IS/勇者王ガオガイガー─白き翼の戦士と勇気ある者―   作:オウガ・Ω

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六年と半年前

宇宙開発公団、最深部

《Xルーム》同手術室


「免疫抑制システム構築完了。疑似ニューロン接続し終えたよ!」


「わかっておる!多次元コンピューターへ疑似ニューロン及び各代謝機能代理演算続行!束くん《アレ》を燐の左腕に!!」


「は、はい!」

二人の声が冷却され清潔感溢れる緑の光が照らす空間に響く…手術着を着た束の手には半透明な箱が握られ乾いた音と共に開く。中には緑色の六角形の宝石、それを焼けただれた手で握り手術台で強制冷却され眠る九歳ぐらいの男の子の左腕、様々な接続端子が見えるガントレットへそっと納めると機械音と共に収納された

「……オリジナルGストーン《Ⅶ》セット完了……………代謝機能代理演算切り替えと同時にGSジェネレータ稼働チェックするよ」

「………GSジェネレータ正常稼働68%維持確認。な、なんとか間に合ったワイ…」

バイオネット極秘研究所から燐を含めた《五人の子供たち》を救出の為、命令違反し潜入したID5メンバー。だが彼らの前に度重なる遺伝子レベルの改造と機械との融合実験に興され記憶を弄られ《兵器》としてID5の前に燐が立ちはだかった。


だがID5メンバーコードネーム《ホワイトラビット》束との接触で奇跡的に記憶を取り戻した燐だったが、直後に意識を失い更に《あと数十時間の命》と移送中の輸送機で診断した束とレイジは燐へ《…………化手術》を決断するしかなかった


そして今、オリジナルGストーンを移植し終え各メディカルチェック機器に繋がれた燐の容態は安定へ向かってた…だが突然アラートが各種モニターに流れた

「な、何で!オリジナルGストーンを使ってるのに!!」

「な、なぜじゃ、なぜ機能せん!!」


アラート音が木霊し二人は幾つもの空間投影モニターを開き原因を探るも心拍、脳波、生体反応が不安定になり必死に食い止めようとする二人の頭に『ダメだ』と言う言葉が浮かびかけたその時、手術室の厚いガラスを隔てた隣にある《Xルーム》。そこに安置されたGクリスタルが激しく輝きはじめた


「な、何が起こったんじゃ!」


「Gクリスタルが何かに反応して…レイジさん!リッ君のGストーンが!!」


「な、なんじゃ……まさかGクリスタルとGストーンが共鳴しておるのか!!」


束とレイジが目にしたのは燐の左腕に納められたオリジナルGストーン《Ⅶ》が表面に《G》の刻印を浮かば緑光を溢れさせる光景が広がる。同時に燐の身体に現れていた異常を示していたアラート表示がすべて正常値へ戻ると緑色の光が収まった

「レ、レイジさん。今のは一体なんなの?」


「わ、わからん。じゃが今は燐を」


「は、はい!」


大きく返事をする束は再び空間投影モニターを複数展開しメディカルチェックわ始める…がレイジはガラスの向こうにあるGクリスタルへ目を向けた


(…今までに見たことがない共鳴現象じゃった…まさかオリジナルGストーンと繋がった燐に反応したのか?いやそれとも…今考えることではないか)


考えを頭の片隅へ追いやりレイジも束と共にメディカルチェックをはじめ異常無しと判断し燐だけを残しXルームへと向かう為出ると扉がしまる。しばらくして眠り続ける燐のGストーンが再び淡く輝き始めた


―燐…生きて……私の命を…受け継いで……り……ん……―


第八.五話 マドカ

「束くん、スクリーンを開いてくれ」

 

「ハイハ~イ。エイ♪」

 

 

燐が五反田家で大食い勇者王伝説を樹立した頃、宇宙開発公団最深部《地球勇者防衛隊》通称GGG本部では先日、フランスでの戦闘時に現れた八枚の翼を広げた少女と謎のISコアから人へ戻った少女についての話し合いが持たれていた

 

「獅童博士、この少女はいったい誰なんだ」

 

「わからん。ただひとつだけわかったのは、あの少女が放つ光には《Gストーン》、いや《Gクリスタル》と同じエネルギー波動をガオファイガーのハイパーセンサーが感知しとった」

 

 

「でもそれ以上に気になるのは《あのISコア》から人を分離したことだよ。どういう理論でああなるのか私でもさっぱりだよ」

スクリーンにはグニャグニャとISコアが形質変化、さらに二つに別れ通常のコアとボロボロのISスーツ姿の少女が大粒の涙を流す姿を見いる中、大河は静かに口を開く

 

 

「……束くん、あのISコアはまさか」

 

 

「…八年前、《モジュール01》で奪われた《41個》の第二世代型ISコアに間違いないよ…だってアレは白騎士のデータを基にして多目的宇宙開発用に私が作った…か…ら…わかる…よ……なんで…こんなことに」

 

 

言葉をつまらせる束。その手にポタポタと涙が落ち濡らしていく…その肩にポンと手がおかれ顔をあげる束に獅童レイジの穏やかな顔でたってる

 

 

 

「束くん、君のせいではない…悪いのはバイオネットじゃ…」

 

「…ああ、バイオネットの野郎共が何たくらんでいようが、俺たちGGGが叩き潰してやるぜ!」

 

バシッと拳を打つのはやたら筋肉質な火麻参謀…かつてID5《シルバーピューマ》として数年前のバイオネット極秘研究所を破壊に参加する以前から《ある軍需財団》絡みの事件で非人道的な実験を目の当たりにしていたから仕方なかった

 

「確かにな…火麻くん、千冬君は?」

 

 

「ん?ああ。この前、燐が保護した子供のとこにいってるぜ…まさかアイツら《あの計画》を実行してたとはな」

「……ブリュンヒルデ量産計画…私たちがもっと早く知っていれば。だがバイオネットの動きは予想以上だ…博士、あのISコアの解析結果は?」

 

「ふむ、セルン中央研究所で件のISコアの解析結果をみて驚いたワイ。数十年前に発表された論文内でソレと同じ粒子構造式を見たことがある」

 

 

「その論文とは?」

 

 

「束くん、出してくれるかの」

 

「は、はい」

 

 

スクリーンに出されたのは一人の老人が提唱した理論と。内容は負の思念をエネルギーへ変換する自立制御型動力コアの概念図だった

 

「ストレスをエネルギーに変えるのかよ…なんつぅ理論だ」

 

「人が誰しもが持つマイナス思念、言わばストレスをエネルギーへ変換する自立制御型動力コア…ひとつ間違えば暴走する危険性と人体が特殊粒子に侵され遺伝子が形質変化する可能性が示唆されだ。だが学会から反発を受けるも人体実験を強行しおった」

 

「その結果、被験者のストレスは解消したんだけど副作用で急激な形質変化に耐えきれず死亡。彼は学会から永久追放されたんだよ」

 

「……彼、リュウノスケ・F・ゾンダー博士は最後こういったそうじゃ…『私の理論は間違えていない!間違えてるのはこの世界だ!いつか私の考えが正しかった事を知るだろう』…それから数年後に行方をくらませた。あの時奪われた第二世代型《ISコア》にはゾンダー博士の理論が使われてるのは間違いない」

 

 

「束くん、博士。その粒子の名は?」

 

 

「「素粒子Z0(ゼットゼロ)じゃ/だよ」」

 

 

 

―――――――――

―――――――――

 

 

「…………」

 

 

「……あ、怖がらなくていい……」

 

なるべく優しく言ったんだが、何故か怯えられる…やっぱり私が怖いのだろうか?

 

燐が保護した子…名前は判らないが私と余りにも似ている、いや似てるのは当たり前だ

 

 

バイオネットの連中が私のジーンマップを手にいれ兵器として利用して産み出したらしい

 

「……」

 

 

 

この子は恐らく《人》として扱ってもらえてなかったのだな…

 

 

―教官―

 

思わずドイツ軍で一年間、教官を勤めていた折りに私へ尊敬の眼差しを向けていた教え子と重なる…元気にしているだろうか?

 

この子と同じ境遇で似た子だ…なら私がやることは一つだ

 

 

「ひう!」

 

 

そっと近寄りただ優しく抱き締める…これが今の私にできること。少しでも落ち着いてくれたらいい

 

この子に一番必要なのは他者の温もりなのだから

 

 

「…あ、あの…私が怖くないんですか?」

 

「ふ、怖くはない……やっとしゃべってくれたな…私は」

 

 

「お、織斑…千冬…さん…ですよね…」

 

強ばった身体が徐々にとけ少しずつポツポツと話し出した…物心ついた頃からIS操縦を叩き込まれた。その目的は私と同じ最高のIS操縦者を量産すること

だがそれは《ある男》が来たことで終わりを迎え、たくさんの子達がが実験に興され死んでいった

 

この子はある二人の手により庇われていたが見つかりあのコアに組み込まれたらしい

 

「…わたし、わたしは…」

 

 

「もういい、言わなくていい…」

 

涙を溢れ出させるこの子をギュッと抱き締めながら思うのはバイオネットの連中に対する怒り。もうアイツラのせいで無関係の人が傷つくのは我慢できない

ヤツラの目的は恐らくIS学園の生徒…私は守らなければいけない

 

もう一夏を《あの時》みたいに……!

 

 

「すまない、もっとはやくに気づいていれば…すまない、お前の…」

 

 

「……マドカ…」

 

 

「?」

 

「わたしの名前は…マドカ…織斑マドカ………お願い、スコールとオータムを助けて…」

 

 

――――――――――

―――――――――

 

 

「アッハハハハ~やってくれましたね…まさかMのジーンマップを完全に破壊するなんてね」

 

 

「へへ、悔しいか?あんたたちにあの生意気なガキを渡してたまっかよ~ば~か」

 

 

「オータム、口が汚いわよ…で、私たちをどうするつもりですか?」

 

 

「いやいや、君たちはIS操縦者としては優秀ですからねぇ…まあ今となってはISも最強の兵器ではなくなりましたからねぇ~最後ぐらいは華々しく散ってもらいましょうか」

 

ケタケタ笑いながらマントにも似た衣装から取り出した二つの物体、赤紫色に怪しく輝くソレをゆっくりと近づけていく

 

「我がバイオネットの最新商品…ゾンダーISの宣伝塔になってもらいますよ♪フヒヒハアアアアアアア!!」

「や、やめろ、んなのスコールに近づけんな!!」

 

 

「う、ううああああああああああああ!!」

 

 

抵抗するもがんじがらめに縛られたスコールの額へ押し付けられた瞬間、暗い室内に赤紫色の光が満ち溢れた

 

「ゾ、ゾンダアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 

「フヒハアハハハハ!いいですよお、これで軍からの注文が殺到する事でしょう…ねえフリィィルくうぅん♪♪」

 

 

「そうだねギムレットくうぅん♪♪ゾンダー博士に感謝だねぇぇ…アヒャ♪♪♪」

グニャグニャとした何かが叫ぶ姿に歪な笑みを浮かべるフリール・ルコック、ギムレットを唇を噛み締めながら睨むオータム。

 

 

「さあ行きなさいぃ、我ら新生バイオネットの邪魔になる黒いIS《ガオファイガー》を破壊し、リイイィンを殺しなさあああい…アヒャ♪♪」

 

ギムレットの声に応えるように瞳を輝かせ、グニャグニャとした何かはまるで周囲に溶けるようにその姿を消した

 

 

第八.五話 マドカ




次回は本編です!

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