異空人/イクウビト   作:蟹アンテナ

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第5話    異界の民の都

天を貫かんばかりに聳える巨塔群、その下には青銅の獣が走竜をも軽く追い抜く速さで駆け抜け、道の間に赤や緑に点灯する用途不明の魔法の柱が乱立する。これが、異空の民の都か!!

 

 

長い間、隣国ゴルグガニアに国境を荒らされていたが、その隣国は海岸沿いに現れた海の外の民と思われる集団を発見するや否や、奴隷として拉致しようと山賊に扮した襲撃部隊を向かわせ、返り討ちに合う。

その後、交渉しに来た彼らの使節団を騙し討ちし、彼らの逆鱗に触れ、圧倒的な魔導により首都ごと滅ぼされたという。

 

 

我が国は、頭痛の種であったゴルグガニアが滅びたことで喜ぶ一方、ウミビトの海域に突如出現した島国・・・ニパンの圧倒的な戦力に恐怖を感じていた。

だからこそ、我が国を含む周辺諸国はニパンに同盟を結ぼうと、使者を送ったのだ。

 

 

あれだけの魔導を操り、敵対するもの全てを無慈悲に叩き潰す冷酷さを持つ一方、ニパンは種族・信教を問わず平等に受け入れ、友好的に接してくる温厚な気質を持っている様だ。

 

国によっては魔物扱いされている海の民にすら・・・である。

 

 

今回、交渉のために彼らの首都へ訪れたのだが、私は余りの光景に目が回り続けている。

私がこの国に訪れる時に乗った、金属で出来ているのに沈まぬ船や、大人数を乗せられる青銅の蛇、そして億を超えるという凄まじい人口・・・。

 

これだけの国を作るのに何千年、いや、何万年かけたのだろうか・・・少なくとも大陸の小国群を全て合わせても彼らに敵う事は出来ないだろう。

 

 

しかし、驚くことに、自国だけで国民すべてを養うだけの食糧を生産できず、元の世界の国々からの輸入に頼っていたというのだ。

それは決して、彼らの農業技術が低いからではなかった、むしろ元の世界で5位の実力があったという。

 

少ない面積で最大の効率を得られる彼らの農業技術・・・彼らの代わりに大量の食糧を生産できれば、ニパンに恩を売ると共に大規模な穀倉地帯を得ることが出来るかもしれない。

 

元々鉱山も少なく平地が広がるだけの国土しか持たない我が国が、ニパンに送れる物など食糧程度だ、彼らが求めるならば喜んで受け入れるべきだろう。

 

 

唸り声を上げて牙のような突起が付いた一本腕の巨大な鎧虫が地面を掘り返したかと思えば、平たく長方形の箱に近い形状の大顎を持った鎧虫が自慢の大顎を使って地面の土を丸ごと削り取る。

 

それぞれの鎧虫の背中に鎧虫を使役する技術を持った猛獣使いが乗り、我々の常識では測り知れない速度で地面を整え建設・農地の整備・瓦礫の撤去などを行うのだ。

 

ニパンの力を借りることが出来れば、間違いなく我々は大きく前進する。

今までのように、僅かな比較的安全な土地に寄り添うように暮らし外敵に怯える必要もなく、今まで切り開けなかった土地の開拓も出来る。

 

我らは新しき世界に生きるのだ。だからこそ、かの国と友好的な国交を結ばねばならない。


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