IS/勇者王ガオガイガー─白き翼の戦士と勇気ある者― 作:オウガ・Ω
五年前
宇宙開発公団、同最深部。ここはかつて対特殊テロ対策防衛隊《ID5》の本部がおかれていた…現在は解散していたものの施設は日本政府直轄となり現在も機能していた
「ふむ、弾君。よく頑張ったの。あとはマイクの調整が終われば普通の生活をおくれるぞい」
「あ、ありが…が…とう…レイ…ジざん」
「ああ、無理せんでいい…束くん、凍也くんと疾風くんはどうかの?」
「あ、は、はい…二人とも経過は順調だよ…あと二人も超AIに適合できたけど…」
メディカルルームで眠る二人の隣には赤と黄色のISコアが淡く光輝いている、少し離れた場所には椅子みたいな治療マシーン《マニージマシン》に繋がれ眠る少年の姿がある
「霧也くんはまだ治療に時間がかかるかも……リミピットチャンネルのオンオフが出来るようにならないと…でも今開発中のアレが完成すれば」
「束くん、あまり根を詰めなくてよい…霧也くん達の治療はワシが続けておくからの。燐のところへいったらどうかの」
「は、はい…じゃあいってきます」
軽く頭を下げメディカルルームから出ていく束を見送るレイジは皆の治療プランを見直しながら治療を再開した
(バイオネットが燐に施した改造は大部分は取り除いたが肝心な部分は無理じゃった…下手に手を加えれば生命の関わる…それにあの細胞の制御がかなりシビアじゃ。Gストーン、燐の生命力にかけるしかない……すまんの燐…ワシが、ワシがあの時モジュール01を離れなければ最高の誕生日になったのに……すまん)
治療プランを見直すレイジの目に涙があふれた
五年前、宇宙開発公団最深部
エリアX
同《Xルーム》
「…おはようリッ君…今日は具合はどうかな」
淡い緑色の光に照らされ様々な機材から延びるケーブルに繋がれ眠る少年の頬にそっと優しく撫でながら喋るIS開発者《篠ノ之束》の姿がそこにあった
閑話 覚醒―メザメ―
「…今日も元気だね…そうだリッ君、久しぶりに昔話を聞かせてあげる。むかしむかし、あるところに白い翼の剣士と赤い巫女がいました。二人は遠い遠い空の向こうから《真っ白で大きな船》に乗ってこの世界に来ました…」
眠りつづける少年にかたりのは、束の実家《篠ノ之神社》に大事に語り継がれてきた昔話。研究で手が離せないライとマヤに代わり燐の子守りをしていたとき聞かせていた話だった
「…白い翼の剣士と赤い巫女が乗った《真っ白で大きな船》は着くと同時に海に沈んでしまって、赤い巫女と共に、この世界で生きる事を決めた白い翼の剣士は不思議な力で住む家を建て一緒に暮らしてたんだけど、それからしばらくして赤い巫女の前から姿を消したんだ…代わりに真っ赤な石を一つを残して。でも赤い巫女は白い翼の剣士が戻ってくることを信じて待ちました…………」
先を言おうとするも口をつぐんだ束…なぜならここから先は燐がまだ知らない話。燐が目をさましたら話そうと決めていたからだった
「リッ君。私の声聞こえてるかな?もし聞こえてたら答えて…」
左手を握り尋ねる…しかし燐は何も答えない
「……リッ君、昔から一度寝るとなかなか起きなかったね…でも私が来ると目を開けて笑って手を握ってくれたよね…」
あれから一年、いまだに燐の意識は回復しない…バイオネットが施した改造は常軌を逸していた
内臓の大半(消化器系を除く)を人工臓器、筋肉を人工筋肉に変えられ異物であるそれらの拒絶反応を押さえるために遺伝子レベルでの細胞改造…そしてあるモノ
宇宙開発公団へ向かう途中の輸送機で簡易検査した二人はソレをみて目を疑った
「……リッ君、ごめんね……つらかったよね…助けに来るのが遅くなって…」
ポタポタと涙が左手へ落ちていく…それでも燐は目をさまさない。
「ん、そうだリッ君、ダン君、トウヤ君、ハヤテ君、キリ君達が近いうちにお見舞いに来てくれ…」
その時Xルーム全体に警報が響いた
―エマージェンシー、本施設内で火災発生。消火剤散布します。繰り返す消火剤を散布します―
ハッとなり束は端末を操作する…システム内にアクセスするも火災は無し、つまり誤作動だと気づくもXルーム内に消火剤が散布される…が束は素早く端末を操作、緊急プログラムを作成。燐が眠るベッドにシールドが展開され微かな機械音と共に閉じた
「う、ゴホッ…これでリッ君は大丈夫……あれ?」
シールドが閉じたのを見ながらゆっくり床に倒れる束…周囲には消火剤として撒かれたCO2が充満している
「……あ…はは…もうダメ…かな…ちーちゃん、箒ちゃん、いっくん、リッくん…ごめん…ね…」
もうろうとする意識の中、親しい人達の名を口にした束の脳裏に言葉が浮かぶ
―束おねえちゃんがもし危ない目にあったらぼくが必ずたすけてあげる―
「……たすけて…リッくん」
小さい燐と交わした約束を思い出し呟いた束の耳に何かが落ちる音が聞こえた
――――――――
―――――――
―燐―
―だれ?名前を呼ぶのは―
―燐、目をさましなさい……―
重い瞼を開ける燐、辺りには淡い緑光が満ち溢れている…穏やかで安らぎに満ちた光に身を任せようとするが再び声が響いた
―燐、目をさましなさい……あなたを守る人に危険が迫ってるわ―
―……ぼくを守る人?…―
―燐、助けてあげて…―
緑光がさらに明るさを増し頭に流れ込んできたイメージ
白い何かが立ち込め、ベッド?の近い位置で床に倒れた女性…顔は見えない。ただ特徴的なウサ耳、そして声
―たすけて―
か弱く助けを求める声に少年は閉じていた目をカッと見開き、迷わず右腕に力を込めシールドに手を添えると同時に《高周波ブレード》が手の甲から勢いよく展開、撫でるように切る
「(う、身体が熱い)……く、動いてよ…うっ」
ふらふらしながらベッドから降りる燐…しかし辺りは消火剤が充満し視界が遮られてる
「どこお姉ちゃ…ん…………何これ…見える…」
燐の瞳…その奥に機械的なレンズが動く…何かをとらえ、ゆっくりと一歩ずつ歩き出す燐の身体から陽炎が立ち上る
(…熱い……熱い……アツい……でも……いかなきゃ………たすけなきゃ……)
身体からケーブルが抜けふらふらしながら歩きたどり着いた先にいたのは白衣姿に特徴的なメカメカしいウサ耳カチューシャに長い髪の女性が意識を失い倒れてるのは燐がよく知る《篠ノ之束》、燐はゆっくりと膝をつくと腕に力を込め抱き抱えようとするが力がです倒れそうになる
「力がでない…扉はどこ…あった…あれ」
目覚めたばかりの燐は力が尽き倒れそうになるがグッと堪えると扉へ向け歩き出す
(アツい……アツい……)
陽炎が立ち上ぼらせ病院服から煙がたち燃え始めるも歩みを止めない燐…やがて扉の前にたった
「う、うう…アツい…アツい……」
陽炎を立ち上らせながら右腕に左手を添えるもふらつき膝をつく
(力が…入ら…な…い………)
熱のせいで朦朧とし視界がぼやける、でも燐はもう一度立ち上がった
(ほんの一度だけでいいんだ…)
ゆっくりと腕を掲げる燐…手の甲から白銀色の刃が生えると表面が振動し全身のスリットから炎が噴き出す
―高周波ブレード―
バイオネットが燐の骨格に移植した特殊形状記憶液体金属と特殊細胞が結び付き体外に放出形成される剣、金属でありながら金属反応がなくターゲットに近づき産み出された刃で確実に殺傷、証拠を残さない《暗殺用サイボーグ》として燐は改造されていた
しかしある欠点も生じた。高周波ブレード使用時に体内で生まれる超高温を外へ排出が不完全、更に高周波ブレードのフレーム形成する細胞が異常増殖、健全な神経、臓器まで侵食していく。例え高周波ブレードを使わなくても細胞が一定の期間に栄養をとらないと燐の肉体を侵食していき確実な《死》が待っていた
バイオネットは多少の欠点には目をつむり使い捨ての特殊暗殺用サイボーグとして今までの記憶を弄り《ある軍儒財団》へ納品を決めた…が直後に秘密研究所の場所を突き止めたID5の手で救出されたのだった
その呪われた暗殺用サイボーグとしての武器を展開し構える…しかし誰かをの命を奪う刃ではない
(…もう、もう目のまえで…あのときみたいに…)
――――――――――
――――――――
―なかなか面白かったですよ獅童博士♪……飽きちゃったんで死んでくださいな…アヒャアア♪♪―
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―――――――――
「(だれも死なせはしない!!)はあああ!」
振動音が消え変わりに刃が光始め力を込め分厚い扉へきりかかる…早くしないと束の命が危ない。焦る燐の身体から炎が舞わせながら、Gストーンに光が溢れ出しそのまま切り裂く、音を立て扉が落ちると消火剤が強制的に排出されていく
「ま、まにあった……あ、う……」
ガランガランと重い音をたて落ちるのを見て、高周波ブレードが身体へ収めると燐はそのまま壁へもたれ目を閉じようとするが…
(…あつい……)
ふらふら歩きだし向かうのは気絶して倒れ伏す束がいる場所…やがてたどり着くと力を振り絞り近くに落ちていた耐熱シートに包むと背負うと歩き出す
(…あと少し…)
やがて高周波ブレードで切り払った扉を抜けると近くの壁に寝かせフラりと崩れるように倒れる…しかし寸前で誰かに抱き抱えられた
「大丈夫か燐君!」
「た、大河おじちゃん……おねえちゃんを…う」
「燐君!しっかりするんだ!!」
虎を模した金色に輝くIDアーマー姿の青年《大河幸太郎》の姿を見て燐は頼むとそのまま意識を失い、遅れて駆けつけたレイジはすぐ様メディカルルームへと運び込んだ
一年間の昏睡から目覚めた燐…この日から自分の身体と向き合う苦難の日々の始まりになろうとは、まだ誰も知らなかった
次回は本編です
おまけ
「雷龍、私たちはいつまでこうしていればいいんだ?」
『さあな、だがよあの黒ウサギ、よくも俺らをこんな狭い場所に詰め込みやがったな!』
「だが結果的に日本につけたからいいじゃないか…ん?」
「……何を話してるお前…」
扉が開き眩しさで目が眩む疾風に声がかかる。やがて慣れ見えたのはIS学園の制服に身を包んだ腰まで長い銀髪に眼帯をつけた少女…ラウラ・ボーデヴィッヒの姿
「……あ、ああ独り言ですよ…それより今日はまだ学園では?」
「臨時休校だそうだ…それよりお前、なぜ逃げない?」
「逃げられるわけないでしょうが!こんなに南京錠をかけられたら!!」
「…ふむ、少しやり過ぎた……じっとしていろ」
言うなり乾いた音が響きカタンカタンとナニかが落ちる。見ると手首にかけられていた鎖と南京錠だったもの
「……なぜ拘束を解いたのですか?」
「たんなる気まぐれだ…どこへとなりいくがいい…」
背を向けたまま黙り混むラウラ。疾風は立ち上がり歩き出す…が歩みを止めラウラの側へ近づく
「どうした早く行け……んにゅ!?」
「……顔色が悪いですね…ボーデヴィッヒさん。あなた食事をとっていますか?」
「な、なにを/いいから答えてください/……サ、サプリメントだけだ……っ!?」
「サプリメントだけですか………ボーデヴィッヒさん!あなたは食を舐めてるのですか!食ってのは人が生きる上必要なことなんです!ああ?説明するより実践した方がいいですね」
「な、何をする気だ?お前」
「今から食の大事さをあなた教えてあげます!そこで待っててください!!」
監禁されていた倉庫から風をまとったかのように出ていく疾風?にあっけにとられるラウラ、数分後大量の食材を抱え戻ってきた疾風の手で作られた料理を口にした瞬間、倉庫中に歓喜の声が響き渡ったとだけ記しておく