しかし、野戦病院の様だな・・・。」
『うぅぅ・・・・あががぁぁぁっ』
「生き残りが居ます、どうしますか?」
「その傷では、もう助からん・・・楽にしてやれ」
「・・・・・了解。」
パンッ・・・と言う破裂音と共に、苦しみもがく兵士の命が消える。
「大陸の一部の国に不穏な動き有り・・・と聞いていたが、ここまでとはな・・・。」
「奴らは、我々が大陸の国々を征服すると思っているみたいですね・・・。」
「殆ど言いがかりに等しいな」
「自分達ならそうするであろう・・・と言う基準で動きますからね・・・。」
「まったく・・・ゴルグ攻略戦以降、士気が低下していると言うのに、余計な事をしてくれるものだな。」
「銃火器の圧倒的な火力で戦いは一方的ではありますが、若い隊員ほど精神に傷を負う者が多く出てきていますからね。」
「初めて人殺しをしたんだ、まともで居られる筈が無いだろう」
「自衛隊は大陸でFPSを楽しんでいるとほざく記者が居たが、もし、俺がそいつの前に居たら殴り飛ばしてやっていた。」
「・・・・・人殺しが楽しい訳ないだろう・・・。」
「ゴルグの騙し討ちをした王族連中を処刑した時だって、後味が悪かったと言うのに、どうしたらそんな発想が思い浮かぶのやら」
「これからも人は沢山死ぬ・・・もし、我々が人殺しに慣れてしまったら、それは本当に自衛隊なんだろうかな?」
「さぁな、俺たちの仕事は国を守る事だ、日本を狙う奴らが居る限り戦いは続くだろう」
部屋に横たわる死体の中で豪華な装飾の施された鎧を着た兵士から、幾何学的な紋章の護符を取り出す。
「・・・・例の国の紋章です・・・これは証拠品になるでしょうね。」
「元からバレバレだが、これで街を襲撃したのが盗賊連中だとしらばっくれる事も出来なくなるだろう。」
「後は他の連中の仕事だな、撤収するぞ?」
自衛隊が地下砦から去ると、静寂だけが残された・・・・。