ロウきゅーぶ!~疾風迅雷の天才~   作:園部

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修学旅行後半スタート!


17話

今日は2日目。京都駅の改札口付近で待ち合わせをする。

相手は勿論昴さんと葵さん・・・・

修学旅行での自由時間は事前に5つのルートの中から1つ選んで指定の場所を見る感じになっている。

奇跡的なことにこのルートを選んだのは俺達だけ、そしてこのルートの引率者は羽多野先生ということで、昴さんや葵さんが同行しても問題ない。

 

「おーい!」

 

と、そこへ昴さんと葵さんが着いた。

 

「おはようございます。昴さん葵さん」

 

「おはよーすばるん!」

 

智花や真帆が挨拶をして俺達も挨拶する。

正直俺のコンディションは最悪だ。

抱き枕(真帆)不在の為中々寝つきが悪くかなり寝不足だ。

 

「大丈夫?」

 

葵さんが心配してくれる。

 

「なんとか・・・・」

 

正直言葉を返すだけで精一杯だ。

 

「さて、皆揃ったし行きましょうか」

 

羽多野先生引率の元、俺達はまず宇治市に向かった。

 

 

「にーちゃん眠いなら七味唐辛子飴食べる?」

 

真帆が昨日気に入って買った飴か。

 

「食べる・・・」

 

「はい、あーん」

 

そして俺の口に七味唐辛子飴が送られる。

このピリピリとした感覚、そして味のマズさ。

眠気覚ましにはちょうどいいかもしれない。

 

「空君・・・大丈夫?顔が凄いことになってるけど・・・」

 

愛莉が心配してくれる。

真帆が俺の為にくれたんだし問題なんてあるわけないんだ・・・

 

「大丈夫だよ愛莉。口の中が凄いことになってるけど」

 

正直吐き出したいけど真帆が悲しまないようにちゃんと最後まで食べるさ。

 

「にーちゃん気に入った?まだまだあるからいっぱい食べていいよー!」

 

・・・・俺はもうダメかもしれない。

俺達は駅から降りて行き先である

 

「さぁいくぜ!ダイゴーインメッシュドウ!」

 

ダイゴーイン・・・あれ?おかしいな。俺達の行く所ってそんな奇抜な所だっけ?

 

「違う。平等院鳳凰堂。名前の原型ないじゃない」

 

ああ、違うのか・・・・

平等院に着くと色々お店があった。

あらら、皆はしゃいでるな~・・・

最初はそれぞれ目的の店に行こうとしたが、羽多野先生が参拝を先にしてしまおうと言ったので俺達は参拝をする。

 

「おー!ホントに10円玉と同じだー!」

 

真帆のテンションが上がる。

本当に10円玉と同じだな・・・・凄い。

 

「すっげー!でっかー!これが10円玉の世界か!」

 

「空・・・眠気吹っ飛んだのはいいけど、10円玉の世界って凄い安っぽく聞こえるわ」

 

紗季にツッコまれるけど今はどうでもいい。

 

「じゃあ記念撮影しちゃいましょうか」

 

羽多野先生の指示に従い境内をバックに俺達は記念撮影を行う。

最初は割とまともだった羽多野先生が暴走するトラブルがあったが、それ以外は何も問題なく撮影は終わった。

 

「抹茶ソフト美味いな~」

 

「えへへ、そうだね」

 

「おーひえひえ」

 

撮影終わった後は俺と愛莉とひなで抹茶ソフトを食べる。

他の皆もそれぞれお土産を買ったりして宇治を漫喫してる。

その後は新しい目的地に向かって出発した。

 

「にしても・・・・このコースなら他の希望者がいてもよかったと思うけど、何で智花達だけだったんだ?」

 

昴さんが疑問を挟むのも分かるけど・・・

 

「制限時間ありますからね・・・宇治まで来てしまうと他の所見れないんですよ。平等院を見てみたい人もいたと思いますけど、やっぱここ1つだけじゃねぇ・・・」

 

折角京都に来たのだから、他の名所も見たいって言う人ばっかだし。

 

「後は・・・・源氏物語の舞台ですね」

 

「源氏物語?」

 

昴さんに紗季が説明する。

源氏物語の宇治十帖と呼ばれる一部の章で宇治が物語の中心舞台になっている。

俺はあまり興味はなかったけど、紗季が結構推していたし・・・

 

「そして次の行き先は・・・・・この動画館です」

 

源氏物語動画館『浮舟』

源氏物語の衣装を借りて写真を撮影してくれるだけじゃなく役になりきってビデオ撮影もしてくれる。

 

「と、言うわけで昴さんも葵さんも一緒にどうです?」

 

「「え!?」」

 

折角だし2人も一緒に楽しみたいじゃん。

 

「自由行動についてはフィルムとか提出する必要ありませんし・・・・問題ありませんよね?」

 

俺は羽多野先生に確認する。

 

「ええ、もちろんよ。だから遠慮なく光源氏をやるといいわ。昴君」

 

「え!?光源氏って主人公じゃ・・・・それって空がやるんじゃ・・・」

 

「俺は桐壷帝をやります」

 

光源氏のパパ役。そっちのほうが面白そうだし。

 

「年齢的に俺がそっちの方がいいんじゃないかな!?」

 

「昴さんが父親役とか無理ゲーなので・・・」

 

というわけで無理矢理やらせてみたよ。

 

 

 

「早くセリフ覚えないと・・・」

 

今は控室で光源氏の衣装を着た昴さんが台本を覚えようと必死に読み込んでいる。

 

「大体でいいと思いますよー。何もかも台本通りってつまらないでしょ?素人なんだからちょいちょいアドリブぶち込んだほうが面白いと思いますよ」

 

「しかし皆の劇を俺のせいでめちゃくちゃにするわけにも・・・」

 

それならそれで面白いとは思うけどね。

 

「ま、そう気負わずに・・・・気楽にやっていいと思いますよーやばかったらカンペ出すので」

 

ま、カンペ出すときは色々遊ぶけどね。

その時は恐らく真帆やひな辺りもノッてくれそうだし。

 

「昴、空君。そろそろ良い?」

 

お、葵さんから呼ばれたし行くか。

ドアが開かれそこにいたのは十二単に身を包んだ葵さんがいた。

 

「すっごい綺麗じゃないですか」

 

「ふふ、ありがとう」

 

「そういう服意外と似合うんだな」

 

「んな!?」

 

意外とは余計だと思うけど昴さんの言葉に葵さんは内心喜んでるな。

撮影所に行くと皆既に揃っていた。

 

「にーちゃんとすばるん来た!」

 

「おー。空もおにーちゃんもかっこいい」

 

「すっごい似合ってるよ空君!}

 

「うん、皆もよく似合ってるねー。これなら俺が光源氏役やってもよかったかも」

 

お、智花は昴さんを見てめちゃくちゃ照れてるな。

ガチ惚れか・・・・

そして撮影が始まった。

 

「父上。源氏です。この度元服を迎え、一人前と認められる日が来ました」

 

昴さんの光源氏はちょっと硬いね。もっとリラックスしてほしいなぁ・・・

 

「あい、分かったよー。藤のやつにも報告してきなー」

 

「(かっる!父上軽すぎだろ!というか藤って・・・)分かりました」

 

俺の出番終了。

そして他の人物との撮影も終わり

今は智花と昴さんの出会いのシーン。

 

「ああ、なんと麗しい幼女。・・・この気持ち、まさしく恋」

 

幼女って・・・他に表現の方法は無かったのか?

ま、なんやかんやで撮影も無事終了。皆結構楽しめたみたいでよかった。

 

 

宇治駅まで戻った俺達は人数分のキップを買いに行った羽多野先生を待つ。

 

「えへへ、楽しかったね」

 

「そうだな。あの衣装欲しかったなー。それに真帆の・・・・」

 

あれ?真帆がいない・・・・

俺を辺りを見渡してもその姿が無かった。

やばい。忘れてた・・・あの紙に書いてあったのは・・・

 

「昴さん!ちょっと・・・」

 

「どうしたんだ?」

 

「真帆がいなくなった。さっきまで居たはずだし遠くには行ってないはず」

 

「な・・・・すぐに探しに行こう!葵はみんなを見てて!」

 

俺と昴さんはもと来た道を引き返すとそこに真帆がいた。

 

「よかった・・・見つかった」

 

「いや・・・あんまり良くないですね」

 

「え?・・・・あ」

 

真帆を囲んでる2人組。

サングラスに黒のスーツの2人組・・・

 

「え?黒七味の美味しい店あるの!?」

 

「本当だよ。僕たちで連れてってあげる」

 

真帆・・・あんなあからさまに怪しいやつと楽しそうに・・・

 

「とりあえず行ってきます・・・昴さんは待っててください」

 

「な!?行くなら俺の方が・・・」

 

「昴さんは万が一の保険です。昴さんが居たほうが何かあった場合良い。一応すぐに警察に電話出来るようにしといてください・・・・あ、こっちをチラチラ見といてくださいね」

 

俺は黒服のほうに近づいて・・・

 

「申し訳ありませんが、彼女に何か用事でも?」

 

「ああ・・・・紹介したい店が・・・」

 

「そんな恰好で小学生に?誤解されたらお兄さん達も困るんじゃないですか?ほら、あそこのお兄さんなんか怪しがってチラチラ見てるし・・・」

 

俺は昴さんの方を見て指を差す。

 

「それにこちらも時間なので・・・・ほら、真帆行くよ」

 

俺は真帆の手を引いて歩き出す。

 

「あ・・・・ごめんねおじさんたち!教えてくれてあんがと!」

 

その後は昴さんと合流する。

 

「真帆・・・・前から風雅さんに言われてるだろ。知らない人について行くなって・・・」

 

「あははートウガラシって聞いたら放っておけなくて!」

 

「とにかく真帆が無事でよかったよ・・・」

 

しかしあの紙に信憑性が出てきたな・・・

真帆を狙う理由も分かる。金持ちの娘で今は修学旅行で警戒が薄れるし・・・でも不可解な点がある。

 

「とにかく、1人で行動するなよ。初めての土地なんだから。出来るだけ俺の傍にいてくれ・・・」

 

「はーい」

 

俺達はその後昴さん達と別れてホテルに向かう。

 

「真帆そんな事あったの?」

 

「ちゃんと気をつけなきゃ・・・」

 

「いやーごめんごめん!でもにーちゃんやすばるん来てくれたし大丈夫!」

 

いつでも見れるわけじゃないんだけどな・・・

その後は皆で夕飯を食べて男部屋の連中と風呂に入る。

俺が風呂からあがって皆の部屋にいると着信があった。

 

「(昴さんから?)もしもし?」

 

『あ、空か!よかった・・・』

 

「どうしたんですか?」

 

「真帆のことで・・・」

 

なら、部屋から出るか・・・

 

「友人から電話入ったからちょっと出かけてくる」

 

俺は真帆たちに言い残して部屋を出て非常階段に出る。

ここなら誰も来ないだろう。

 

「で、真帆のことって?」

 

『実は誘拐犯から犯行予告があった。明日KYOTO映画村で真帆を攫うって』

 

「それって・・・・昴さんの携帯に?」

 

『ああ。あいつらが言うにはゲームのつもりらしい・・・とりあえずミホ姉には言ったけど空も警戒しておいてくれ』

 

なんだろう・・・あまりにも不可解すぎる。

 

「分かりました」

 

そして電話を切る。

あまりにもおかしいな。

まず本気で攫うならあんなサングラスに黒のスーツなんて目立つ格好は普通しない。

これが計画的な犯行だとしたらどうやって俺達が京都に行くことを知ったか。日程まで知られてるのはおかしい。

何より一番不可解なのは犯行予告。

ゲームって言ったけど・・・誘拐するなら無駄リスクでしかない。本気で攫う気がない?なら狙いはなんだ?

 

「本気でゲームのつもりか・・・?」

 

考えるのはここまでにしていいか。

狙いが何であれ、真帆は絶対に守る。

その為に・・・・寝不足を解消しなきゃ・・・

 

「ただいまー」

 

俺は真帆達の部屋に行く。

 

「おー。おかえりそら」

 

「おー。悪いが俺ここで寝るから」

 

「まぁ、私達はいいけど・・・バレたら大変よ?」

 

確かに紗季の言う通りだ。

 

「その時は・・・・その時考えるよ」

 

戻って来る前に竹中には「戻らないから見回りの教師を何とか誤魔化せ」ってひなの浴衣写真を添付してメールしたから問題ないだろう。

 

「じゃあにーちゃんかもーん!」

 

「おー。かもーん」

 

ひなと真帆の間か。

俺は二人の間に入って横になる。

 

「空も子供ねぇ・・・・真帆がいないとまともに寝られないって」

 

「なんかもう、習慣になっちゃってさ・・・なんとか改善しないとヤバイのは理解してるけど・・・」

 

「大丈夫だって!にーちゃんとはずっと一緒にいるんだからさ!」

 

ずっと一緒に居る為にも絶対守らないとな・・・

俺はそのまま真帆やひなを抱いて寝た。

 

 

 

KYOTO映画村。

時代劇や特撮など、大きく扱ったテーマパークで敷地内には平屋建てのセットが軒並み連なっている。それが迷路のように入り組んでるので誘拐には適した場所ともいえる。

 

「ここお化け屋敷になってるのね・・・真帆入ってみる?」

 

「ヨユーすぎて入るまでもないね!」

 

紗季が真帆をからかっているが、今はそんなことを気にしてる余裕はない。

俺は周辺を警戒しながら皆と周る。

 

「見て見て!この後ヒーローショーやるって!お化け屋敷よりもこっちだろ!」

 

ヒーローショー?

 

「そんなお子様が見るようなもの・・・」

 

「ごめん紗季・・・私も見たいかな?えへへ・・・」

 

「おー。ひなもひなもー」

 

智花もこれを見てるのは少し意外だな・・・

 

「いいんじゃないか?たまにはこういうのも」

 

「私も・・・皆が見たいならいいよ」

 

俺らも賛成すると紗季が折れたのか・・・

 

「ちょうど良い時間にやるみたいだし・・・しょうがないから付き合ってあげるわよ」

 

そして会場にやってきてヒーローショーを見る。

 

「これは・・・・周り園児ばっかだな」

 

「あはは・・・・少し恥ずかしいね」

 

俺は周りを見渡すと、昴さんや葵さんもいた。

結構人がいるけど周りが周りだし分かりやすいな。

一番見入ってるのが智花なのは意外だけど。

そして物語が佳境に入る。

今回敵さんは秘策があるようで・・・なんと客席から人質を取ろうとした。

 

「ほぇ・・・あたし?」

 

・・・・え?これって偶然か?

たまたま真帆が選ばれただけか?

そして真帆がステージに上がる。

そうして人質役として上がるも敵にステージ脇に連れて行かれた。

 

『ふははは!あの少女を返してほしかったら変身しないことだな!』

『卑怯な!』

『代わりに・・・・コイツで勝負だ!』

 

出てきたのはバスケットリングだった。

 

「(確定だな・・・)」

 

この作品はバスケなんて関係ない。

なのに今回だけバスケが出てくるということは・・・

 

『私達はバスケなんてしたことがないわ!なら・・・この会場の皆に助けてもらうしかない!』

 

『そうね!使うリングは一般用だから・・・出来れば中学生以上の2人組でお願い!』

 

これは昴さんを誘ってるな。

分かりやすい意図だ。鈍感な昴さんでも気づくだろうし・・・

俺は真帆を追おう。

 

「ちょっと出かけてくる」

 

「え・・・うん」

 

俺は愛莉に言ってこの場を離れる。

 

 

俺は観客席から舞台裏に周って奥に行く。

一番奥に到達した先に真帆がみえる。

 

「真帆!!」

 

奥にあるプレハブ小屋に連れて行かれそうになった真帆を見つける。

顔すら隠れてる全身黒づくめの人間に手を引かれながら。

 

「にーちゃん?」

 

何でここに・・・?って顔だな。相変わらずで呑気な妹様だ。

 

「はぁ・・・・ケガがなさそうで安心した」

 

まずは真帆から引きはがすか。

 

『・・・・三沢空か。長谷川昴はどうした?』

 

ボイスチェンジャーか?

 

「昴さんは今頃バスケを頑張ってるよ・・・・俺はひとまず真帆の確保をしにね!」

 

そのまま相手に近づいて右ハイキックをいれる。

 

『チッ・・!』

 

怯んだ隙に相手の懐に入って腹に蹴りを入れて真帆から引きはがす。

 

「にーちゃん・・・・」

 

「真帆・・・・俺の後ろから離れないようにな」

 

黒づくめが俺に声をかける。

 

『三沢空・・・お前は何故その娘を助ける?』

 

は?コイツ何言って・・・

 

「何で・・・家族を守るのに理由が必要か?」

 

『本当の家族じゃないのにか?』

 

コイツ・・・・そんな事まで・・・・

 

『調べさせてもらった。出逢って1年程度。家族になって半年そこそこ・・・・その程度の付き合いでお前が庇う価値があるか?バスケを一生出来ない身体にされたくなかったらその娘を寄こせ・・・・』

 

要はバスケか真帆ってことか、迷うまでもない。

 

「悪いけど俺は真帆を選ぶよ。バスケが一生出来ない?それがどうした・・・そんなものよりも大事なものがあるんだよ!」

 

俺は相手に拳をぶつけるが防がれてカウンターをくらう。

 

「にーちゃん!」

 

真帆がかけよってくるが・・・

 

「来るな!真帆はそこにいろ!」

 

最悪俺がやられても昴さんが来てくれる。

フェイントを入れて近づきボディブローを喰らわせる。

 

『クッ!・・・・本当はその子迷惑してるんじゃないのか?拾ってみたけど邪魔だなぁ捨てたいなぁって思ってるんじゃないか?家族だって思ってるのはお前だけじゃないのか?調べではその子って飽きっぽいんだろ?』

 

「・・・・その程度で動揺すると思ったか?」

 

『なに?』

 

「こんなに真っ直ぐな子がそんな事考えてたらすぐに分かるに決まってんだろ!隠し事とか下手だぞこの子!」

 

俺は真帆に向かって指を差す。

 

「そ、そんなことねーし!」

 

『・・・・お前自身はその子のことどう思ってるんだ?』

 

「好きだよ・・・・・・だからお前には・・・・いや、誰にも渡さないし渡したくない」

 

俺は自分が出せる全力で近づく。

 

『な!?(速すぎます!)』

 

「今までの速さになれたか?これが全力だ!!」

 

黒づくめの顔を思いっきりぶん殴る。

 

『グァ・・・・』

 

そのまま黒づくめは倒れた。

 

「ハァ・・・・ハァ・・・・ハァ」

 

俺はその場で尻もちをついた。

 

「おい凄い音したぞ!」

 

こっちに向かって美星先生が近づく。

 

「あー先生。悪いけどあれロープで縛ってくださいな」

 

俺は黒づくめに指を差す。

 

「あ、ああ分かった」

 

よかった。美星先生が来てくれて・・・

 

「にーちゃん!」

 

真帆怪我もない・・・よかった。本当によかった。

こちらに掛けてくる真帆に俺は抱きついた。

 

「よかった・・・」

 

「よくない!にーちゃん怪我してる・・・」

 

カウンター喰らったときか。

 

「大丈夫・・・・真帆が居てくれるならどんな怪我でもすぐ治る」

 

「そ、そうかなぁ・・・」

 

美星先生が縛ったやつに腰を掛ける。

 

「しかしこれが昴の言っていたやつかぁ・・・・あ、空!危険なことした罰で後で反省文な!」

 

「分かりました・・・・さっきまで頭に血が昇っていたので冷静じゃなくなってたんですよ。ま、今は冷静になって色々理解しましたけどね」

 

「は?何が分かったんだ?」

 

なんで気づかなかったんだろうな。

この不可解な誘拐劇。

ただの茶番じゃないか・・・

 

「この誘拐劇が茶番だってことですよ・・・・もう起きてんだろ?」

 

俺は美星先生に椅子にされてる黒づくめに声をかける。

 

『・・・・気づいたんですね』

 

「ボイスチェンジャー切っていいぞ。」

 

主犯はあの人しかいないよなぁ・・・

そう考えてると向こうから昴さんと葵さんがやってくる。

 

「遅いぞ昴、葵」

 

「ミホ姉!?なんでここに・・・」

 

「美星ちゃん・・・その人は?」

 

「ん?ああ、空がぶっ飛ばしてあたしが縄で結んだ。それにしても、嘘じゃなかったんだな。一応辺りを見回っていたときに空がコイツをぶん殴っててさー。ま、誘拐阻止出来てよかったな」

 

「よかった・・・あ、警察には?」

 

「まだ・・・というか、必要ないです」

 

「え?必要ない?空・・・どういう事?」

 

「それは・・・「私が説明します」」

 

ボイスチェンジャー切ったんだな。

俺はサングラスと帽子を取った。

 

「なにやってんの?・・・・やんばる」

 

美星先生がやんばるからどける。

 

「説明してくれるんだろ?」

 

俺はやんばるからの説明を待っていると

 

「説明はぼくからしよう」

 

ま、主犯はこの人だよな。

 

「納得のいく説明じゃなかったら殴りますよ・・・・・父さん」

 

俺は昴さんや葵さんにも分かりやすくこの人が誰か教える為にあえて父さんと言ったが・・・

 

「空が!空が私の事初めて父さんと・・・!」

 

言うタイミングをミスってしまった。

 

「空君・・・・あの人って」

 

葵さんが聞いてくる。

 

「俺と真帆の父さんで、三沢風雅さん」

 

未だに泣いてる風雅さんを宥めてまずは話しを聞く為に愛莉たちと合流してフードコートに行く。

 

 

「ひとまず初めまして、まほまほと空の父親、三沢風雅です」

 

そして風雅さんから説明を受けた。

 

「緊急時対策訓練?・・・・そんなものの為に修学旅行ぶち壊してくれたのか」

 

緊急時対策訓練とは、真帆を誘拐から守る為のシミュレーションらしい。

年に数回やっているが今年はやんばるが大きなミスをしたとか・・・

しかし修学旅行中にやらなくていいだろうが

俺は風雅さんに軽く蹴りを何発かいれる。

 

「いたっ!痛い!・・・空蹴らないで!ホントはバレないようにするはずだったんだよ」

 

「ああ、それがやんばるのミスか」

 

やんばるが落とした紙も誘拐阻止ルートってわけか。

昨日の声掛け事案についても訓練というわけね。

 

「訓練なのは理解しましたが・・・俺への電話は一体・・・」

 

「あれは君を試したんだ。まほまほと空が信頼する君のことをね・・・」

 

ん?つまり・・・

 

「おとーさんひどい!あたしとにーちゃんの言うこと信じられなかったの!」

 

「いや、そういうわけじゃなくて・・・・ほら、百聞は一見に如かずと言うだろ?なんにせよ、これからも2人を預けるに相応しいと思うんだ。今回の件で深く迷惑をかけたから・・・良ければ何か要望があったら言ってほしい。ある程度なら何でも叶えられる」

 

「何でもって言われても・・・・あ!なら・・・」

 

ん?昴さんは何を思いついたんだ?

 

「・・・ふむふむ、何とかしてみようじゃないか!」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

「任せなさい」

 

そしてその後風雅さんとやんばるは帰って行った。

 

「昴さん結局何をお願いしたんですか?」

 

「秘密かな。でも皆にとって悪い話じゃないのは確かだよ」

 

皆に関係することか・・・

後は昴さんと葵さんは一足先に帰った。

俺達も午後になって京都から離れた。

 

 

 

京都から帰って自宅に戻った俺達はいつもお世話になってる給仕の方々にお礼の言葉とお土産を渡した。

 

「今の時間なら部屋で待機してるし・・・・やんばるの所に行って来るな」

 

「ん?にーちゃんが行くならあたしも」

 

「いや、話したいことがあるから・・・・先に風呂入ってきな。終わったら部屋行くから待ってて」

 

「うん。分かった」

 

そして俺はやんばるの部屋に行ってノックする。

 

「はい?」

 

「俺。空」

 

そしてガチャって音と共に扉が開かれる。

 

「どうしました?」

 

・・・・やっぱり、頬腫れてたんだな。

やんばるの顔にはガーゼが貼ってあった。

 

「中入っていい?」

 

「ええ、どうぞ」

 

そして俺はやんばるの部屋に入って土下座する。

 

「ごめん!知らなかったとはいえ・・・顔殴っちゃって・・・」

 

「空様・・・顔を上げてください。私が旦那様に叱られちゃいます」

 

「だって・・・もし傷が残っちゃったら・・・」

 

「大丈夫ですよ。口の中を切ったのと頬が少し腫れただけなので・・・」

 

「でも・・・俺にとってはやんばるも家族だし・・・大事な家族を殴るなんて・・・」

 

すると、やんばるが俺の事を抱きしめた。

 

「空様・・・・私を家族って言ってくれてありがとうございます。でも、本当に良いのです。だって・・・貴方は真帆様を守る為に拳を握り、大好きなバスケを捨てる覚悟を持って挑んできました。こんなに素晴らしい方の使用人になれて私は本当に嬉しいんですよ」

 

「やんばる・・・・・ありがとう」

 

俺はやんばるの部屋から出て真帆の部屋に向かう。

 

「まほー」

 

「あ、にーちゃん・・・」

 

俺はそのまま真帆のベットに座る、

 

「にーちゃん・・・・あの時、私の事好きって言ったよね?ほんと?」

 

「ああ、嫌いなわけないじゃん」

 

「そうだよね・・・それって兄妹として?それとも・・・」

 

「・・・・兄妹としてなのは当然。真帆が言いたいのって恋愛的な意味?」

 

「・・・うん・・・チビりぼんがにーちゃんにキスしたことあったじゃん?その時胸がボワァってしたの。なんだろうなぁ・・・って思ったんだけど・・・」

 

ああ、そういうことか・・・

 

「今日やっと分かったよ。私はにーちゃんが・・・空が好き。大好き」

 

真帆・・・・

 

「俺は・・・・・今はまだ兄妹でいたい・・・」

 

「今は・・・・・ね。じゃあ約束してくれる?」

 

「約束って?」

 

「いつか・・・絶対に返事して・・・兄妹とかそういうの抜きにして・・・空の気持ちを」

 

真帆のほうを見ると、今まで見たことないくらいの・・・真剣な真帆の顔が見える。

 

「分かった。約束する・・・いつになるか分からないけど、絶対に」

 

「これでチビりぼんと同じスタートラインかなぁ・・・・あ」

 

「どうした・・・ング!」

 

俺は真帆にキスをされた。

 

「これでチビりぼんとの差もないよね?私・・・・絶対諦めないから!」

 

「・・・・」

 

「じゃあにーちゃん!今日はもう寝ようぜい!」

 

いつもの調子に戻った真帆が電気を消してベットに入る。

 

「・・・・告白した相手と一緒に寝るってどう思う?」

 

「今までは何でもなかったけど、すごくどきどきして恥ずかしい・・・・」

 

暗くてよく見えないけど顔赤いのかな?

 

「慣れるよ。俺も最初どきどきしたけど慣れたし」

 

「そっかー。その時ゆーわくしてればよかったかな?」

 

「今でもどうぞ」

 

「・・・恥ずかしいから慣れてきたらで」

 

俺は卑怯だな。

今の状態が居心地良いから返事を先延ばしにして・・・

ごめんな真帆・・・・卒業するまでには絶対答えを出すから・・・

 

 




まほまほ可愛い!!!!

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