大陸に進出し、現在確認されている資源地帯を抑えつつある日本は、大規模な輸送網を形成する計画を進めていた。
港から城塞都市ゴルグへスムーズに物資の運搬をこなす為に、線路が敷かれているが、ゴルグを拠点に各地の資源地帯まで線路を伸ばす予定だ。
そして、その第一号がコンクリート用の石灰を採掘する採掘場に完成しつつあった。
「ふぃぃぃ・・・・そろそろ休憩を入れようか」
濡れタオルで顔や首筋などに付着した粉じんや汗を拭き取り、適当な場所に腰を下ろす作業員たち、休憩場に置かれていたクーラーボックスを抱えた年配の作業員が中身を取り出し、緑茶やアイスコーヒーなどの飲み物を投げ渡して行く。
「ほれ、これでいいか?お前は緑茶派だったな?」
「ほいほい、助かる。」
「かぁぁーー仕事の合間に飲むスポーツ飲料は堪らねぇな!」
「俺はコーヒー派かな」
それぞれ自分の好みの飲料を飲み一服する作業員たちは、採掘場の端に増設された設備を眺めていた。
「そう言えば、午後から運行が始まるんだっけ?貨物列車」
「ああ、これでトラックで何度も往復する手間も省ける。」
「大量の物資を一度に運べるからやっぱり便利ですよね、列車は」
採掘場で採掘された石灰石は、ベルトコンベアーで破砕機に運ばれて砕かれ、細かくした状態でトラックに詰め込まれ、日本ゴルグ自治区にある工場に運ばれてセメントに加工されているが、線路が敷かれたおかげで一度に大量のセメント原料を運搬できるようになっていた。
此処だけでなく、彼方此方の資源地帯に伸びる線路が敷かれる予定だが、現在需要が増して、供給が追い付かない建築資材の調達が優先されている。
「さて、そろそろ仕事を再開するか・・・。」
「あんまりだれていると、辛くなりますからねーさっさとやっちゃいましょう。」
「水分補給も良いが、トイレは済ませておけよ、まだ少し時間は残っているからな。」
「行ったばかりだから良いや」
仕事を再開しようと立ち上がる作業員たち、休憩時間が終わると同時に、遠くから列車の音が聞こえてくる。
「おっと、噂をすれば早速か、まぁ作業の手順は今朝伝えた通りだ。」
「あぁ、トラックから列車に変わっただけだ、問題はない。」
ゴトゴトと音を立てながら貨物列車が採掘場の駅に停車すると、作業員たちは砕き終わった石灰石を貨物列車の荷台に移し、採掘作業を再開した。
元々、城塞都市国家ゴルグが管理していた石灰石の採掘場だが、虫よけ用の石灰を少量採掘する程度で、あまり重要視されていない場所だったが、日本がゴルグを陥落させて以降は、重要な資源地帯として開発が進められることになり、やがて採掘場で働く者達が集まる村に発展するのであった。