IS/勇者王ガオガイガー─白き翼の戦士と勇気ある者―   作:オウガ・Ω

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某所、二年前


「ふむ~」

「どうしたのレイジさん?」


「ああ束くん(テッカマン)。いやの、もしバイオネットのISが市街地で戦った場合の被害予想シュミレートをしたんだがの…」


軽快にあらゆる数値を試算したデータを入力操作し、カタンとエンターを押す羅列が流れ導き出された結果

都市部の被害は甚大、ライフラインの八割は断絶。復旧には数ヶ月を要すると示され頭を抱える


「…せめて別空間を形成できればの…うむ~どうすりゃいいんじゃい!!」


手に頭を当て悩むレイジを見て束(テッカマン)はあるファイルを思い出しいきなり高速タイピングしある理論をスクリーンに出した

「こ、これは!」


「うん、私の考えたレプリケーションフィールド理論、んでこっちの私が考えたアレスティングフィールドの次元反発作用理論を合わせたんだ~これならいけるかな?」


「これなら可能じゃワイ!早速、開発部門に回すぞィ!!」


嬉々としてデータを開発部へ送るレイジは燐のリハビリサポートを終え戻った束と束(テッカマン)と共に更なる試算を始めた…この理論の完成により生まれたのが空間を切り裂き湾曲フィールドを形成するツール

その名も《ディバイディング・ドライバー》。これが勝利の鍵だ!




第七話(裏) 紫の守護者

 

燐がスイスにあるセルン中央研究所へ向け嫉妬混じりのミラーカタパルトで射出され数時間後

 

「……………定時報告。更識簪嬢、学園へ無事登校確認、引き続き学園外の警護に当たります」

 

 

『わかった、少しでも以上があればすぐに報告しろよ霧也(きりや)』

 

 

「はい、では次の定時連絡で」

 

通信を切り護衛対象の更識家令嬢「更識簪」へ目を向けるのは白髪にややアルビノ気味の肌、濃紺の制服に身を包んだ目付きの鋭い少年《犬神霧也(いぬかみきりや)》が学園の屋上から白いマフラーを風になびかせながら立つ姿があった

 

 

第七話(裏) 紫の守護者

 

 

(……周囲に異常なし、サテライトサーチ圏内に不審者は該当せず…)

 

呟く彼の視線の先には空間投影スクリーンを多数展開する簪の姿。数か月前、技術提供を受けた日本政府、ロシア政府からの要請を受け霧也は《更識簪》の護衛を極秘裏に開始していた

 

なぜ護衛をするのか?それはIS学園の生徒会長にして暗部の家系を継ぐロシア代表候補生《更識楯無》の血を分けた妹だと言うこと、すなわち人質にとれば様々な情報が聞き出せると考える輩と《日本を捨てた女の妹》だと言う逆恨みに近い理由もあるが楯無の専用ISの技術をバイオネットが狙っているとの情報を両政府から得たからだった 護衛を始めて数日、未だに不審者の姿がない…だが霧也は簪の作業をじっと眺めている

 

(……やはり一人で打鉄弐式を完成させようとしていますか、マルチロックミサイルシステムもまだまだ改良の余地があるようです。G-IS-05L《闇竜》のシステムが参考に…いけません、護衛に集中しなければ)

 

考えを振り払い周囲の索敵を始める霧也…やがて時間が過ぎ辺りを闇が支配する。ようやく作業を終えた簪は端末を閉じ第二整備室から出て寮へ歩き出した

 

当然、霧也も気づかれないよう距離を離しながらも辺りを警戒しながらだ

 

(…寮及び通路に異常な熱源無し、どうやら今日は…)

考えたその時、ナニかが切り裂く音が耳に入る、咄嗟に飛翔する霧也の目には薄く鋭いナニかが見え簪に迫る

「(いけません!) 伏せてください!!」

 

 

「え?」

 

突然の事に驚く簪、あと数センチと迫る刃を霧也は金色に輝く半月状の刃で切り払い左右にカランと乾いた音と共に落ちた

 

 

「あ、あの。あなたは?」

 

「…私の名前は今は名乗れません…ですが早くここから逃げてくださ…っ!!」

 

再び風を切る音が響く、今度は無数に刃が飛来し霧也と簪に襲いかかる。それを霧也は凄まじい速さで切り払い、砕きながら辺りをサーチする

(熱源感知できず。ですが微細な振動音を確認…位置座標感知完了しました)

 

 

「……少しご容赦を。ガンドーベル!!」

 

 

「え、きゃ!?」

 

音もなく一台のバイクが現れると霧也は簪を抱き抱えシートに座らせるとナニかを素早く入力する

 

「ガンドーベル、彼女を寮まで!!」

 

「え、き、きゃああああ」

 

ピカピカとライトを明滅と同時に簪を乗せ寮へ勢い良く走り去るガンドーベル、ゆっくりと辺りを見回しながら霧也は意識を集中させながら右腕を掲げ叫んだ

 

「ボルフォッグ!!」

 

 

紫色の光がF50の形を作り、バラバラに分解。ミラーコーティングされた霧也の体に纏われは粒子が弾けるとG-IS-02《ボルフォッグ》がその姿を顕す

 

「シルバァームゥウウン!ハアッ!!」

金色に輝く半月状の刃が瞬く間に白銀色に染まり、大きく振りかざし投げつけたのは何もない空間…しかし火花が散ると同時に弾かれた

 

「な、なぜ気づいた…」

 

 

グニャリと風景が崩れると胸元を押さえる強化服を纏った男が苦しそうにこちらを見ていた

 

「あなたの光学迷彩は完璧でした。ですが駆動音までは消すことは出来なかったようです」

 

 

「さ、さすがは紫の守護者…だが、このままでは終わらん!!」

 

 

「投降する気はないのですか?」

 

 

「くどい!!」

 

 

「…やむおえませんか…では相手になりましょう」

 

シルバームーンを構える霧也、対する相手は両股装甲内から二振りの片刃剣を構え一歩も動かない

 

 

やがて一陣の風が流れ葉が舞った瞬間、地を蹴り斬り逢う二人…火花と金属がぶっかりあう音が響く

 

 

「やるな紫の守護者!」

 

「あなたこそ…ですが何故このような事を!?」

「ISが生まれてからすべてが変わった!篠ノ之束がISを作らなければ女尊男婢社会なぞにならなかった!我々男の立場は地に落ち日陰者になった!!」

 

 

剣檄が勢いをまし押されながらも霧也は黙って切り払い続ける

 

 

「だから女尊男婢社会の象徴であるIS学園を、更識楯無を倒さねばならんのだ!」

 

「貴方は勘違いをしている!今現在の女尊男婢社会になったのは、ISを活用するために女性に有利になるように法の整備がされ、それが思想に影響を及ぼし今の流れになったと気づかないのですか!すべてが篠ノ之博士の責任として考える貴方の考えは間違えてます!!」

「なっ!」

 

熱く叫ぶと共にギインっと片刃の剣を弾き返す霧也の目には怒りと悲しみが入り雑じっていた

 

 

「…貴方のように都合の悪いことが起こればすぐに他人に責任転嫁し逃げるような大人は…」

 

シルバームーンを両手に構え斬りかかり残る刃も弾き飛ばし、その勢いのあまりへたりこんだ男性の前に立ち

 

 

「……私は嫌いです…ジェットワッパー!!」

 

そう呟き量子変換されたジェットワッパーで拘束すると背部のメルティングサイレンを鳴らしガングルーを呼び出し操縦席へ乗せキャノピーを閉じヘキサゴンへ向かわせるとISを解除し空を見上げた。大小様々の光が夜空を彩っている

 

「……ISはまだ見ぬ宇宙へ向かうために産み出した翼。今はこんな形で広がりましたが何時かは本当の姿を取り戻すはずだと私は信じたいものです」

 

 

誰に言うでもなく呟くと地を蹴り闇夜へとその姿を隠し消え去った

 

 

余談だが、ガンドーベルで寮まで送り届けられた簪は教師を伴い戻ったが霧也の姿がなかった事に少し残念そうな顔をしていたと記しておく

 




次回から原作第二巻へ突入します!

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