戦姫絶唱シンフォギア ~snow songs~   作:本田直之

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更新が遅れてしまい、すいませんでした。
しかもクソ短いです。
執筆速度を上げられたらいいなぁ…


追憶 風鳴翼の場合

「では、お茶でもいれてこよう。」

 

 小柄な少女を残し、席を立つ。彼女から離れて見えなくなってから、ようやくため息をつくことが出来た。彼女の扱きで、部屋は以前の清潔さを取り戻している。お茶の葉を棚から取り出しながら、彼女が発した言葉を思い出していた。

 

(私と同じ…か……)

 

 雪音は立花を同類と推測している。それが何を意味しているのか。それは、立花が雪音と同じような歪みを抱えていると感じたからにほかならない。立花の方については今だ読み切れていないが、雪音の方は少なくない時間を共に過ごした為にある程度把握している。その歪みは、見方を変えれば『前向きな自殺衝動』ともいえるモノだ。

 

 

 

 

 

 彼女が叔父様に連れられて来たのは、奏が命を落としたあのライブとほぼ同時期だった。その頃は私が荒れていたことも相まって、最初の出会いは記憶が鮮明に残っている。

 

「翼。紹介しておきたい子がいる。」

 

 そう切り出した叔父様の背後。そこから隠れながらこちらを覗く幼い少女。それが最初の出会い。第一印象は、あまり良くなかった。こちらから話し掛けても、無言で逃げていく。性格の暗そうな感じだった。

 

 そのイメージが変わったのは、叔父様から彼女を引き取った経緯を聞かされてから。世界的ヴァイオリニストの父と声楽家の母の次女として生まれた彼女は、両親に連れられて南米のバルベルデ共和国へ渡ったそうだ。その目的は紛争地帯におけるNGO活動。なぜ危険な場所に幼い娘を連れていったのかは分からない。その途上、物資に紛れた爆弾が爆発。両親は死亡し、姉共々その後の混乱で行方不明に。その後、国連軍の武力介入の際に発見された。その間実に五年。彼女がどのように生き延びたかは想像するしかなかったが、紛争地帯での女性の扱いを見れば、ろくな目にあっていない事は明らかだった。

 

「彼女の警戒心を解くのに苦労したものだ。」

 

 そう語る叔父様は、苦笑をもらしていた。私は育った家の問題で、この国における一般的な子供の生活環境は分からない。それでも、彼女がここ数年置かれていた環境は先進国の子供としては最底辺であると断言できる。そして何より、家族を失っているという点。大切なパートナーを無くした直後とあって、私は彼女にシンパシーを感じたのだ。無論重みで言えばあちらの方が数段上だが、気にかけるきっかけとしては十分だった。

 

「隣、良いかしら?」

 

「……………どうぞ。」

 

 初めは話しかけることから。かつて私が奏にしてくれたことをなぞるように、私は雪音に積極的に関わっていった。

 

「何で私に優しくするんですか?」

 

 彼女がそう聞いてきた時、答えに詰まる程度の曖昧で感情的な何かが私を突き動かしていた。剣たる私が何故そんな真似をしていたのか、良く分からない。ただ、放っておくとすぐに消えてしまいそうな…そんな気がしたのだ。これを続けること数カ月。その甲斐があってか、彼女は私への態度を徐々に軟化させていった。向こうから話しかけてくるようになったし、会話も増えた。

 

 そして、雪音が私や二課の皆に心を開いた頃。叔父様は社会復帰の一環として、彼女をリディアン女学院に編入させた。最初こそ他人と関わらないようにしていたようだが、クラスメートと一緒にいる事も多くなったらしい。良い友達を見つけたようだ。その顔には笑顔が戻り、楽しそうにしている時間が増えていった。

 

 そんな様子を眺めていると、不思議と笑みがこぼれてくる。元々年の割に小柄な体格でかわいらしかったのに、更に太陽みたいな笑顔まで浮かべるようになったのだ。何だろう、このかわいい生き物は。私が膝に乗っけてナデナデし始めるのも自明の理であろう。

 

 そんなある日、叔父様はあることを雪音にもちかけた。即ちシンフォギア奏者にならないかという誘いだ。この数年の間に、彼女は私達二課の活動についても把握していたし、その危険性も理解していた筈。その上で彼女は______

 

「やります……やらせて下さい。」

 

 そう返答したのだ。

 

「本当に良いのか?」

 

 私は二人になった時を見計らい、彼女に話し掛けた。先程の返事を変えるつもりは無いのかと問いかけた。こちら側に来るということは、ようやく取り戻した平穏から遠ざかる行為だ。彼女とてそれは理解している筈だ。

 

「翼先輩……」

 

 雪音はこちらへ向き直り、語り始めた。

 

「私はバルベルデで地獄を見ました。」

 

 そこから、彼女は過去のことを語った。内容はあらすじのように短く簡潔なものだったけれど、一般人が聞いたら目を背けそうな生々しい体験談。でも、私はそれを受け止めた。勇気を持って話してくれた彼女の為に。

 

「そして、気づいたんです。今ここにいる事、今笑えている事、ただそれだけの事がどれだけ素晴らしい事なのかを。だから…」

 

 沢山の人達が同じ目に会うのを防ぎたいのだと。その為にシンフォギア奏者になるのだと。そう言い放った。その目は私をしっかりと見据えている。雪音がこういう顔をするのは、覚悟を決めた時だ。最早何を言っても聞くまい。

 

「そこまで言うのなら、私は止めない。だが、生半可な気持ちではついてこれない。分かっているな?」

 

「はい!」

 

 こちら側に来るからには、背中を預けられる戦友になってもらわねばならない。シンフォギアを使いこなす為にビシバシ特訓していこう。当時の私はそう考えて叔父様達に相談しながら彼女をしごきはじめた。等の本人も音を上げることはあったが、諦めることはなかった。

 

 

 

 

 

 それから一年半。雪音は私と肩を並べる程に腕を上げた。己の聖遺物の特性を理解し、それにあった役割をこなす。守備に特化した『アイギス』による戦闘時の支援は今やなくてはならないものだ。ただし、彼女には無視できないレベルの不安要素がある。それこそが、彼女の『前向きな自殺衝動』。すなわち、自身の命の優先度を他者より圧倒的に下に置いていることだ。他者を救うためなら自分を犠牲にすることを躊躇わず、しゃれにならない無茶をする。これは叔父様や私、二課の皆に咎められても変わることはなかった。私が想像するに、それは彼女の根本…あの日語った過去に起因するものだ。それを変えるのは現状不可能に近い。生半可な手では彼女は変わらない。

 

「先輩、お茶の淹れ方上手くなってませんか?」

 

「そうだろう?友里さんに頼んで練習したからな」

 

「それは結構。おいしいですよ、翼先輩!」

 

 でも、私は諦めていない。目の前で笑う雪音。彼女をなんとかして思いきり幸せにするのが今の私の目標だ。そして、立花の方の歪みも、これから推し量っていけばいい。それで問題があるのなら、雪音と同時進行になるが変化を促していきたい。そんな野望を胸に抱き、今日も時が過ぎていく。

 

 

 




ここでアリスちゃんの設定をば

雪音アリス
血液型:A型
身長:150cm
3サイズ:B80・W56・H82
使用ギア:アイギス
第五号聖遺物。メインカラーはグレー。聖詠は「redeemer Aigis tron」。型式番号は「SG-r05 Aigis」。アームドギアは小型の盾の形をとる。その特性は「障壁の大量展開」。多種多様な半透明障壁を一瞬で展開し対象を守る。ギア自体も変形でき、巨大な壁や投擲武器としても機能する。他に類を見ない鉄壁の防御力を誇るが、その反面攻撃力は比較的に低い。
技イメージ:Fate/GrandOrder マシュ・キリエライト
      魔法科高校の劣等生 十文字克人
      結界師 間流結界術
      ウルトラシリーズ ゼットン
      ヱヴァンゲリヲン新劇場版 第10の使徒
      キャプテン・アメリカ スティーブ・ロジャース
      蒼穹のファフナー ファフナー・Mk.XV(マークフュンフ改)
      

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