IS/勇者王ガオガイガー─白き翼の戦士と勇気ある者―   作:オウガ・Ω

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―《二年前》―


鬱蒼と繁る森を抜け見えるのは黒く焼け焦げたナニかが無数に点在する…みると黒く炭化した木の柱、辺りには壁らしきものが砕け散乱している

さらに少し離れた場所には無数の日本刀…いや忍者刀が盛り土の上に突き刺さりまるで墓標の様に立ち並んでいる中、一人の少年が盛り土の前に手をあわし拝んでいる


「……………」


真っ白な髪に赤い瞳に首もとに白く長いマフラーを巻いた少年の名は《犬神霧也》。かつてココに存在し更識家当主、肉親を代々守護する《善忍》犬神一族の唯一の生き残りだった


「…………!?」


気配を感じ消えた霧也、それからまもなくして水色の髪に黒い服を着た一人の少女が姿を見せ霧也がいた場所へと来ると膝をつき花を手向けた


「霧斗叔父様、サクヤおば様…………き~くん……久しぶりだね」

語りかけるも突き刺された忍者刀は何も語らない…それでも少女は言葉を続けた


(刀奈?なぜココに!?)

「………叔父様、おば様…私は今日より《楯無》の名を継ぎます。わたしたくさん頑張ったんだよ。き~くん、でも《かんちゃん》、わたしの事避けるんだ…」

(………)


「でも更識家に生まれたから仕方ないよね……き~くん。でもね、わたし本当は楯無を………いやいいや!今のは聞かなかったことにして……あっ」


いいかけ言葉をつぐみ泣きそうになる少女。ハンカチで目を拭くと立ち上がり軽く一礼して足早に去っていった、しばらくして霧也は音もなく姿を表した


「………き~くん……私は《き~くん》と呼ばれていたのか………うっ?」


呟いた瞬間頭を押さえる霧也の脳裏にある記憶がよみがえる


―き~くん♪ねえ、今日はなにしてあそぶ?―


―……ガハラさんゴッコはやめてよ――――ちゃん―

―……おねぇちゃんばっかりずるい。き~くんはわたしと遊ぶの―


―いたた!ひっぱらないで!?―

断片的によみがえる記憶は《犬神霧也》の幼い頃の強く残った記憶(思い出)。
今の《イヌガミキリヤ》には他人の記憶。だが胸の奥が熱くなるのを感じるも霧也(キリヤ)は印を結び風を巻き起こしその場から消え去った





第十二.五話 嘲笑する《狂科学の信奉者》、旅立つ若き《黄金の牡羊》

闇一色に染まった空間に紫光が断続的に明滅する中、何かがうごめいている

 

断続的な光の中、奇抜な衣装を来たピエロ、小太りな男、ヒョロリとした赤い手術着の男、白衣姿にギターを肩に架けた四人の姿が見えた。

 

彼らの視線の先には数日前《次世代環境機関NEO》より盗み出されたGNR‐01《ガイゴー》の姿

 

 

「ア~ヒャハハハハ、よく盗み出すことができましたねぇフリィィル君」

 

 

「なに、新型Z-ISの実践投入も兼ねたテストだったからなあ……素体との適合率も80%を維持してるよ…ふひひひ」

 

 

いびつな笑みを浮かべながら背後に目を向けた先には、顔をうつむかせ虚ろな瞳を向けながらたたずむ女性の姿。額には《Z》ととも読める幾何学紋様が浮かぶのをみてマスク越しでもわかる笑みを浮かべた

 

 

第十二.五話 嘲笑する《狂科学の信奉者》。旅立つ若き《黄金の牡羊》

 

 

「うむううぅ~!すばらしすぃっなあ~♪さすがは亡国機業のエージェント《O》だけありっますねぇ。て言うか既に亡国機業は無いですからねえ。オオウ!我輩のビートがあつく、熱くぅう!震えだすうぅ……イェェイ!!」

 

 

「そうだねぇ~ドクターウェストくぅうん……だが少し静かにしてくれるかな……」

 

 

興奮したせいか肩に架けたギターを狂ったようにかき鳴らしはじめるのを手で制する小太りな男性…フリール・ルコックは軽くなにもない空間を撫でるとガイゴーの姿が消え変わりにある映像が写る

 

―クーラ・ティオー・テネリタース・セクティオー・サルース・コクトゥーラ―

 

緑色の長い髪を揺らしながら優しく手をかざし、その指先から暖かな光が溢れ包み込むとISコア?がグニャグニャと崩れはじめた顕した姿…ボロボロのISスーツを着た黒い髪でまるで憑き物が落ちたかのような表情を浮かべ大粒の涙を流す一人の少女だった

 

 

―ぐす、ありがとう…ありがとう…ひくッ―

 

 

「まさぁあかあぁ《Z-ISコア》に取り込んだ《M》を分離するとはねぇ……なんなのだアレは?…」

 

 

「わからないなあ、是非とも捕まえて解剖して神経、いや、遺伝子レベルで解体したい。だがあの黒いISは《絶対防御》と《バリア》の複合防御システム《Zバリア》をものともせずに貫きえぐり出すとは…」

 

「しかもぉ、あの黒いISは我らが産み出したZ-ISに取り込まれないとはねエェェ…」

 

―うおおお!―

 

 

―はあああ!!―

 

Z‐ISと対峙し怯まず殴り、膝げり、逆間接を決めそのまま引きちぎり投げ捨て回転回し蹴り…終始圧倒する黒いISに目を向ける中、今まで黙っていた人物が静かに口を開いた

 

 

「……あの黒いISにはZ‐ISのコアと相反する物質がコアとして使われているようだ…」

 

再び空を撫でると黒いISとZ‐ISのエネルギー値がパラメータとして示され黒いISの攻撃を受ける度にエネルギーが減退していく様が見える

 

「……その《物質》のせいで我らの製品が負けたというわけですかあ。ゾンダー博士」

 

奇抜な衣装を身に纏った彼《ギムレット》の言葉にうなずき、ボロボロになった緑色の輝きを秘めた結晶を写し出し驚く三人?に説明を始めた

 

 

「これは八年前に41の第二世代型ISコア、《アレ》と一緒に回収したものだ…この結晶を解析した結果、我らの《Zコア》とは相反するエネルギーを有してると判明した…」

 

 

冷淡に言葉を続ける青年…ゾンダー博士はその手を止め目を向けたのはある一画、 無数のシリンダーが立ち並ぶその一つに培養液に浮かぶ脳髄…ときおりボコりと泡がたつ

「フリール、脳髄復元にはあとどれぐらいかかる?」

 

「あと数日だあああ…細切れになった脳組織を拾いあわせたからなあ…酵素による化学変化による細胞復元たんぱく質及びニューロンシナプシス再構築も行われてるが。DNAいや器となる肉体の復元は無理だったがなぁ…それにしても美しい色だああ//リイィンのと神経組織が酸素と化学反応したときと同じ色だあ。たまらなくいきそ…ハアッハアッハアッハアッハアッ…ウッ!?ふひひ?いってしまったよ////…ぐちょぎちょだあああ」

 

にんまりと笑い股間の辺りをみるフリール…その瞳には恍惚と歓喜の色が見えた

 

「私ももう一度あの声を聞きたいですねぇ~♪まあ近いうちにまた聞けるでしょう…いや今まで以上の最高の音楽がねぇ♪♪♪」

 

 

 

「オオウ!いいですねぇ~でも我輩はあの双子とダンの美しく素晴らしい声を聴くだけで御飯が何倍でも進みま~~す」

 

 

――――――――――

―――――――――

 

 

―これより我輩の手で被験体02R、被験体02Lの左脳を交換、リンカージェルへ骨髄移植をはじめるであ~る……頭葢を切除開始いぃ―

 

 

―いやだ!やめてよ!!―

 

―やめろよ!この変態!!―

 

―ああ、いい声だあぁ♪さあ我輩にもっと、もっと聞かせてくれ……必死にもがきあがく無駄な二重奏ををを―

 

 

甲高い声をあげ頭葢を切り開くドクターウェストの手は休むことを知らず光が走り血が舞い手術台からあふれ出し床を濡らし叫び声が響き反響する

 

―ああ、いい声であ~る♪……それにリンカージェルと血液の混合率もも綺麗で是っ妙な色具合っ!…酸素と細胞の化学反応した際の色彩の変化もベリィグッド♪

 

 

―痛い!痛いよううっ!!やめて、やめてよう!!―

 

―こ、この変態科学ギタヤロー……おれたちがなにしたん…だよ…う…だれかたすけ…てよ……う……―

 

―おや雑音が聞こえるうなっ!っと両左脳摘出完~了♪…ドミノ方式で神経接合完了♪♪―

 

 

麻酔なしの手術に耐えきれず意識を失った二人から摘出された左脳を舐めるようにみながら移し変え瞬く間に神経接合、硬膜、頭葢、皮膚の順に縫合し意識を失った二人を見下ろす

 

―…次に目が覚めたとき君達は《双子》ではなくなってるであ~る……バイオネット初の人造《デュアルカインド》としてね♪♪―

 

 

―――――――――

――――――――

「……なんだかお腹が空いてきたでありますねぇ~」

 

「無駄話はそこまでにしろ。ドクターウェスト、フリール博士、ギムレット。我々の目的を忘れたわけではあるまいな?」

 

 

「オオウ。そうでしたああ」

 

「ついあの声を思い出したせいで話がそれてしまったなああああ」

 

 

「フヒャハハハ、いけませんねぇ……我々の目的は忘れてはいませんよ…」

 

「ならいいがな……でだ、あの施設での実験はどこまでいった?」

 

 

頭を押さえながらため息混じりに訪ねる

 

「順調ですよ、さすがはゾンダー博士です。あなたの理論が産み出したアレは我々《バイオネット》に莫大な富をもたらすでしょう」

 

「当然だ、私の理論は間違えていない……」

 

「ところでゾンダー博士。P・Z-ISの完成具合はどうかなああ?」

 

 

「あと少しかかる、今までのを遥かに超えたエネルギーを食うからな……現在は《4つ》しかできていない」

 

4つ、ソレを聞き笑みを浮かべる三人。亡国機業を取り込んだ《バイオネットの本来の目的》の為に彼らはある施設を極秘に制圧。ソレを産み出そうとしていた

 

「では参りましょうかゾンダー博士、プロフェッサー・フリール、ドクター・ウェスト……イゾルデへ我らが求めるものを産み出すためにね」

 

ギムレットの言葉にうなずいた瞬間辺りは深い闇に包まれた

 

ゾンダーISコア。それは人が触れてはいけない《パンドラの箱》とも言うべきモノへ躊躇なく手を伸ばそうとする狂った科学者たちが集った組織《バイオネット》、その狂った科学の信奉者である彼らは向かうは極秘裏に制圧した《新式粒子加速実験施設イゾルデ》

 

だが彼らは知らない。

 

 

その地に命の結晶《Gストーン》の用いて産み出されたISを纏い、命の尊さを知り他者の苦しみ、痛みを感じとる心を持つ《勇気ある者》達が向かっていることを

 

 

―――――――――――

――――――――――

――――――――

 

パンドラの箱から溢れ出した《災厄》が飛び出した箱に残ったモノだけを人は持つことを許された《たったひとつのモノ》

 

それは………………………………《希望》

 

―――――――――

――――――――――

 

 

「ユーノ。私の修行に耐えたお前に最後の試練を与える………聖衣をまとった私を倒せ」

 

 

「む、無理です!聖衣、しかも黄金聖衣をまとったシオン先生を生身の僕が…」

 

「甘えたことを言うな。聞けユーノよ、我が戦友の弟子は聖衣を脱ぎ捨て強大な敵と戦い勝利した…なぜだかわかるか」

 

 

 

 

師である《シオン》の言葉を前に黙るユーノ、以前から聞かされていた戦友であり親友の弟子の話は何度も聞かされてはいた

 

「ですが!僕は」

 

「…」

 

無言で手を前へシオンが向けた瞬間、ユーノの身体がまるで岩のように動かなくなる。見るとその体には透明な糸、蜘蛛の巣状に広がったそれが拘束している

 

(う、うごかない…これはまさかクリスタルウォール?違うその派生技?)

 

 

「どうしたユーノ?クリスタルウォールの変形技《クリスタルネット》を己の力で砕いてみろ…」

 

「う、ううう……」

 

全身に張り巡らされたクリスタル・ネットを砕こうとするがびくともしない。

 

(……このクリスタルウォールを形作っているのは小宇宙《コスモ》だ…………なら!)

静かに呼吸し己の内に秘めた翡翠色の小宇宙《コスモ》が溢れだし、自身の体を拘束するクリスタルネットに触れた瞬間ヒビが入り瞬く間に勢いよく弾けとんだ

 

「はあっ、はあっ」

 

 

「ふ、クリスタルネットを破るとはな。だがこの程度の小宇宙では私にすら及ばぬぞ」

 

「シオン先生、なぜ僕があなたと戦わなければいけないんですか。」

 

叫び訪ねるユーノ。だが対するシオンは口を閉ざし再び構える姿からなにかを感じとり覚悟を決め構え数秒、わずかな風が舞った…

 

「…………!」

 

 

「…………!」

 

 

 

姿が消え激しい衝撃波が生まれ辺りを震わす。肉眼ではとらえられないがユーノ、シオンは拳打と蹴打を互いに打ち込み弾いている…小宇宙を込めた拳は光速を超えており互いに肉薄しているかに見える

 

 

「どうしたユーノ?お前の拳は私にはまだ届かないぞ」

 

「う、くうう」

 

必死に無数の拳、蹴りを放つユーノに対し涼しい顔で反らし弾いていくシオン…その瞳にはナニかを託し教えようとする意思が宿っている

 

「このままでは埒があかないな…ンッ!」

 

 

「カハッ!」

 

 

拳を弾かれ無防備になった胴へ蹴りが見事に入りそのままユーノは岩肌へ叩きつけられめり込みそのまま落ちた

「立てユーノ」

 

「う、うう…」

 

倒れたユーノに立ち上がるよう声をかけるシオン…身体が透け始めるが直ぐにもとに戻る

 

(まだだ、まだあと少し…持ちこたえろ…)

 

「う、くうう…」

 

 

ふらふら立ち上がるユーノ、その体にまとわれた訓練服はボロボロに破け血が滲んでいる。ただそんな状態なのに、その目からは闘志は失われていない

 

 

(……咄嗟に部分的クリスタルウォールを展開し、私の攻撃を相殺しきれずとも防いだか……)

 

 

「ユーノ、お前は先ほど聖衣を纏った私に勝てないと言ったな……」

 

 

「は、はい……聖衣を纏った聖闘士には勝てないといったのはシオン先生じゃないですか」

 

 

「そうだ、しかし先にも話したように聖衣を脱ぎ捨て私と同じ黄金聖闘士に勝利した青銅聖闘士がいる…なぜ勝てたかわかるか?」

 

「……そ、それは」

 

 

「……それがわからなければ私に勝つことすらできない…さあ続けるぞ」

 

再び構え地を蹴り互いに拳と蹴りの応酬が繰り返されるがユーノは部分的にクリスタルウォールを展開ししのぐが、展開発動する僅かな間を縫いシオンの拳がヒットしていく

 

 

「……忘れたかユーノ!聖闘士に同じ技は通用しないと言うことを!!」

蹴り飛ばすと同時に叫ぶシオンの拳がある軌跡を描く…牡羊座の軌跡を描くと同時に黄金の小宇宙が燃え上がり空に光の奇跡が走り出す

 

 

「うけよユーノ、アリエスのシオン最大の奥義!スターダスト・エボリューション!!」

 

 

「う、クリスタルウォール!!」

 

 

「無駄だ、クリスタルウォールを使おうとも私のスターダスト・エボリューションはふせげまい!!」

 

 

「う、うう…うわあああああ!?」

 

 

展開したクリスタルウォールがひび割れガラス細工のように砕け無数の流星がユーノを飲み込んだ

 

「う、う…あう……」

 

 

光が晴れ見えたのは訓練服の上半身が破け立ち尽くすユーノ…だがグラリと身体が揺れ倒れた

 

 

――――――――――

―――――――――

 

(ダメだ勝てない…聖衣を纏った、黄金聖衣を纏ったシオン先生に勝てない)

 

 

シオンの攻撃を受け続けた肉体はすでに限界を迎え五感が鈍くなるのを感じながらユーノは師であるシオンとの出会いを思い出した

 

ある人物との戦いで破れ死んだはずのユーノ…しかし目が覚めると見知らぬ場所にいて金色のオーラを身に纏った腰まで長い金髪の青年《シオン》に助けられた

 

―目を覚ましたか―

 

―は、はい…あの貴方が僕を?―

 

 

―…ああ、たまたま空間の【ねじれ】を見つけ直したらお前が出てきた…少年、名はなんと言う―

 

 

―………僕はユーノ、ユーノ・スクライアです―

 

 

―……ユーノ・スクライアか、ユーノよ、聖闘士になる気はないか?―

 

シオンの口からでた《聖闘士》と言う単語とその《使命》…ある存在《テッカマン》によりに運命を歪まされ罪なき人々を苦しめた結果すべてを失ったユーノの心に響く

 

だがテッカマンに操られていたとは言え罪を重ねた自分が【この世に邪悪がはびこる時に必ず顕れる希望の闘士】…《聖闘士》になる資格があるのか?

 

そう思いユーノは断る意味を込め、今までの自分、呪われたテッカマンに支配された自分が犯してしまった《罪》を全てをシオンに話した…だが

 

 

―………それがどうした?お前は犯してしまった罪に背を向け逃げようというのか―

 

 

―でも僕は―

 

 

―黙れ小僧!―

 

―ッ!―

 

 

驚くユーノにシオンの口から語られたのは善と悪の心を持つ聖闘士の生き様…大罪をおかし一度は死ぬも神話の時代からの邪悪の尖兵となり、かつての味方の聖闘士と戦い邪悪の監視を欺きながら、その心は《地上の平和と愛》の為に戦う《女神の聖闘士》の生き様はユーノの心を激しく揺さぶり胸を打つた

 

―ユーノよ、罪をおかさず一生を終える者は誰一人ともいない……おかしてしまった過去は変えられないが未来は変えることができる…―

 

 

―こんな、こんな僕でもですか―

 

 

―ああ…―

 

 

顔を俯かせ泣いたその日からユーノはシオンと共に聖闘士になるべく修行が始まった…死を何度も肌で感じながら必死に鍛練を重ね遂に小宇宙を会得、シオンのスターダストエボリューション、クリスタルウォール、スターライトエクステンクションを威力は劣るも身に付けた

 

 

(…………シオン先生のスターダスト・エボリューションは僕のクリスタルウォールでも防げない……でも…)

 

五感が鈍くなる中、ゆっくりと立ち上がるユーノ…その視線の先には無傷で立つシオンの姿

 

 

「よく立ち上がったなユーノ……だがこれで最後だ…」

 

 

再び構え軌跡を描く…だがユーノも翡翠色の小宇宙を溢れださせ描く

 

 

「ユーノよ、私の技を何度使おうとも勝てないことはこの四年間でわかっているはず…まあいい、これで終わりにする」

 

 

「「スターダストエボリューション!!」」

 

 

軌跡を描き終わると同時二人の頭上に無数の星が煌めき天を駆け出しぶっかりあう…だがシオンの目の前に信じられない光景が広がる

 

 

「わ、私のスターダストエボリューションをユーノのスターダストエボリューションがそうさいしあっているだと」

 

 

無数の流星が空を駆けぶっかりあい消滅する光景に声をあげるシオンはユーノに目を向けた瞬間驚愕する

 

「…………………」

 

 

(気、気を失っているだと…いかん!このままではユーノが)

 

 

気を失いながらもスターダストエボリューションを発動させるユーノ…徐々に押されはじめているのをみてシオンはたまらず声をあげた

 

 

「目を開けろユーノ!このままでは互いの技の余波に巻き込まれる!目を開けろユーノ!!」

 

 

「……う、うう……うわあああああああ!!」

 

 

シオンの叫びにも似た声が響くと同時に翡翠色の小宇宙が弾け燻ったスターダストエボリューションの余波が二人を襲いたまらず吹き飛ばされ岩肌に叩きつけられ叩きつけられ

 

「ま、まさかビッグバンを起こ…カハッ!」

 

 

先に立ち上がるも腹部に鈍い痛みを感じ見るシオンの目には無数のヒビが入ったアリエスの黄金聖衣

 

 

(黄金聖衣にヒビ…まさか目覚めたのか)

 

ユーノが吹き飛ばされた方へ視線を向けるシオンの目には翡翠色から黄金の小宇宙を浮かばせながら佇むユーノ、その背後には黄金の優雅に威風堂々とした牡羊が浮かぶ

 

 

(守護星座と黄金聖闘士が持つ究極の小宇宙…第七感《セブンセンシズ》に)

 

 

「まさか、黄金聖衣に傷をつけるとはな…だが私を倒さなければ勝利したとはいえんぞユーノ!」

 

 

「…シオン先生」

 

 

そう呟き再び拳を構えるユーノ…だが今まで以上の小宇宙を燃やし黄金の小宇宙が激しく溢れだすのを見ながらシオンも構える

 

 

(そうだ、そのまま小宇宙を限界まで燃やせ…一度死を体験したお前ならセブンセンシズの先にある域に到達するだろう……シャカのようにな)

 

 

静かにそして激しく燃え上がるユーノとシオンの小宇宙は辺りを照らし空気を震わし始め地面が隆起し浮き上がる

 

(………聖闘士の強さは聖衣の色で決まるものではない……より激しく小宇宙を限界まで燃焼させた高めた聖闘士こそが)

 

 

軌跡を描きながら心の中で語りかけるシオン。ムウと同じ才能を秘めたユーノ、おかした罪の重さに心おれそうになるのを叱咤し共に鍛練し切磋琢磨した日々が思い浮かばせながら遂に互いの技を発動させた

 

 

「「スターダストエボリューショオオオン!!」」

 

再び無数の流星が空を駆けぶっかりあいやがて光が二人を、いや山の中腹にまるで太陽の光に似た柱が天へ立ち上った

 

 

――――――――――

―――――――――

 

 

「…………………」

 

 

光が収まり現れたのはユーノを抱き抱えたシオン。だが纏う黄金聖衣はひび割れ全身から血が滴り落ちているのにか変わらず歩き寝泊まりしていた寂れた石窟へ入りユーノを寝台へ寝かせ自身は奥にある工房へ入る

 

「……まさか私の小宇宙を超えるとはな……これだから弟子を育てるのは楽しいな…童虎の気持ちもわかる気がする」

 

 

呟くと同時にシオンの身体から牡羊座の黄金聖衣が分解しオブジェ形態に変わり向き合う形で鎮座する、血が滴りひび割れた自身の聖衣の上に棚から取り出した不思議な輝きを秘めた砂を振りかけると輝きを増していく

 

 

「さて、最後の仕事をするとしよう……私の血、黄金聖闘士の小宇宙が宿った血をもってして真に甦れ」

 

不思議な輝きを秘めた工具をアリエスの黄金聖衣へ降り下ろすと光が溢れだす、それと同時にシオンの身体が透け始めていく

 

ユーノと出会ってからしばらくたってから破損したアリエスの黄金聖衣を修復を試みたシオン。だが不完全な形でしか直せなかった

何故なら聖衣の修復に必要な素材がひとつ足りなかった…それは大量の生き血。しかも黄金聖闘士の小宇宙が宿った血

 

自らの血を用いて直そうとするより先に《五老峰》で《天秤座の黄金聖衣》修復を優先し延び延びになっていた自身の聖衣修復を始めようとしたが手首を切るも血が出ない

 

気を抜けば身体が透け始め《この世》から離れようとする力が働くのを感じた時間があまりないことを察したシオンは苦渋の決断をするしかなかった

 

それはユーノの守護星座と第七感《セブンセンシズ》の覚醒、極限までに高めた戦いの中で覚醒させると言う一歩間違えば死が待つ方法

 

そしてセブンセンシズに目覚めたユーノの攻撃を受け傷つき自らの極限までに高めた小宇宙が溢れた血をアリエスの黄金聖衣へ与える

 

この危険な賭けをするのに迷いもあった…だがシオンはユーノが必ずセブンセンシズに目覚めると信じていた

 

結果、ユーノは見事にセブンセンシズに目覚めた最大の攻撃で傷つき極限までに高めた小宇宙が宿った血をアリエスの黄金聖衣へ与えることに成功したのだった

だがシオンの身体はさらに透ける、元に戻るを繰り返し工具を振るう手は力を失い始め危うく手元が滑る…が何者かに手を支えられた

 

「ユ、ユーノ!目が覚めたのか」

 

 

「シオン先生………僕が変わりに修復しますから休んでください」

 

 

「…いや、あと少しで修復が終わる…お前は休んでいろ」

 

 

「ですが!」

 

 

「これは私の仕事だ、聞けユーノよ。この聖衣の修復が終わり次第、ロシアにいる《オウマ・獅童》の所へいけ」

 

 

「オウマ教授の所にですか?」

 

 

「以前ココに天体観測をしにきたオウマはお前の量子力学について考察に興味を示していたからな……よしできたぞ」

 

 

 

 

「こ、これがアリエスの黄金聖衣……命の鼓動を感じる」

 

「ユーノよ、師として命じる…黄金聖衣、修復工具共にロシアへ向かえ……」

 

 

「聖衣を僕に!?これはシオン先生の」

 

 

「……拒否は許さん…今すぐロシアへ向かう用意をしろ…出発は一時間後だ急げ」

 

有無を言わさないシオンの意思を感じユーノは自室?へ戻りきっかり一時間後、石窟の前に黄金の箱を背負い防寒服に民族衣装をまとったユーノとシオンが立っていた

 

 

「…………シオン先生、では行ってきます」

 

 

 

「ああ、オウマ・獅童によろしく頼むと伝えてくれ」

 

「はい………シオン先生、四年間ご指導ありがとうございました!!」

 

 

別れを惜しむ気持ちに溢れながら深くお辞儀し歩き出すユーノ。たまに後ろを振り返り見る姿に苦笑し、その姿が見えなくなるとシオンはゆっくりと石窟の中にある工房へ入り椅子に深々と座る顔にはすべてをやり遂げた表情に満ちていた

 

「……ユーノよ、我が最後の弟子よ…私はお前にすべてを伝授した」

 

 

ゆっくりと呟くシオンの身体が透け始め足元が粒子にかわり消えていく

 

「……この世界に見えざる《闇》……ハーデス以上の邪悪な意思。この世界を混沌へ満たそうとする魂だ。若き《アリエスの黄金聖闘士》ユーノ・スクライアよ。その邪悪なる魂を、闇を砕く力を秘めた《傷付いた獅子》《要たる龍の少年》《水瓶の少年》《神に近き少年》《人類の守護者》と共に……未来……を………」

 

 

 

 

遂に身体全体が光の粒子へかわり天へ昇っていく

 

―……未来を切り開け……若き希望の聖闘士…―

 

 

ただその言葉を辺り響かせながらシオンの魂は天へと昇り星の輝きとなった

 

 

 

了了

 





がんばれマドカちゃ~ん♪

「大河さんファミリーとマドカちゃん」(其の一)


某マンション、最上階にある一室。GGG長官大河幸太郎一家が居を構える扉の前にいるのはゾンダーISコアから浄解されGGG保護された織斑マドカは恐る恐るインターフォンをならすとすぐに扉が開いた


「よく着たねマドカくん。さあ入った入った」


「は、はひ!お、おじゃまします」


「ん、礼儀正しくてよろしい。さあリビングでくつろいでくれたまえ」


大きくGGGと書かれたエプロン姿の大河に招かれ入りリビングへ案内されたマドカ。すると足になにか柔らかい感触を感じみると二人の五歳くらいの女の子がじっと見上げてる。マドカはおそるおそる話しかけてみた


「は、はじめまして……え、えと…その…お名前は何て言うのかな」


「るね、あたしは《たいがるね》だよ♪」


「……………ゆき…おねえさんのなまえは?」


「お、織斑マドカ……」


「おりむらまどか……じゃあ、まどかおねぇちゃんってよんでいい?」

「…ゆきも…いい?」


「え?うん、いいよ…ルネ、ゆき」


可愛らしく答えるルネとは対照的にクールなユキから訪ねられ迷うもはっきりと名前を教えそのまま二人と一緒にソファーへ座るのをみた大河は少し笑みを浮かべ料理の準備を進めるのだった


次回へ続く!!

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