なにかを得るにはそれと同等の対価を支払わなければならない。
バレンタイン、それは女の子達の血で血を洗う壮絶なる戦いである。男子はチョコを手に入れようと獣のような双眸でチョコを狙い。女子は好きな男に本命チョコを渡そうとライバル達と足を引っ張り合って仲間を蹴落としそして願いが叶わぬ者には重すぎる代償が貸せられる。
え?時系列と合ってねえだろって?こまけぇこたぁいいんだよ、とにかくバレンタインがやって来たんだよ!!
「うむ、いい出来だな」
我は暗黒大皇帝エンペラ星人、今日はバレンタインと言う好きな者にチョコと呼ばれる食べ物を渡す日なのだとか、故に余も主の為にチョコレートを作っているところだ。
「ふふ、あとはこのチョコに私の血と髪を入れれば……ウフフ、ウフフフフフフ」
「後は冷蔵庫で冷やし固めれば完成よ」
余はこのような行事には疎いのだが、絶対にチョコに自分の体の一部を入れたり、ダークマターのようなものを渡す行事では無いと断言できる。
「うむ、後は主に渡すだけだが……………これは、随分恥ずかしいな」
顔を紅潮させエンペラ星人特製『皇帝チョコ』を見る、ラッピングはピンク色のものを使って水色のリボンで着飾ってある。なにぶん人にものを、それも自分の想いが詰まっているものを渡すことは初めてで今にも心臓が張り裂けそうである。
「と、とりあえずベムスターやライブキング達には見つからぬようにせねば」
奴らは何でもかんでも食らってしまう故にもし見られれでもしたらせっかくのチョコが奴らの餌へと変わってしまうだろう。
「早く主を探さねば」
チョコを隠しながらベリアルを探していると、何やら騒がしい音が聞こえて来た。その中には主であるベリアルの声も聞こえてくる。どうやら女どもに囲まれて何かをやっているようだ、その声を聞くだけで何故だか腹わたが煮え繰り返りそうになる、戸を開けて覗くと。
「今日はバレンタインじゃないよ」
「何言ってんですか、もう画面の向こう側はバレンタインなんですよ」
「メタいこと言うなッ!!!!」
なかなかにカオスな事になっていた。ガッツ星人2人に押さえつけられ、その前に怪獣星人怪獣娘が並びチョコを食べさせていた。
「はーい♡トップバッターはヒッポリト星人さんで〜す」
「嫌な予感しかしないんだが」
「主よ、私ごと食べてくれ」
顔以外全身チョコでコーティングした全裸のヒッポリト星人さんが出てくる。
「アウトォォォォォォ!!!!」
アウトだよ!!と叫びながらガッツ星人の高速を振り切ろうと力を込めるがまるで体が言うことを聞かない。その事に困惑していると横からヤプールが顔を出しこう答える。
「ふふふ、先程飲ませた飲料水の中に特殊な筋肉弛緩剤を入れておいたのさ」
なんてこった、もはや主はまな板の上のガイロス、翼をもがれたバードン、叫びつつもガッツ星人が両隣から光線で縛り続けているのはそれ程に主の力が強いからであろう。
「わかった!!わかったよ!!食べるから!!」
と言い、全身チョココーティングされたヒッポリト星人の手を取りそれを舐める。チロチロとエロい音が部屋にこだまし、もう何時間も経ったような錯覚を覚える頃にはすでに限界だったヒッポリト星人が鼻血を出して倒れた。勝った、というドヤ顔で頬を赤らめていた主はピースサインをしていた。ちなみに他の連中も鼻血を出している、余もだ。
「す、凄い破壊力だったわ……よし次の挑戦者は……………………………パズズさん!!」
「えと、チョコなんて作った事ないから自身ないんだけど、あの、た、食べてくれます…か?」
なんか電撃が迸ってる、青い稲妻がビリビリとチョコから迸っている。何を入れたんだ、何を入れたんだ!!パズズ特製雷電チョコを感電しながら食べる主を見て涙を流しながら『食べてくれた』と嬉しそうに呟いていた。主も食べる事に体に電流が流れるチョコを全て食べ、ご馳走さままで言い切った主に我は敬意を評した。
「うっわぁ、まさか全部食べきるとは、愛されてるねパズズちゃん♪続いての挑戦者は……………キメラベロスちゃんです!!」
「さあ、主よ!!私と1つになろう!!!!」
「はい退場、次の方どうぞ」
キメラベロス、強制退場、どうやらそう言ったものはこの場ではアウトらしい、さっきのヒッポリト星人はセーフらしい。基準が分からん。
「さあさあどんどん行ってみよー!!」
カオスなチョコの惨劇はまだまだ続く、マガパンドンの灼熱チョコやグレイフィアの毛がモッサリ鉄分タップリヤンデレチョコだったり、ベロクロンの爆発ミサイルチョコだったり、バキシムが空間を割ってそこからチョコが雪崩混んできたり、色々あってようやくチョコ地獄は終わりを迎えたのであった。
「酷い目にあった……………………」
もうバレンタインは嫌、かつては俺もバレンタインのチョコ欲しさに迷走した事はあったけど、まさかチョコを貰う側がこんなにも苦労する行事だったとは……………全国の男子の皆さんには悪いけど次からバレンタイの日はどっかに隠れよう。ん?エンペラ星人、どうした、
「余もチョコレートとやらを作ってみたのだ」
それは今までの道程、チョコとは言い表せないような悲惨なものたちと比べてそれはそれはまさしくバレンタインの本命チョコと呼ばれるものだった。
「いいのか、俺が貰って……………………」
「何を言い出すのかと思えば、余は最初から主に食べて欲しくて作ったのだ、ハッピーバレンタイン、主よ」
目尻が熱くなってくる、それを無理やり押さえつけて丁寧にチョコの包装を剥がしていく、そしてその中に入っているハート形のチョコを取り出し、思いっきりそれにかぶりついた、口の中でとろけ、程よい甘さが口いっぱいに広がる、噛めば噛むほどチョコは溶け口全体に広がる、そしてそれを揉みこむとその先に広がる世界はこの世のものとは思えないぐらい幸せに包まれた世界だった。ツー、と頬を冷たい何かが伝わりそれが思考を現実へと引き戻した、現実に戻るとまたチョコに齧り付く、そしてチョコを全て食べ終わった後涙は止まっていた。
「ありがとう、とっても美味しかったよ………………」
それはそれは、子供のような笑顔だったとさ、
次回予告
ドアを開けると怪獣達が倒れてる、近くには様々な凶器が落ちている。知らない人が見たら特撮現場だと思うだろう。あの有名な『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしている』が映画化すると聞いたので、
次回『家ーモンスター・オブ・プリテンド・トゥ・ビィ・デットー』