IS/勇者王ガオガイガー─白き翼の戦士と勇気ある者― 作:オウガ・Ω
薄暗く狭い室内でカタカタと音が木霊する、その音が発する場所には無数の空間投影スクリーンが開きその床には無数のケーブルが樹海のように広がっている
「………………………」
ウサ耳カチューシャに青いドレスにも見える服を纏った少女が一心不乱にキーを叩きやがてその手が止まった
空間投影スクリーンに様々な羅列が流れやがて形になり見えたのは禍々しいまでの悪魔と見間違える程の黒い体躯。ゆらゆら揺れる赤い髪…だがそれよりも目を引くのは胸に当たる部分にある獅子の顔
恩師とその子供が衛星軌道上で命を散らした日から少女はこの部屋に引きこもった…
少女が心を許し夢を語り自身を変えてくれた数少ない人達を奪った《バイオネット》への怒り、哀しみ、憎しみ、どす黒い感情が渦巻き少女を突き動かす
―許さない、バイオネット…破壊してやる、破壊してやる、破壊してやる、破壊してやる、この世から完全に破壊してやる!!―
最後のキーを押した瞬間、扉が乾いた音と共に切り裂かれ鈍い音をたて崩れ落ちた
少女の目には親友でありID5メンバー《ブリュンヒルデ》の姿がうつる。扉だったモノに気にも止めず、ズカズカとケーブルが広がっている床をものともせず少女へ近づくなりグイッと胸ぐらをつかみ耳元でナニかをささやいた
「………となの…君…生きてる…生き…て…」
微かに呟きやがてボロボロと大粒の涙を流す少女の心に灯った光《希望》は少女を正気に戻した。同時に、この世界に《G》を産み出してまった
少女はその凄まじい《破壊の力》が更なる災いを呼ぶと判断、恩師の祖父に当たる人と共に厳重封印した
《G》は自身が厳重に封印された《X》ルームで目覚めの時を待つ
同じ《G》を持つ者を…
「あ、あの~束さん?何でそんなに怒ってるの」
『…別に怒ってませんよ~~(黒笑み)』
食堂でご飯を食べ終え一夏くんと別れてすぐ部屋に戻ったオレは束さんと話してるんだけど、なんかすごく不機嫌なんですけど
「あ、あの~」
『何かな~無茶ばかりするリッ君?』
や、やっぱりおこってるし!たぶん今日倒れた事を千冬さん経由で聞いたんだ…
「ご、ごめんない束さん!もう無茶しないから!?」
『…ふ~んホンとかな~』
「…できるだけ守ります…ダメかな?」
『…………………仕方ないなあ~』
なんとか機嫌直してくれた。束さん、昔から怒ると機嫌を直すまで時間がかかる
でも何か嫌な予感が
『で、でもだよ!!今回の無茶ばかりは見逃せないから罰として束さんと…デ、』
「…デ?」
『デートしょう!詳しい日にちと場所はあとで!ではさ~ら~ば~だ~よ♪』
「あ、ちょ…束さん?…切れちゃった………罰だから仕方ないよなあ…」
モニターを閉じベットに倒れゴロンと寝返りをうち天井を見る
「…でも…デートってなんだろ…う~んわからん!とりあえず寝るか。明日も授業だし」
明かりを消しそのまま目を閉じやがて夢の世界へと落ちていった
―――――――――
――――――――
―フヒヒヒッ…さあ今日も――――しましょうか~アハッ!!―
影よりも暗い無数の異形
小さな影…いや十歳にも満たない子供に爛々と輝く瞳を向け地を蹴り襲いかかる
あと数センチと鋭い爪、牙がその体へ触れようとしたとき異形の動きが石像のように止まった
ズルリ…と音が響き異形の体はあらぬ方向へ崩れ落ち、回りにいるソレも同様に崩れ水音と共に落ちる
残されたのは小さな子供と異形の成れの果て、子供の体から薄く鋭い刃が血に濡れている
やがて刃をゆっくり振るい血を飛ばすと同時に体の中へと何もなかったように吸い込まれ消え、子供が頭をあげ見えた顔は……
第三話 出会い
「…ということでクラス代表は織斑君に決まりました!」
「え?ち、ちょっ?待ってくれ!俺負けたのになんで!?」
「それは私が辞退したからですわ!」
元気よく立ち上がるのは先日、オレと一夏くんが戦い負けた相手のオルコットさん
それになんかテンション高いし?
「まあ勝負はあなた達の負けでしたが、しかしそれは考えてみれば当然のこと。なにせわたくしセシリア・オルコットが相手だったのですから」
まあ、IS初心者のオレや一夏くんじゃ勝てないしな…
「それで、まあ、わたくしも大人げなく怒ったことを反省しまして」
あれ、なんか態度が柔らかいな…それにあの熱が宿った目は恋する乙女の目だ
それに気づいたのか篠ノ之さんがにらんでるし
「一夏さんにクラス代表を…「すまないがあと一人追加となった」…はい?」
言葉の遮るのは一方…いや担任の織斑先生、あと一人って?
「特例として獅童、お前も代表となった…」
「はいい!?千、千冬さ…ったあ!?」
「…織斑先生と呼べ……オルコットもいいな?」
「わ、わたくしはべつにかまいませんわ」
「いやあセシリアわかってるう~」
「しかも二人も代表なんだから美味しいね~」
う、なんかもう確定事項って感じでクラスのみんなに認識されてる?でもバイオネットの連中の件もあるし今まで以上に気を付けないといけないし渡りに船って感じでいいかな
「そ、それでですわね。わたくしが一夏さんにISを教えて…」
「あいにくだが。一夏の教官は足りてる。わ・た・し・が、直接頼まれたからな」
「あら、ISランクCの篠ノ之さん。Aのわたくしに何かようかしら」
「ら、ランクは関係ない!頼まれたのは私だ!い、一夏がどうしてもと懇願するからだ!獅童についてやればいいだろう!!」
「し、獅童さんはなんというか…放っておいても強くなるって気がするんですの」
一夏くんのコーチは私だと互いに譲らない二人…でもオレも代表なんだけどさ
「……座れ、バカども」
「「ったあ?」」
「お前達のランクなどゴミだ。わたしからしたらどれも平等にひよっこだ。まだ殻もとれてない段階で優劣をつけようとするな」
二人を叩いた煙が立ち上る出席簿を片手にそういうといまだに痛む頭を押さえるオレにさりげなく小さな何かを素早くわたし歩き教壇にたつ
「クラス代表は織斑一夏、獅童燐。異存はないな」
クラス全員の「はい」って声を聞き少し肩をおとしながらさっきに渡されたのを見ると一枚の紙切れ
とりあえず授業を受けてからみるか
――――――――――
―――――――――
「…来たか」
「あ、あの~いったい何のようですか?」
「燐、服を脱げ」
「え?」
早朝、まだ日も上がらないうちにISアリーナへ呼び出されに来ていきなりソレですか?
昨日は代表決定パーティーで散々取材されたり、写真とられたりで少し眠い
それに写真撮影の時………
―――――――
「ふん」
篠ノ之さんがなんか機嫌が悪い、視線の先には女の子に質問攻めされる一夏くんの姿…最近の様子を見て篠ノ之さんが一夏くんに好意を寄せてるって気づいた
なら少し助け船だしてみるかな
(篠ノ之さん、少しいい?)
(…なんだ)
やっぱり機嫌悪い、でも言わなきゃいけないかな
(篠ノ之さん、一夏くんのこと好きなんだよね)
(な!!)
(しっ!気づかれるよ…篠ノ之さん、一夏くんが好きなら今のうちがチャンスだ)
(な、何故だ?)
みんなに気づかれないように、ただしはっきりと口にする
(同じ部屋にいるのに何時もみたいにツンケンしてたら篠ノ之さんの気持ちは伝わらない。だから少しだけ素直になってみたらどうかな?じゃないと他の女の子に取られるよ)
(うう…だが…)
(篠ノ之さん、オレも協力するからさ、今日からでも素直に、ね)
(ど、努力する)
強くうなずき女の子に囲まれ困惑する一夏くんのいる場所へ歩いてく
まあ二人がうまくいくように協力するか
コップを手に取り中に入ったオレンジジュースを一気に飲み干した
―――――――
「どうした獅童?早く脱げ」
「あ、あの何で」
「…いいから脱げ!時間もないからな」
凄みがある目で見てくるから仕方なく上着を脱いだ…正直あまり見せたくないんだけど…
「…左腕を出せ」
有無を言わせないと感じさせる目に左腕を出すと何処から出したかわからない機械を左手首にあるGストーンに付けて端末を操作していく
「あ、あの~「…燐、少し黙ってろ」…はい」
長い沈黙、やがて小さな電子音が響いた
「GSジェネレータ正常稼働…よし、いいぞ」
「あ、あのまさかこれってアジャスタシステム?」
「束から頼まれたからな…無茶するお前を見張ってくれとな」
「あははは、なんかすごく心配かけてるんだね…ありがとう千冬さ…織斑先生」
「かまわないさ…だが束にあまり心配をかけさせるなよ…お前のことになると眠らずに何でもするのが目に見えてるからな」
「…は、はい」
軽く頭を下げオレはその場をあとにし皆がいる食堂へ向かった
「まさかアジャスタシステム渡してたなんてな…なんか千冬さんと束さんに助けられっぱなしだな~」
誰もいない廊下を歩きながら呟く…オレの体をよく知るのは千冬さん、束さん、レイジじいちゃん、師匠、織江、犬神、疾風、凍也、弾ぐらいだなと考えてたとき
「きゃっ!?」
出会い頭にぶっかり倒れそうになるのをあわてて手を掴んだ
「あ、大丈夫か?」
「…別に」
セミロングで水色の髪、メガネをかけた女の子が左手をジッとみてる
「わ、わりぃ痛かったか?」
「……(フルフル)」
体勢を直してから手を離す…でもメガネ越しにまだチラチラみてる…なんだろうと思い視線の先を見る、袖がまくり上がりGストーンが露になってる、あわてて袖を戻した
「あ、あの…今見たのはできるだけ人に言わないでくれるかな…」
「………………」
う、なんかすごく無口な子だな…でもこの子どこかで見た気がするな?
「……わかった」
「ありがとうな…あ、オレの名前は…「…獅童燐…」…?何でオレの名前を!?」
「…昨日イギリス代表候補生との試合見てた…」
「そ、そうなんだ…じゃあ負けたことも見てたんだ」
「…うん…ひとつあなたに聞きたいことがある。あの時の《光》はナニ?」
光…多分オルコットさんとの戦いでGストーンが活性化した際に起こる発光現象のことだ、機密に関わらない程度ならはいいかな
「アレはエネルギーの余剰出力が放出されたせいなんだ…」
「…余剰出力?」
「まあ、簡単に言えば《火事場のクソ力》みたいな感じだ…じ、じゃあオレ急いでるから」
「あ…」
これ以上は機密に関わると感じ女の子を残しその場を走りさった
あの女の子とは違うウィルナイフ、参式斬艦刀、プラズマソード、ダブル・リム・オングル、シェルブールの雨が無数に突き刺さるよう視線を背中にビシビシ感じながら
「まだ聞きたいことあったのに…」
一人残された少女は呟き、第二整備室へ歩いていった
そこから少し離れた場所では
「お、お嬢様?落ち着いてください!!」
「フフフ、私の愛しの簪ちゃんから逃げるなんて…フフフフフ…」
「だ、たから落ち着いてください!お嬢様ああああ??」
なにやら八墓村的?な服装に身を包んだ生徒会長を必死に押さえる一人の少女があったとかななかったとか
―――――――――
――――――――
「ぎ、ギリギリセーフ…」
「燐、早く座った方がいいぜ」
「そ、そうだな」
いそいそと自分の席に座り机に突っ伏せる燐、俺よりも先に寮を出たはずなんだけどな
「織斑くん、獅童くん。おはよ~。ねえ、転校生の噂聞いた?」
「転校生?今の時期に?」
詳しく聞くとどうやら中国の代表候補生らしい…ふと数年前に転校した幼馴染みの顔が浮かぶ
「あら、わたくしの存在を今更ながら危ぶんでの転入かしら」
「このクラスに転入してくるわけではないのだろう?」
まあ箒の言う通りかもしれない…っていつの間に俺の隣にいるんだ? でも中国の代表候補生か、みんなの会話から専用機持ちがいるのは一年では俺と燐、セシリアがいる一組、名前はしらないけど四組しかいないって事だ
まあ同じ一年なわけないだろな。このクラス対抗戦はクラス代表同士の戦いであると同時に本格的なIS教育を始める前の実力を図り指標を作るものらしいって燐から聞いた
クラス単位での団結力を強くするためのもあるらしいけど、代表になったからには箒や千冬姉に無様な試合を見せないように特訓をするしかないな
「その情報、古いよ」
学食デザートのフリーパス獲得に燃えるクラスメイトの声を遮るように声が響き目を向けた先には
「二組も専用機持ちがクラス代表になったの。そう簡単には優勝できないから」
腕を組み、ツインテールの少女が小さな笑みを浮かべて俺を見ている
「鈴……?お前鈴か?」
「そうよ。中国代表候補生、凰鈴音。今日は宣戦布告にきたってわけ」
ツインテールを軽く左右に揺らしながら堂々と宣言した
第三話 出会い 了
君達に最新情報を公開しよう。
鈴と再会を果たした一夏、だが些細なすれ違いから二人はクラス対抗戦で戦うことに
だが二人の決戦するISアリーナに現れたバイオネットIS
果たして燐、ガオファイガーは皆を守り戦えるのか
IS《インフィニット・ストラトス》~白き翼の戦士と勇気あるもの~
第四話 赤と青
次回もファイナルフュージョン承認
―イレイザーヘッド―
Catch the Winning Key!
これが勝利の鍵だ!