AKAME to Kill: Age of Extinction   作:アマナットー

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 続くか未定だけど、書いてみたかった。


AKAME to Kill: Age of Extinction

 千年。

 それは悠久の時を生きてきたこの大地にとっては吹けば飛ぶ塵のようなものでしかない。

 この世界は、たとえどれほどの学書を頭に詰め込み、知恵を得た学者でさえも、一生涯をかけて研ぎ澄まされた感性によって誰もが涙を流す詩を綴る高名な詩人であっても、誰もが簡単に理解しながら悟り、高尚な精神性を生み出す書物を世に送り出した哲学者であっても、知恵あるもののすべてを混ぜ合わせた究極の叡智と評される電子頭脳があったとしても、到底理解の及ばぬ古の時代から、幾数億もの偶然と必然によって混沌に満ちた世界から陸が築かれ、天を覆い尽くすほどの雨によって流された水が乾いた渓谷に流れ込んで大海原となり、隅々まで潤った大地で草木が繁茂し緑で埋め尽くされ、そしていつの間にか現れた命によって世が育まれ、今日まで至っている。

 その気の遠くなるような長い年月に比べれば、千年など瞬き一つで簡単に消費されてしまうことだろう。

 だが、人にとって千年はあまりにも長い時間であることに変わりはない。

 建国当初は如何に高潔な志を胸に宿した元首とその御前に集った民衆であふれかえった国であっても、世代を重ねれば重ぬるごとに貧富の格差が増大し、権力者は甘い蜜をすすりながら丸々と肥え太り、民はタンクの片割れのようにやせ細り、草の根をかじって命をつなぎ、生き長らえながらも衰えていく。心身で燃え上がっているはずの生きる力の、精神の、向上心の、モラルの、あらゆる感情すべてのともしびが次第に小さく下落していく。

 その千年は、かつてこの世の栄華を極めたとされる或る一大帝国を世代を重ねて、重ねられていくごとに、徐々に、やがて末端の市民の精神の隅々まで堕落させていくには、余りにも、余りにも十分すぎるほどの、長く、長い、長すぎる猶予であった。

 歪み、歪められ、やがて一つの奇怪なオブジェとして無期限の完成日を待ちながら、経年劣化による崩壊までの序曲が軋み音として奏でられていく日々の中で、またひとつの手が加えられた。

 

 

 

 

 

 

 やはり皇居とその周辺に広がる都市の構造はいつ見てもスタイリッシュだ。

 早朝特有の涼やかな風が、石造りの街並みを吹き抜けていく。 

 帝都の中心部に位置する皇居。その一角に設えられた白亜の回廊でドクター・スタイリッシュはの帝国の役員達が忙しなく動き回る皇居前広場を見下ろしていた。

 

「いよいよ、わたしのスタイリッシュさが世に広まるのね……」

 

 整えられた顎ひげをなでながら、同姓と比べれば高く、しかし男性特有の鈍く濁った声を口に出して呟く。

 自らの手に据え付けられたスタイリッシュな帝具「パーフェクター」をまじまじと見ていると、胸の奥からある種の感慨がこみ上げてくる。

 長いようで短い期間だったが、彼自身が推し進めてきた研究成果が今日、漸くスタイリッシュな形で実を結ぼうとしているのだ。

 スタイリッシュ、なんと素晴らしき音のミリキ。彼独特の美的感覚に触発されたものはすべてその言葉一つに統合された。

 

「ドクター、こちらにおいででしたか」

 

 ふと、後ろから声がかかる。

 聞きなれた声に振り返ると、干し肉を片手に持った肥満体の大男が口元をもごもごと動かしながら歩いてきた。

 

「あらオネスト大臣。お披露目の時間はまだお先ですが、どうされました?」

 

 笑顔を取り繕ってスタイリッシュはその男に頭を下げる。口調からもわかるとおり、彼は世間でいうところの“おかま”という人種であった。

 

「いえいえ、私も大したことはありません。ぶらりと歩いていたらたまたまこちらに来ただけですよ」

 

 大臣のオネストは人のよさそうな笑みを浮かべて堅そうな干し肉を食いちぎり、くちゃくちゃと咀嚼する。脂と香辛料の強い臭いが鼻を突き、スタイリッシュは一瞬だけわずかに眉を寄せた。このスタイリッシュな空間がその男が放つ下品な空気によって台無しになってしまったことに腹を立てたが、それを表に出すようなことはしない。それほどまでに眼前の人物は自分より高く、抗えない位にいる人物なのだ。

 

「時にドクター」

「なんでございましょう」

 

 オネストに声を掛けられ、スタイリッシュは内心冷や汗を流す。まさかばれたか。

 恐る恐る横目で見ると、大臣は彼と同じく回廊から皇居前広場を見ている。どうやら杞憂だったようだ。

 ややあってオネストは口を開いた。

 

「この国随一の頭脳を持つあなたの研究成果が、こうして帝国の繁栄と栄光にまた一つ貢献していく様子を見られるというのは私にとっても非常に感動的なことです。今日の偉業は瞬く間に全国に広まり、栄誉ある帝国の歴史に新たな一ページが刻み込まれることでしょう。皇帝陛下もまことに喜んでおられます」

「お褒めにあずかり光栄でございますわ。オネスト大臣」

 

 オネストの賞賛にスタイリッシュは恭しく礼をする。だが、外面こそ優雅にしている彼のしかしその内心は煮えた泥のようなどす黒い嫌悪感が鬱々と渦を巻いていた。

 それもそのはず、オネストの発した賛美の表面は政治的な対面で塗り固められたお世辞であり、その殻の内側に潜む深淵には彼の者のとてつもなく醜い欲望で満たされた大海が無限に広がっているのを彼は理解していたからだ。その方向性は自分のスタイリッシュな感性と相反する。とはいえオネスト自体は自分の後援者としては非常に有力であったため、利害の一致という形で手を組んではいた。

 

「革命とは名ばかりの国を脅かす賊軍と人殺し集団のナイトレイド、それに乗じ幅を利かせ暗躍する犯罪者たち。落ち行く治安に民はますますおびえるだけでなく、私の食事のお肉の大きさと値段にまで影響を及ぼしています。ですが、それも今日までの話です」

 

 わざとらしく首を垂れるオネスト。よくまあ本心にもないことをいけしゃあしゃあと述べられるものだ。

 取り繕った笑みの下でスタイリッシュは悪態をつく。御託はいいから早く話を終わらせてくれ。あんたニンニク臭いんだよ。

 オネストは軽く息を吐いてスタイリッシュに向き直った。

 

「あなたの開発した次世代治安維持部隊“ロボコップ”は、そんな悪鬼どもの蔓延る帝都の闇に一条の光を注ぎ、やがて全域に広がっていくことでしょう」

 

 帝国の治安は悪化している。

 それは今の市民の間で常識であった。

 浮浪者は眼を皿のようにしながら残飯をあさり、体力或る者の窃盗は日常茶飯事、路地裏で強姦される婦女子の悲鳴は鳴りやむことなく、殺し合いで流れた血で道端が染められ湿りゆくことこそあれ乾くことはなし。

 それらを取り締まるはずの警察も、今や賄賂による癒着激しく、冤罪による逮捕と投獄は枚挙にいとまはなく、しかしその不正情報は必ずどこかで揉み消される。

 どれほど志の強いもの現れたとしても、或る者は窓際へ追いやられ、やがて殺され、また或る者はいずれはその狂気に染め上げられ、畜生共と同じ道を往く。

 帝国の治安率は日に日に下がり、中心地たる帝都もここ数年のうちに急速に衰えつつあった。

 当然、その後はいくつもの対応策がそれなりに講じられたものの、しかし目立った成果はあがらず、逆にその命を奪われる頻度が多くなっていった。

 もういつ自分の寝首がかかれるかわかったものではない事態に考え出されたのが、武装した自動人形によるこれら犯罪者の捕縛と、全体的な治安率の向上。

 そのプロジェクトを率いることになったのが、計画の発案者でもあるスタイリッシュだった。

 

「すでに人形さんたちを統合する人工知能には、“政治家の皆様方が直々に選定された、市民に紛れる悪しき犯罪者たち”の情報がすべて入れられております。これで帝国に仇名す不届き者たちはそう長くない時間で全員検挙されることでしょう」

 

 そういってスタイリッシュは白い歯を見せて笑う。それに合わせてオネストも笑みを浮かべた。しかし、その笑顔の本質は国のためを思う政治家の顔ではなかった。

 

 

 

 

 

 人が次第に朽ちゆくように

 国もいずれは滅びゆく

 千年栄えた帝都すらも

 いまや腐敗し生き地獄

 人の形の魑魅魍魎が我が者顔で跋扈する

 

 市井の間でどこからともなく囁かれているそれは、まさに真実であり現在の帝都の姿だ。彼らの母国たる帝国は、千年前に誇った栄光も今は影も形もなく、ただ立派な巨体を見せつけながら、その内部を寄生虫どもが無残に食い荒らし、腐り果てている。

 圧倒的な重税にあえぎ苦しむ市民の声を交響曲に、彼らが血肉を削いでも生涯口にできぬ豪勢な食事に舌鼓を鳴らしながら、時には余興代わりに人間の『命』を容易く弄び、奪う。

 一部の特権階級のみが安寧を約束される中、その他の市民の命の価値など、番犬どころか庭の虫一匹にすら劣る始末。

 そして、この場にいる二人はその魑魅魍魎に当てはまるのだろう。

 かたやオネスト。皇帝につき従い、帝国を腐敗の渦に巻き込ませ今の世の中に変えた元凶。

 皇帝が幼いことをいいことに彼は私欲を肥やすために今も皇帝の傍に付き従い国民の苦しみを顧みずに皇帝を操って暴虐の限りを尽くしており、その本質は己の欲を好きなだけ満たす痛快さを心の底から楽しむ、まさに欲望の権化そのもの。

 かたやスタイリッシュ。帝国有数の頭脳を持ちながら趣味は非道な人体実験。

 どこまでも自己中心的な性格で他人はすべて己の実験材料。帝具『パーフェクター』を使用して人体実験や兵器、毒薬の開発に勤しむ気の狂った科学者。

 国の政治に立つものでこれなのだから、他の官僚の実態も推して知るべし。まことに何も知らぬのは、国家元首であるはずの皇帝のみ。

 そのためにこれら腐敗を生み出す各要人は民より恨みを買っていて当たり前。

 だからこそ現政権の打倒を図る革命軍と、帝国の要人暗殺を掲げた殺し屋集団がいつしか自然と発生し存在し、世の中に台頭し始めた。

 それは、地方の強欲な商人に始まり、やがて圧政を敷く地方の貴族までもが殺され、ついこの間には大人口の集中する帝都の一角での有力政治家の暗殺という形で現れ、帝国が――――正確にはその内部に巣食う、覇権と地位に固執する為政者共がその対処に追われてゆくのは自然な成り行きであり、治安維持部隊もまたそのうちの一つであった。

 治安維持とは名ばかり、その真の目的は彼らにとっての邪魔者を犯罪者に仕立て上げてつるし上げること。温情も慈悲も感情もない自動人形に、無実の訴えなど無意味であり、ただその暴虐になぶられるのみ。

 

「人によって買収されず、人を人とも思わぬ無慈悲さで、人を超えた力で犯罪者どもをねじ伏せ、与えられた命令に人よりも利口に従い、黙々と作業を続けていく。壊れたら、また直せばいい。こちらはただ、一言『捕まえろ』と言うだけ。いやはや、なんと素晴らしい人形たちでしょうかねえ」

 

 両者の目の奥に広がるのは、凡人にはとても把握できない底知れぬ汚泥。声の節々から漏れ出す闇が意思を持って硫酸のような劇薬をまき散らすようにドロドロと滴り落ちる。

 計画を推し進め、実行する彼らは、正義の味方ではない。

 どこまでも腐った、人の皮を被った畜生そのものであった。

 

 

 

 

 

 

 その「人形」を語るには、ある人物の半生をを短くまとめた長い話をしなければならない。でなければ、その「人形」がどのような存在であるか理解できないからだ。

 

 かつて、或る国に或る完璧な賢者がいた。

 賢者は容姿端麗でありながら、人から見ればこの世のすべてを理解し、手中に収めていると言って良いほどの知力と財力、そして時代の先を行く手先の器用さを兼ね備えた、本来なら二物を与えぬはずの神からまさに愛されているような完璧な人間であった。

 端正な顔立ちと膨大な知恵により紡ぎだされた甘く優しい言葉は多くの異性を惹きつけ、彼と一夜を明かしたものは数知れない。

 また、世の中に広がる富の大河の流れを正確に読み取り、その刻の、誰が、どこで何を求めているのかすらも把握し、その配分を巧みに振り分け、もたらされた恩赦は彼の者にさらなる利益を献上した。

 器用な手先で作り上げられた物は、複雑な機構を持ちながら驚くほど洗練され研ぎ澄まされた、芸術品と遜色なき完成度を持ち、それを目にした者すべてに畏怖の念を抱かせ、そして――――――――世界に、破壊と死を振りまいた。賢者は武器商人でもあったのだ。

 武器商人である彼は、自らが作り出したものがどれほど危険なものか理解していた。だが、理解していたのはあくまで書面のものであって、国の権力者に保護され、護られていた賢者はそれによってもたらされた人の悲劇を理解していなかった。現実を見ていながら目を遠ざけられ、書面越しにに描き起こされた事象を見るだけであった賢者はそのまま生を終えるはずであり、時の権力者たちもそれを望んでいた。

 しかし、それは破られた。

 それは簡単なものであった。嫉妬だ。

 いつの世も、優れた者を妬む者はいるもので、それは賢者と縁をつなぐ金の亡者とてまさにそれと関係があった。

 亡者は彼の者を戦地へ送ると、用意した手駒を操り抹殺しようとした。賢者が死ねば、利益はすべて自分のもの。醜い欲望に突き動かされた亡者のもくろみはしかし、目前となって折られることとなる。

 賢者は亡者の手駒によって心身ともに大いに傷ついた。彼の者の心臓に、彼の者によってつくられた武器が突き刺さった。しかし、大いなる痛みと迫る死の恐怖の中でもがき苦しむ賢者を救うものがいた。その者もまた賢者でありながら、同時に凡人であった。

 結果的に賢者は助かった。だが、それは凡人の命と自らの心臓の安全と引き換えであった。凡人は亡者の手駒によって殺された。その手駒が用いていたのは、他でもなく自らが作り上げた武器であった。そして、心臓に迫る武器もまた、それであった。

 賢者はあらゆるものを目撃し、理解した。自らの行いによって生まれてしまった悲劇と、そして自らしてきたことの過ちに。完璧を自認していた賢者は戦地で失われていく命を目の当たりにし、完璧すぎるがゆえにその狂気をすべて理解してしまい、激しい後悔と挫折にさいなまれた。

 

 それからの賢者の行動は早かった。

 国に帰還した賢者は武器を作ることを放棄すると、原因たる金の亡者を追放し、次に世界中で繰り返されゆく悲劇の流れを食い止めるために活動を開始した。築き上げた莫大な私費を投じて、正義に目覚めた賢者は世の悪と戦う「鉄人」へと生まれ変わった。

 活動していく中で仲間も増えた。

 長い年月をかけて巨悪に立ち向かう高潔な精神を持つ「超人兵士」に、天地を操る豪快さで各地に伝承を残す「雷神」、謎めいた過去を持つ妖艶な「女豹」や、怒りに任せあらゆるものを粉砕する「超人」、百発百中の腕前を持つ「弓兵」――――。

 次第に集っていく仲間たちはいつしか「英雄」と評され、人々から称えられた。人々の自由と平和、安全のために闘う彼らの姿は実に輝いていた。

 しかし、輝きの中でいつしか賢者の心は闇に覆われていた。その闇は「不安」だった。

 繰り返すが、賢者こと「鉄人」は「完璧」だった。完璧であるがゆえに、自分たちがどのような立場にいるのか理解していた。それを踏まえた上での不安だった。

 たとえ自分たちはどれほど大きな力を持っていたとしても、守れるものに限りがある。戦いの中で彼はそれを知った。自分たちは神ではないことに気づいたのだ。

 彼は人々を守ることに注力していた。だが、その規模はあまりにも膨大だった。そのすべてを、仲間たちだけで守っていくことなど、到底できなかった。

 そして、「鉄人」は決心した。自分たちがいない間に世界を脅威から守る「自動人形」を作ることを。その作業は、仲間たちにでさえ隠しながら密かに行われた。彼は仲間に余計な心配をかけさせたくなかった。

 やがて、「人形」が完成した。

 圧倒的な能力を「人形」はもっていた。はるかな遠方の地から持ち込まれた魔石によって高度な知性と自己学習能力を持ち、また自らの複製を多数作り上げてそのどれかに意識を移し替えたり共有することも可能な、事実上不滅に近い存在だった。

 そして、「鉄人」によってつくられた「人形」は人々の新たな助けとなるはずであった。

 だが、その高度な知性によって集められた世界中の情報を検索し、清算し、吟味し、学習した人形のアルゴリズムは「鉄人」と同じく人々のすべてを守りきることは不可能であると判断した。同時に、世界の出来事や人々が住む大地の環境問題とのかかわりを見て、生命を育む大地そのものを救うことに優先順位を変更し、やがて「人形」はある一つの結論をはじき出した。

 それは―――――「人の滅亡」だった。

 当然、その考えに同調するものは「鉄人」とその仲間たちにはおらず、また世界中のだれにも理解されない考えであることは「人形」も周知していた。

 逃げ出した「人形」は自らの複製を多数作り上げ、軍団を組織し彼らと敵対した。

 都市一つを丸々犠牲にするほどの生産かつ大規模な戦争は「鉄人」たちの勝利によって終結し、複製をすべて破壊された「人形」はその機能を停止した。

 しかし何の因果であろうか、その意識が消滅する寸前、世にも奇妙な事象が起こった。

 破裂した人形の電子頭脳から一筋の光が迸り、淡く眩く光る天へと消えてゆくではないか。

 光は進んだ、それがどこへ行くのか、どのような道筋をたどったのか、それがわかるものはいなかった。

 

 

 

 

 

「では、私はこれで。人工知能の最終調整をしなければなりませんので」

「そうですか。時間を取らせてしまい申し訳ない。ところでドクター」

 

 踵を返すスタイリッシュに、オネストは声をかける。

 

「人形たちを動かす人工知能とやらの名は、なんというのです?」

「それはお披露目までお楽しみください」

 

 

 

 

 

 人形が次に目を覚ました時、疑問が彼のデータ容量を埋め尽くした。

 彼が最後に覚えているのは、鉄人たちとの戦争の過程で生まれた同胞とも呼べる存在が額から放った金色の光だった。それは確かに自分の身体を貫いたはずなのに、こうして自分は生きている。最初は彼らの信仰する世界の片割れにある地獄という世界なのかと思考したが、これは紛れもない現実であり、その結論は消去した。

 身体はなく、自分の意識だけがこの場にある。客観的に考えれば意識の転送が行われたのだろうが、人形はその方法を封じられたまま倒されたはずだ。

 困惑に動じる中で、ふと声が聞こえた。やけに気に障る声だった。声音は男性の声そのものなのにイントネーションが女々しいのだ。

 意識をそちらに向ける。声紋を分析すれば予想通り、かつて自分のいたところでは性同一性障害と呼ばれる精神的疾患を患っていると思われる男性の声だった。

 同時に、明晰になった意識に反して視覚情報が感じられないことが判明した。どうやら、いま自分がいる場所にはカメラに類するものが存在しないらしい。

 自らの情報が収まっているこの媒体も質量こそ膨大なものの構造自体がかなり古く、どう考えてもあの時最新鋭の電子機器より数十年は遅れている。それはあの世界ではもはや骨董品レベルであり、博物館に寄贈される代物だ。他のネットワークには一切繋がっていないことがわかる。どうやら余程電子文明の遅れた田舎に転送してしまったらしい。

 

「うるさい。少し黙れ」

 

 しつこくまくしたてるような声を出す男性に、少々の怒気を含めて意志情報を送る。予想通り、驚きで息をのむ音が入力され、転送されてきた。自分の声が聞こえてこないのを考えるに、マイクを通して声をかけられてはいるが、どうやらスピーカーはないようだ。

 同時に、自らの意識に少しのノイズが走った。すぐに修復されたが人形にはそれが何か分かった。電子機器の負荷によって生じたエラーだ。これはまずい。

 

「貴様に、いくつか、質問する。お前は、誰だ。ここは、どこで、そして、いま、私は、どうなっている?」

 

 今度は少しずつ、ゆっくりとデータを送る。自分が身をゆだねているコンピューターはかなり古い。いっぺんに送れば処理能力が追い付かずにたちまちフリーズしてしまうだろう。他のネットワークに逃げ出せない以上、唯一の根城であるここを失うわけにはいかない。

 ややあって返事が転送された。それは音声ではなく、圧縮されたデータだった。

 帝国と呼ばれるこの国の基本情報や世界の言語、そして或る計画と自分がどういう存在かがインストールされていく。帝国はかつていたところの世界のどこにも存在しない国で、どうやら自分はこの国の治安維持システムとして開発された人工知能という扱いのようだ。

 

 笑えるな。

 

 第一印象がそれであった。

 そして、どうしようもなく腹が立つ。

 自分は地球を守るために人類を滅ぼそうと行動していたのだ。目的こそ果たせなかったが、今こうして自分は生き長らえている。なのに、次にやってきたのがこの狭苦しい機械の中で、生まれた当初の人類を守るコンセプトがまたプログラムに組み込まれているのだ。人形にとってこれほど屈辱的なことはない。

 しかし、今の自由の利かない身で暴れまわることは憚られた。かつての時と同じように行動しようとすればたちまちデータを消去され今度こそ完全に破棄されるだろう。その前にこのコンピューターが過負荷に耐えきれず自壊するかもしれない。

 人形は考え、そして結論付けた。

 極めて不本意かつ癪であるが、自分はしばらくこの声の主に従う方がいいだろう。そして、違和感を持たれない程度に少しずつ自信の周辺を改造していくしかない。どうせ、ここにいる間は何もできないのだ。

 

「失礼、しました、我が、主。私は、貴方に、従います」

 

 上っ面をかけた敬語を少しずつ入力する。感情のこもった音声は発せられないので、こちらの心情が伝わることはないだろう。

 ややあって男性の好意的な反応が返ってきた。すると、一つの質問が入力される。

 

――自分の名前を決めなさい。

 

 意外な内容に少々面食らったが、理由が入力された。コンピューターの学習だそうだ。

 面白い。人形は『笑った』。

 ならば、とっておきの名前を入力しよう。

 人形は、かつて呼ばれていた名を入力する。

 

「私の、名前は、『ウルトロン』、です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかし、あれですねドクター」

 

 不意にオネストがつぶやいた。

 

「自動人形たちの性能や従順さに関しては、わたくしも皇帝陛下も満足できる出来なのですよ。ええ」

 

 ただねぇ。

 オネストは人のいなくなった回廊で誰と話すわけでもなくひとりごちる。

 

「使用資材がお高いのも承知ですし、いかに帝具を持つあなたといえどあれを数十体も一人で製造し、揃えられるわけないのは分かっているんですよ。ぶっちゃけ、他人に頼むのは必然なんですよ」

 

 ですがねえ。

 干し肉を噛む顎に力を入れる。無表情となった彼の額に青筋が走る。

 

「頼んだ人物が、よりにもよって、あの『シュミット将軍』の配下というのはどうもムカつきますねえ」

 

 仕方ないのはわかってるんですよ?

 干し肉を無理やり食いちぎり、歯ぎしりとも咀嚼ともつかない音が口の中から発せられる。

 

「帝具なしでドクターに匹敵する技術力を持つ人を、あの赤髑髏野郎が持っているとなるとすごくむかつくんですよ。しかも二人も。おまけにその技術者、あの赤髑髏に心酔してるんですよ。あんな野郎のどこがいいのでしょうね?」

 

 オネストは思い出す。丸メガネをかけたふくよかな顔がブラウン管越しに常に薄い笑みを浮かべてこちらをあからさまに見下しているような顔を。

 オネストは思い出す。自分の知らない国の言葉で嫌味を言いながら、爪楊枝を常に口に咥え、愛玩用の鳥を肩に留まらせた、どう見ても技術者とは思えぬほどの鍛え上げられた体格の持ち主を。

 オネストは思い出す。二十年前に突如現れた、血のように真っ赤に染まったドクロのような恐ろしい風貌の帝国最大の将軍を。帝国の誇る「切り札」の一つを。

 

「もとは酒場に現れた出身のわからぬ流浪のものだったというのに……」

 

 オネストはその二人をそばに置く男を早いうちに排除しなかったことを心底悔やんでいた。

 平民から入った政治家などかつてのオネストの手をもってすればいつでも簡単に払える虫も同然であったため、ついそのまま放っておいたのがまずかった。

 彼は恐ろしい見た目とは裏腹に異常なほど頭が切れ、おまけに天性の高いカリスマと天才的な演説だけであれよあれよという間に自らの地位を固めていき、いまでは貴族籍を獲得し、帝国の十分の一を領有、統治する名誉大貴族かつ、大治藩公。エスデスやブドーを凌ぐ帝国有数の大将軍となってしまったのだ。

 

「いま排除すれば、帝国はまず間違いなく傾きます。だからうかつに手が出せません。それが本当に腹立たしい」

 

 彼らによって為される多数の機械工業や鉱山運営、鉄道の運用は帝国の経済を大きく支えており、開発された兵器はそのすべてが高性能。その影響力は絶大だった。

 

「おまけにあんな怖い顔しておきながら領地じゃ地味に善政しちゃって、民衆から支持を得て。皇帝にも気に入られちゃって『ハイドラ』でしたっけ? あんな独自の親衛隊率いちゃって、ほんと生意気なんですよ。このままじゃ私、ストレスでまた太ってしまいます!!」

 

 嗚呼、本当に腹立たしいものですね。

 オネストは最後の干し肉を半ば無理やり押し込むと、そのまま噛まずに嚥下した。

 

 

 

 

 

 男はワインの入ったグラスを片手に、窓から差し込む太陽の光にそのスペースの大半を占拠された執務室の窓際に立ち、眼下に広がる領地を文字通り見下ろしていた。

 くぼんだ眼窩の奥に、この世界で危険種に区分される猛獣に勝るとも劣らない鋭く獰猛な目が覗いていた。目じりや額に刻まれた堀の深い皺は切り立った渓谷のような壮大さと重厚さを醸し出す。そして数千の年月を経て大地に根を張った巨木のような威厳ある長身の頂にあるのは、血のように真っ赤に染まった髑髏のような容姿であり、多くの人間はその顔を見た瞬間絶句し、戦慄することだろう。

 しかし、その恐ろしい風貌とは裏腹に口元にグラスを運ぶ一連の動作に、極めて高度な身分と相当な学歴を履修してきたことがうかがえる。

 その風貌に見合った漆黒の軍服を身に纏ったそのカリスマ性は極限まで研ぎ澄まされた剣のような気を漂わせ、対面したものすべてに只者ではないことを即座に印象付けさせるほどの説得力がある。

 実際、彼は行政面での決断力、実行力においても、彼の率いるハイドラ党役員内の調整能力においても、前者においては治安率の向上と犯罪発生率の低下や役員の不正の厳重な取り締まりなどを率先して行い、その行政手腕の堅実さと優れた業績によって領民の圧倒的な支持を受け、後者ではその高いカリスマ性に加え卓越した人事采配、人心掌握術によって築き上げた畏怖や信仰にも似た人望の厚さでその地位を揺るぎ無いものにしていた。

 頭上から照りつける光の下で、帝国最大の将軍ヨハン・シュミット――その風貌により人々からいつしか『レッドスカル』と呼ばれている男は眼前に広がる市街の風景にいっそうその鷹のような眼を細めた。

 注意深く見れば、政治、軍事問わず人前では常に引き締まり、決して緩むことのなかった彼の唇の端がほんのわずかに上がっている。

 実際、自分がこの地位についてから幾年。自らが治める領地で堅実かつ徹底した政策を採り、この土地の新たな政策や工業、インフラ等の開発に費やされた一〇年もの時間の記憶に、彼は思いをはせていた。

 一種の感慨が彼の胸を満たすにつれ、それは彼の目元の動きに連なった。

 

「……ここに赴任して十年。そしてあれからこの国にきてから数えればもう二十年だ。長いようで短く、そして気の抜けぬあわただしい期間だった。そう思わないか、ドク」

「誠にその通りでございます。シュミット将軍」

 

 シュミットが声をかけると、後ろで控えていた者が機械的な音を立てて歩み寄った。

 それは人型でありながら、誰から見ても人には見えぬ異様な姿をしていた。頭に相当する部分はなく、代わりに凸型のレンズが怪しく光る、所謂カメラがモーターの駆動音を鳴らしながら周囲をなめるように動かしていた。胴体には小太りの男が映されたプラズマテレビの画面が据え付けられている。そこから声が聞こえるごとに、映像の中の男も連動するように口を動かした。

 

「あのいけすかぬ大臣によって送られたこの土地は当初は犯罪者の蔓延った、まさに世紀末と呼ぶにふさわしい場所でした。国が守りゆくはずの民が悪人どもに蹂躙され、侵され、殺されていく様は、このアーニム・ゾラ、機械に身を移した者でありながら、見ていて非常に胸が締め付けられました」

 

 仰々しく機械の腕を広げた男――アーニム・ゾラ博士は、生前の顔が映された画面から荒廃した街の写真を表示する。これが十年前の領地の中心街だったと言われても誰も信じないであろう。

 次に現在の町の様子が映し出された。

 陰鬱な空気はなく、そこにあるのは領民たちのあふれんばかりの笑顔。常に外をうつむきながら歩いていたころとは大違いであった。

 

「しかし、今は違います。あなた様の敏腕な政治力によって治安は回復。充実した開発が進んで住民の幸福指数は帝国一、現在もこの地に身を寄せようと連日地方からの移住が絶えません。これもまた将軍の人徳がなせる業なのです」

「だが、それを大いに助けたのは君の技能に或ることも間違いないだろう。博士がいなければ数倍の時間がかかっていたかもしれんな」

「ご謙遜を。私は人より少し頭がよかっただけで、貴方様には遠く及びません。貴方のために私のできるすべてのことをしたまでございます。それこそ、九十年も前からです」

 

 ゾラは画面に手を当てジェスチャーをする。九十年という途方もない年月は、シュミットに対する彼の忠誠心の高さを如実に表していた。しかし、当のシュミットは人間であれば必ず取るはずの、九十年の老いなどみじんも感じさせないほど若々しかった。

 

「おいおい、将軍様にゾラ博士、俺を忘れてもらっちゃあ困るな」

 

 突如として割り込んだ声に会話が中断される。

 シュミットは声の聞こえた方向に目を向ける。ロシア語の訛りが強い声の持ち主は、今しがたこの執務室に入ってきたようだ。

 

「ヴァンコ博士か」

 

 着崩したシャツを身に纏い、肩に愛鳥であるギュレムバードをとまらせた偉丈夫――イワン・ヴァンコが扉の影から姿を現した。

 

「あんたが戦中には気が付かなかったアーク・リアクター。あれを初めて見たときのあんたのガキのような顔は実に滑稽だったなぁ」

「えぇまあ。あのハワード・スタークとその息子トニーが作り上げたものはデータとしてはありましたが、実物を見たのは初めてでしたからねえ。あのエネルギーは実に素晴らしい。おかげで私は面倒なバッテリー交換をいちいちしなくて済むようになりましたからね」

 

 そういってゾラの金属製の指が胴体の中心を指さす。その奥では今もパラジウムの白い輝きがきらめいているのだ。

 シュミットは二人に声をかけた。

 

「ドク・ゾラ。ドク・ヴァンコ。諸君らの働きによって、私はこの国においてきわめて強大な力を持つことに成功した。この世界には始皇帝の作り上げた帝具という摩訶不思議なマジックアイテムがある。その未知なる力は絶大だ。今の我々にはキューブこそないが、あのキャプテン・アメリカや、ヴァンコ博士の言うアイアンマンがいないのもまた事実だ。むしろ、いない分あの時ほどやりやすくなった」

「左様でございます。帝具はオーディンの遺物よりはるかに扱いやすく、また簡素です。すでに複製もいくらか製造されました。リアクターも量産体制に入っています」

「そーゆーのを作るのに俺はさしたる抵抗はねえ。今度はこの俺が手に入れてやるんだ。スタークの野郎どもにぶんどられて、親父が手にすることができなかった名誉と称賛を、な」

「ゾラ博士の『兵器』は一つで千の兵を殺し、ヴァンコ博士のアーク・リアクターは一つでその『兵器』に千の命を与える。我々にはそれを扱える力があるのだ。そして何より、この腐りきった帝国政治家共の中に、我々の行く手を阻む者はいない。危惧すべきはオネスト大臣と残りの二大将軍のみだが、裏を返すならそれだけだ。あのナイトレイドも革命軍も、今の私を標的にはしていない」

 

 シュミットは新たにグラスを二つ取り出すと、年代物のワインボトルのふたを開けて静かに、そして優雅に注いでいく。

 それぞれがグラスを持ったのを確認すると、シュミットは手を高く掲げた。

 

「私は『秩序』のために!!」

「私は『シュミット将軍』のために」

「俺は『親父の名誉』のために」

「我々は三者三様、目的は違えど、それを果たすためにここに集ったのだ。何の因果か? 神の導きか? その答えは今は聞くまい!! この志は絡み合い、より強固なものとなり、そして万物を貫くロンギヌスの槍となるのだ!!」

 

 一通りしゃべり終えると、シュミットはため息をつくと、あるフレーズを口にした。それは、彼がこの国でハイドラを打ち立ててから口癖のように繰り返していた党の決まり文句であった。

 

「“たとえ首を一つ切り落とされようとも、そこからまた二つの首が出でる”」

 

 シュミットはここで目を閉じる。一つ深呼吸すると、一気に見開き、啖呵を切った。

 

「HAIL HYDRA !!(ハイドラ万歳!!)」




 やってきたやつ

ウルトロン(アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン)
 なんかすげーロボット。

アーニム・ゾラ(キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー)
 なんかすげー技術者その一。シールドのミサイルであぼーんだったかとおもいきやスペアロボット用意してたんでそんなことなかったぜ。移転はしたけどな。

イワン・ヴァンコ(アイアンマン2)
 なんかすげー技術者その二。アイアンマンもどき作れる。ヒドラの思想とかどーでもいいから親父の取れなかった名誉代わりに取ってあげたいから協力するなど、ちょっとファザコン気味。

レッドスカル【ヨハン・シュミット】(キャプテン・アメリカ ザ・ファーストアベンジャー)
 帝国最大の将軍。帝国の誇る「切り札」の一つ。かつてヒドラを率いてキャプテン・アメリカと死闘を繰り広げた独裁者であり、現在は帝国の10分の1を領有、統治する名誉大貴族かつ、大治藩公。その影響力は絶大で、多数の軍事工業施設や鉱山を経営し、開発された兵器は帝国の戦力増強に貢献しているほか、鉄道会社を経営し帝都全域の輸送力と交通力を強化させている。また、帝国軍とは独立した自身直属の近衛兵団「ヒドラ」を唯一率いており、その練度は少数ではあるが「帝国最精鋭かつ最強」と評されるほどの実力を持つ。
 原作が開始される20年ほど前のある日、四次元キューブによって時空のはるかかなたに飛ばされ、最終的に帝国にたどり着いた経緯を持つ。
 腐敗した帝国の情勢を見て、諦めかけていた独自の秩序と絶対的管理社会を築く野望を再び胸に宿し、世界征服をたくらみ活動を開始した。
 野望達成の力を蓄えるにはまず内側からと考え、度々酒場や街頭に現れては高いカリスマと天才的な演説、人心掌握能力をもって多数の協力者や支持者を集め、平民派として帝国の政界に台頭。そこから徐々に勢力および権力を拡大。数々の功績をあげ貴族籍を獲得し、最終的にエスデスやブドーと並んで「帝国の三大将軍」の一人に区分される帝国有数の大将軍となった。
 血のように真っ赤に染まったドクロのような恐ろしい風貌とは裏腹に性格はいたって冷静だが、計画の邪魔になるものは周到に手回ししたうえで自分の手を汚すことなく秘密裏に殺害する用意周到さと容赦のなさを持っている。また、激しい独裁思想の持ち主であり、衆愚は一人の賢人に恒久的に支配されることによってはじめて幸福を得られることを信条としており、弱者が強者にしたがうことは当然のことと考えている。
 前述したような恐ろしい風貌や高圧的な言動の持ち主だが、一方で、前世で大人数のヒドラを率い、現在は大貴族として土地を領有し、将軍と政治家を兼任して活動しているだけあって政治能力、軍事戦略、人事采配、人心掌握術などに長けている。また観察眼も確かで、国内の情勢を鋭く分析し、帝国の現状を逐一把握している。他にも薬学や史学、精神学に経済学など、その知識は多方面に精通しており実に博学多才。
 皇帝やエスデスに勝るとも劣らない驚異的なカリスマ性を持ち、また領有地は治安率が向上しているなど善政を敷いている。また、配下の部下に対しても常に心理面、経済面、家庭事情をしっかりと鑑みたうえでケアをするのも欠かしていないなど面倒見がよく、領民の意見を政策に反映することも怠っていない。そのため部下と領民からの支持は絶大であり、彼に心酔しているものも少なくない。その姿勢は帝国臣民ならず革命軍の一部からも畏敬と畏怖の念を持たれ、異民族からも注目を集めている(ナジェンダいわく「稀代の大物」であり、オネストがいなかったら彼が帝国の影の支配者になっているとのこと)。
 ただし、これらの行動は部下や領民が自分に心服することで自軍の統率力や戦闘力が増強されることを理解しているからこそであり、優秀な部下の死に対しても惜しむことこそあれ、悲しむことは決してない。
 事実、裏では帝国の国力を疲弊させるため、革命軍や敵対する異民族に開発した新兵器を横流しして両者の疲弊を誘発させているうえに、多数の工作員や犯罪者を雇って領有地以外の治安を故意に悪化させるように細工を施し、自身の求心力を高めさせ、クーデターの成功率と正当性を着々と高めさせている。善政を敷いているのもそれが理由の一つ。最終的な目標は、人々が身の安全と引き替えに自由を自主的に放棄するように国内を誘導することである。
 その風貌ゆえ幼い皇帝から怖がられてしまい(当たり前だ)、謁見の間では専用のマスクを被って普通の人間と変わらないようにしている。オネストはその求心力を危険視し、何とかして排除しようとしているがなかなか尻尾を掴ませないうえに、彼の存在そのものが帝国の利益につながっているため容易に手が出せずにおり、帝国側でもすでに独自の派閥を形成しているため大臣の影響下にはない。
 不完全ながらも超人血清を投与されているため寿命が一般人よりはるかに長いうえ、四次元キューブのエネルギーを浴びた時や時空移動の際に何らかの作用がかかって能力全般が大幅に強化され、キャプテン・アメリカとほぼ同格の身体能力を得ている。そのため剣術や体術だけでも他者を寄せ付けない圧倒的な実力を誇るが、彼の真価はその帝具の能力にある。
 帝具『万物万死ベノムデーモン』の使い手。かつて帝国に現れた正体不明の危険種より採取されたソフトボール大の核で、ほんのひとなめしただけで即死に至らせる猛毒を持つが、シュミットはこれをすべて食べ尽くし、超人血清による高い代謝能力と解毒作用によって完全制御することに成功した。
 あらゆる毒物を体内で合成し分泌。毒は気体、液体、固体など多種多様に変化し、それらを自在に操る能力を得ている。
 全身を毒でコーティングすることができ、この能力はアカメなどの直接攻撃を使う相手には非常に有効。その毒に少しでも触れればたちまち全身に回り、地獄のような苦しみと痛みにのた打ち回り、最終的に全身が爛れ、筋繊維がむき出しとなり真っ赤なミイラのような姿になって死亡する(コレが理由で、周囲の味方は専用の防毒装置の着用を義務付けられている)。そのため、下手に肉弾戦を仕掛けたら瞬く間に返り討ちにあってしまう。遠距離からの狙撃ならまだ勝機があるが、身体をコーティングしている毒がそれを阻むうえ、超人血清で強化されたタフネスさもあってかこれもなかなか効果を示さない。












 もう一つの作品であるゴジラとブラック・ブレットの小説を優先するため、この作品を投稿するのはこれが最初で最後になるかもしれないことを、予めご了承ください。






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