SPACE BATTLE CRUISER YAHAGI -EPISODE OF 2199-   作:アマナットー

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プロローグ ~ある歴史家の覚書~

 二十二世紀初頭。

 科学技術の発展により、宇宙空間での航宙技術を確固たるものとした人類は、逼迫する地下鉱物資源の次世代調達先としてついに太陽系内部へと進出し、微々たるものであっても着々とその生存圏を拡大していた。第二次大航海時代の始まりである。

 かつての欧州諸国の大規模な外洋進出になぞらえたその名の通り、富を求める多くのものが船を駆り、宇宙という大海原へと乗り出したのだ。

 月面の国際基地から採掘されたヘリウムスリーは、星の海をゆく船たちの重要な燃料源となって火星のテラフォーミング事業の成功に多大に貢献したのは周知の事実であり、さらに土星近域の衛星エンケラドゥスで発見されたコスモナイト90の、柔軟な加工のしやすさと加工後の堅牢な原子構造は宇宙船の装甲板や核融合機関の効率化などの機構を飛躍的に向上させ、さらなる宙域への遠征を可能なものとした。

 これら宇宙技術の発展に地球は沸いた。これまで夢物語であると思われてきた宇宙開発に可能性を見出した。人類は一つの小さな惑星にとどまることなく、さらなる深みへ進出していくと思ったのだ。

 むろん、発展の影にはそれ相応の血が流れ、それは時に多くの悲劇を生み出すものである。かつて幾度となく繰り広げられた大いなる大戦から長い時を経て、人類が一つの共同体として成立していた時代でもそれは変わりがなかった。二一八〇年ごろにはテラフォーミングを終えていた火星に入植し、世代を重ねた開拓移民団の子孫マーズノイドたちと地球の間で勃発した内惑星紛争がその代表例であろう。

 かねてからの経済摩擦と課税問題に、常日頃から水面下で対立していた宗主国たる地球の植民地からの脱却と政治的な独立を図った火星の独立戦争は大まかに二度にわたって繰り広げられ、物量で勝る地球軍に対し、火星軍は隕石を用いた奇襲攻撃によって短期決戦を図ったが、艦隊戦力の差を埋められずに主要コロニーが無差別攻撃に晒されたため、無条件降伏を余儀なくされた。

 結果として火星の独立は認められず、マーズノイドたちは地球へ強制移住され最終的に帰化することとなった。

 宇宙にまで拡大された人類同士の戦争。数多くの犠牲を払い、多くの遺恨を残すこととなった出来事を体験した人々はその世紀的な大戦を歴史の一ページに刻んだ。

 当時の地球人とマーズノイドたちはその起源をともにしながら煮え切らない関係を保ちつつも共同で地道に開発を続けていくと、思われていた。

 この時の人類のだれもが、知る由もなかったのである。

 だれが予想しただろうか。それから幾年も立たぬうちに人類が異星文明と接触し、そして防戦もままならぬ全面戦争を開くなど。

 だれが予想しただろうか。人類種の絶滅までのカウントが迫ってきた時期に、十数万光年という途方もない宇宙の彼方から救いの手が差し伸べられたなど。

 だれが予想しただろうか。人類滅亡まで残り一年を切ったときに、人類史上初の大型光速突破宇宙戦艦が僚艦を引き連れ地球を飛び立ち、最終的に地球そのものを救うことになると。

 だれが予想しただろうか。この時から地球は銀河も、時空をも超越した大規模な戦争の渦中へたびたび巻き込まれていくことを。

 

 

 

 

 

 時に西暦二一九九年。地球は今、最期の刻を迎えようとしていた。







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