外道屋のドラゴンボール   作:天城恭助

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珍しく連投です。ただ単に、前のやつを投稿してなかっただけなんですが


56 ラディッツの娘、パースの実力

 大会当日。みんなが集まった。正に勢ぞろいだ。原作にはいなかったはずのラディッツやその奥さんと娘も追加されているが、死人が一人も出ずにここまでやってこれた。当然原作のラストまで……正確にはブウ編の終わりまで死人を出す気はない。……はい、そこ、フラグとか言わないし思わない。私の意のままにならないことなんて(ほとんど)ない。

 

「なんだ、コルクは居ねぇんか?」

「あのねぇ……コルクとセルの見た目はまんま一緒なんだから来れるわけないでしょうが。セルに何人殺されたと思ってんのよ。大会どころじゃなくなるから」

「それもそっか。ちぇっ、もう一度戦いたかったのによ」

 

 ベジータも不満気である。

 

 コルクに関しては本当に連れて行きようがない。今後も出番がなさそうである。自分の愉しみのためだけに生み出しておいて難だが、もう用済みなのである。殺しはしないが、外に出られることはあるだろうか……本人が望めば、宇宙に飛び立たせてあげてもいいが、本人がそれを望むかどうか。……それはまた今度考えることにしよう。

 

 みんなが大会申し込みをしていると、当然悟天達が引っ掛かった。

 

「君は少年の部だね」

「え!? 少年の部!?」

「15歳までの少年は少年の部です」

「別にいいじゃない」

 

 だが、私は口をはさむ。

 

「イ、イーヴィさん!?」

「その子たちの実力じゃ、同じ子供相手がかわいそうになるぐらい強いから大人と一緒にやらせてあげた方がいいわ」

「し、しかし規則ですし……」

「責任は私がいくらでも取ってあげるから」

「イーヴィさんがそこまで言うなら……」

 

 知名度というやつはこういうところで本当に便利である。地位や権力というやつは労力を使わずして、ある程度のことは思うがままだ。ある意味、そのために手に入れたような力でもある。

 

「わーい! ありがとう、イーヴィさん!」

 

 悟天とトランクスが喜ぶ。クリリンは嬉しくなさそうだった。

 

「ねぇ、私は?」

 

 そこに小さな女の子が来た。

 

「いや、流石に君は……」

 

 パース――ラディッツの娘。私はこの子のことをほとんど知らない。性格も実力の程も。ラディッツが相当甘やかしているのは間違いないが……

 

「流石に許可できんな。パースよ、少年の部で我慢してくれ……」

 

 ラディッツがパースと目線の高さを合わせ諭す。

 

「トランクス君も悟天君も大人の部に出るんでしょ。だったら、私も出たい!」

「パースはやめとけって。前に俺たちと遊んだ時、後ろに付いてくるのがやっとだったじゃないか」

 

 このパースは悟天とトランクスと遊んだことがあるようだ。言葉から推測するに一般人よりは強そうだが、悟天とトランクスほどではないようだ。それでも、一般人から見れば天と地ほどの差がありそうだ。だって、女の子と言えどサイヤ人だし。

 

「そうだね。今回は我慢しておいて」

「ねぇ、お願いイーヴィさん! 私も大人の部に出させて」

「無理言っちゃダメでしょ。すみません、社長。この子がわがままを」

 

 ラディッツの奥さん(……確か、マヨレさん)が私に謝る。いや、大人として当然のマナーというか礼儀というか……普通な人だ。

 

「気にしないで。それとこの場は会社じゃなくてプライベートだからイーヴィさんとでも呼んで。皆、そう呼ぶから」

 

 そう呼ばないのもいるけど。

 

「ありがとうございます。イーヴィさん」

「……少年の部で我慢する」

 

 不貞腐れた様ではあるが、本人もどうしようもないと判断したようだ。賢い子だ(と思いたい)。

 

「偉いわね。パース」

 

 マヨレがパースの頭を撫でる。

 

「パパ!」

 

 今度はラディッツに駆け寄るパース。ラディッツはパースを抱き上げる。

 家族仲はとても良いようだ。ラディッツの顔がやたらデレデレしていて気持ち悪いのは、どうでもいいとして、何か面倒なことにならなければいいのけど……と自分が面倒を起こそうとしているのを棚に上げて思ってしまう。

 

 

 受付を済ませ、会場内へと入る。ピッコロさんが悟飯を気遣ってカメラを破壊していたが、そのあたりは正直どうでもいい。そろそろ目立つ必要もなくなってきたし、マスコミが居なくても別にいい。界王神たちがどこにいるかも気になるところではあるが、今はまず楽しむことだけを考えよう。

 

 

 

 予選は原作通りのパンチマシーンである。ただし、私が作った特別性である。最初のサタンの時だけ設定を弄るが、それ以外は一般人では1点が出ればよい方という激辛設定にする。普通の設定だと遠慮せずに叩いた場合、みんなカンストしてしまう。というか、マシーンが壊れてしまう。そこで特別性のを作ったのである。ちょっと前からみんなの純粋なパンチ力を測ってみたかったんだよね。これだとビーデルが通れるか怪しいが……彼女なら20ぐらいはイケルイケル!……多分。

 

 

 結論から言わせてもらえば、ベジータがトップだった。というか、ただ単に一番遠慮なしに殴ったのがベジータだったからそうなっただけなのだが。本気で殴っても大丈夫とは伝えたが、そこまでやるのは気が引けたのか……まぁ、さすがに超サイヤ人になられると危うかった。しかし、悟飯が超サイヤ人はなしと決めていたのでなんとかパンチマシーンは壊れずに済んだ。

 とは言ったものの、強めにやっているために実力差がはっきりと出る。ベジータの次点に悟空、その次にピッコロ、18号、ラディッツ、悟飯、トランクス、悟天、クリリンと続く。

 審査途中、審査員もモブも壊れているのではないかと疑問を口にしたが、私という技術者が壊れていないと言えば壊れていないのだ。ちなみに、私はサタンと同じくやらなくてもトーナメント出場が決まっているのだが、あまりに文句を言うので私も殴ってきっちり100ポイント出しておいた。さすがにカンストさせると不正を疑われそうだったので自重した。

 

 

 少年の部の試合は、当然のことながらパースが勝ち抜いていた。おそらく私が見ることがないであろう悟空の孫であるパンを思わせる戦いぶりである。というか、周りが雑魚過ぎるだけである。この様子なら私が何か仕込んでもよかったかもしれない。面白い試合が一つもない。決勝の相手は本来であればトランクスが倒したというかあしらった、名付きのモブであるイダーサだった。しかし、なかなかにひどいネーミングである。ダサイって……性格からいえば15歳と言えど、むしろ15歳故なのか、なかなかにクズな性格が染みついている様なので哀れとは全く感じないが。

 とか思っていると決勝が始まり、試合開始直後に軽いボディブローでイダーサが沈んだ。

 いつもの審判の人が気絶を確認した。

 

「気絶している……パース選手の勝ち! 少年の部優勝です!」

 

 勝ったものの浮かない表情のパース。あまりに一方的な試合ばかりでは面白くないのは当然だろう。サイヤ人の気質を強めに引き継いでいる様子の彼女にとっては少しかわいそうである。

 

「それではお楽しみのアトラクションです! たった今少年の部を優勝したパースちゃんに世界チャンピオンのミスターサタンと戦ってもらいましょう!」

 

 サタンの本当の実力を知らないためか、ちょっとわくわくした様子のパース。これはサタンの強さにがっかりして余計落ち込んでしまいそうだ……サタンに助け舟を出す意味でもここは私が一肌脱ぐべきかな。

 

「ちょーっと待ったー!」

 

 私はくるくるとバク宙しながら武舞台に降り立つ。

 

「パースちゃんとの試合私にやらせてくれない?」

「え、えぇっと、私の方ではなんとも……」

「少年の部を優勝して、お遊びと言えども世界チャンピオンが小さな女の子相手じゃ、やりづらいと思うし、ここは女である私が戦った方が良いと思うのよ」

「それもそうですが……やはり、ミスターサタンに確認を取らないと」

「ミスターサタンにはちゃんと許可取ってあるから問題ないわ」

 

 本当は取ってないけど事後承諾で問題ない。サタンだし。

 

「そうでしたか! パースちゃんもそれでいいですか?」

「……イーヴィさんは強いの? パパとママの上司の人っていうことは知っているけど」

 

 本当のことを観客に聞かれるのも嫌なのでパースに耳打ちするように伝える。

 

「自分で言うのも難だけど結構強い方だと思うわ。知っているかは知らないけど、私が知る限り最強の人。あなたの叔父さん、孫悟空と戦って勝ったこともあるわ」

「悟空叔父さんと……!?」

 

 どうやら悟空の強さを知ってはいるようだ。

 

「どう? やる気になった?」

「うん! お願いします!」

 

 パースは構えを取る。

 

「それでは、急なことではありますが、少年の部を優勝したパースちゃんとイーヴィさんの試合始めてください!」

 

 イーヴィは様子見に軽くジャブを放つ。パースは、それに対して微動だにしていなかった。

 

 どうした? 防御も避けもしないの? イーヴィの瞬間的な思考のさなかで頬に触れるぎりぎりの瞬間にパースは動いた。イーヴィの拳をいなし、腕を掴みそのまま一本背負いを仕掛けた。

 

「んなっ!?」

 

 イーヴィはそのまま綺麗に武舞台に叩きつけられてしまった。

 

「おぉっと! 女性とは言え、自身の体格の1.5倍以上はあろうイーヴィ選手を投げた!」

 

 生身であるが痛みはそれほどでもない。だが……

 

「柔道だったら一本負けね」

 

 パースはにぃっと笑う。

 

「たあぁああああ!」

 

 そのまま膂力だけで、私を上に放り投げる。生身であるが故、体重は機械の時よりはるかに軽いが、それでもパースの倍以上は体重がある。それを放り投げるなんて……混血とはいえサイヤ人にその常識を当てはめること自体おかしいか。思考を改める。イーヴィは正直ちょっと強めの少女ぐらいだろうと思っていたが、明らかに少年時代の悟空より強い。

 

 そして、パースは追い打ちをかけるべく空に飛びあがる。投げられたとはいえ勢いはそれほどでもない。パースが追い打ちをかけようとした瞬間に宙で体制を立て直した。

 

「わわっ!?」

「お返しよっと」

 

 軽いエネルギー弾で吹っ飛ばす。

 

「きゃあ!!」

 

 パースはくるくるときりもみしながら飛んでいき、場外に落ちてしまった。

 

 

「おぉっと! パース選手場外です! この試合、イーヴィさんの勝利です! しかし、パース選手大健闘です! あのイーヴィさんを二度も投げ飛ばすその強さ! これは将来に期待が持てそうです!」

 

 確かにこれは将来有望だ。まぁ、もっと強くなるころには私はいないだろうが

 イーヴィはパースの下へと向かう。

 

「立てる?」

「はい」

 

 イーヴィの差し伸べた手を取り立ち上がる。

 

「本当に強いんですね。イーヴィさん!」

「まぁね。パースのその武術は誰から?」

「自己流だよ。パパもママも忙しそうだから本を読んでずっとイメージトレーニングしてたの! 悟天君もトランクス君も対決ごっこで私相手だとちゃんと相手してくれないし」

 

 イメージトレーニングだけでこれだと本当に伸びしろが大きそうだ。純粋な膂力だけでは勝ち目がないから技術を身に着けようとする。この世界観にあまりない発想なだけにちょっと嬉しい。直接でなくとも私が変化させたための結果だからこそそう思う。

 

「今度、悟空に修行を付けてもらえるよう頼んでみなさい。悟空なら喜んで相手してくれるだろうから」

「うん!」

 

 こうして少年の部は幕を下ろした。

 ようやくブウ編の導入部分が終わり、序章が始まろうとしている。スポポビッチやヤムーそれとついでに界王神とキビトに天下一武道会を邪魔させる気はゼロだけどね!




ちなみに、この先パースが活躍することはおそらくないでしょう。せっかく出てきたオリキャラなのでちょっとだけ活躍させたかっただけのお話。

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