異空人/イクウビト   作:蟹アンテナ

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第54話   純粋なる魔光

『おお、なんと眩い・・・これは本当に魔石なのだろうか?』

 

 

かつて都市国家ゴルグの統治下にあった港町に、異世界の国の大型船が入港していた。

次々と大陸では見る事の出来ない魔道具の様な物や、装飾品の様な物が荷揚げされている。

 

『何だあの魔石は・・・大きすぎる、一体何から取り出した魔石なんだ!?』

 

『海に生息する巨大海獣か、それともニーポニアに生息する恐ろしい魔獣なのか・・。』

 

魔鉱石から精製された魔石が、棒状に引き伸ばされて魔法回路に接続するための金具が取り付けられた状態でコンテナ一杯に敷き詰められており、それを見た現地住民は驚きの声を上げる。

 

「あー・・・やっぱり目立つよなぁ・・・アレ」

 

「異世界の生物の鉱物器官から取り出すにしても、自然界には存在しない純度だからなぁ、アレ」

 

「しっかし、燃料の節約の為とは言え、何も半分近く試作型の魔石ジェネレーターにしなくても良いだろうに・・・。」

 

「故障率半端ないっての、データが欲しいのは解るけど、こっちの身にもなってくれよ、普通の燃料式発電機で良いのに・・・。」

 

「油田自体はもう、見つかっているんだっけ?ここを足掛かりに大陸に手を伸ばしたいのは解るが、そっちの開発はどうなっているんだ?」

 

「もう少しで採掘可能になるらしいな、最も、狂暴な原生生物に襲撃される事もあって、上手くいってないそうだが・・・。」

 

「一筋縄ではいかんな・・・。」

 

人だかりの中から意を決した様な表情で荒野の民の老人が、よろよろと自衛官たちに近づいてくる。

 

『おぉぉ・・・なんと神々しい、これは一体何から取り出した魔石なんじゃ?』

 

「あー・・・えっと・・俺、大陸語苦手なんだよ通訳できるか?」

 

「仕方がないな・・・・えーー・・・。」

 

『こほん、この魔石が気になるのですか?』

 

『そうじゃ、これ程力にあふれた魔石は今まで見た事が無い、これ程の魔力を宿す魔物がニーポニアに生息しておるのかのぅ?』

 

『いいえ、これは魔鉱石から精製した魔石です、我が国の技術力を集結して作り出した高純度の魔石結晶なんですよ。』

 

『なんと!?魔物から取り出したものでは無いと申すか!?し・・・しかし、魔鉱石から精製される魔石は、小さく力が弱い物と聞くが・・・。』

 

荒野の民の老人は唖然とした表情で佇んでいる。

 

『大陸では、特殊な酸や魔獣の溶解液などを使って魔鉱石から魔石を単離・精製している様ですが、日本では、更に科学的な処置を施して精製するですよ。』

 

『おぉぉ、ニーポニアは魔鉱石をこれ程の魔石に精製する秘術を使うと言うのか!』

 

『日本企業の努力の賜物です、日本で精製した魔石はこれからゴルグの開発に使われる予定なのですよ。』

 

『これ程素晴らしい大きな魔石を持ち込むのですから、さぞ立派な祭壇が作られるのでしょうなぁ!』

 

『え?祭壇?』

 

「どうした、そんな顔して、何か言われたのか?」

 

「いや、ちょっと待ってくれ・・。」

 

『一度は滅ぼされ荒廃しかけたゴルグガニアにも魔光の加護が戻って来ると思うと感慨深いものがありますじゃ。』

 

『魔光の加護とは一体何のことなのでしょうか?』

 

『魔石から放たれる魔光が町や村に満たされれば、その土地の災厄や病魔が祓われるのですじゃ、わしは、この港町の呪い師をやっている者でのう、ひとつ拝ませてくれんかの。』

 

『おお、ありがたや、ありがたや、大いなる魔光よ、祝福を与えたもれ』

 

「ちょ・・・ちょっとこの爺さんどうしたんだ?」

 

「いや、純度の高い魔石って大陸の人達に崇められているみたいだから、アレを拝んでいるみたいなんだ」

 

『呪い師の爺様が拝んでいる・・・あれだけの魔石なら、魔光のご加護も凄まじい物になるかもしれないぞ!嗚呼、ありがたや、ありがたや』

 

「げっ・・・良く見ると周りの人もコンテナに集まっている!?」

 

『魔光の加護あれ、荒野に再び生命の息吹を・・ありがたや、ありがたや』

 

『ちょ・・・ちょっと、これからゴルグに運ぶのですから、コンテナに近づかないで下さいよ!?』

 

「え・・・え?なにこれ?、コンテナの周りに集まられるとトラックに詰め込めないんだが・・・どうにかできないか?」

 

「ごめん、何かスイッチ入っているっぽい・・・終わるまで待たないといけないのか?・・・コレ」

 

何とか、コンテナをトラックに詰め込みゴルグに運んだあと、運んだ先のゴルグで再び同じような事が起こるのはまた別の話。

 

 

 

 

 

 

 

単結晶魔石

 

 

魔鉱石を精製して、魔石を単一原子で結晶化させたもの。

凄まじい魔力を内包しており、惑星アルクスの自然界では存在しえない高純度な結晶である。

様々な分野で応用が可能であると期待されている新資源であり、発熱・発電・冷却・送風・突然変異の誘発などあらゆる力を持つ。

地球人の人体の影響は現時点では発見されておらず、高濃度の魔力に被曝しても、全くの無害であり、異世界人が同量の魔力に晒されると、身体的な異常や変質が報告されている。

魔石自体から発生する特殊なパルスに反応し、他の魔石が近くにある場合、共振する。

異世界人は、この特殊なパルスや魔力を感知する事が出来、魔光を浴びる事で体内の魔石を活性化させエネルギーを取り込む事が出来るため、魔光浴は生理的に重要な役割を持つ。

 

 

 

 


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