やあ!私だ!私だよ!エミヤだ!
皆さんは開幕直後から普段と異なりテンションが高い私に違和感を感じていることだろう。
なに、ただ単に私も動揺しているだけなのだよ。
その理由は簡単、今私の前に我がマスター(エゲツない担当)の葉山
とぐだ男、この両名が有ろうことか私に恋愛相談をしてきたからに他ならない。
「・・・それでもう一度言ってもらえないだろうか?」
「「ハーレムを作るにはどうすればいいでしょうか?」」
霊体なのに頭が痛い。
私はいつの間にか頭痛持ちのスキルを習得したのだろうか?
「いくつか聞きたいのだが・・・まず何故ハーレムを作りたいのか?そしてなぜ私にソレを聞くのか?それらを説明してくれ・・・。」
「いやさエミヤ。御存知の通り先日の決闘で俺はイバラギンと和解し、マイルームでの二回戦を通して彼女との絆LVをMAXにしたんだ。」
他人の性事情など知りたくなかったがな。
「それでイバラギンとは何というか懇ろの関係になったわけだが、俺は修行や再起不能で一番キツイ時をマルタに助けてもらってな・・・、真面目な話、彼女にもガチで好意を覚えているわけなんだよ。」
うむ。
その点はよくわかる。
確かに普段は色々とアレな彼女だが、あの時は正しく慈愛に満ちた聖女だった。
そんな彼女に救われた葉山が好意を抱く気持ちはよく分かる。
「だが・・・君には茨木童子がいるだろう?今も・・・君の膝の上にいるし・・・。」
そう現在この場にいるのは三人ではなく四人。
私とテーブルを挟んで私からみて右にぐだ男、左に葉山、そしてその膝に茨木童子が座っている状況なのだ。
こんな話をしながらも葉山に首元や頬を撫でられてニコニコしている茨木童子。
いやあ恋人(仮)同伴でハーレム作りたいと相談しに来るとは驚きだなあ(白目)
「茨木童子、君はそれで良いのかね?」
「ん?はーれむの件か?別に構わんぞ。」
「随分と寛大だな。理由を聞いても?」
「簡単な事よ。まず金、権力、暴力、種類は問わず力ある男が幾人もの女を侍らせているのは人も動物も同様であろう?それに浮気などではなく吾も愛した上で他の女も手にしたいというのであれば吾は特に思う所はない。・・・まあそもそもあの女に靡く原因を作ったのも吾であるし~ちゃんと吾も可愛がってくれるのであれば一人くらい増えても文句は言わん。」
意外にも理解があるのだな。
まあ言われてみれば現代でなければ一夫多妻など割とあったようだしな。
こんな物なのだろうか?
「ふむ。君が良いのであれば私からは特にない。・・・だがマルタはどうする?
彼女は『生めよ、ふえよ、地に満ちよ』という頃の人物であるから頭ごなしに否定はせんだろうが・・・彼女自身がそういう関係になることは望まないと思うのだが・・・。」
「だから生前ハーレムの先駆者にして堅物騎士系金髪美少女、ツンデレツインテール同級生、ヤンデレドスケベ後輩、腹黒毒舌履いてない系シスター、ポンコツ鉄拳系女子、超絶肉食系眼鏡美女、アルビノ妹系美幼女(姉)といった高難易度の女性たちと円満に過ごしたエミヤに相談したんだよ。」
「少し待とうか葉山。何故君がソレを知っているのかね?」
「ケルト出身カルデア在住のPN“イケメンじゃない方の槍兵”さんから聞きました。」
よしあの光の御子外道マーボー食わせて始末しよう。
「・・・はあ。取りあえず簡単な話ではないのでこの件はまた時間を設けて話すとしよう。さてぐだ男、君までこんな話題を聞いてくるとは正直思わなかったがどうしてだろうか?」
ぐだ男、人類最後のマスター(キレイ担当)である彼までもがハーレム作りの為の助言を求めるとは違和感がぬぐえない。
一体どうしたのだろうか?
「俺はマシュのことが気になっています。」
「うむ。」
彼女は良い子だ。
是非とも幸せになってほしい。
「その上でやはり俺も男なので他の魅力的な女性も気になる部分は有りますし、酒呑童子とも関係を持っています。それに・・・」
なるほど・・・彼も聖人君子ではない。
それに女性英霊は皆美女、美少女ぞろいで方向性こそ違えど非常に魅力的だ。
カルデアというある種の閉鎖空間で長期間、しかも人理修復というストレスの溜まり易い危険な職場で過ごしているのだ。
むしろ酒呑童子以外にそんな関係になっていないぐだ男の精神力を称えるべきだろう。
「それに・・・?」
ぐだ男は両手で顔を覆い、声を絞り出す。
「清姫がっ・・・」
「「あっ(察し)」」
「・・・正直色々な意味で彼女の攻勢に耐えきれる自信がありませんっ・・・。」
ぐだ男が赤くなった瞳で隙を求めるかのように私を見上げる。
よく見る光景だ。
だが・・・
「・・・私には無理だ。何、酒位は付き合おう。未成年であるが人理修復という緊急事態の最中だ。大目に見てくれるだろう。」
「そんなっ!?エミヤは正義の味方なんだろ!?助けてくれよ!!」
「・・・“正義の味方”に世界は救えないんだよっ・・・。」
「エミヤ・・・。」
「ともかくこの問題も難しい。少し考えをまとめたいので時間をくれないか?」
「・・・ああ分かったよエミヤ。」
ノロノロと立ち上がるぐだ男。
茨木童子をお姫様抱っこする葉山。
「今夜は腕を振るおう。元気を出してくれ。」
人間関係、男女の恋愛関係は中々難しい。
結局成るようにしか成らないが願わくば彼女ら彼らに後悔の無いよう過ごして貰いたいものだ。
それから暫くの間、何故かカルデア中から様々な相談事が舞い込んできた。
やれやれ私は神父ではないのだがね?
ケース1 PN 淫乱ピンク さん
『私は容姿には自信があるのですが、愛しのクーc、んん、彼が振り向いてくれません。どうしたら振り向いてもらえるでしょうか?』
『生前はともかく、第5特異点を経た後ならば彼は意外と貴方の嫌ってはいません。切っ掛けさえ有れば行けると思うのでどうにか既成事実を作りましょう。今夜はあの青タイツに特製料理を振るまう予定なので彼が行動不能になっている隙に宝具チェインしてはどうでしょうか?』
ケース2 PN 抱き枕担当魔法少女 さん
『友人同士の喧嘩が絶えません。一種のコミュニケーションだとは分かっているのですがどうにか成らないでしょうか?』
『確かにアレも一種のコミュニケーションなのでどうにもなりません。諦めましょう。但しどうしても気になるのであれば間にカルナなど他の人を噛ませてみてはどうでしょうか?少なくともライオンヘッドはそれでどうにかなると思います』
ケース3 PN TMのドル箱 さん
『自分と同じ顔だったり、自分の別側面だったりと派生品が大量に存在します。私は彼女ら(謎のヒロインXは除く)に対してどうすれば良いでしょうか?真面目にお願いします。』
『・・・最近自分の別側面については私も共感できるようになりました。正直色々と複雑な気持ちなのでしょうが、深く考えず、無理に憎まず自然に行動すればいいと思います。私事ですが私にとっては青い騎士王の姿こそ摩耗しても色褪せることのない記憶です。』
ケース4 PN 串刺し系アイドル さん
『カルデアの皆を慰安するためにライブを開きたいのですがマスターが止めてきます。どうしたら良いでしょうか?』
『そのマスターは赤い弓兵を肉壁にしようとする外道ですが、意地悪で言っているのでなければ何かしらの理由があるのでしょう。試しに他の方にも聞いてもらって助言をもらってはいかがでしょうか?例えば医務室のナイチンゲールさんなどどうでしょうか?もし問題が有れば責任もって矯正してくれると思います。』
ケース5 PN インド神話的夫婦 さん
『離れ離れだった伴侶と出会うことが出来ました。協力していただきありがとうございます。』
『貴方たちの幸せそうな様子を見ていると、私も自分の理想が間違いでなかったことを再確認できます。こちらこそありがとう。』
ケース6 PN すまない さん
『すまない。一応俺はトップサーヴァントに区分されるのだがあまり活躍を描写されることがない。どうしたら良いだろうか?』
『貴方はきちんと活躍しているので今のまま変わらずにいてください。描写されないのは作者がApocryphaをキチンと読んでいないからです。アニメ放映を待ちましょう。』
ケース7 PN 顔の無い王 さん
『最近俺は真っ当な弓兵なのに地味だとかアーチャーなのに弓使ってると言われます。』
『すまない。ほんとうにすまない。』
ケース8 ルーラー?いやグラップラーだ! さん
『最近気になる男性が居ます。ですがその彼には彼女・・・彼女?が居ますし、教義的にも私が男性と付き合うのは抵抗が有ります。どうすればよいでしょうか?』
『最近別の方からも同じような悩みを相談されました。貴方の教義的にも恋愛自体を禁止しているわけでは無いので一度深く考えず素直に接してみてはどうでしょうか?
その彼は赤い弓兵を酷使する外道ではありますがゲスではないと思います。但し、
その彼女(?)が居るのであればお互いが不幸にならぬよう真剣に考える部分はあります。』
ケース9 PN 京風肉食系女子 さん
『最近幼馴染の後輩(?)的な関係の子に彼氏が出来ました。毎日その彼の下へ入り浸り、偶に会うとその彼との甘い生活を延々と惚気られます。砂糖吐きそうです。本当にどうすればいいでしょうか?』
『その後輩的存在の恋愛に対して負の感情がないのであれば素直に祝福しましょう。その上で構ってくれなくて寂しいと言ってみてはどうでしょうか?
後、砂糖吐きそうなのは自力でどうにかしてください。』
ケース10 PN 清姫 さん
『愛しのますたーが私に振り向いてくれません。なのに他の女に鼻の下を伸ばして・・・・
愛しくて、恋しくて、愛しくて、恋しくて、裏切られて、悲しくて、悲しくて、悲しくて悲しくて悲しくて、憎くて憎くて憎くて憎くて憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎――だから焼殺しそうです。どうすれば良いでしょうか?』
『まず君はPNの意味から知るべきだ。
後小耳に挟んだのだが愛しの彼は確かに他の女性のことが気になっているが、君のことも真剣に考えているようだ。少し落ち着いてみてはどうだろうか?
もしかすると彼は奥ゆかしい女性が好きかもしれないので押すばかりではなく、一度引いてNPやスターをチャージしてから再度バスターというのも手かもしれない。
決して、決して早まって彼を“安珍”してはいけないぞ。』
相談が途絶えて私は椅子の背もたれに体重を預けて背筋を伸ばす。
バキバキと骨が鳴る音がする。
「・・・ふう。気疲れしてしまったようだ。第6特異点も見つかったし日常に浸り過ぎるのも問題だな・・・。さてそろそろ夕食の準備だが、まずは葉山の下へ激辛麻婆の礼装を貰いに行くとしよう。」
近くマスター達は第6特異点に出発するだろう。
強力であったり違った性能をもつサーヴァントが多数在籍する現在のカルデアだ。
自分が行くとは限らないが、それでも準備と心構えをしておくとしよう。
ギャグだけにしようと思ったのに気づくとちょいちょいいい感じの話が混じっている。
不思議だなあ・・・。