城下町のダンデライオン~王の剣~   作:空音スチーマー。

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予定よりだいぶ遅れてしまいましたが続きです!

大変申し訳ないですが、楽しんでいただけたら嬉しいです!

また、感想や誤字脱字などもありましたらコメントしてもらえると嬉しいです!



第69話【添い寝戦争】

翔と葵の3年生が高校を卒業して暫くしてのこと…

 

事件は起きた。

 

 

「ただいまー」

 

学校から帰宅した奏がリビングの扉を開けると

 

「ーー!?」

 

そこには、

 

「な、なな、なーー」

 

リビングで横になって眠る翔、葵、栞の姿があったーー。

 

 

「なにしてーーんー!?」

 

思わず怒号に近い悲鳴を上げようとした奏の口を後ろから塞がれる。

 

「ちょ、なに!?茜?」

 

その手を振りほどき後ろを振り返ると茜が立っていた。

 

「しー!かなちゃん!大声出したら起きちゃうでしょ!(ボソボソ」

 

そう言って寝返りをうつ栞を指差す茜。

 

「ちょっとこれどういう状況なの!?(ボソボソ」

 

「何って見ての通りだよ?(ボソボソ」

 

「見ての通りって、これじゃあまるでーー」

 

 

ーー親子みたいじゃない!!

 

 

そう、幸せそうに眠る3人の姿は、

 

翔の腕を枕にして、栞を真ん中に川の字になって眠る葵と栞。

 

誰がどう見てもまるで親子の様であった。

 

 

「どういうことよ!説明して!」

「そ、そんなこと言われてもー」

 

そんな動揺を隠しきれない2人の間を割って入る黄色い影。

 

「たっだいまー!あれ?あ!しょうちゃん寝てるー!私もー!」

 

そう言って友達の家から帰ってきた光は反対側の翔の腕を広げ、それを枕にして翔に抱きつきーー

 

「ーーすー…」

「「寝たー!?」」

 

一瞬であった。

 

「なんて羨ましい!」

「…かなちゃん、本音が漏れてるよ」

 

そしてさらに、

 

「ただいまー!あれ?かな姉にあか姉?なにしてーー」

 

一番厄介であろう人物、岬が帰ってきた。

 

そして、

 

「なにしてんのさ!?」

 

発狂である。

 

「ん、んんーーあ、皆おかえりなさい」

「もう!岬!大きな声出すからおきちゃったじゃん!」

 

岬の声に目を覚した葵が何事もなかったかのように目をこすりながら起き上がる。

 

「ちょっとお姉ちゃん!いったいどういうことなのさ!」

「んぇ?何が?」

 

瞬時に食って掛かってくる岬に寝惚け眼をこすりながら返事をする葵。

 

「何が?じゃないよ!またお姉ちゃんばっか翔兄独り占めして!ずるいよ!!」

「え?あぁ、気づいたら寝ちゃってた」

「姉さん!今日という今日は私も見過ごせないわ!」

「えぇ!奏まで!?」

「け、喧嘩は良くないよ?」

「茜は黙ってなさい!!」「あか姉は黙ってて!!」

「えぇ…」

 

寝起きで妹二人に怒られる葵ととばっちりを受けあわあわと戸惑う茜。

 

そして、

 

「(…やべぇ…)」

 

実は既に起きており、現状を察して寝たふりを決め込む甲斐性なしの長男である。

 

 

ーーーーーーー

 

「(今起きたら確実に二人に殺られるな…)」

 

事が収まるまでしばらく様子を見ようとしたのだが、

 

「うぅ、翔君。いつまでも寝てないで助けてよぉ」

「っう!?」

 

妹たちにもみくちゃにされて限界を迎えた葵にはバレていたらしく、思わず声を出してしまった。

 

ちくせう!!

 

葵ちゃん!我が妹ながら末恐ろしい子!

 

「お兄ちゃん起きてたの?!」「翔兄起きてたの?!」「翔ちゃん起きてたの?!」

「は、ははは…お、おはようございます」

 

寝ている栞と光を起こさないよう腕を抜き、ブランケットを掛けながら驚く妹たちに返事をする。

 

「お兄ちゃん?まさか寝たふりしてた、とかじゃないわよね?」

「ま、まっさかぁ!はは、今!今起きたとこですよ奏さん!」

 

笑顔で聞いてくる奏だが、うん。これやばいやつ。

 

「翔兄!お姉ちゃんばっかりずるいよ!なんでもっと私にもかまってくれないの?!」

 

そして半泣きで泣きついてくる岬である。

 

こっちはこっちで返答をミスると大泣きしかねないオーラが半端ない。

 

「翔ちゃぁぁぁん!」

 

そしてなぜか涙目の茜。

 

そうだよな。

 

怖かったよな。

 

わかるよ茜。

 

そう思いながら茜の頭を撫でる。

 

「あぁ!次はあか姉なの?!翔兄の馬鹿野郎ぉ!!」

「お兄ちゃん?」

 

しかしそれがまずかった。

 

とうとう大泣きして俺の背中を叩き出す岬と笑顔で無言の圧を掛けてくる奏。

 

助けを求めようと葵の方に目をやると…

 

「…(サッ)」

 

目をそらされた。

 

…はぁ

 

思わず、この悲惨な現状に心の中でため息をもらす。

 

仕方ない、

 

「わ、わかった!じゃあこうしよう!夜一緒に寝よう!な?」

「「「「?!」」」」

 

瞬間、一斉に動きを止める妹たち。

 

 

「しょ、翔兄?!そ、それはまだちょっと早いんじゃ…けど//////」

 

俺を叩く腕を止め、俯く岬。

 

「しょ、翔ちゃん?!私達兄妹だよ?!そ、そんなのって//////」

 

なにやらもじもじしだす茜。

 

「お、お兄ちゃんとい、いっしょに!?!?//////(ツー)」

 

奏ちゃん?鼻血鼻血!!

 

「翔君。さすがに面と向かて言われると恥ずかしいよそれは…//////」

 

照れ笑いをする葵。

 

「…翔…。あんた…」

 

そして、ちょうど輝との買い物から帰って来た母さんに白い目で見られた。

 

 

え、なに?!俺なんかまずいこと言った?!

 

 

「まぁこの子達がいいなら何も言わないけど間違いだけはまだ犯しちゃだめよ?」

「っ?!」

 

そして横を通るついでにニヤニヤした顔でボソッと耳打ちをしてくる母さんの言葉にそこでやっと自分が何気なく放った言葉の重大さを理解する。

 

ていうかまだってなに?!今後もそんな予定はありませんが?!

 

 

「み、みんな?あまり深く考えなくていいんだぞ?普通に!普通に一緒に寝るか?って意味で聞いただけだぞ?」

 

大事なことなので二回言っておく。

 

そう普通にだ!そこになにも意味はない!ないぞ?!

 

「「「「わ、わかってる!!//////」」」」

「ほんとにわかってた?」

 

それから数十分後ーー

 

 

「--ただいまー…ってなんだこの状況?」

「あぁ、兄さんおかえり。見ての通り、いつもの取り合いだよ」

 

帰宅した修が目の当たりにしたのは、

 

翔を取り囲って、いつ誰が翔と一緒に寝るのか討論する妹たちと、何ともいたたまれない顔で弟たちに救難信号を送ってくる兄の姿だった。

 

 

奏と岬だけでなく、葵に茜。あの後起きた光と栞も参加してるいたーー

 

ーーその日の夜、

 

「茜が一番か。茜がまざるなんて珍しいな」

「へ、へへ!たまにはね//////」

「修がなんとも言えない顔で見てたぞ…」

「修ちゃんはだめ!」

 

そう言って抱き着いてくる茜。

 

哀れ修…。

 

 

ーーーーーーー

 

それからの毎夜ーー

 

 

「へっへーん!しょうちゃんだー!!」

「覚えてないだろうけど昔はけっこうこうして一緒に寝てたんだぞ?」

「え?そうなの?」

 

ーーーーーー

 

「お兄様あったかい…」

「そう?栞もあったかくて可愛いよ」

「ほんと?」

「あぁ、幸せだよ!ありがとう!」

「よかった!」

 

ーーーーーー

 

「ちょっとあんた達邪魔!!戻りなさいよ!」

 

「嫌よこんな絶好なチャンス」

「翔兄は私と寝ますの!」

「やだね!岬がどけ!」

「岬には悪いけど嫌だね」

「独り占めしよだなんて許さない」

「眠い」

「お腹すいた」

 

「翔兄もなんとか言ってやよ!」

「時間も時間だしもう少し静かにしろお前達。あとブブ。もう寝るから引き出しあさるのは今度にしなさい」

 

ーーーーーーー

 

「いちお言っておくけど、なにもしないでよね!」

「言われなくても別になにもしないよ」

「…」

「あれ?奏ちゃん?」

「それは私に全く魅力が無いということでいいのかしらお兄様?」

「え、いえ!決してそういうわけでは!むしろ魅力的過ぎていまも困っているといいますか!」

「もう!お兄ちゃんたら!!」

 

ーーーーーー

 

「まさか葵もとはな」

「ふふ、たまにはいいかなって」

「俺はいつでも大歓迎だけどな」

「それ奏と岬が聞いたらまた大ごとだよ?」

「う、確かに…。けど喧嘩さえしなければ奏も岬も、みんないつでも大歓迎だよ」

「その言い方だと、翔君やらしいよ」

「…からかうなよ」

「ふふ」

 

ーーーーーーー

 

ーー翌朝

 

「翔。わかってると思うけど…」

「なにもしてません!」

「…まだ?」

「今後もしません」

 

ーーーーーー

 

それ以降、朝目が覚めると、定期的に妹たちが布団に潜り込んでいることが増えたとかーー

 




次回の投稿は未定ですが、なるべく早くお届けできるよう頑張ります!

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