IS/勇者王ガオガイガー─白き翼の戦士と勇気ある者― 作:オウガ・Ω
やめてください
―フリィルくぅん、今日の実験はなんだい?―
―今日は世にも珍しい実験だよぅ…リュウノスケ博士の得意分野でおすすめなんだよおおお♪では御・開・帳♪♪―
三人の前に置かれた皿に被せられた銀の蓋が開かれピンク色のナニかが見え無数の電極が突き刺されている
《…やめてください…》
―おやおや、まだ意識があったのかねぇ…リュウノスケ博士、どうしょうかああなあああ!?―
―……まあ記念すべき日を間近で見られることを幸せに思うことだ……イヌガミキリヤ―
―やめてくださ……うぐああああああああああああああああ!うぐあああああああああああああああああい!?―
三人が同時に電極を突き刺した瞬間に様々な情報…世界中に存在する人々の意識が流れ込みその下にいる霧也の目がカッと見開かれると雄叫びがあがり室内に響き渡る
―ふむ、リミピッドチャンネル開放率28%しか開かないか……リュウノスケ博士、電極を増やすか―
―ああ、増やした方がいいな…………でんきょっく追加ああああああああ!!―
―あ、ああああああ!う、あああああああがああああくうががあかた!!―
―ほう、いい声でなくねえ?思わず射精してしまったよ…イヌガミキリヤ―
―あギブぁぐだ二期な赤浜金谷炉!!―
―ふむ、まだ40%か…電極をさらに増やすかフリィルくん、海馬へ電極を追加だ。さあもっといい声を聞かせておくれ…フヒャハハハハハハハハは!!―
ありとあらゆる情報が脳…海馬へ流れる度に体は震え目が赤くなり血の涙が溢れだす霧也、この日《犬神霧也》の人格は数多の人々の記憶と混ざりあい消失、《イヌガミキリヤ》が生まれた
ただ一つだけ強固に残った記憶《二人の姉妹との約束》だけを維持して…
四年前
「く、くううう…」
人の手すら入らない富士の樹海、自然に溢れたこの地にある小さな道場
―御鷹流古武術道場―
ひんやりとした道場内に白髪に道着姿の青年と正座する少年の姿、しかし体から陽炎が立ち上ぼり高周波ブレードが胴着の袖と肩から伸び前のめりに倒れうめく
「………燐、心を落ち着けなさい……」
「う、うう…くう!?」
「……そんなに《今の自分の身体》が嫌いですか」
「!」
「いえ、違いますね。嫌いではなく《畏れ》といったところでしょうか」
「…先生に、先生に何がわかんだよ!こんな《身体》に僕はなりたくなかった。少しでも興奮したらこんなのが出る《身体》なんか嫌いだ!!」
ふらふら立ち上がりながら高周波ブレードを突きつけるように出す燐、しかし彼は手を添える。次の瞬間、勢いよく投げ飛ばされ道場の壁を突き破り外へ投げ出された
「…甘えるのもいい加減にしなさい。今のあなたに自身の体は制御すらできない……その刃が証拠です」
「く、くうう……うるさい!うるさい!!こんな身体なんか僕の身体じゃない…先生もこの体になればわか…」
「…誰もが好き好んで自分の身体を持たされ《生》を受けた訳ではありません」
静かな声で話しかける青年の背後からスウッと影が現れる、全身に鎧をつけたナニかがゆっくり燐に近づき構えた刀を鞘から抜き放つ。冷たい金属の光を称えた日本刀を前にし驚く燐を他所に刀を素早く正確に振るうその姿は全くぶれがなく、やがて刀を床へ刺し柄足場にし大きく宙返り。同時に柄を手に握り膝をつくと再び燐の眼前に刃を構えた
「意識を全身に巡らせ、魂脈…いえ《氣》の流れを感じ隅々まで行き渡らせれば40キロの甲冑を着てここまで動けるようになるのです」
「う、うそだ…こんなのできるわけない…その鎧や刀は紙で出来てるんじゃ………!?」
言いかけた燐に鎧をつけたナニかがが歩みより持っていた刀を手渡す、ズシリとした重さにたまらず落としそうになるも耐え本物だと気づき驚く燐から離れた鎧武者は兜に手をかけ顔宛と共にはずす。肩までの長さに切り揃えられた白髪に無表情な目の女の子がたっていた
「紹介します、妹のオリエです」
(ぼ、僕と同じぐらいの子?…で、でもこれは現実だ……)
「燐、私達の家系は目か声に必ず障害を持って生まれます…私の場合は極度の弱視…オリエは視力が全くありません」
「め、目が見えないのに、氣の鍛練をしただけであんなことが出来るわけ…」
「燐、私があなたにさっき言ったことを覚えてますか?」
「……」
「……誰も好き好んでこんな身体を持って生を受けたわけではないと。その刃が出るのは《心》が貴方自身の身体だと認識していないからです。望んでいようが望まなかろうが、その身体は《貴方のモノ》です」
「う、うう…」
「今日の稽古はここまでにします…」
背を向け歩き出す青年とその妹オリエ、だが燐はふらふら立ち上がった
「う、うう……あう…」
だがぐらりと揺れながら燐はそのまま板張りの道場の床へと倒れた瞬間
―あぶないよ―
微かだけども優しく暖かな声を最後に意識を失った
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―――――――
―秘境ジャミール―
険しい山々に囲まれたこの地になにかが弾ける音が響く。見ると二つの影、いややや緑色の長い髪に特徴的な眉、整った顔立ちの民族衣装をまとった青年と少年が対峙している
「う、うう…」
「どうした、その程度の小宇宙では私には勝てぬぞ?」
「う、うわあああ!!」
少年が声をあげるとその身体から黄金のオーラが沸き立つ
(ほう?第七感《セブンセンシズ》に目覚めつつあるか…)
心のなかでほくそ笑み青年も黄金のオーラ…いや黄金の牡羊を浮かび上がらせた
「今から出す技を小宇宙で防いでみよ……スターダスト・レボリューション!!」
牡羊座の軌跡を描くように拳を構えると黄金のオーラを激しく燃え上がった瞬間、無数の星の閃光が少年へめがけ降り注ぐ。無数に降り注ぐ流星を前に少年も青年と同じ動き、牡羊座の軌跡を描いたことに驚き叫んだ
「ほう、私の技で防ごうというか……所詮は借り物の技だ!!」
「……燃え上がれ僕の小宇宙!スターダスト・レボリューション!!」
無数の星の軌跡が交差し互いを包み込みやがて光が溢れ広がり二人の周囲にあった岩や山がくだけ散った
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――――――
「まさか、私の位にまで小宇宙を高めるとは……ふ、それに私やムウと同じ才能を秘めているとはな」
焚き火を囲みながら気絶する少年を見ながら呟く青年、彼は《ある戦い》で親友である友よりも先に命を落とした…筈だった
だが気付いた時には聖衣箱と共にこの地ジャミールにいた。しばらく過ごすうちに空間の捻れを見つけテレキネシスで捻れを修復した瞬間に現れた一人の少年《ユーノ・スクライア》を見つけた
だが空間の捻れを直しただけでは生身の人間は無事には出てこれない…もしかしたらと思いテレキネシスで身体を調べてみた彼は驚いた
何故なら少年には小宇宙、そしてテレキネシスに目覚めつつあった事に驚いた
もしかしたらこの少年を育てるために生き返ったのではないか?と考えた青年は少年を《聖闘士》として鍛えることを決め今に至る
(…我が弟子ムウと同じ才能…ふ、覚えるのは遅いがまだ時間はある……この世界に私以外の黄金聖闘士の小宇宙を感じる…まさか?いや考えすぎか)
弟子であるユーノ・スクライアへ目を向けながら傷薬の調合をし終えると布に包んだ黄金の箱を取りだし開くと不思議な輝きを称えた工具を手にし星砂(スターダストサンド)を降り工具をおろすと乾いた音が辺りに響く
(……この聖衣だけは修復しなければ…私の最後の弟子のためにな)
チラッと目を向けるも再びボロボロの聖衣《牡羊座の黄金聖衣》を修復を始める牡羊座《アリエス》のシオン
身体がうっすらと透ける事に気づきながらも修復工具を振るい続けた
先に起こる大いなる災厄を防ぐために、傷ついた《勇気ある獅子》を助け弟子に力を与えるために
閑話 師と弟子
了
今回はコラボ序章編もはいってます