ブラック鎮守府に配属されたので、頑張ってみる(凍結中)   作:ラインズベルト

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第9話

「それは、本当なのか……?」

 

「ああ、事実だ」

 

提督という存在を殺してしまうほどの感情がある艦娘。それは俺達の勝手な押し付けが招いたこと。いつかはこうなる運命だったのかもしれない。

 

「誰が、そういう状態なんだ?」

 

「陽炎、時雨、夕立、伊58、比叡だな」

 

「そんなに……」

 

かなりの艦娘がそれほどまでに提督が憎いらしい。当たり前か。使い捨てように扱われ、失敗すれば暴力を振るわれ、歯向かえば解体だと脅される。誰が、こんなことを許せるだろうか。俺が艦娘なら殺してしまうだろうな。

 

「提督、私はあなたを信じきってはいないが、あなたは私達を助けてくれる存在だと確信している。だから、皆を、以前のように……」

 

「任せろ。絶対助ける」

 

「ありがとう」

 

長門は深々と頭を下げて感謝を述べた。これからは忙しくなりそうだ。

 

―――――――――――――――――――――――――

 

「どうすべきか……」

 

ガチャ。

 

扉が開かれた。目を向けるとそこには夕立がいた。俺は夕立の目に恐怖した。明らかに生気の抜けた、それでもって殺意のある目をしている。まるで機械のように無表情で、冷たい。

 

「ゆ、夕立?どうしたんだ?」

 

「…………」

 

返答はない。これはやばい。死んだかも。瞬間、俺の右腕に夕立が噛みつき、肉を引きちぎった。

 

「あぐっ!?」

 

痛みで動くことができなかった。しかし俺の目には夕立が泣いているように映った。皆を守りたい一心に見えた。

 

「夕立……」

 

だから俺は夕立を抱き締めた。次は左肩を噛みつかれる。戦場で狂犬といわれ恐れられるだけあるが、艤装をつけていないのでやはり少女にかわりなかった。

 

「ッ!ッ!」

 

「無理を、するな…………夕立、お前一人が抱える必要なんてないんだからな……?」

 

「…………」

 

夕立はおとなしくなり、俺は夕立を見た。口元や服は血で汚れている。しかし、目には涙が溢れていた。

 

「大丈夫だ。もう、前任も、君たちを傷付ける奴等はいないんだ。大丈夫、大丈夫だ」

 

夕立はしばらく泣いた後、疲れたのか眠ってしまった。

 

「やっべえ……血、流しすぎた……」

 

ミスったな…………応急処置を…………忘れる………なんて……。俺の意識はそこで途絶えた。

 

―――――――――――――――――――――――――

 

「知らない天井だ」

 

「ん?目を覚ましたみたいだね、提督」

 

見るとそこには時雨がいた。やべえ、やべえ。彼女もたしか提督を殺したいんじゃ……。

 

「安心してよ。僕は提督の味方さ」

 

「え?」

 

「だって、僕は―――」

 

「司令官!良かったぁ!!」

 

「うぉ!?」

 

いきなり抱きつかれた。青葉だった。他にも蒼龍、大淀、長門、辻谷、中尾がいる。

 

「すまない。今回は俺の不注意でこんなことになった」

 

「顔をあげてください、提督」

 

頭を下げた俺に、大淀は頭を上げるように促す。俺は頭を上げ、皆を見る。

 

「九条提督が無事でなによりですよ」

 

「そうだね。本当に無事で良かったよ」

 

辻谷と蒼龍は良かったという表情だ。2人は仲が良い。辻谷が着任してから数時間で仲良くなっていた。

 

「ま、生きているだけマシか」

 

左肩も右腕もしばらくは使い物にならない。軍医はいないから今回は明石に見てもらったようだ。

 

しばらくは書類仕事ができそうになかった。ケアはしていきたいが、どうしたものか。

 

俺はしばらく悩んだ。


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