「写真撮影、ですか?」
ある日、私、東美帆は月刊戦車道で記者をやっている秋山優花里さんからそんな話をいただきました。
「はい、そうです! 実は戦車道連盟のほうでもっといろんな層に興味を持ってもらいたいという方向になっておりまして、そこで! 期待の新人と言われている東殿に白羽の矢が立ったというわけなんですよ!」
「はぁ……」
優花里さんの話を要約すると、どうやら私に可愛らしい衣装を着て写真撮影の被写体になって欲しいということなのだそうです。
私の容貌が評価されてそういう話がやってくるのはありがたいことなのですが、正直私はあまりその話に乗り気ではありませんでした。
「優花里さん……申し訳ないのですができればお断りしたいのですが……」
「ええーっ、なんでですかー!?」
「いえ、なんでもかんでもないですよ。だって恥ずかしいじゃないですか……そんな、全国に発行される媒体に自分の写真を乗っけるだなんて」
「いやいや、そうは言ってもすでに東殿は月刊戦車道などで組まれている特集などで何度も紙面を飾っているではないですか」
「それはそうですけど……それとは方向性が違います。私、可愛らしい服とか似合いませんし……」
私はそれが嫌でした。
戦車に乗っている姿などならば仕事の一つですしパンツァージャケットを着ているので特に気になりません。
ですが撮影用に用意された可愛らしい服を着て撮影に挑むというのはどうにも……。
「そんなこと言わないでくださいよー。東殿ならきっとできますってー。一緒に参加する別の選手もいますから! そんな恥ずかしがらずにどうかお願いします! この通り!」
優花里さんは顔の前で両手を合わせて私に頼み込んできました。
私よりも一回りは年上の優花里さんにそんな手を合わせられたら気まずいというものじゃありません。
「や、やめてください! そんな格好!」
「いいえやめません! 東殿にオッケーを貰えるまではこの秋山優花里、テコでも帰りません!」
うう、ものすごく罪悪感が……。
とはいえ了承はしたくないですし、一体どうしたら……。
「いいじゃないの、オッケーしたら?」
「エリカさん!?」
そこに、私達の話を楽しそうに聞いてきた私の同居人であり恋人の逸見エリカさんが笑いながら言ってきました。
「おお! エリカ殿は認めてくれますか!」
「ええ。私だって興味あるもの。美帆が月刊戦車道の紙面を可愛らしい服装で飾ってどんな反響を得るか」
「そんな……エリカさんまで……」
エリカさんはいたずらな笑みで私を見てきます。
私は逃げ道を封じられたネズミのような気分で諦めのため息をつきます。
だって……エリカさんにまで頼まれたら断らないわけにはいかないじゃないですか……。
「ね、美帆。お願い」
「……分かりました! 受ければいいんでしょうその話!」
「おおーありがとうございます!」
私が半ばヤケのような感じでオッケーを出すと、優花里さんはとても嬉しそうに反応しました。
「いやー本当によかったですー。実は斑鳩殿に絶対東殿を連れてくると約束してしまったので……」
「ああ斑鳩先輩と約束してたのね。どおりであなたにしては強引だと思ったわよ」
斑鳩先輩というのは優花里さんの月刊戦車道の先輩だそうです。
私も何度か会ってお話したことがあります。
「それじゃあ約束の日程はこの日でお願いしますね。衣装などはこちらで用意しますので、東殿は何も用意しなくていいですよ。それでは!」
優花里さんは私に細かい日程などが書かれた紙を渡すと、忙しいのかすばやく私達の元を去っていきました。
「あ、優花里さん……!」
私が声をかけたときには、すでに優花里さんの姿はありませんでした。
「……誰が他に来るのか、聞きたかったんですが……はぁ……」
私はその日、再びため息をつきました。
◇◆◇◆◇
「えーと、ここでいいんですよね……?」
それから少しして、約束の日。
私は優花里さんに指定された場所へとやってきていました。
移動にかかったお金は後で月刊戦車道が持ってくれるそうです。
私は少し不安を覚えながらも、指定の場所と思わしきビルへと入り、階段を上がっていきます。
そして、三階ほど階段を上り、目に飛び込んできた扉を開けます。
「おー東殿! よくいらっしゃいました!」
すると、そこには白く広い撮影ルームがあり、そこに優花里さんが待っていました。
「どうも優花里さん、来ましたよ」
「はいいらっしゃいませ! どうぞこちらにお座りください!」
私は優花里さんに促され、とりあえず椅子に座ります。
「結構本格的な撮影ルームですね……」
「でしょう? 月刊戦車道がよく撮影に借りるんですが、いつも助かってるんですよー」
「へぇー……あ、そういえば一緒に撮影を受けるって人なんですけど、誰が来るんですか?」
「ああ、それはですね。そろそろ来ると思うんですが……」
と、そのときだった。
私が入ってきた扉が、再び開かれた。
「やっほー! 凛ちゃんだよー!」
と、それと同時に底抜けに明るい声が。
「ああ、噂をすればですね。ようこそいらっしゃいませ、星凛殿!」
「星、凛……」
私は少し驚きました。
やってきた選手の名は、星凛。
長い金髪と黒い手袋が特徴的な彼女は、少し前まで海外で活動していた、戦車道の選手です。とても明るい性格が国内海外共に人気な選手で、戦車道の実力もかなりのものがあります。
最近日本に戻ってきて、元々所属していたカチューシャさんが指揮する北陸フォクシーズに戻ったという話は聞いていました。
「東殿! こちらが本日撮影を一緒にする星凛殿です! 星殿! こちらがお話していた東美帆殿です!」
「ど、どうも……」
私は椅子から立ち上がりペコリと彼女に挨拶します。
「やっほーあなたが美帆ちゃんだね? 凛ちゃんはねー、凛ちゃんだよー! よろしくねー!」
すると、なんと凛さんはいきなり私に抱きついてくるではありませんか。
「わ、わわっ!?」
私は動揺します。
だって、突然抱きつかれて動揺しない人がいるでしょうか?
それとも、これは海外生活になれた彼女流の挨拶なのでしょうか?
「え、えーと、凛さん……」
「やだー凛さんなんて他人行儀はー! 凛ちゃんのことはー、凛ちゃんて呼んでー! あるいは呼び捨て!」
「え、ええ!?」
私はさらに動揺します。
だって、年上であり選手としても先輩の相手を呼び捨てにしろというのはなかなか難易度が高いように思えます。
「えっと……星凛……さん」
「凛ちゃん!」
「星凛ちゃん!」
「星……凛……ちゃん……さん」
「凛ちゃん!」
「星……凛……うう、これで勘弁してくださいー!」
私はフルネームでの呼び捨てでギブアップを宣言します。
これが私の限界です。
「んーよし! それで許したげる!」
星凛は満足そうに私を離し頷きます。
とりあえず開放された私は、もうそれだけのやり取りで疲れてしまって大きく息を吐きます。
「ふぅー……」
「あはは! 美帆ちゃんてばなんかおっさんくさいー!」
「お、おっさ……!?」
「ははは、二人共さっそく打ち解けたようですねぇ」
優花里さんにはこれが打ち解けたように見えるのでしょうか。
そうならば優花里さんは記者として人を見る目をもう少し養ったほうがいいと思います。
「それではお二人揃ったところで、本日の説明をさせていただきたいと思います。二人共まずはお座りください」
そうして私と星凛は優花里さんの用意した椅子に座り、優花里さんからの説明を受けます。
説明の内容はこうでした。
私達はまず優花里さんの用意した衣装に着替え写真撮影を行います。
その後、その衣装のまま二人でインタビュー形式の対談をするというものだそうです。
私は不安で仕方ありませんでした。
さっそく星凛のテンションについていけないのに、このまま撮影に入って大丈夫なのでしょうか?
私、何かやらかしたりしないでしょうか?
正直、戦車道の試合よりも緊張します。
「うーん楽しそうだねー!」
そんな私とは正反対に、星凛はとてものんきそうに言い放ちます。
……大丈夫なんでしょうか、本当に。
「ふふふ、二人とも乗り気ですねぇ。それではさっそく着替えてきてもらって大丈夫ですか?」
だから優花里さんには今の私が乗り気に見えるのでしょうか?
優花里さんの記者としての人を見る目はやはり疑わしいと思わざるを得ません。
すでに始まる前から私はいろいろと気苦労をしながら、更衣室へと向かいます。
更衣室には衣装が用意されており、それに私と星凛は着替えます。
その最中でした。
「うわー美帆ちゃんお胸おっきいねー」
「えっ? きゃっ!?」
なんと、下着姿になった私の胸を急に星凛が揉んでくるではありませんか!
「ちょ、急に何を……」
「ふむふむ……なかなかの豊満バストだねぇ。凛ちゃん体型に自信があるほうじゃないから、このおっぱいには憧れちゃうなー」
「んっ、あっ、やめっ……」
星凛の手を拒否したい私でしたが、星凛の手があまりにも巧みに私の胸を揉むために、私は妙に感じてしまい、変な声を上げてしまいます。
それにしても、この手付き……無駄にその……感じちゃう……!
「ふむふむふむふむ……」
「あっ……星……凛……やめてって……言って……」
このままじゃ……私……どうにかなっちゃいま……。
「うん! よく分かった! ありがとっ!」
「ひうっ!?」
星凛は急に私の胸から手を離します。
それを望んではいたためありがたかったのですが、あまりに急に手を離されたため私の体はびっくりしてしまいます。
「はぁ……はぁ……一体何を……」
「にゃははごめんねーつい気になっちゃって! さ、お着替えお着替え!」
星凛はひらりと向く方向を私からロッカーに向き直すと何事もなかったかのように着替え始めました。
「むむむ……」
私はこうなったら仕返しに胸を揉み返してやろうかとも思いました。
が、止めました。
ここで星凛の胸を揉むと何か大事なものを失ってしまう気がします。それに、エリカさんにもなんて説明すればいいのかわかりませんし。
私は星凛によって火照らされた体のまま、悶々とした気持ちを抱えてロッカーにある服に着替えました。
「おーお二人とも似合っていますよー!」
更衣室から出てきた私達に優花里さんが言います。
「へへー! そうでしょー? 凛ちゃんかわいいでしょー?」
星凛は着飾った白くフリフリとしたフリルやレースがたくさんついた服装を見せびらかすようにポーズをとって答えます。
一方私はと言うと――
「おや? どうしたのですか東殿?」
「い、いえ、恥ずかしくて……」
私は星凛の後ろで隠れるように縮こまりました。
だって恥ずかしいんです! 色は星凛とは対照的な黒ですが、星凛の衣装に負けず劣らずフリルやレースがたくさんついており、とてもかわいらしい服でした。
でも正直、こうした可愛らしい服は私には似合わないというかなんというか……――
「ほら美帆ちゃん! 隠れてないで前に出るー!」
「わわっ!?」
私は星凛によって無理矢理優花里さんの前に突き出されました。
「どうしたんですか東殿ー? とても可愛らしいですよー?」
「ううー! だからそれがー……!」
私は顔を真っ赤にしながら目を瞑ります。
正直今の私にはこれぐらいしかできませんでした。
可愛らしい衣装を着ることを心に決めたとしても、、やっぱり恥ずかしいものは恥ずかしいです!
「じゃ、写真撮影に移りましょうかー」
そんな私を尻目に、優花里さんが言い放ちました。
ああ、優花里さんのこと今まで優しい人だと思っていましたがそうでもないようです。
鬼です! 外道です! 鬼畜です!
「ささっ、美帆ちゃん写真撮るってさー! 行こ行こー!」
「わ、わかりましたから手を引っ張らないでください! 自分で歩きます!」
さすがに小さな子供のようにに手を引っ張られるのはもっと恥ずかしいです!
私は星凛の手をなんとか離し、もうヤケな気持ちでカメラの前に立ちました。
それからはもう地獄のような時間でした。
優花里さんの他にも月刊戦車道のスタッフが入ってきたかと思うと、いろいろと機材を用意して撮影を始めたのですが、もう恥ずかしいと言ったらありゃしませんでした。
優花里さん他月刊戦車道の方々から要求される数々の可愛らしいポーズ。その一つ一つを取るたびに、私は頭が沸騰しそうになるぐらいに恥ずかしい気持ちになります。
なんですか猫のポーズって。
なんですかおかえりなさいご主人様のポーズって。
こんあポーズ私エリカさん以外にしたことないですよ! エリカさん以外に見せたりしないですよ普通は!
それなのに私はこんなポーズをカメラの前で撮ったりして……ヤバいです、自分が自分でなくなりそうです。
一方星凛はノリノリでポーズを取っています。
すっごく楽しそうに。
なんなんですかなんでそんなノリノリなんですか、楽しいんですか自分を見せるのが好きなタイプですか、いるんですよねーたまに、私には理解できませんが。
一番キツかったのは星凛と一緒にキスの真似事をする撮影でしたね。
こんな過激な写真も撮るんですか!? もうエロ雑誌じゃないですか!? とすら思いましたが突っ込んだらあーそんないやらしいこと考えてるんだー変態―なんて思われかねないのでやめました。妥協してばっかりですね私。
まあキスっぽいことすること自体は別に嫌というわけじゃないんですよ。私同性愛者ですし、嫌悪感とかはないんです。
ただその……やっぱり恥ずかしいじゃないですか。人前でこういうことするのって。それなのに星凛はやっぱり凄く乗り気で……もう本当に唇がくっついちゃいそうな距離まで顔を近づけてきて……すると星凛の顔って結構可愛らしいなってのがよく分かって……ああ駄目駄目駄目です! 私にはエリカさんという人がいるんです! ごめんなさいエリカさん!
そんな激動の撮影を終えて、次は対談形式のインタビューでした。
これなら撮影よりはずっと楽だろう。そう思っていたのですが……。
「お二人の好きな戦車はなんですか?」
「私はキングティーガーですね。やはり戦車の王様という感じで――」
「あっ、凛ちゃんはねー! KV2! なんでかっていうとねー! カチューシャ様の好きな戦車だから! やっぱいいよねー! かーべーたん! でかくてとにかくでかくて威圧感ありありでー! なによりカチューシャ様が好きでー! あっ、カチューシャ様と言えばこの前ねー、凛ちゃんが帰ってきたときにー――」
……と、こんな風に、私が僅かな内容を話し終える前に自分の話を始め、しかもそれが長い! かつ大抵カチューシャさん賛美が入る!
これには優花里さんも苦笑い。
もちろん私も苦笑い。
内心ではとってもげっそり。
おかげで星凛が話し終えた後に私が再び、短く簡潔に話さないといけないことが多くて困ります。
なので私が先に星凛に譲ろうとしても――
「それでは、お二人の戦車道でのモットーを教えてください」
「……お先にどうぞ」
「……うーん、凛ちゃんちょっと考えるから美帆ちゃん先に答えていいよー」
「……あっ、はい。……えーと、そうですね、私は――」
「あっ、思いついたよ! そうだね! 凛ちゃんはねー! 何よりも安全に怪我しないようにってのがモットーかもねー! だって凛ちゃん、昔ちょっと痛い目見ちゃったことがあってー――」
あああああああああああもうううううううううう!
こんなノリで大抵私に回されたと思ったら星凛が喋り出すんですよ!
もう私こう人を選り好みするのは嫌いなんですがはっきり言います! 私この人苦手!
なんていうか、磁石のS極とN極というか、水と油というか、光と闇の果てしないバトルというか、とにかくそんな感じで肌が合いません!
今にでも逃げ出したいです!
しかし一度受けた仕事から逃げ出すわけにもいかず、私はなんとか星凛との対談を乗り切ります。
対談と言うか一方的に星凛が喋り続けていた気もしますがね!
「それではインタビューを終えさせていただきます。お二人ともありがとうございましたー」
「は、はい……」
「うん! お疲れー!」
私は疲れた体と心に鞭を売ってなんとか立ち上がります。
その横で、星凛が元気良く立ち上がります。
「ねぇねぇ美帆ちゃん! この後一緒にご飯食べない!? せっかくの機会だしさー!」
「勘弁してください……」
星凛がとても楽しげに私に話しかけますが、私は半ば素で反応してしまいます。
だって、食事でも星凛のペースに巻き込まれたらと考えるともう心が折れそうで……。
「うーん、そうか残念ー。……じゃ、変わりに」
「変わりに……?」
「ちゅっ」
「……へっ?」
……ちょ、今、私キスされました? フレンチですけど、キスされました?
「それじゃーねー!」
星凛は私にキスをしたかと思うと、ぶんぶんと手を振って帰っていきました。
残された私と優花里さんを含めた月刊戦車道のスタッフは、みんなポカンとしていました。
「……なんなんですかもうううううううううう!」
私はその日、一番大きな声で叫びました……。
◇◆◇◆◇
「……それは大変だったわねぇ」
「そうだったんですよー! 大変だったんですよー!」
帰った後、私はエリカさんに慰めてもらいました。
今の私は、エリカさんの膝の上に頭を置いて撫でてもらっています。
ああ、なんという甘美な体験……。
「まあ、世の中にはそういう子もいるのよ。諦めなさい」
「ですけど、これから相手にすることもあるだろうプロの相手ですよー。相性悪すぎてこれからのフォクシーズとの試合が不安ですー」
「ふふ、そういうのもいい経験だから」
エリカさんはそう言って私に笑いかけてくれます。
ああ、やっぱりエリカさんは優しいです。私はエリカさんの優しさに溺れてしまいそうになります。
でも、その前に……。
「あ、そうだエリカさん。ちょっとそっち向いてて貰えますか?」
「え? 別にいいけど、どうしたの?」
「その、ちょっと待っててくださいね」
私はエリカさんに少しの間そっぽを向いていて貰います。エリカさんの目には唯一私だけは映りますからね。
私は一人起き上がると、エリカさんのために用意をします。そして……。
「……いいですよ」
「ええ。……まあ!」
「……どうですか」
「とても綺麗よ。美帆」
私は何をしたかと言うと、優花里さんから衣装を借りてきてそれをエリカさんの前で着たのです。
「でも、どうして? すごく恥ずかしいんじゃなかったの?」
「それはそうですが……その私の恥ずかしい姿を、エリカさんに見てもらえないなんて恥のかき損じゃないですか。エリカさんが唯一私の姿を見れるなら、せっかくだから見てもらいたくて……」
私は顔を赤くして言います。
そう、私はただ単にエリカさんに見てもらいたいがために優花里さんから衣装を借りてきたのです。
私的利用もいいところですが、あんなに大変だった撮影なんです。これぐらいいいですよね?
「……ありがとう美帆。とても嬉しいわ……」
「あっ……」
そう言うと、エリカさんは静かに私に近寄ってきて、唇を重ねてきます。フレンチじゃない、ディーブなキスを。
「んっ、あっ、んっ……ま、待ってください……」
「あら、気分じゃなかった?」
「いえ、そうじゃなくて……その……揉んでください」
「え?」
「だから! 一緒に胸を揉んで欲しいって言ってるんです!」
ああ、言っちゃいました……。実を言うと、私の体はもうずっと火照りっぱなしだったんです。星凛に胸を揉まれたときから、ずっと……。
だから、その熱をどうしてもエリカさんに癒して欲しかったんです。
はしたない願いだとは分かっています。ですが、エリカさんは――
「……くすっ、ええ、いいわよ」
軽く笑って、私の胸に手をあてがってくれました。
「あっ、んっ……!」
ああ、快感が全身を駆け抜けます! 星凛の手付きもいやらしかったですが、エリカさんの手付きは、もっと気持ちよくて、淫らで……!
そしてそれと同時に、エリカさんは再び私の口に口を重ね、舌を入れてきました。
「あっ、んんんっ、んはっ……んっ、んんっ、んんんっ……」
そして、私はそのまま床に優しく押し倒されました。
「……このままじゃ衣装が汚れちゃうわね。脱ぐ?」
「……いえ、このままでお願いします。どうせ洗って返しますし、それに……」
「それに?」
「……このほうが、なんだか犯されているみたいで、燃えます」
ああ、我ながら何を言っているのでしょう。
でもエリカさんはそんな私のマゾな願望を笑って受け入れてくれました。
そうして私達は、その日も二人で熱く熱くまぐわったのです。こんなに熱い夜を過ごせるなら、星凛にも少し感謝ですかね……。
ですが、それからしばらくして……。
『もしもし、東殿ですかー? 実は先日の撮影した写真を乗せた号がそれはもうすごい勢いでして! 東殿めちゃくちゃ読者に人気になったんですよー! それでいろんなメディアも食いついて、テレビ出演の話も来てたりするんですよ! これには月刊戦車道も戦車道連盟も喜んじゃって! ぜひ次のオファーを受けていただいて欲しいところなんですがー! あ、星凛さんも当然の如く人気に火がついたので二人をユニットとして押し出していくっていう路線案も強くてー――』
「……前言撤回! 絶対感謝なんかしてやるものですかー!」
エリカさん、私の苦難はまだまだ続きそうです……。