外道屋のドラゴンボール   作:天城恭助

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63 魔人ブウ復活

「ふぅ……」

 

 イーヴィは自身の掌を見つめ、拳を握り何かを確かめる。

 

『ひひひ、ひーひっひっひっひ。お前はもう僕のしもべだよ』

 

 頭の中に声が響く。わざと術を受けたが、しもべだと言われるのは少々腹が立つ。

 

『さぁ、そいつらを殺すんだ。界王神だけは半殺しにしてね』

「……その前に片づけておきたいものがある」

『……? そんなのいいから、僕の命令を優先するんだ!』

 

 イーヴィはダーブラの鎖を解いた。

 

「ぶはぁ……さすがはバビディ様。あいつをこちら側に引き込むとは」

 

 イーヴィはダーブラにゆっくりと近づく。

 

「なんだ? お前はあいつらの相手をしろ」

「先に片づけておきたかったのよ……お前をね」

「何っ!?」

 

 イーヴィはダーブラに掌を向けてエネルギー弾を放った。

 それは原作でダーブラがキビトを殺した方法と同じような形となった。

 

『な、ななな!? なんでダーブラを殺したんだ! そんな命令はしてないぞ!』

「あら、ごめんなさい。ちょっとむかついてたから、つい」

『……ふん。まぁ、その強さに免じて許すよ。だから早くやれ』

「はいはい。というわけで、戦うことになっちゃった」

 

 いつもと同じような笑顔を悟空たちに向ける。

 

「しっかりしてください、イーヴィさん!」

「おめぇ、本当にバビディに操られちまってるのか?」

「残念ながらそういうことになっているね」

 

 瞬間移動を使い悟空の後ろに回った。

 

「ほいっと」

 

 回し蹴りが悟空を捉えた。すぐにイーヴィは次元刀を振るい、次元が裂け悟空はその裂け目の中へと入りどこかに消えた。

 

「父さん!」

「はい、君も入ってね」

 

 またしても瞬間移動で今度は悟飯の後ろに回り、前蹴りで吹き飛ばしそのまま裂け目に吸い込まれていった。そして、裂け目は閉じた。

 

「そ、そんな……! 悟空さんと悟飯さんが……!」

「か、界王神様! しっかりしてください!」

「ふむ……」

 

 イーヴィが次元刀を振るうと界王神とキビトの足元に次元の裂け目が表れた。

 

「なっ!?」

 

 イーヴィは瞬間移動で界王神とキビトの頭上に表れた。

 

「それじゃあねー」

 

 界王神とキビトを裂け目の中に押し込み、次元の裂け目は消えてなくなった。

 

『お前、一体あいつらをどこにやったんだ。僕は殺せと命令したんだぞ』

「実質、殺したようなものだから気にしないでよ。ある意味、あの世より遠い場所に送ったんだから」

『へ?』

「さて……」

 

 瞬間移動でバビディの下へと移動した。

 

「ひぇっ!」

「そんなに驚く必要ないでしょ」

「……そうかもしれないけどさ。お前のせいで色々と台無しになっちゃったからね」

「そりゃ悪うござんした」

 

 イーヴィは力を使い椅子を創り出し座った。

 

「代わりと言ってはなんだけど魔人ブウをすぐにフルパワーで復活させてあげようか?」

「なんだって? 本当にそんなことができるのかい?」

「もちろん。ただ、私の質問にいくつか答えてからね」

「質問? いいだろう。なんでも聞いていいよ」

「まずはそうねぇ……どうして君の親父さんは、魔人ブウを封印していたと思う?」

「どうしてってそりゃ休むためだろ?」

「どうして休む必要があったの? 魔人ブウは本当に言うことを聞くの?」

「パパの創ったものなんだぞ。僕の言うことを聞くに決まってる」

「……真正のアホね」

「ん? 今何か言ったか?」

「いえ、何も。最後に一つだけ忠告させて。これから魔人ブウを復活させるわけだけど言うことを聞くとは限らないよ」

「お前がそんな心配をする必要ないんだよ」

「私は忠告したからね」

「パッパラパー!」

 

 バビディが呪文を唱えるとブウの封印された玉ごと宇宙船の外へと出た。

 イーヴィは玉に手をかざす。気をブウの玉に送る。ブウの玉が置いてある台にある計器の様なものの針がゆっくり回転していく。

 

「結構、持っていかれる……」

「なんだ、無理なのか?」

「無理じゃない……! 黙ってみてなさい」

 

 そんで死ね!

 

 空の遥か彼方上の衛星がちょうど近くを通る。バビディの宇宙船を狙いを定め、極大のレーザーが放たれた。それは遠くから見れば、光の柱が建っているかのようであった。

 

 バビディの宇宙船は破壊され、辺り一帯は何もない荒野と化した。魔人ブウの玉は少し焦げたような色にはなったが、フルパワーまで充填された。

 そして、バビディの方は

 

「あれで生きてたんだ」

 

 全身に火傷を負っているようだったが、生きていた。

 

「な、なんでお前は無事なんだ……」

「私はあの光線のエネルギーをそのままブウの玉に移してたから無傷だよ。自分のエネルギーだけじゃ、ヘロヘロになっちゃいそうだったし」

「こ、この……ま、まぁいいよ。これで魔人ブウの復活だ!」

 

 魔人ブウの玉からピンク色の煙が溢れ出す。

 

「出るぞ! 魔人ブウ!!」

 

 玉が真っ二つに分かれたが、中身は空っぽだった。

 

「あ、あれ……空っぽ?」

「上をよく見なよ」

 

 空に飛んで行ったピンク色の煙が段々と一か所に集まり、人型になっていく。

 

「ブウ!!」

 

 デブで細目のブウが復活した。降りてきたかと思うと復活の喜びからか跳ね回る。

 

「おーい、魔人ブウ」

 

 バビディが魔人ブウの傍に行き、イーヴィはそれに付いていく。

 

「僕はお前を作ったビビディの息子のバビディって言うんだ。玉に封じ込められたお前をすごい久しぶりに復活させてやったんだぞ」

 

 復活させたのは私だけどな。と、イーヴィは心中で毒づく。

 魔人ブウは、細い目を少し開けてバビディを見やる。

 

「だ、だから、今日から僕がお前の主人だ」

 

 魔人ブウが無視するように別の方向を見る。

 

「お、おい。挨拶ぐらいしろ。僕はお前のご主人様なんだぞ」

「ばぁ!!」

「ひぇっ!!」

 

 魔人ブウはいないいないばあの要領でバビディを驚かせた。バビディはそのまましりもちをついた。

 

「あっはっはっはっはっは!」

 

 魔人ブウは笑った。とてもご機嫌なようだった。

 

「私はイーヴィ。よろしく」

 

 イーヴィは一歩前に出て手を差し出す。

 

「なんだ?」

「握手よ。地球での挨拶」

「こうか?」

 

 イーヴィが差し出した手を手に取る。よくわからないといった表情からニコニコした笑顔になる。イーヴィも笑い返した。そのまま、イーヴィはブウに何か耳打ちをした。

 

「いいぞ。やろう」

「ん? なんだ? 何を話している?」

 

 その様子を見て、バビディが話しかけてきた。

 

「教えてほしい? それじゃ、ちょっとこっち来て」

「これから忙しくなるんだ。さっさとしろ」

 

 ゆっくりと歩いてきたところで、イーヴィはバビディの口にテープを張り付けた。

 

「……!!」

 

 もがもがしているが、何を言っているかはわからない。すぐにテープを外そうとするが、外れそうにもない。

 

「地球で作られたただの瞬間接着剤だよ。これで呪文は唱えられない」

 

 バビディは逃げ出そうとしたが、イーヴィはマントを踏んで逃がさない。

 

「私が逆らったのが疑問? それなら単純明快、本当は洗脳にかかっていないからだよ。手の甲のこれは、ほら」

 

 手の甲に付いていたMの字はシールの様に剥がれた。Mの字は手の甲にではなく本当は額に表れていたのだが、その見た目が嫌で手の甲にシールを張っていた。バビディはそれに疑問すら浮かんでいなかった。

 

「私も洗脳なんかの類は得意でね。最も魔術ではなく科学でだけどね。洗脳された後、すぐに洗脳しなおしたんだ。最初から君の潜在能力を引き出す力を利用するのが目的だったのさ」

 

 バビディはマントを引っ張って外そうとするが外れる気配も破ける気配もない。

 

「それで君の処遇も少し悩んでいたんだ。最初は殺すつもりだったけど、今この状況ではブウの教育に悪い。かと言って、君が改心する可能性はまぁ、ゼロだ。一時は誓ったとしてもどうせすぐに破る。なら、どうするかって? ブウ」

「ほいっ!」

 

 イーヴィはその場から離れ、ブウは自分が入っていた割れた玉にバビディを入れた。そして、頭の触手から怪光線を浴びせると玉は閉ざされた。

 

「一生死ぬまでその玉の中で反省するといい。さて、死ぬのとその中で一生を過ごすのはどっちが良かったかな? そこも含めて悔やみ続けるんだね」

 

 何かの拍子でまた出てこられても困るので、しっかりとどこかで管理しなくてはならない。出てきたところで何ができると思わないが、界王神の様に魔人ブウの玉を放置するようなマネはしない。

 

「さて、これから君に紹介したい相手が居るんだけど、その前に悟空たちを回収しないと」

「誰だ?」

「私の仲間。君とはこれから仲良くしたいし」

 

 イーヴィが空間を裂いて悟空たちを送った場所は精神と時の部屋だった。こちらの空間での1日が精神と時の部屋では1年。1分で約6時間経ってしまう。向こうに送ってから5分程度は経っているため1日以上は経っている。

 次元刀を使い空間を切り裂き、再び精神と時の部屋に繋ぎブウと共に中に入った。

 

「ハロー、元気?」

「イーヴィじゃねぇか! ……その後ろのやつは誰だ?」

 

 悟空たちと一緒にいた、界王神が恐れおののいていた。

 

「あ、ああ、あああぁあ……! ま、魔人ブウ……!」

「な、なんだって!?」

「待って。ブウに敵対意思はないよ。ねぇ」

「うーん。まぁ、今のところは」

「ほら、大丈夫」

「今のところはって言ってますよ! 本当に大丈夫なんですか!? それにあなたはバビディに洗脳されたんじゃ!?」

「洗脳はされたけど自分で洗脳しなおしたのよ。自分に従うようにね」

「そ、そんなことができるなんて……」

 

 ぐぅうと腹の音が聞こえる。

 

「話の途中で悪ぃんだけど、飯食わしてくんねぇか? オラ、腹減っちまってよぉ」

「そうね。ブウに紹介したい人もいるし、そっちの方で食事を取りましょう」

 

 精神と時の部屋を切り裂いた空間から出た後、連絡を取る。大勢で押し掛けるために食事を用意させるためだ。心の準備も多少は必要になるだろう。

 

 

 連絡を取った後、瞬間移動で邸宅に向かう。サタンの家だ。

 

「おぉ、イーヴィさん! 私に紹介したいというのは、そちらの方々で?」

「いや、正確にはそこのピンク色の」

「ブウ」

「そ、そうですか」

 

 若干ビビり気味のサタン。一応、どういう力の持ち主かは事前に説明しておいた。

 

「さ、さ。まだ準備中ですが、食事を用意していますのでこちらに来てください」

 

 悟空や界王神たちに一体どういうことなのか説明を求められたが、食事を取りながら話すと言った。

 魔人ブウはパーティ会場のような大量の食事をみて、目を輝かせた。一目散に食事に向かう。ものすごい勢いで食事がなくなっていく。

 

「あぁ! ずりぃぞ!」

 

 張り合うように悟空も食事を取りに行く。

 

「……まぁ、説明は腹ごしらえしてからでもいいでしょ」

「そうですね。ちゃんと説明してもらいますよ」

 

 しばらくして、イーヴィは自身がこれまでの経緯を話した。洗脳にかかったふりをしたこと。バビディを封じ込めたこと。

 

「しかし、どうしてそのような回りくどいことを」

 

 小声でバビディだけを倒せばよかったではないですか。と耳打ちする。

 

「元々の魔人ブウが破壊の化身だというのは私も良く知っているけど、そこの魔人ブウが無邪気な子どもみたいなものということも私は知っていたの。それが閉じ込められたままなんてのもかわいそうじゃない」

「それだけのためにこんな危険なマネを!?」

「別に理解してもらおうとは思わない。ただ、あの魔人ブウの玉をずっと放置するのもよくなかったでしょ。封印なんて何が原因で解かれるかわからないんだから、問題を先延ばしにしているのと大して変わらないわ」

「そ、それは……そうかもしれませんが……」

「それに私はこの一件が終わったら、元の世界に帰るつもりだから」




ようやく終わりが見えてまいりました。魔人ブウ編はあと少しで終わると思います。終わるといいなぁ。今年中に終わらせたいと思っています。

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