死を見る大空   作:霧ケ峰リョク

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久しぶりです。
ちょっと現実が忙しいのと今回の話が難しいので遅くなりました。
正直出来はいまいちですが…………というか少し書き方忘れてしまいました。
少しずつ書いていこうと思うので、頑張っていきます。

と、いうかリボーンの日常編のキャラ多過ぎだよぉ!

トマゾファミリーとかやりたいのにぃ…………ちょっと飛ばし飛ばしでいきたいけど何故か詳しく書いていやがるし(愚痴

と、いうわけなのでこれからも頑張ります。


ポイズンクッキング・いず・はる

「なぁ、リボーン。お前のそれは何だ?」

「俺の子分からの情報を入手してるんだぞ」

「だからといって顔面にカブト虫が密集しているのはおかしいと思う」

 

素直にいって気持ち悪い、そう思わずにはいられなかった。

少なくとも可愛らしい赤ん坊の顔にカブト虫がびっしりと張り付いていたら誰だって叫び声を上げるだろう。

ユニの場合は話で聞いていたのだろうが、それでも顔を青褪めた。

流石に赤ん坊の顔面に虫がベッタリと張り付いているのは気味が悪過ぎである。

本当に幼い子どもが見たら間違いなく泣くだろう。ランボは全く泣いていないどころか「ランボさんはリボーンなんかに負けないもんね!」と言って全身に蜂蜜を塗りたくり、その結果スズメバチの群れに突き刺されることになってしまったのだが。

幸いなことにスズメバチの毒はその場で殺したから良かったものの、刺されたことによる痛みまでは消すことが出来なかったので今は大人しく家で過ごすことになっている。

 

「それにしても、最近本当に暑くなってきたよな。おかげでさっきから変な幻聴が聞こえるんだけど」

 

綱吉は背後からガシャンガシャンと何か重たい物が歩いているような音を耳にしていた。

とてもではないが後ろを振り向きたくはない。今は物凄く熱くなってきているし、恐らく幻聴なのだろう。

ジュワァァアアアアアア等と毒々しい音が鳴っているのも気のせいなのだろう。

どうやら最近の熱さに注意し忘れて水分不足になっているらしい。ちゃんと体調に気を付けなくては――――。

 

「そうだな。幻聴じゃ無いな」

「何で眼を逸らそうとしていたのに現実を突き付けるんだよ!」

 

リボーンから告げられた残酷な現実に綱吉は思わず叫んでしまう。

何が悲しくて朝っぱらからこんな厄介事に関わらなくちゃいけないのだろうか。

そう思いながら綱吉は決意を固め、後ろを振り向く。

 

「ぐぁあああああああああああ!!?」

 

振り向いた瞬間、綱吉を襲ったのは目が染みるほどの強い刺激臭だった。

 

「眼が、眼が物理的に痛い!?」

 

あまりの刺激に綱吉は両目を閉じてしまい、その場で悶え苦しみ始める。

これ毒だ。間違いなく毒だ。そう理解するのに然程時間はかからなかった。

 

「チャンスよ! くらいなさい、ポイズンクッキング・串刺しパスタ!」

 

視界が封じられた綱吉に何者かが飛び乗り、攻撃を仕掛けようとしてくる。

涙が止まらず、線も見えないぐらい滲んだ視界で綱吉は振り下ろされる何かを両手を使って回避し、相手を突き飛ばした。

 

「ぐっ、少しはやるようね…………」

 

突き飛ばされた相手は口元を拭いながらそう呟く。

声の高さからして女の声だという事に気付き、綱吉は襲撃者から距離を取る。

 

「はじめまして、といったところかしらね。ボンゴレ十代目」

 

その女は一見して見るととてつもない美人だった。

イタリア美人という言葉は彼女の為にあるくらいと言っても良いくらいに、優れた容姿を持っている。綱吉が知りうる限り、アリアぐらいしか大人のイタリアの女性を知らないがそれでもこの女が美人であるという事だけは理解出来た。

ユニやリゾーナとは違い、美しさという印象を受ける。

しかし、それ以上に彼女が発する毒々しいイメージが綱吉を恐れさせた。

 

と、いうかこの女の人。何処かの誰かさんと似た空気を感じる。

 

頭の中でそう言った考えが浮かぶ中、リボーンはいつも通りの淡々とした表情で襲い掛かって来た女性の名を言う。

 

「久しぶりだな。ビアンキ」

「ええ。久しぶりね。リボーン」

 

どうやら相当長い付き合いがあるのか、二人ともかなり親しげである。

しかしながら綱吉としては自分の命を狙っているのに、その下手人相手と親しくしている姿を見るのは少し腹が立つ。

最もその態度は自分が殺されないと確信しているから、取っているのだというのは分かっている。

分かっているからといって、怒りを覚えないわけじゃないが。

そんな事を考えながら綱吉はリボーンに怒気を向ける。

顔面にスリッパと化したレオンを叩き付けられた。

 

   +++

 

ビアンキ、通り名を毒サソリのビアンキ。

イタリアで活動している殺し屋で、ポイズンクッキングという作った料理が何故か劇物毒物に変えてしまうという、メシマズも真っ青な異能の持ち主である。ちなみに彼女自身そのポイズンクッキングのことは自覚しているがよく他人に食べさせようとしてくる。本人曰く「愛があれば大丈夫」とのこと。

なお、メシマズによくある味見をしないで振る舞うということは無く、ビアンキは自分の作った料理をちゃんと食べることが出来る。

グロテスクな見た目の割に味は良く、一流のレストランでも通じる程だ。

ただのメシマズとは違うのだ。毒味をした上で食事を出すことも出来る。

食べたら死ぬが。

 

「そしてビアンキはオレの愛人だ」

「どうなってんだよこのマセガキ」

 

いくらなんでもユニの情操教育に悪すぎではなかろうか。

と、いうか愛人という言葉の意味を理解した上で言っているこの赤ん坊恐ろし過ぎる。

見た目通りの年齢じゃないのはこの眼があるので分かる。もし無かったら分からなかったが。

 

「それできみは誰だよ」

「ハルはハルです!」

「いや、だから誰なんだよ」

 

そして突如として現れた緑中の制服を身に纏った少女の登場に綱吉は混乱していた。

 

「この娘は三浦ハル。外で歩くリボーンの姿を見て、そのキュートさに心を奪われたの」

「…………あの、何でそんな娘がここに居るんでしょうかね?」

「リボーンを独占している貴方に対して決闘を申し込むつもりだったのよ」

「ねぇ、本当に行って良いですか?」

 

本当ならば普通に並中に登校する筈だったのだ。

それがどうしてこんな朝っぱらから騒動に巻き込まれなくちゃいけないのやら。

 

「ハル達はっ! リボーンちゃんを独占している貴方に決闘を申し込みます!」

「いや要らないからこんな産業廃棄物。とっとと引き取ってくれよ」

 

リボーンの土踏まずが綱吉の後頭部にフィットする。

激しい痛みに悶え苦しみそうになるが、流石の綱吉もそろそろ文句を言いたかった。

今回に関しては自分では無く、リボーンが持ってきた騒動だ。

一人は全く違うが他人の色恋沙汰に手を出すつもりは無いのだ。

 

そう、だから今まで内に溜め込んできたものを言おう。

 

心の内側に積もっていた思いをぶちまけようと綱吉は口を開く。

 

「そもそも俺がリボーンを独占しているとか言うけどさ、本当にリボーンが好きならばそんな事を気にする必要は無いと思うんだよ」

 

長年殺し屋をやっていた者としての勘か、リボーンはこれ以上綱吉が口を開くと不味いということを理解してしまう。

だが綱吉はリボーンから距離を取り、攻撃を回避できる立ち位置に移動していた。

これではあの減らず口を止めることが出来ない、リボーンは憎々し気に舌打ちをする。

 

(きっとそんな事を考えているんだろうなぁ)

 

赤ん坊の癖にプレイボーイなリボーンの姿を眺めつつ、綱吉は話を続ける。

 

「不満しか無いけど、俺の家庭教師やっているとはいえずっと俺の教育をしているわけじゃないんだ。その合間だって時間を取ることが出来るだろうに」

「悪いなツナ。オレは今、お前の教育で手一杯なんだ。主にしょっちゅう血涙でぶっ倒れるどこぞのクソガキのせいでな」

「そりゃ悪かったね――――って、ちょっと疑問に思ったんだけどさ。何で二人は俺を倒そうとしてるのさ」

 

脳内のスイッチを切り替え、綱吉は直死の魔眼で二人を見抜く。

ここ最近の間、魔眼殺しを使わないでいたせいか、それとも慣れてしまったせいなのかは知らないが以前よりも楽にはなっている。

 

「ああ言わなくて良いよ。リボーンに自分の方向を向いてほしいって思ってるんだよね? でもそれってさ、愛って呼べるの?」

「ええ。それが私の愛よ。ハルは可愛らしいリボーンに焦がれているから少し違うわね」

「…………そっか、ならビアンキさんだっけ? 貴方は愛している人の邪魔をしたいんだね」

「違うわっ! リボーンは最強の殺し屋よっ! それがこんなぬるま湯に浸っているなんて…………」

「でも邪魔をしているのも事実だ」

 

綱吉の言葉は深く、そして二人の心に突き刺さる。

これは不味い。そう思ったリボーンはその場で掛けて綱吉の口を塞ごうとするが、それを予測していた綱吉はあっさり回避する。

 

「本当に愛しているのならさ。その人のやっていることを見守るとか、応援したりするものなんじゃないの?」

 

別に綱吉としてもビアンキと三浦ハル、その両名を傷付けようとは思っていない。

だが一方的な事で愛を語る、その事に我慢が出来なかった。

 

――――憐憫の獣が居た。

彼のモノは行き付いた答えこそ間違えたが、その過程には深い愛があった。

でなければ人類を一人一人殺す必要等無いから。

でなければ人類を再設計する必要が無いから。

 

――――回帰の獣が居た。

彼女は存在するだけで悪だった。だが彼女はただ母親だったのだ。

母親が子を慈しみ守るのは当然のことだ。

もう一度必要とされたいと思う事の何が悪いのか。

 

――――快楽の獣が居た。

彼女は己の悦楽の為に他者を殺した。それは本当に許されないことだ。

自己愛の極みと言っても過言ではない。だが彼女はそれでも人を救ったのだ。

例えその目的が自分の快楽を満たすものだったとしても。

 

――――比較の獣が居た。

彼は目覚めること無く、その機能は停止した。

だが彼は見つけたのだ。美しい物を、とても美しい物を見たのだ。

こんなに美しい物があるのなら世界を滅ぼす必要なんてない。

 

――――そして『全能』の少女が居た。

彼女は目的の為に罪の無い少女達を沢山殺した。

沢山の人達の人生を捻じ曲げ、不幸にしてきた。

それは決して許されないことで、まぎれもなく彼女は悪だった。

だけど、彼女はただ好きになった人に幸せになってほしかっただけなのだ。

 

「だとしたらそれは愛なんかじゃ無いよ。一方的な押し付けがましい感情だ」

 

自分は知っている、彼等の愛を。だからこそ一方的な愛は否定するしか無かった。

何故なら自分自身も虹の少女や海の青年同様に『愛』を宿しているのだから。

 


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