大陸の中心部を覆う様に聳える山脈の地下洞窟に、住居を構える土の民は、資源調査を兼ねて洞窟に侵入した自衛隊と出合い、日本と正式に国交を結ぶ事になった。
交渉中に巨大な魔物の襲撃を受ける物の、自衛隊は重火器と攻撃ヘリコプターを用いて撃退した事で計らずともその軍事力を示威する事になる。
その事で日本に対して畏怖と警戒心を抱くものも多く、特に、黒き甲獣を焼き払い、地下都市付近の平地で羽を休める異形の羽虫は、土の民の視線を集めた。
『これがニポンの操る鉄の羽虫か・・・・何とも面妖な姿をしているな。』
『嘴の様な部分から破壊の閃光を放ったのだとか・・・恐ろしい力を持つ羽虫だ。』
『ねぇ、この羽虫いきなり動かないよね?寝ているのかな?』
『いや、そもそもコイツは生き物じゃないだろう、どうやって作ったのか判らないが、コイツは人の手によって作られた人工の羽虫よ。』
『リクビト・・・いや、イクウビトと言ったか・・・彼らと国交を持つことで何が齎されるのだろうか・・・全く計り知れん。』
不時着したコブラの周りに人だかりが出来ている。その光景を地下都市付近に設置された天幕から自衛官たちは眺めていた。
「今日も集まっているな、ツチビトの連中は・・・まぁ、外せる部品は外しておいたから別に作業は残していないんだが・・・・。」
「そう言えば、そろそろ来るかもしれませんね。ずっと洞窟内に放置する訳にも行きませんし、早めに基地に運びましょ。」
ふと上を眺めると洞窟に大きな羽音が聞こえ始め、洞窟の天井にぽっかりと空いた大穴から巨大な羽虫が舞い降りる姿が見えて来た。
「噂をすればお迎えが来たな、さて、久しぶりの帰還だぞコブラさんよ。」
洞窟地下に降りたコブラよりも更に大型のチヌークの出現により、コブラに集まっていたツチビト達は蜘蛛の子を散らすようにコブラの近くから退避し、腰を抜かす物や転倒する者も出てしまう。
既に外せる部品を外して軽量化したコブラに吊下装置を作業員が素早く取り付け、チヌークは上昇を始める。
巨大な羽虫が、更に巨大な羽虫に吊り下げられ、洞窟の大穴から飛び去って行く。その現実離れした光景を地底都市に住む多くのツチビトの目に焼き付ける事になる。
『うひゃぁっ、な・・・何だぁ!?』
『あ・・・あ・・馬鹿な、唯でさえ巨大だったあの羽虫よりも更に大型の羽虫だと!?』
『それに、あの巨体を抱えることが出来る怪力を持つと言うのか・・・化け物め・・・。』
『もう何でもありだな、ニポンは・・・次に何が出てきても驚かないぞ。』
『鉄の羽虫・・・帰っちゃった・・・もっと見ていたかったな・・・。』
『ふぬ?』
「これで、片付いたな、まぁ何時までもあそこに放置していると邪魔だろうし、取りあえずひと段落と言った所か。」
「洞窟の入り口が狭すぎるから分解して持ち帰るのは難しいからな、拡張工事でもすれば良いのだろうが、無許可で行う訳にもいかないしなぁ・・。」
「先がどうなるかは判らないが、それらを可能にするためにも先ずは国交だろ?焦っても仕方がない。」
「そうだな、まぁ、細かい交渉はお偉いさんに任せて、俺達は俺達の仕事をこなさないとな。」
「確かゴルグで働く重役さんが来るんだっけか?日本本土から遠く離れた地で良くもまぁ頑張るよ。」
「違いない。」
「そう言えば、地下都市では滅多に訪れる事のない外からの来客にきっつい芋焼酎を振舞う習慣があるらしいが、大丈夫なのかねぇ・・・。」
「きっつい芋焼酎か、いいねぇ!暫く酒なんて飲んでないから羨ましい事だよ。」
後に、地下都市に派遣された外交官が、それ程アルコール耐性が無く宴の席で意識を失ってしまうのだが、それはまた別の話。