sunny place 〜彼女の隣が私の居場所〜   作:律乃

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引き続き、OPのところです。


すごく遅くなっちゃったけど……
4/9、アリスちゃん。4/10、ユージオくん、誕生日おめでとう!!!!

そして、今日4/19はリーファちゃんこと直葉ちゃんの誕生日です!
直葉ちゃん、誕生日おめでとう!!!!
私はリーファちゃんも直葉ちゃんもどっちも大好き派です!!


【★】カランコエを添えて010 ※ネタバレ喚起(かんき)



ネタバレ喚起(かんき)※ネタバレ喚起(かんき)※ネタバレ喚起(かんき)※ネタバレ喚起(かんき)


 

【公理協会 100層】

 

ソード・ゴーレムと最高司祭に名付けられた異物な巨人の右腕を駆け上がるアリスの表情には後悔が滲む。

 

(……カナタ…)

 

その名を持つ橙の整合騎士は今冷たいホールの上でゆっくりと生命を床へと流している。

ほんのりと色づいていた頬も真っ青となり、触れれば折れてしまいそうなほど華奢な身体は無残にも二つの致命傷を受けてしまった。露わになる背中や腹部から染み出す赤黒い液体を見た瞬間、頭が真っ白になり、気付けば走り出していた。

一発でいい、彼女が感じた痛みを、苦しみを、このゴーレムという名の怪物に味わわせてやりたいと思った。

知ってる。この怪物に痛みも苦しみも感じないということを、そう最高司祭様が設計したのだ。

 

右手に持つ金木犀の剣が。自分の周りを回る金木犀の花達がアリスを宥めようと音を立てるが今のアリスでは花達の奏でる音も耳障りな雑音にしか思えない。

 

そして、今までも胸を締め付けるのは深く果てしなく終わりの見えない後悔の念。

 

(間違いだった、何かも)

 

心のどこで慢心(まんしん)していたのだ、彼女ならば……と。

再開した時も整合騎士に戻った時もヘラヘラと笑い、巫山戯ながらも幾度の困難を軽々と乗り越えた彼女も今は居ない。いや、この世界から姿を消そうとしている。

 

全ては自分の浅はかな考えのせいで––––。

 

そうじゃないと人に言われても今のアリスには何も入ってないだろう。それほどにアリスにとってカナタの存在は大きなものとなっているのだ。

 

模造剣によって造られた歪な形をした黄金の自動人形、ソードゴーレムの足を駆け上ったアリスは飛来し、一撃入れるためにグルっと身体を回転させる。回転した分、上がった威力を鞘を持っている手に加える。

 

「う"お"お"お"お"」

 

細い喉から迸る叫び声は悲痛な色を含ませ、暗いホールの中へと響き渡り、アリスの元へと帰ってくる。

振り下がる鞘もアリスの怒りを表すように荒れる橙の花達もキリトの挑発から自分を攻撃しようとしているアリスへとターゲットを変えた歪な巨人の前ではそよぐ紙程度にしかならないのだろう。

 

宙を飛ぶ蒼い瞳は自分の花が僅かに巨人達へとヒビを与えた所と自分へと迫ってくるゴーレムの左腕を視界に収めた瞬間、防御することなく受けようとする。

 

蒼い瞳には諦めが滲んでいた。

 

少しヒビを付けられただけでも充分だろう。もういい、自分はよくやった。後は彼女と同じようにこの巨人に刺されて、彼女と同じ所へと行こう。

 

きっと彼女も……カナタもよくやったと言ってくれるはずだから……。

 

アリスの壊れている胸当てめがけて突き刺さろうとするソードゴーレムの刃にキリトは"やめろ! "と言わんばかりに黒い刀身を持つ剣で巨人の足を叩き、妨害しようとするが……そのくらいの妨害でソードゴーレムは止まるわけがなく、地面へと落ちていくアリスへと段々と刃先が迫っていく。

 

アリスが目を閉じ、キリトが喉を壊さんばかりに叫び、アドミニストレータが核心的な勝利に何度目となる笑みをこぼした瞬間、アリスの脳内で呆れたようなアルト寄りの声が流れる。

 

『アリらしくないな』

 

ハッと目を見開くアリスが見たのは、真っ暗な闇の中にぽつーんと呆れを滲ませる秋空のように透き通った蒼い瞳と癖っ毛の多い栗色の髪を襟首で小さく結んだ少女で何かを伝えるようにパクパクと口元を動かす。そして、自分のところに来ようとしているアリスの肩をポンと優しく後ろへと押し出す。

 

「エンハンス・アーマメントッ!!」

 

後ろに倒れていくアリスの耳に届き、瞳に映るのはキリトの後方でギュッと青薔薇の剣を握りしめて、地面へと突き刺している亜麻色の髪に碧の瞳を持った青年・ユージオの姿だった。

叫ぶユージオが突き刺した刃から無数の氷が現れ、アリスに突き刺そうとしているソードゴーレムの振り下ろさせる左腕の行く先を阻むように氷の壁ができる。

が、勢いの強い刃先がパリンと氷の壁を破壊し、自分へと向かおうとするのを、ユージオの支援……そして、カナタの励ましによって覚醒したアリスは寸前で交わすとストンとホールへと降り立つ。

 

「アリス!」

「……ユージオ」

「ーー」

「キリトもすいませんでした……」

 

駆け寄ってくるキリトとユージオにゆっくりと立ち上がったアリスは頭を下げる。

蒼い瞳にはさっきまでの怒りに身を任したような色は滲んでいない。蒼い瞳にはいつものように冷静沈着さが戻ってきており、さっきまでの怒りに身を任したような雰囲気は最早ない。

 

「……あの子…カナタが作ってくれた貴重な機会です。こんな風に散らしてしまうのはいけない。それは彼女の尊厳を、頑張りを踏みにじてしまうことになる。さっきまでの私はそんな当たり前のことに怒りで忘れていました」

 

数時間前の自分では理解できないことが沢山起きている。全てはカナタに、キリトに、ユージオに出会う事が出来たから。自分がただの人形ではないと、感情を持ちあわせていると普通の人間であることを教えてくれた。

 

前を向く蒼い瞳に諦めはない。代わりにあるのは強い意思だ。

その意思を向けられているアドミニストレータは不愉快そうに眉をひそめ、ソードゴーレムは横並びに立つ三人を始末しようと動き出す。

 

だから、アリスはキリトとユージオへと視線を向ける、助けを求めて。

 

「キリト、ユージオ。私に力を貸してください。私一人では悔しいですが、あのゴーレムを破壊する事も傷つける事も恐らく出来ないでしょう。ですが、私達三人なら–––」

「––––うん、倒せるかもしれないもんね」

「かもしれないじゃなくて倒すんだ。カナタの仇を取りたいのは、アリスだけじゃないからな」

 

そう言い、アリスは金色の刀身を持つ剣・金木犀の剣を構え、ユージオは淡い水色の刀身を持つ剣・青薔薇の剣を構え、キリトは黒い刀身を持つ剣を構えるのだった。

そして、互いにアイコンタクトを交わした途端、散り散りに走り出したのだった。

 


ネタバレ喚起(かんき)※ネタバレ喚起(かんき)※ネタバレ喚起(かんき)※ネタバレ喚起(かんき)



 

 




キリトくん、ユージオくん、アリスちゃんの三人の絆は固く、ゴーレムよりも強いのです!!


アリスちゃんとユージオくんの誕生日エピソード(じゃないかも)ですが、次の回に載せればと思っています! 長くなったら、一話一人になると思います。

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