IS/勇者王ガオガイガー─白き翼の戦士と勇気ある者―   作:オウガ・Ω

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IS学園近郊にあるライブハウス《夢》…ここは未来のアーティストたちの卵達の熱い魂が込められた声と音楽がそれに酔いしれる客たちの熱気に溢れていた


「カモン!ロックンロォオオル!!みんな元気か!!」


THE・13のリーダー《ブリット》こと五反田弾の声が響くとそれに答えるように沸き上がるファンの歓声に酔いしれながらギターを軽く鳴らすと次の曲を弾き始める


「サンキュー!今からみんなを元気にする最高の音楽を奏でてやるぜ!!」

ライブハウスが再び歓喜と熱に包まれるなか弾はファンの皆の顔を見ながら歌う…メジャーデビューも何度も誘われたが《誰でも元気になれる音楽、歌を聞かせたい》と言う理由で今まで断っていたが遂に折れた


ただし条件としてIS学園でのライブを行うとの条件をつけて


「皆!今日もバリバリいくぜ!!」


弾の声、ベースのスタリオン、ドラムのライガーの奏でる音楽と声がライブをさらに盛り上げる中、IS学園女子寮にある部屋で小さなロボットから伸びたイヤホンから響く弾の声を少女は目を閉じ聞いてる


『ウツホ、今の歌はライブハウスからの生だもんね~』


「…うん……ねぇマイク……ブリットさんてどんな人?」


『…フッフッ~そういうと思ったよ~実はちかいうちTHE・13がウツホが通う学園に特別ライブに来てくれるよ』


「え?学園でライブをしてくれるの」

『イエ~ス♪よかったねウツホ』


勢いよく立ち上がる虚にニコニコ目でうなずきVサインするマイクに普段見せないような笑顔になる虚


弾と虚が出会うまであとわずか…



第十二話 クラスメイトの正体(前編)

「…自分に何でこんな力があるかがわからないって?」

 

「うん」

 

 

夕暮れに染まる街を走るバイク《ガンドーベル》に乗操る燐は後ろに座り腰に手を回すシャルルの言葉に耳を傾ける

 

 

「僕のおばあ様、そのおばあ様のご先祖様に似た力があったんだ…それに声も聴くことも」

 

 

「…多分《その力》は神様がくれたんじゃないかな」

 

 

「え?」

 

 

「…ずっとずっと昔にこんな事が起こるってのを知った神様がシャルルのご先祖様に力を授けたんじゃないかって思う」

 

 

「…そうかな」

 

「…俺の場合はバイオネットのゾンダーISと戦う力、シャルルはゾンダーISコアを人に戻す力がある……与えられた力には必ず意味があるって思うんだ」

 

 

「うん」

 

 

「よし着いた」

 

 

話しているうちに燐とシャルルを乗せたガンドーベルはIS学園正面ゲートへつく、ヘルメットを外し座席の下へ入れると二人の前から音もなく走り去ったのを見た燐は大きく背を伸ばした

 

 

「さって、寮に戻るかシャルル。明日はISの実技訓練だし」

 

 

「うん、明日の訓練の準備もしないとね…ねえ燐、あんな戦いをした後なのに身体は何ともないの?」

 

「大丈夫だ、シャルルのお陰で元気一杯さ。さあ早く戻らないと怖い寮長に怒られるぞ」

 

「うわ、不味いね…あれ燐?…わあああ♪」

 

 

空を見上げた燐につられるように見上げたシャルル、その瞳には無数に輝く星が映りこんでいた

 

 

――――――――

――――――

 

GGGベイタワー本部

 

水陸両用整備装甲車内

 

ガオーマシン整備ルーム

 

 

「ふむ、いかんのう」

 

 

「レイジ博士、コレは合体によるダメージか」

 

 

「いや、ヘルアンドヘブンによるダメージじゃ。GSライド四基から生まれた攻撃と防御の凄まじいまでのエネルギーにリフレクションダンパーが耐えきれんかったんじゃ」

正面スクリーンには分解整備中のライナーガオーⅡ、その腕部リフレクションダンパーが無惨に亀裂が入り内部構造が剥き出しになった部分が映し出される

 

 

「…では、そのエネルギーが溢れる中でヘル・アンド・ヘブンを使う燐の体は…」

 

 

「…平気なわけ…ない…よ……今だってリッ君の身体はコンディションレッドなのに…」

 

 

隣に座る束のモニターには燐のコンディションが示され正常を示す《緑》の部分は消えほぼ異常を示す《赤》に染まりつつあった

 

 

「もし、もし、このままリッ君がヘル・アンド・ヘブンを使い続けた…ら……リッ君は…」

 

顔を俯かせる束の声が震え涙がポタポタとGGG制服に落ち濡らし嗚咽の声が大河長官、レイジ博士のいるコントロールルームに響く

 

「…せめてセカンドシフトへ移行ができたら……」

 

 

左すみにあるモニターにはセカンドシフト移行後の姿とオレンジ色の巨大なハンマー?の図面が浮かびこう銘打たれていた

 

 

《G・Tool》

 

 

 

 

第十二話 クラスメイトの正体(前編)

 

 

翌日、IS学園にある第二グラウンドに勢揃いする一年一組のISスーツ姿のクラスメイトの姿が見えその表情は笑顔で溢れていた。先日、関東一円をおおってた《雲型ゾンダーIS》が消え透き通るような青空を見たのと待ちに待ったISを用いた実技が受けられるからだ

 

その時、ISスーツに身を包んだ三人が駆け込んできた

「す、すいません遅れま…」

 

「おそいぞ、織斑、獅童、デュノア。とにかく早く並べ」

普段と変わらぬ口調で並ぶように促す千冬の言葉にうなずき三人が並ぶとクラスのの女子たちの声が湧き上がる。まあ世界でISを動かせる三人の男子は未だに注目の的だ。沸き上がる声を遮るように黒い出席簿を手で軽く叩いた

 

 

「静かに。では、これより二組との格闘及び射撃を含む合同実戦訓練をはじめる。その前に君たちに紹介をしておこうと思う」

後ろへ目配せするとオレンジ色の繋ぎを着た黒髪にメンテゴーグルを付けた燐より少し背の高い少年が様々な機材が入った赤いビークルと共に姿をみせ一組、二組の女子がざわめきだす中、千冬の隣にたつ少年が口を開いた

 

「宇宙開発公団《技術開発部門》から来ました竜崎凍也です」

 

 

(と、凍也~なぜここにいる!?)

 

「竜崎はIS学園にこの度新設された特殊整備課のスーパーバイザー兼整備主任を勤める」

 

 

 

「特殊整備課が立ち上がるまでの間、IS学園の皆様と共に互いの持つ技術向上をしていこうと思います。若輩者ですゆえ行き届かない部分があるかも知れませんがよろしくご指導をお願いします」

 

 

ペコリと挨拶するとそのまま赤いビークルに近寄り軽く撫でるとカシャカシャと各部が開き調整をはじめる

 

「ねえねえ、あの人宇宙開発公団から来たっていってたよね」

 

「私たちとあまり変わらない年なのに…じゃあエリートなんだ」

 

 

「それに礼儀正しいよね~」

 

(…まあ礼儀正しいけど《もう一人の凍也》を見たら驚くかもな)

 

 

(ねえ、燐)

 

 

腕を軽く肘でつかれ見ると鈴が小声で訪ねてくる

 

(ひとつ聞いていい?今織斑先生に紹介されてるのってあの時のIS超竜神よね?あと竜崎凍也って弟とかいる?)

 

 

(そうだけど皆には内緒で頼めるかな。で凍也には弟がいるけど…鈴さん?)

 

 

(そっか…いつか会えるチャンスはあるんだ……ありがと燐)

 

 

燐と鈴が会話してる頃、もう一人も凍也に視線を向けていた

 

(竜崎凍也……宇宙開発公団《特殊災害対策部門》所属してるはずです……それにドコかであった気がしますわ)

 

 

 

――――――――

―――――――

 

 

赤い炎がオルコット邸を焦がし黒い煙が辺りに立ち上がる中、一人の少女がもう一人の少女を抱き抱え口元にハンカチをあて進む

 

 

―お嬢様しっかり!―

 

―ケホッ…チェルシー…―

 

咳き込みながらもうなずいたのを見て安堵するが突然、天井が崩れ落ちてきた

 

チェルシーは咄嗟に少女の体へ守るように覆い被さったその時、青い影が現れた

 

 

―ペンシルランチャー・ブルー!―

 

 

―ペンシルランチャー・レッド!―

 

声と共に赤と青の弾頭が瓦礫に着弾、瞬く間に硬化し崩落が止まる

 

―遅れてすいません、さあ早くこちらへ―

 

 

(青い…IS………)

 

 

巨大なペンシルを構えながら先導する青い装甲にクレーン?を背中へ接続したISを纏った操縦者を見たのを最後に少女の意識は途絶え、次に目をさました時は病院のベッドの上だった

 

――――――――――

―――――――――

 

 

(……まさかですわよね…)

 

そう結論付けるセシリア、だが青いISの正確無比な射撃技術はセシリアの目標にもなっていた…できればもう一度あって見てみたいとの願いを込めて自身のISブルーティアーズのカラーも同じにしていた

 

「……今日は戦闘の実演してもらおう。凰、オルコット。今から来る相手との模擬戦をやってもらおうか」

 

「は、はい!?」

 

 

「わたくしも?」

 

 

 

なぜかと言う顔をする二人

 

 

「凰、オルコットは専用機持ちはすぐに始められるからだ。用意ができ次第前に出ろ」

 

「は、はい…でわたくしたちの相手はどこにいるのでしょうか?」

 

 

「何処にもいないわね……な、なにこの音?」

 

 

確かに専用機持ちは常に身に付けているから呼び出すことは容易だ。二人は納得し自分達の相手の事を尋ねた。だが代わりに何か音が響く

 

 

(……バ、バイオネットか!?)

 

 

身構える燐、だがその耳には聞きなれた声が入る

 

「ど、ど、どいてくださああああああい!?」

 

 

見上げると黒い点、それがどんどん大きくなり一夏がたつ場所へ落ちてくる

 

(く、危ない!)

 

 

駆け寄ろうとした燐、だが別な影が一夏と落ちてきた影の間に割って入る、鈍い地響きとなにかがぶっかる音が響くと共に声が聞こえた

 

 

「ひゅ~間一髪だったな。大丈夫か一夏、山田先生」

 

 

山田先生を片手で軽々と抱えた臨時講師《火麻激》が一夏の前に涼しい顔で立っている…しかも足元が地面にめり込ませながらも何事もなかったかのよう歩きだし山田先生を降ろした

 

「火、火麻先生?身体はなんともないんですか!?」

 

「へ、こんなの毎日身体を鍛えてれば何ともないぜ…っと山田先生は怪我してないか?」

 

 

「は、はひ!?大丈夫でしゅ!?!」

 

 

「そいつはよかったぜ、どうした一夏?なんかオレの顔についてるか?」

 

 

「い、いえ?何でもないです(身体鍛えただけでISをまとった山田先生を受け止められるのか?すごいな火麻先生は)」

 

 

答えるも冷や汗を流し無理やり納得する一夏、やがて山田先生が空へ上がると同時にセシリア、鈴がそれぞれISを展開し上昇。三機は互いに距離を取り構えた

 

「準備はできたようだな、皆もよく見ておくように…では、はじめ!」

 

 

掛け声と共に空をかける山田先生の動きは普段とは違い、機敏な動きで代表候補生出る二人の攻撃を回避行動をしつつアサルトライフルで牽制と同時に追い込んでいく

(さすがは元代表候補生か、現役でも十分通用するかもな…それにラファール・リヴァイブの性能を極限までに引き出してる)

 

「さて、デュノア。山田先生が使っているISの解説をしてもらおうか。」

 

 

「あっ、はい」

 

 

クラスメイトの前で山田先生が使うIS《ラファール・リヴァイブ》の解説を始め、それを耳にしながら自由に空をかける山田先生の姿にクラスの皆はじっと見守る。何せ代表候補生二人を相手に互角の戦いをみせてるのもあるだろう

 

 

「特筆すべきはその操縦の簡易性で、それによって操縦者を選ばないこととマルチロールチェンジを両立しています。装備によって格闘、射撃、防御への全タイプに切り替えが可能で、参加サードパーティーが多いことでも知られてます」

 

 

「ああ、説明はそこまででいい。そろそろ終わりだな」

 

ふと目を向けるとセシリアが山田先生の巧みな射撃に誘導され、その先にいた鈴にぶつかりそうになるが寸前でブレーキをかけ体勢を立て直す

 

 

「さすがですわね。元代表候補生の実力は侮れませんわね」

 

 

「そうね。でもね、あたしたちは負けられない」

 

 

「あら奇遇ですわね、わたくしもですわ」

 

 

互いに顔を向け少し笑みを浮かべ鈴は龍砲展開と同時に山田先生を狙うが避けられる…だが回避先にセシリアのビットから青い閃光が降り注ぐもかわされる

 

(さすがは現役代表候補生です。でも私も先生ですから負けられませんよ!)

 

 

アサルトライフルを再び構え急加速、二人の間を抜け様に弾をばらまき防御体勢を取る鈴、セシリア。山田先生はグレネードを両手に構え急旋回と同時に発射、二機は爆発に包まれそのまま地面へと地響きと共に落ちた

 

 

「いったた…(さすがは元代表候補生だったわけはあるわね)」

 

 

「ま、負けてしまいましたわ(…まだ現役でも充分通用しますわね)」

 

 

「大丈夫か鈴、セシリア?」

 

 

「は、はい」

 

 

「ぜ、全然平気よ」

 

差し出された手を握り立ち上がる二人、だが一夏の背中に鋭い視線が突き刺さりビクッと震える

 

 

(く、一夏の手を握ってる…べ、別に羨ましいわけではないからな!!)

 

 

と羨望の眼差しを向ける箒に気づかず怯える一夏、パンパンと出席簿を叩く音が響いた

 

 

「これで皆も教師の実力を理解できただろう。以降は敬意をもって接するように、ではこれより織斑、オルコット、獅童、デュノア、ボーデヴィッヒ、凰の専用機持ちと八人グループで実習を行う。グループリーダーは専用機持ちがする事。では別れろ」

 

 

千冬の言葉に蜘蛛の子を散らしたかのように動き出すクラスメイト。もちろん集まる先は決まっている

 

 

 

 

「「「織斑くん/デュノアくん/獅童くん、お願いします!!」」」

 

 

目を輝かせ三人の前に並ぶクラスの女子にあわてふためくのを見て「はあ~」っと深いため息をつく千冬の声が聞こえた

 

 

「…このバカどもが。さっきも言った通り各代表候補のグループへはいれ!」

 

 

「「「「は、はい!」」」」

 

 

「ったく、世話の焼ける」

 

「まあ、そういうなって。昔のお前もあんな感じだっただろ?」

 

 

「火、火麻参…先生!昔とは違うからな!?」

 

 

等と千冬と火麻参謀との軽い口論に気づかず皆はそれぞれの候補生と共にIS《打鉄》《ラファール・リヴァイブ》へと乗り込む

 

 

「背中に預けるみたいな感じで。接続は上手くいったね。じゃゆっくり歩いてみて」

 

 

「う、うん…ゆっくり…」

 

燐、一夏、シャルル、セシリア、鈴の指導の元、最初はぎこちなかったものの少しずつなれ始める中、一つの班だけ異彩を放っている

 

「あ、あの~ボーデヴィッヒさ……」

 

 

「…なんだ?早くISを装着しろ…」

 

 

斬って捨てるようにいい放つラウラに身をすくませながらも装着するクラスの女子に目をくれず視線を向けた先には女子に指導する一夏を見た瞬間、目に暗いナニかが見える

 

 

(認めない…私は絶対に…)

 

 

暗い炎を瞳に宿し一瞥すると背を向けぎこちない動きをするISを纏いふらふら動かす女子へと目を向けた

 

 

――――――――――

―――――――――

 

 

(また見られてるな…なにかやったのか?)

 

突き刺さる視線に気づきながら俺はクラスの女子を抱き抱え先ほどしゃがませるのを忘れた白式を纏い、打鉄へと乗せながら心の中でため息をつく…

 

あの人の弟とは認めない…多分、第二回モンドグロッソ決勝戦に俺が誘拐され…た…時に…あの時……

 

 

―――――――――

――――――――

 

 

―…J-011、この星は?私達はいまどこに?―

 

 

―…アルマ?まだ起き上がってはいけない!―

 

 

ふらふらと歩き倒れそうになるアルマを抱き抱えた私はそのまま玉座へ座らせるとすぐに眠りについた

 

 

《J-011、この星の大気組成は赤の星と同じモノと確認…周囲に生命体反応多数確認》

 

火花が散るブリッジ、正面にホロスクリーンが開きみえたのは黒く長い帽子に白を基調とした服を纏った人間がなにかを喋り膝まずいている

 

 

―な、何をやっているのだ…トモロ、言語解析はどうなっている―

 

 

《…解析完了、どうやら我々の船を《神》と認識しているようだ》

 

 

―――――――――

――――――――

 

 

 

 

な、なんだ今の…でもアルマ、トモロ、J。すごく引っ掛か…

 

「織斑くん、次の人が待ってるよ…どうしたの?」

 

 

「い、いやなんでもない…って、またしゃがませてないのか…まあいいか。じゃあ次は」

 

 

「わ、私だ」

 

 

軽く咳払いしながらずいっと前に出てきた。なんか堂々としてるな

 

 

「どうした?早く運んでくれ…そ、そうじゃないとあとがつかえるからな」

 

「お、おう?じゃあしっかり掴まってろよ」

 

 

ゆっくりしゃがむと箒の身体を抱える…きゃっと声が耳にはいるけどそれ以上になんだろう、すごくなつかしい感じがする

 

ずっと昔に、こうやって誰かを…誰か…

 

 

「一夏?どうした具合でも悪いのか?」

 

 

「い、いや、大丈夫だ箒。少しじっとしてろよ」

 

 

ごまかしながら箒を打鉄へ座らせるとアジャスタ完了の表示と起動音が響く、大丈夫だと判断し離れようとしたら箒が呼び止められた

 

 

「一夏」

 

「な、なんだ」

 

 

「そ、そのだ!今日の昼は予定はあるのか?」

 

 

「い、いやないぞ」

 

「そ、そうか!ならたまにはお昼を一緒にとるとしょう!いいな?」

 

 

「ん、いいぜ」

 

 

パアッと花が咲いたように笑顔を見せる箒に思わずドキッとしながら訓練する動きから嬉しさが溢れだしてる気がする

 

やがて一通り訓練を終えた俺たちは千冬姉の言葉に従い訓練に使ったISを格納庫へと移し午後からの予定を伝えられ解散となった

 

「ふう疲れた~ISって起動してないとあんなに重いんだな」

 

 

「まあ、起動してるときは間接にかかる負担を軽減する目的で反重力作用が効いてるからね」

 

 

「でも午後からも大変よ。ああ~ISの整備って大変なんだから」

 

 

「量産型は整備を怠るとダメだよ、いざって時に動かないと守れるものも守れないよ」

 

 

「まあ、自分の機体整備ぐらいできなければ代表候補生とはいえませんわ」

 

 

等会話しているうちにロッカールームへたどり着き俺はシャルルと燐と共に着替え始めた…でも

 

 

「なあシャルル、早く着替えるコツか何かあるのか?」

 

「え?普通に着替えただけだから!?こっち向かないで」

 

「?シャルル。同じ男なんだし恥ずかしがるなって。な?」

 

 

「う、うわあああ!?」

 

 

上半身裸の燐が近づいた瞬間にバッと後ずさるシャルル…

 

 

「と、とにかく僕、先にいくから!!」

 

 

「…一夏くん。俺なにかやったかな?」

 

 

「やってないんじゃないか?んなことより早く着替えようぜ」

 

 

「…そうだな」

 

 

少し落ち込みながら着替えを終え俺たちはロッカールームをあとにした

 

 

―――――――――

―――――――――

 

「な、なあ箒さん。なぜそんなに怒ってるんでしょうか?」

 

 

「別に何でもない…」

 

 

不機嫌オーラを溢れださせる箒に怯える一夏を他所に他のメンバーも深くため息をつく姿、だがそこにもう一人別な人物もいた

 

 

「あの、私も此所に居てよかったのでしょうか?」

 

 

「こんなに天気もいいんだし青空の下で皆と食べるのもいいかなって、それにシャルルと凍也もまだ慣れてないんだしさ」

 

 

宇宙開発公団からIS学園《特殊整備課》スーパーバイザーとして招かれた竜崎凍也も相席していた。

 

 

「そ、そうか、なら仕方ないか…」

 

 

なんとか箒の機嫌も治り少し遅めのお弁当タイムが始まり一夏の前に包みにくるまれた弁当が差し出された

 

「え、これって?」

 

 

「私の弁当を作ってたら余分に余ってしまった…ま、まあたべてくれ!」

 

 

真剣勝負さながらの気迫に押し負け包みを開くと二段に重なった弁当を開くと真っ白なご飯、そして鮭の塩焼きに鶏肉のからあげ、ゴボウの唐辛子炒め、ほうれん草のゴマ和えが目にはいる

 

手をあわせいただきますといい箸をとり唐揚げをとり口へいれる

 

 

「……うん、醤油に生姜を合わせたのを一晩浸けたんだな…スゴく美味い」

 

 

「そ、そうか!」

 

 

パアッと明るい笑顔を見せる箒、それに対し鈴、セシリアはというと

 

 

「凍也っていったわね、あたしもたまたま作ってきたから食べてみる?」

 

 

「?酢豚ですか……では」

 

ドンッとおかれた酢豚に恐る恐る箸を伸ばし口へいれるのを見る鈴。突然凍也の目がカット見開かれた

 

「美味い…甘酢の絶妙な組み合わせ…最高ですっ!!」

 

 

喋りながらも素早く箸が舞いあっという間に酢豚がなくなると我に変えり恥ずかしそうにほほをかく

 

 

「あ、すいません、全部食べてしまいました」

 

「べ、別にいいわよ…って、それなに?」

 

 

「私が作った弁当ですが、凰さん食べてみませんか?」

 

 

出されたのはなんのへんてつもない《肉じゃが》…何気なく箸にとり口にいれた瞬間、背後に雷が落ち動きが止まる

 

 

「り、鈴さん?な、何を食べさせたんですか!?」

 

 

「肉じゃがですが?」

 

 

その答えにセシリアは驚きながら肉じゃがをみる…なんのへんてつもない只の肉じゃがを前に意を決しフォークで肉じゃがを食べる……………雷が落ちた…がすぐに意識を取り戻した

 

「お、美味しいですわ!!なんなのです。この《肉じゃが》は!!」

 

 

叫ぶと同時に意識を取り戻した鈴は詰め寄ってくる

 

「この味付けは失われたはずの《中華の覇王》秋山ジャンの味じゃない!どこでこの味を!!」

 

 

「…あ、あの落ち着いてください!私が知ってるのは上湯スープの取り方と…」

 

「なんかスゴく賑やかだな…さて食うかな」

 

 

「り、燐、いつも思うんだけどそんなに食べれるの?」

 

 

「ああ、これだけ食べないと……【喰われちゃうから】………」

 

 

「え?」

「な、何でもない、じゃあ食うか。シャルルのぶんもあるからたくさん食べろよ」

 

 

燐も少し大きめポットとバスケットを取り出し中のモノをテーブルに広げる、キレイに三角に切られた白いパン生地に多種多様な野菜と具が挟まれたサンドイッチ、紙コップに手製のクルトンを入れポットからスープを注ぐ

 

 

ただサンドイッチの量は燐側におかれてるのが半端なく多く、軽い山を作っているのを気にせず軽く手を合わせ手に取る

 

 

「お、美味しい…燐これどこで作ったの?」

 

 

「学園に寮から通う生徒が弁当を作るために実習室を貸してるんだ、今日のは厚切りベーコンとポテトサラダ、スクランブルエッグにレタスのサンドイッチ、あとコンソメスープだ。さあ熱いうちに」

 

 

勧められコンソメスープが入ったカップに唇をつけ少し飲む、鳥の旨味が広がり思わず声が出るのをみた燐も少し笑みを浮かべながらサンドイッチを手に取り口へ入れていく

 

 

「じゃあ、中華の覇王の弟子じゃないんだ…でも居場所はわからないの?」

 

 

「は、はい」

 

 

「あ、あの竜崎凍也さん。以前わたくしと会ったことがありませんか?」

 

 

「…い、いえオルコットさんと会うのは今日がはじめてです……ん?それはサンドイッチですね一ついただきます………………………………………………………………………」

 

セシリアの前にあったバスケットからサンドイッチをつかみ食べた凍也。長い間の沈黙の後にバタリと倒れた

 

「り、竜崎さん!しっかりしてください!!」

 

 

「あ、あんたなに食べさせたのよ!あたしは凍也に聞きたいことがあったのに!!」

 

 

「なんか賑やかだな箒。ん、このゴボウうまいな」

 

 

「そ、そうか!じ、じゃあこれはどうだ」

 

凍也を必死に介抱する鈴、セシリアの姿に箒のお弁当をモグモグ食べながら言う一夏、燐とシャルルもそうだなあと心のなかで呟きながらサンドイッチを食べ、穏やかな時間が過ぎていった

 

 

第十二話 クラスメイトの正体(前編)

 

 

後編に続く

 




おまけ

「ボーデヴィッヒさん」


「……遅い」


IS学園前でそわそわしながら待つドイツから来た代表候補生ラウラ・ボーデヴィッヒの前に一人の少年が蒸籠等を抱え黄色いナニかに乗り現れ謝った


「…少し仕込みに時間がかかってしまって、今日は小龍包と中華チマキです。あと飲茶も用意してありますから」


「や、飲茶!なら早速いただこう」


飲茶と聞いて目をキラキラ輝かせ簡易テーブルに座り疾風の手作り中華を早速食べるラウラ…ハムハム食べる姿に思わず笑みを浮かべてしまう


(やはりリスですね…でもかわいいです)


―おい!疾風。黒ウサギに何でここまでするんだよ―


(まあいいじゃないか雷龍。こんなに美味しく食べてもらってるからな、さてボーデヴィッヒさんの食生活改善計画を開始しま…)


「んぐ!」


「ボーデヴィッヒさん!」

喉を詰まらせ蒸せるラウラの背中をさするとようやく回復するラウラ。ホッとしながら温めに淹れた飲茶が入った湯飲みを差し出すと素早く手に取り一気に飲み干した


「す、すまない…心配かけて本当に」


「!?べ、別にかまいません。それより料理は逃げないですから、落ち着いて食べてくださいボーデヴィッヒさん」


「う、うむ……次からは気を付けよう」


しどろもどろになりながら背中をさするのをやめない疾風。うつむきながら謝るラウラにドキドキしていた



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