IS/勇者王ガオガイガー─白き翼の戦士と勇気ある者―   作:オウガ・Ω

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インド、ガンジス川上流にある《アジャンター石窟》
紀元前、仏陀が修行したといわれるココの最奥には涅槃姿の仏陀の石像が鎮座。その前には白いマフラーに紺色の制服姿の少年《犬神霧也》が瞑想し袈裟する姿


(………………………………………まだ聞こえます………リミビットチャンネルがコントロールが出来ません)

目を閉じ瞑想する霧也…言葉が文字となり瞼に焼き付き様々な言語が飛び交っている

日本人である霧也が何故インドに来たのか?それは《あまたの世界の言葉を知り、神にもっとも近い者》がいる

もしかしたらリミビットチャンネルを制御する術があるかもしれないと考えた霧也、束とレイジに時間を貰いインド《アジャンター石窟》へ来たものの《あまたの世界の言葉を知り、神にもっとも近い者》は243年前になくなっていた事実だった


だが霧也は《あまたの世界の言葉を知り、神にもっとも近い者》がここでなにかを悟ったと寺院の管理者に聞きここでひたすら瞑想の日々を送っていた


だがリミビットチャンネルは制御する術は見つからず徐々に言葉が文字となり増えていく


(………どうすれば、この力を制御する術を得られるのですか…あまたの世界の言葉を知り、神にもっとも近い者《アスミタ》)


そう心に呟いた瞬間意識が闇へと落ち始める……リミビットチャンネルの使用時間に限界が来たのだと悟るも制御する術を知らない霧也の意識が霧散していこうとした…が一条の光が霧也の目に移り必死に手を伸ばした触れた瞬間、世界が書き変わり辺り一面に仏の世界を描いた《曼陀羅》が広がり驚くと声が響いた

―ほう、わたしの世界に訪れる魂があるとは珍しいな―


―あ、あなたは?―


―まずは己の名を名乗りたまえ―


―犬神霧也です―


―イヌガミキリヤか……なら私も名乗らねばならないな……私の名はアスミタ……乙女座(バルゴ)のアスミタ―


この日、霧也は《この世の理》を越えた境地の世界で、自身が何者であるかの存在を再確認させた大恩ある師《乙女座(バルゴ)のアスミタ》との出会いを果たした





第十三話 バイオネットの影

「ん…」

 

「め、目が覚めた…燐」

 

「シャル…ル?」

 

声を耳に目を向けた燐、の隣にはジャージ姿で髪をほどいたシャルルが少しほっとした顔で見てる

 

「なんでオレ…ベッドで?」

 

「そ、それは……その……あの………」

 

しどろもどろになるシャルルの姿を見た瞬間倒れたときの光景

 

水に濡れた白い肌、流れるような金髪に深いアメジストの瞳、そして豊かな膨らみにキュッとしまった腰…触れれば壊れてしまうようなシャルル(女の子)の姿

 

「あ、あああああ!!ごめんシャルル!!オレ、オレなんてこと…うっ…あ」

「り、燐落ち着いて!」

 

 

身体から陽炎が立ち上る燐の身体へふぁさっと白地に金の装飾が施されたコートがシャルルにかけられ少しずつ陽炎が消えていく

 

燐にかけられたのは《インタークーラーコート》。戦闘時及び感情が高まると発熱しやすい燐の身体を冷やし細胞を安定、《イークイップ時》にはIDアーマーとしての機能を併せ持つ《篠ノ之束》特製のコートだ(もちろんIS学園に通う燐の制服(夏冬用)、ISスーツにも簡易的な冷却システムを搭載している)

 

 

「ふう…ありがとシャルル…!?」

 

 

「うわ?り、燐!ちょっと!?」

 

いきなり手を取られ慌てるシャルル、燐は少し顔をうつむかせながら口を開いた

 

 

「…火傷してるじゃないか……シャルル」

 

 

「うわあ!り、燐?な、な、な、な///」

 

 

グイッと火傷して赤くなった手をインタークーラーコートの内側、正確に言えば胸元へ入れると同時に体勢が崩れ胸元にシャルルは勢いよく倒れこんだ

 

「少し冷たいけど我慢して……」

 

 

「う、うん(……う、うわ?僕なんかすごい体勢に?それに燐の顔近い////)」

 

 

ドギマギしながら頷くシャルルを見て冷却ガスを少量放出、やがて火傷の痛みが消える。おそるおそるコートから手を出すと火傷が綺麗になおっている

「え?すごい冷やしただけで」

 

「ああ、このコートは治療用ナノマシンも装備されてるんだ…でも綺麗に治ってよかった」

 

ほっとした表情を浮かべた燐、超至近距離で見たシャルルの胸がドクンと高鳴り顔が熱くなるのを感じながらゆっくり離れた

 

「「……………………」」

 

 

気まずい空気が流れる…燐の隣にはプラチナブロンドの髪を下ろしジャージ姿のシャルルが少し顔を俯かせながらチラチラと見てくる

 

(……う、なんか気まずい………どう話したらいいだろ……悩んでてもしかたないよな)

 

 

(……やっぱり怒ってるかな……正直に話した方がいいよね)

 

 

「「あ、あの!燐/シャルル!?」」

 

 

同時に声を出してしまい再び沈黙する…だがこうしていても埒があかない。燐は聞くことにした

 

「あ、あのさシャルル……何で男のフリしてたんだ……」

 

「…………」

 

「あ、嫌ならいいんだ……何か事情があったん…」

 

 

「…実家の方、あの人がそうしろって…命令したんだ」

 

 

実家と聞き燐の頭に真っ先に浮かんだのはフランスのデュノア社。量産機ISシェアが世界第三位の企業がなぜ男装するよう命令したのか?

 

それよりも気になったのは先程とは違いシャルルの顔が暗い表情を見せてる

 

「なあ、シャルル…男装するよう言ったのはまさか…」

 

「うん、僕の父…デュノア社の社長……」

 

 

「……親が命令…何でそうなるんだシャルル…親ならふつう言わないだろ」

 

 

「……僕は愛人の子なんだ……二年前に母さんが亡くなってから父の部下が迎えに来たんだ。色々検査をうけたらIS適応が高いってのがわかって、非公式だけどデュノア社のテストパイロットをやることになったんだ」

 

淡々とシャルルの口から語られる過去、父親であるはずのデュノア社社長がシャルルを経営不振に陥った会社を建て直す為の広告塔にするため男性だと偽らせ、更には自社を維持するために一夏と自分のISのデータを盗むませる為だけに日本、IS学園へ向かわせた事に怒りを覚え始める

しかし何かが引っ掛かる…一夏と自分のISのデータを盗むように言われたのに何故行動に移さなかったのか?

 

 

「シャルル、少し嫌なことを聞くけどいいかな?オレや一夏くんのISデータは送ったことは?」

 

「ないよ。それに《あの人》が『私が連絡するまでIS学園で待機していろ』って言ってたけど……いつまでたってもデータを送れって連絡も来ないし、僕の事なんか忘れてしまってるんだろうね」

 

 

データを盗むように命令されたのにか変わらず督促もない、特異例である自分達の機体データはふつうならば喉から手が出るほど『わが社の為に直ぐ様送れ!!』と言うハズ

 

それがないと言うことは……

 

(……まさか……)

 

 

ある推測と同時に嫌な予感を感じた燐は迷わず《ある場所》へ秘匿通信を開くと直ぐ様フランス対特殊犯罪組織《シャッセール》のデータベースを閲覧、同時にデュノア社の調査を依頼し閉じた

 

「……燐にばれちゃったし、きっと僕は本国へ召還されるだろうね……デュノア社は潰れるか、他企業の傘下に」

 

 

「シャルル!」

 

「え、ええ?な、なに!?」

 

「少しだけ結論を出すのを待ってくれるかな。それにシャルルはGGGの特別隊員だ。GGG憲章、第一条四項!」

「じ、重要な職務、及び特別任務に付くGGG職員、隊員はいかなる国家、帰属する国家からの招聘、召還を本人の同意がなければ拒否する権限を国連《地球防衛会議議長》ロゼ・アプロヴァール、GGG長官大河幸太郎の名において与えられる…あ?」

 

「…シャルルはココにいて良いんだ……さっきも言ったように少しだけ時間くれないかな」

 

 

「う、うん…で、でも燐」

 

「?」

 

「か、肩から手を離して…す、少し痛い」

 

気がつくとシャルルの肩をガシッと握ってた事に気づく…慌てて離そうとする燐の目には胸元のジッパーが大きく開き谷間が見え思わずボウッとなる

 

 

「……り、燐?……うわあっ!?」

 

 

「あ、み、オレ見てないから!」

 

「……………燐のエッチ」

 

 

「う!?本当に見てないから!?」

 

 

胸元を隠しながら少し頬を膨らませ見るシャルルにひたすら謝る燐。まあサイボーグといっても生体部分(?)が残ってるから仕方ない

 

 

「クスッ……嘘だよ(でも燐も男の子なんだ。それに)」

 

―ココにいて良いんだ―

 

 

嬉しかったな小さく心のなかで呟くシャルル…

 

GGG憲章。GGG結成時にロゼ・アプロヴァール議長がGGGの活動方針及び行動理念が示されたもの(GGG隊員及び職員はこの憲章を一言一句忘れず心に刻み地球防衛、バイオネットの機動兵器で起こりうる二次災害災害を勇気を持つて立ち向かい職務へつく事)。ひたすらに謝る燐を止めようとしたとき待機状態のガオファー、シャルルのラファールも震えだし通信が入る

 

―GGG機動部隊、至急メインオーダールームへ集合されたし―

 

「燐!」

 

「いこうかシャルル、少し捕まってて」

 

「え?ちょ燐////」

 

 

顔を見合せ頷くと寮の自室の窓からシャルルを抱え飛び降り、いつの間にか待機していたガンドーベルへ乗りGGG本部、メインオーダールームへ向けアクセルを全開にし走り出した

 

 

「少し飛ばすからしっかり捕まって」

 

「う、うん」

 

 

もちろんシャルルと一緒に…余談だがしっかり燐の腰に捕まりガンドーベルと共に現れた二人を見て束が黒いオーラを溢れ出させていた

 

 

――――――――

―――――――――

 

 

一時間後、北海道上空

 

弾丸上のフォルムに二基のジェットエンジンユニットが目立つGGG所属《三段飛行甲板空母》。《GGG》G-IS機動部隊を迅速に作戦行動地点まで輸送するこの艦にはミラーカタパルトが装備されており各種ツール射出に使用されるが移動拠点としても用いられる、現在ブリッジには作戦参謀《火麻激》、GGGメインオペレーター篠ノ之束、そしてGGG特別隊員《シャルル・デュノア》の姿があった

 

同ブリッジ

 

 

「各員配置についたか?」

 

―東ゲートOKだ―

―南ゲート、到着完了―

―北ゲート、いつでも行けるぜ

 

「おし、これより制圧された《新式粒子加速実験施設イゾルデ》内部へ潜入、そして囚われた職員の救出作戦を開始する。内部へ潜入後は各自打ち合わせた通り行動だ」

 

 

―了解!―

 

 

燐、凍也、炎竜(スタンドアローン・モード)の声が響くと一切の通信が途絶え代わりに正面スクリーンへ光点のみが映し出される

 

 

「あ、あの火麻参謀?あの紫色のは」

 

 

「ん?…デュノアはあったことないんだったな…まあ近いうち顔を会わせる事になるがな…さてと連絡あるまでオレらはここで待機だ」

 

 

「はい…?あ、あの篠ノ之さ………」

 

 

「ナニかな、リッ君の背中に抱きついてメインオーダールームに乗り入れてきたデ・ュ・ノ・ア・君?(黒笑み)」

 

「な、何でもないです(な、なんなのこのプレッシャーは!?)」

 

 

「………(汗)」

 

 

真っ黒なオーラがボタボタほとばしらせながらシャルルを見る束を見て冷や汗を掻く火麻は正面スクリーンへと目を向けると四つつの光点が点滅しながら内部へ入るのを見た

 

 

――――――――――

――――――――――

 

 

「……中央研究エリアまであと一キロか…誰だ!」

 

「アッハハハハ~お久しぶりですねリイイン♪」

インタークーラーコートを揺らしながら走る燐…だが突然その動きを止め叫ぶと声が通路を反響する…が異質な気配が辺りを支配する

 

 

「ここだよ~リイイン♪」

 

背後からの声にハッとし振り返る、とんがり帽子に全身を覆い隠すようなマント、奇抜な仮面を着けた紫色の人物がケタケタ笑いたってる

 

 

「お前かギムレット!まさかイゾルデを制圧したのは…」

 

 

「はい~私たちですよ♪そしてアナタたちを足止めさせていただきますよ」

 

 

「…私たち?…まさか!アイツラもここにいるのか!!」

 

「はいぃ、今頃再会を喜んでるでしょうねぇ~」

 

―――――――――

――――――――

 

 

「久しぶりぶりであ~~る披検体02ウゥ~♪♪…ん、片割れはどこにいるであるますかああああ!ャアアアッ!」

 

 

「……ドクターウェスト……貴方ががここにいるということは…………まさか!!」

 

 

「イェスウ、アイドゥ~♪片割れがいないのは非っ常~に残念であるが…まあいいか!我輩の熱いビートをくらいたまえ~!」

 

 

エレキギターを向けるとガシャンと真ん中から割れ無数のミサイルが襲いかかる

 

「く、フリージングライフル!フリージングガン!一斉射撃!!」

 

背部クレーンユニットが展開と同時に全面に向け先端の砲口から冷却ビーム、右腕に構えたフリージングガンが火を吹きミサイルを凍結撃破していく

 

 

「おおう!?流石はデュアルカインドであるなあ!左脳交換手術及びリンカージェル移植手術は成功でありますなあ♪♪」

 

 

歪な笑顔を浮かべながら壁を蹴り奥へ走り出すドクターウェスト

 

「く、逃がしません!ドクターウェスト!!」

 

 

 

―――――――――

―――――――

 

 

「ふむう~独立機動ができるISとはああ~珍しいなあ……是非とも解体したいなああ…久しぶりにいい」

『お前は変態科学やろー!いやフリール・ルコック!!』

 

「変態科学?フヒヒ最高の誉め言葉だなぁ~」

 

血で染め上げたような赤い手術着姿のフリール・ルコックは嬉しそうに体を振るわせ笑いながらに無数のメスを炎竜目掛け投げつける

 

『メルティングガン!オラオラオラ!!』

 

 

とっさに構えたメルティングガンが襲いかかる無数のメスが砕き溶かしていく

 

 

「ふむぅ~やるなあ……フヒャハハは♪」

 

 

『逃げんな変態科学ヤロー!』

 

 

暗がりへ溶けるように消えたフリールをハイパーセンサーで感知するや否や追いかける炎竜…その言葉からは激しい怒りがにじみ出ていた

――――――

――――――――

 

 

「ふむ、誰も来ないようだな………」

 

黒のスーツに身を包んだ青年「ゾンダー博士」が小さく呟き時間の無駄だと言わんばかりに背中を向け歩き出す…がわずかな空気の乱れを感じ振り返る

 

「……………」

 

 

頭を白いマフラーで包み揺らしながらまっすぐ歩く紺色の制服をまとった少年の姿。青年は無機質な笑みを浮かべ手をかざすと無数の重火器が顕現し火を吹き着弾と同時に爆発、辺りに爆風が起きる

 

「……ふ、あっけな……」

 

言いかけたその時、銀に輝く物体が青年の重火器が顕現した腕を音もなく切り裂きゴトリと落ちる

 

「な、な、ぐ、くああああっ!!」

 

 

叫びが辺りに木霊す中、煙が晴れ顕れたのはマフラーがほどけ白髪に赤い瞳が目立つ少年の姿に青年は驚きの顔を見せた

 

「お、お前は!くっ!!」

 

切り落とされた腕が光輝き辺りが真っ白に染まる…が少年はどこからともなく金色に輝くブーメラン状の刃を投げつけた

 

ガキンと鈍い音が響くと共に光は消え黒紫色の血と腕だったナニかが残され、ジッとみながら少年は印を結び旋風を起こし消え去った

――――――――――

―――――――――

 

 

「く、そこをどけギムレット!」

 

 

「いやですよお~久しぶりにアナタのテストをしてあげますよお………バ・イ・オ・ダ・イ・ン・RIN」

 

 

「オレを、オレをその名前で呼ぶなあ!!」

 

ギムレットの言葉を聞いた燐の怒気をはらんだ声が辺りに響いた瞬間、地を蹴りギムレットの顔面に目掛けめいいっぱい殴り付ける…が手応えがない

 

「ここだよR~I~N♪」

 

「ぐあっ!」

 

 

背後からの鈍い衝撃と共に爆発がおきそのまま硬い床へと落ちるもすぐさま立ち上がる燐の前には無数のミサイルをマントの下から展開しながら浮かぶギムレットがケタケタ笑いながら撃ってくる

 

 

「ウィル!ナイフッ!!」

 

獅子の顔を象った左腕装甲に納められた緑色のナイフ《ウィルナイフ》で迫り来るミサイルを切り払いながら間合いを詰めていく

 

「こんな攻撃なんか通用しないぞ。ギムレット!」

 

 

「おやおやなんですかその情けないモノは?貴方にはアレがあるはずですよ……我がバイオネット最高傑作武器《高周波ブレード》がね」

 

 

「うるさい!誰があんなのを使うか!!」

 

 

「なら使わせてあげましょう……イヒャハハハは!!」

 

 

ミサイルを収納するや否や今度は巨大な回転鋸が現れギムレットはひらりと乗りサーフボードみたいに操りながら縦横無尽に壁や機材を削り、ウィルナイフを構える燐目掛け襲いかかってくる

 

 

「くっ!!」

 

 

胴体目掛け襲いかかってきた回転鋸を火花を散らしながら受け止める燐

 

 

「なかなか強情ですね。そんなあなたにもうひとつプレゼントです」

 

 

ケタケタ笑いだすと背後からもうひとつの回転鋸を展開、燐の死角から襲いかかる

 

「く、うあああ!!」

 

 

「な、なに!このパワーは!?」

 

 

火花を散らしながらギムレットが乗る回転鋸を切り払うと迫ってきたもうひとつを跳躍しかわし燐は両耳ホーンクラウンから胸元まで延びた数珠繋ぎになった円筒状の物体を掴み叫んだ

「ハイパー!モード!!」

 

左腕装甲のGストーンが輝き《インタークーラーコート》に配置されたIDアーマーがガシャンと展開しフィンから放熱が始まり全身が金色に輝きだす

 

ハイパーモード、サイボーグ燐は髪が形状変化した《エネルギーアキュメーター(エネルギーチューブ)》を掴むことで99,9秒間だけ通常の三倍の力を出すことができるのだ!

 

 

「な、なんですかその姿は!?グアッ!」

 

 

「ハアッ!セイ!ハアッ!!」

 

 

金色のオーラに包まれた燐がすり抜け様にギムレットの身体と回転鋸をウィルナイフで切り裂くと同時に正拳、裏拳、肘撃ちを叩き込みバランスが崩れたギムレットを天井へ蹴りあげ呼吸を整え構えた

 

「ぎゃ!ぐひゃああ!!」

「………御凰流《獅子乱舞》!せい、せい、やあっ!はあっ!!」

 

 

まるで《黄金の獅子》と化した燐の拳から《氣》が溢れ、そのまま無防備状態のギムレットの体へ数百発の拳が的確に急所を捉え撃ち抜く

 

「アビッ!アババッ?グブアッ…ぐぴゃああ!!…なんですその金色の力は!?

 

「…これは。オレの師匠御凰蓮!御凰オリエと共に鍛練を重ね!!」

 

 

「アパォ!!」

 

 

「そして!《レグルス》兄貴の闘法が合わさり生まれた力だああああ!!」

 

 

黄金の氣が纏われた拳が鳩尾、顔面、全身の急所へと鈍い破壊音を響かせ辺りに紫色の血が飛び散り苦悶に満ちたギムレットの悲鳴が響く

 

「グブォ…アビュアア!?ウヴァアアアア!?い、いけませんね…グェロ!?ぇこ、こは退却です!」

 

 

「待てギムレット!!」

 

燐のあまりの攻撃に耐えきれずそのままイゾルデの奥へ逃走するギムレットを追いかけようとする、が黄金の輝きが消え膝をつくとインタークーラーコート、IDアーマーから大量の冷却ガスが放出され一気に体温が低下していく

「はあっ、はあっ……時間切れか………だがバイオネットがイゾルデを占拠してる。職員の救出を急がないと……ファントムガオー!!」

 

 

疲労した身体を奮い立たせファントムガオーを召喚し燐はガオファーを装着、研究エリアへと飛翔し進んでいき光が見えると迷わず飛び込む

 

 

「ここがイゾルデの中心?まるで蜘蛛の巣のようだ」

 

眼下に広がるのは蜘蛛の巣状に張り巡らされたエネルギーケーブル、その先には巨大な卵らしいナニかが脈打つのが見える

 

「燐!アレは一体?」

 

 

『凍也、それに燐もここに来たのか?』

 

 

「凍也?それに炎竜?……まさかこれは俺たちをここへ誘い込むための罠か!!」

 

すべてを悟った瞬間、卵が大きく弾け巨大な王蜘蛛をモチーフにしたゾンダーISがコチラを睨みながら蜘蛛の巣状に張り巡らされたエネルギーケーブルをまるで滑るように移動し巣にかかった獲物を補職するように迫ってくる

 

《ゾ、ゾンダアアアアアア!》

 

「くっ!ファントムクロー!!はあっ!!」

 

 

ウルテクスラスター全開で王蜘蛛ゾンダーISに殴りかかるも寸前でかわされる、がIS氷竜、炎竜がクレーントンファー、ラダートンファーを大きく構え交差し頭を捉えそのまま地面へ叩き落とした

 

『へへ、どうだ蜘蛛ヤロウ』

 

「油断するな炎竜、今の攻撃ではダメージが足りな…」

 

 

《ゾ、ゾンダアアアアアア》

 

「な、なんだこれは!ウワアアアアア!!」

 

 

叩き落とされた王蜘蛛ゾンダーの口から吐き出された糸がガオファー、IS氷竜(凍也)、炎竜の身体に巻き付き高出力の電磁波を流し込んでくる

 

 

「ぐ、ぐああああ!!」

 

 

たまらず叫び声をあげる三人…いくら操縦者は絶対防御に守られているとはいえ電磁波は電子機器の集合体であるISにダメージを与えていく

 

それは身体の四割近くが機械化した燐にはまさに命取りになるであろう出力。徐々に人工筋肉及びIDアーマの機能が低下し始めていく

 

 

(不味いな、このままでは燐の身体が……)

 

 

(………このままだと記憶が消えちまう……くそ)

 

(く、力が出ない……特殊防護シールドを突破されるなんて……呼吸が……できない)

 

皆を助けようと氣を練ろうとするも電磁波で身体機能に異常が起こり呼吸ができない…その姿を遠くからみる三つの影。ドクターウェスト、フリール・ルコック、先ほど燐にボコボコにされたギムレット(全身に包帯を巻いてる状態)がいびつな笑みを浮かべみていた

「ふひ、フヒ…イダッ…ウダダッ……ハは……これでみおさめみ?ただたいですねぇ……」

 

 

「うむぅ~あの素晴らしい音楽が聞けなくなるのは残念だなあ」

 

 

「まあ~邪魔な披検体たちがいなくなれば我輩たちの計画は完璧イィ~最高の音楽が聞けなくなるのは残念ですがねぇ~」

 

 

「ゆ、油断するな…」

 

 

苦悶に満ちた声に振り返る三人の前に切り落とされた右腕から赤紫色の血を垂れ流しながらたつゾンダー博士に驚く

 

 

「ゾンダー博士、何があったのかなあ?」

 

 

「気をつけろ、あと一人厄介な奴がここに来ている………この私が手掛けるも失敗した不良品がな」

 

苦しそうに声を漏らすゾンダー博士の言葉を聞き驚いた時、三人に電磁波攻撃を仕掛ける王蜘蛛ゾンダーに迫る紫の影

「シルバームーン!ハァッ!!」

 

白銀色の三日月状のブーメランが糸を切り裂き自由の身になる三人の前に紫色のIS《G-IS-02》ボルフォッグがシルバームーンをキャッチすると降り立つ

 

「遅れてすいません燐、凍也、炎竜。職員全員の救出を完了しました」

 

 

「た、助かったぜ霧也」

 

 

「久しぶりだな霧也」

 

『本当に久しぶりだぜ』

 

 

「今は懐かしんでいる時ではありません。燐はファイナル・フュージョンを………うわっ!!」

 

 

『ゾンダアアッ!』

 

 

王蜘蛛ゾンダーの足に殴り飛ばされ地面を水切り石のようにはね消える霧也の姿に燐は決意した

 

 

 

「霧也!………凍也!炎竜! サポートを頼む」

 

 

「わかりました!炎竜!!」

 

『おうよ!いくぜ蜘蛛ヤロー』

 

 

二人は王蜘蛛ゾンダーの足止めをするべく動き出すとメルティングガン、フリージングガンで牽制、たまらず王蜘蛛ゾンダーは動きを止めた

 

「いまだ!ガオーマシン!!」

 

 

叫んだ瞬間、イゾルデの研究棟の影からステルスガオーⅢが音もなくあらわれ飛翔、空からはライナーガオーⅡ、地中を貫きドリルガオーⅡが姿をみせる

 

 

―――――――――

――――――――――

 

 

「火麻さん、リッ君からファイナルフュージョン要請シグナルが来たよ!」

 

 

「よし、長官!!」

 

 

―うむ、ファイナルフュージョン承認!!―

 

 

「了解、ファイナルフュージョン!プログラムウゥウドラアアアイブッ!!」

 

素早くプロテクトを解除と同時に拳がクリアパネルを叩き割ると緑色に輝きガオファー、ステルスガオーⅢ、ライナーガオーⅡ、ドリルガオーⅡのアイコンが流れ赤い文字が大きく浮かび上がった

 

 

―GAOFIGHGAR―

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

「ファイナル!フュウゥゥジョオオン!!」

 

 

叫ぶと同時にリングジェネレータからプログラムリングが展開、その上を各ガオーマシンが滑るように飛翔。まずはドリルガオーⅡの上部部分がスライドそのままガオファーの足へ接続、続けてライナーガオーⅡが後部サブロケットをパージ上下に展開し跳ね上がった肩アーマー部分へ侵入と同時に量子化装着、ステルスガオーⅢが背部へ逆噴をかけ静止と共にロッキングしインテークが競り上がり胴体へエンジンユニットが火花と共に腕部強化フレームへ接続と同時に拳が勢いよく回転しながら飛び出しガッガッと止まり最後にヘッドギアが装着されマスクが付きGストーンが競りだし《GGG》のマークが光輝く

 

「ガァオッ!ファアイッ!ガアアアッ!!」

 

 

 

緑色のエネルギーを両拳から溢れ出させ大きく交差し拳にGの刻印を光らせEMTが弾け飛び、黒いIS《勇者王ガオファイガー》が左右のウルテクエンジンを展開し緑色の光を輝かせ飛翔しゆっくりと降り立つ

 

 

「いくぞゾンダーIS!!」

 

『ゾンダアアッ!』

 

 

ウルテクエンジンを閉じ構えるガオファイガーに対し腹部に当たる部分から無数のミサイルを生成し射出しまるで蜘蛛の子みたいに広がり着弾、爆発し煙に包まれる。

 

「………ブロウクゥウン!ファアアントムッ!!」

 

叫び声が響くと共に煙の中から光輪を纏った拳が飛び出し、そのまま王蜘蛛ゾンダーの顔面を砕き貫く

 

 

「そんな飛び道具に頼った戦い方で!はあっ!!」

 

 

『ゾ、ゾンダアアアアアア!?』

 

 

「このガオファイガーを倒せると思うな!!」

 

たまらず後ろ向きへと倒れるのを見逃さずウルテクエンジン全開で間合いを積めそのまま高速回転したドリルニーを胴体へ打ち込み蹴り飛ばす

 

 

『ゾ、ゾンダアアアアアア!!』

 

 

事故修復しながら立ち上がる王蜘蛛ゾンダーは再びケーブルへ飛び乗りそのまま自身がいた場所へ移動、その真下にある《粒子加速器》を取り込みさらに巨大化、背後から巨大な竜を模した粒子加速砲が伸び先端に光が走り粒子加速ビームがガオファイガーめがけ放たれる

 

 

「プロテクトリング!プロテクト!ウオオオル!!」

 

リングジェネレータからウォールリングを形成展開しかざした左手に粒子加速ビームが着弾、五芒星状に偏向と同時に王蜘蛛ゾンダーめがけ打ち出す

 

 

『ゾ、ゾンダアアアアアア!?』

 

 

自身が放った粒子加速ビームを受け外装が溶け落ち苦し紛れに再び電磁ネットを腹部から吐き出すが

 

 

「そうはさせません!フリージングライフル!!」

 

 

『二度とそんな手が通用するかよメルティングガン!オラオラオラ!!』

 

 

氷竜、炎竜の射撃により凍結、もしくは溶かされていくのを見て身じろぎするのを見逃さず燐はウルテクエンジンを展開し空へ飛翔し両腕を大きく構えた

 

「ヘル・アンド・ヘヴン!………………ゲム・ギル・ガン・ゴー・グフォ……ムン!!」

 

呪文を唱えながら攻撃のGエネルギー、防御のGエネルギー溢れさせる右手と左手を胸の前で突きだした形で組んだ瞬間、緑色の竜巻《EMT》が発生。王蜘蛛ゾンダーを包み込みその動きを止める

 

「うおおおおおおお!!」

 

 

ウルテクエンジンを展開し四基のGSライド最大出力で空を突き進みながら突進、そのまま両拳で王蜘蛛ゾンダーの額を砕くとZ-ISコアをガシッと掴むと同時にEMTが弾ける

 

 

「ぐ、ぬぬぬ……せやあああああ!!」

 

 

背を向け紫色に輝くZ-ISコアを大きく掲げた瞬間、王蜘蛛ゾンダーの身体は爆散しガオファイガーは炎に包まれる

 

 

「「リッ君/燐!!」」

 

上空に待機していた三段飛行甲板空母オペレーターシートに座っていた束とシャルルの声が響き爆発の影響で砂嵐だらけの正面スクリーンが回復し見えたのは、無傷で立つガオファイガーと氷竜、炎竜の姿

 

 

「よかった、よかったリッ君……」

 

 

「火麻さん。僕、燐の所にいってきます」

 

 

「ああ、頼んだぜデュノア」

 

三段飛行甲板空母の第一カタパルトが開きオレンジ色のカラーに染められたシャルル専用機《ラファール・リヴァイブ》が飛翔するのを見守りほっと肩から力を抜く火麻

 

 

 

「燐~」

 

「待ってたぜシャルル。このコアの浄解を頼むぜ」

 

 

「うん、まかせて。クーラ・ティオー・テネリタース・セクティオー・サルース・コクトゥーラ」

 

 

ラファールリヴァイブを解除し八枚の翼を広げたシャルル(浄解モード)の手から光が溢れゾンダーISコアを包みグニャグニャと崩れやがて髪をあげたややきつい目が特徴の女性がボロボロ涙を流しながらコアから分離されていく

 

 

「ありが……と…う、アイツラから助けてくれてありがとう……グスッ」

 

 

「ふう……終わったよ燐」

 

 

「お疲れさまシャルル。あと数分したら《三式空中研究所》とじいちゃん達が来るから少しだけここで待ってようか」

 

 

「わかったよ燐」

 

 

―――――――――

――――――――

 

 

「……やってくれるなGGG、そしてガオファイガー」

 

 

「我々の計画にとって最大の障害になるのは間違いないなあああ~」

 

 

「イエス!その通りであ~るっ!お陰で生成できたのは予定の31個の半分であ~る!それにあのグリーンエンジェルは始末しなければいけな~~~い!!」

 

「ふひ?あだたっ!?それに関して……だだだ?は抜かりありません……」

 

 

痛みに耐えながら言うギムレットの言葉にうなずくとまるで闇に溶けるように四人の姿が消え去った……最初からそこには誰もいなかったかのように風だけが流れた

 

 

―――――――――

――――――――

数分後、三式空中研究所

 

同解析ルーム

 

 

「ふむ、やつらは何故イゾルデを制圧し職員を無傷で捕まえたんじゃろうか?」

 

「…今までのバイオネットのやり方とは全く違うな……獅童じいさん、長官は今どこにいるんだ?」

 

「長官は先ほど設立が決まったロシアGGGに向かっとる……恐らくはG-IS-07《アリエス》の運用テストスケジュールを決めにいったんじゃろ」

 

 

レイジの言葉に火麻が頷いたとき、自動扉が開き紫色のISを纏った少年が姿を表した

 

 

「レイジ博士、ただいま戻りました」

 

 

「おお霧也くん、無事だったか。燐たちのサポートと職員たちの救出ご苦労じゃったの」

 

 

「いえ…実はイゾルデの地下で興味深いモノを発見、採取してきました」

 

 

「なんじゃ?」

 

 

訪ねるレイジに霧也が手を差し出し開き見せたのは紫色に輝き中心にZとも読み取れる幾何学模様が目立つ結晶体に思わず息を飲む火麻参謀と遅れてきた束も唖然となった

 

 

「レ、レイジ先生、これってまさか!?」

 

「こ、これは、まさかゾンダーIS-コアか!?」

 

 

二人の声が三式空中研究所の解析ルームに木霊した

 

 

第十三話 バイオネットの影

 

 

 





君たちに最新情報を公開しょう


イゾルデで回収された謎の物質《ゾンダーIS-コア》を研究解析するGGG

一方、学園で穏やかな生活を送りながらトーナメントに向け個別特訓をするセシリア、鈴の前に現れたラウラの目的は?


IS《インフィニット・ストラトス》―白き翼の戦士と勇気ある者―



第十四話 黒兎


次回もファイナルフュージョン承認!


―織斑一夏?―


これが勝利の鍵だ!!

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