あのシノンの絶体絶命のピンチで、カナタの助けが間に合わなかったら…というifストーリーですので、シノンが好きな人やダーク…病んでるキャラが好きじゃない人にはオススメできません~_~;
それを踏まえた上で、この本編を見てもいいと思う方…どうぞ、ご覧ください(礼)
※少し分かりにくい書き方をしてるやもしません…すいません…(汗)
6/12〜誤字報告、ありがとうございます!
「カナタ、今日は部屋で休めよ、な?」
そう言って、全身を黒で染めてる少年・キリトがこの宿屋に戻ってくるまで…下を向いたままの橙の羽織が特徴的な少女・カナタへと振り返る。カナタはキリトの呼び掛けに、ごく僅かに首を縦に振ると…そのまま、心ここに在らずの様子で階段とは別の方角へと歩いて行く。そんなカナタの様子に、キリトは唇を噛み締めると悔しそうな表情を浮かべる。そんなキリトの肩を叩くのは…今の今まで、カナタと共に冒険してたフィリアとルクスだ。
「ーー」
「…ッ」
「キリト、ありがとう。わたしがカナタを部屋に連れて行くから…大丈夫だよ」
「…ごめんな、フィリア。…俺…何も出来なくて…」
「キリトさん、それは私たちも一緒だよ」
ふらふらと店から出ようとしていたカナタの左手を掴んだフィリアは、階段の方へとカナタを連れていく。階段の前まで来るとフィリアは立ち止まり、カナタへと問い掛けたその問いかけに、カナタはキリトの時のように僅かに頷くと…ゆっくりと登り出す。そんなカナタの様子に、フィリアもキリトのように唇を強く噛み締めた。
「部屋はこっちだよ…カナタ。階段、登れる?」
「ーー」
「…そう、気を付けてね」
俯いたままのカナタへと優しく語りかけたフィリアは、カナタの手を強く握り…気を取り直して、階段を伸ばし出した。そして、カナタの部屋の前まで来ると…ドアを開けて、カナタをベッドへと座らせる。
「ここがカナタの部屋だよ」
「ーー」
出て行こうとするフィリアの服の裾をギュッと握ると、振り返ってくるフィリアを上目遣いで翳りのある蒼い瞳で見つめるとちいさく呟く。不安げに見上げてくるカナタの癖っ毛の多い栗色の髪を優しく撫でたフィリアは、微笑むと下を指差す。
「…カ、ナタ?…どうしたの?」
「…寝れ…ない…。…一人…だ、と…」
「いいよ…カナタが寝るまで一緒にいてあげる。だから、少しの間だけいい?みんながカナタの事、心配してるから…報告と簡単な食事を持ってくるね。待ってて」
「ーー」
扉から出ていくフィリアの背中を見送ったカナタは、突然 両手をクロスさせて…震える身体を抱きしめた。硬くつぶった瞳の裏に映るのは…先刻の事ーー
ーーあの時、あの部屋に入った時…確かに、シノはまだ生きていた。何かを必死に叫んでて…あたしはシノを助けようとして……ーー…助けられなかった…。
モンスター達の隙間から、天井へと登っていく青白いポリゴン片を視界に収めた瞬間…あたしはあたしを見失った…。シノの仇であるモンスター達を片っ端から両手に持った刀と小太刀で斬り裂いていった…辺りが、ポリゴン片に包まれた瞬間…あたしは迷宮区の床へとへたり込んでいた。両手に持っていた刀と小太刀で今度は自分自身を傷付けた…何度も何度も、自然と痛いとか苦しいとか思わなかった…これは報い、シノを助けるとか守るとか大口叩いた挙句、辛い時に傍にいられず…助けを求めている時すら助けられず…自分の命よりも大切な恋人を守れなかった愚か者が受けるにふさわしい報い…罪の償い方なんだ。
“…このまま、死にたい…。シノのとこ、逝きたい…”
だが、その願いも闖入者達の邪魔により叶わないものとなった…。無心で自分自身を傷つけ続けるカナタを目のあたりにした瞬間、三人がカナタへと歩み寄り、その行動を止めにかかる。
『何やってんだよ!カナタっ!!』
『やめて、カナタ様』
『カナタ、ダメ!』
邪魔してくる三人を暴れて、振り払おうとするが…一人と三人では分が悪い。三人は暴れるカナタをどうにか、宿屋へと連れてくる事に成功した…
空想から目を開けたカナタは、目の前にいる存在に目を丸くする。焦げ茶色のショートヘアーに、赤黒黄緑の露出度が高い不思議な服、そしてこっちを見て微笑んでくれてるその素朴ながらも整った顔立ちに…カナタは、顔をくしゃっと歪めると…一歩また一歩と、その少女へと歩み寄った。
「し…の…」
カナタは小さくそう呟くと、その少女を抱きしめようとして…その少女は、カナタの腕をすり抜けるように、天井へと消えていった…。その瞬間、カナタは床へとへたり込み…頭を抑えると、見開く瞳を彷徨わせて…突然、大きな声を上げる。その声に驚いて、部屋へと入り込んだフィリアが見たものは…だらしなく両手を床へと投げ捨てて、乾いた笑い声を上げてるカナタの姿だった。淀んだ蒼い瞳には、生気を感じられず…部屋中に響く笑い声は何処か寂しげで、聞いてるこっちが胸が痛くなる。
「ァあああああああっ!!!」
「カナタ!」
「ァ…あっ、あぁ…あはははっ」
「ねぇ!どうしたの!カナタってば!!しっかりして、わたしの方を見て!!お願いだからっ!」
「あはははははっ!あはははははははははっ!」
「カ…ナタ…?何を笑ってるの…?」
「アハハハハハ!アハハハハハ!アハハハハハ!アハハハハハハハハ!!」
「カナタっ!」
壊れたように笑い続けるカナタを強く抱きしめたフィリアは、頬に透明な雫を二筋流すと…懇願するように囁く。しかし、フィリアのその囁き声も不気味な笑い声によって、掻き消された…。
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハ」
「カナタ…。お願いだから、そんな悲しい笑い声を出さないで…。私の知ってる…あのお気楽なカナタに戻ってよ…」
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」
「あの時のカナタに戻ってくれるなら…わたし、なんだってするから…」
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」
「…かなた…っ…おねがいだから…ね…っ。こんなさみしいわらいこえをとめてよ…ね?」
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」
壊れた人形のように、狂った笑い声を出し続ける少女がつかれて…眠りつくまで、フィリアはその少女を強く抱きしめ続けた。
γ
その日の夜、カナタは一人 真っ暗な闇の中にいた。一寸先も見えないそんな暗闇の中、今は聞きたくもない憎らしい声がその闇の中、木霊する。
『あたし、詩乃のことを守るよ。あの事件から、詩乃を傷つけようとする者から守る』
・・・ウソつき、守れなかったじゃないか
『あたしは約束は守る主義』
・・・守ってないじゃないか。一番大切な約束を…
『そう、あたしは大切な人すら守れない役立たず。守る守るといって…出来もしない約束を交わして、大切な人を殺した…人殺し』
・・・その通りだ。あたしは役立たずで…この世界に居る価値すらないクズ…
『じゃあ、死ぬ?』
・・・いや、命を粗末にした死に方じゃあ…償えない…。詩乃以上に苦しんで…苦しみ抜いて、詩乃以上に辛い思いをしないと…死ねない。それがあたしに出来る…償い方だから…
『それで、罪が償えると思うのか?詩乃はすぐにでも…こっちへ来て欲しがってるんじゃないのか?大好きな詩乃を一人にし続けるのか?』
・・・あぁ、分かってる。…すぐにそっちに行くよ、詩乃…
γ
その日を境に、カナタは夜を寝れなくなったーー
そして、自分の事を大切にしようとしなくなった…。襲いかかってくるフロアボスや中ボスを防御なしの特攻で…攻めたおし、多くの攻略組…主にキリト達を心配させた。
そして、もう一つ キリト達を心配させているカナタの変化は…
「ねぇ、カナタ。一口でいいから、食べよ?オムライス、カナタの好物でしょう?」
「ーー」
宿屋の机に伏せるカナタへフィリアが問いかける。だが、カナタはフィリアの方を見るでもなく…身動きすらせずに、机に顔を押し付け続ける。カナタの態度に、フィリアは悲しそうな表情を浮かべながらもめげずに、カナタへと優しく語り続ける。
「味の心配なら大丈夫よ。アスナに手伝ってもらったんだから…」
そんなフィリアのセリフにやっとカナタが返事を返した。小さく掠れるようなその声に眉をひそめたフィリアは、もう一度カナタへと問い掛ける。
「…いだ」
「へ?」
カナタはゆっくりと身体を起こすと、濁った蒼い瞳でフィリアを見つめる。フィリアはそんなカナタを改めて見ると…胸を締め付けられる。
初めて会った時よりも彼女はやつれている…。ここはゲームの中だし、プレイヤーが操作してるのは現実の自分に似ててもアバターなのだ…なので、見た目に大差はない。だが、明らかに彼女から漂ってくるオーラというか…雰囲気が疲れているような…生きることをやめているような感じがする。
その証拠に、カナタはこんな悲しそうな表情で自分をバカにするような笑みを浮かべなかったはずだ…なのにーー
「…味がしないんだ…。何を食べても…よく噛んでも…。…唯一、ポーションやハイポーションとかだけが味がして…。ふふ…こんな状態なのに、あたしは生きたがってるんだな…卑しい奴…」
ーーフィリアは、カナタの両肩を掴んで自分の方を見るように促す。だが、カナタは俯いたままで…一向にフィリアの方を向かない。
「そんな事ないわ!誰だって…生きたいって思うのよっ!」
「…そんな事ないよ…フィー…。あたしは、死にたい…」
「じゃあ、なんで…カナタは攻略してるの?やっぱり、生きて帰りたいって思って…」
「そんな事…思ってないよ…。あたしは死ぬために…最前線へ向かってる。…普通に…飛び降りて死ぬくらいじゃあ…シノより苦しんでないもの…。最後は…モンスターに斬り割かれて、死にたい…。…そうしないと…ダメナンダ…」
掠れた声で、そんな事を言うカナタに…フィリアは泣きすがった。
「…そんな事しても…ッ。シノさんは喜ばない…むしろ、悲しんでるはずだよ!わたしがシノさんだったら、カナタに自分の分まで生きてて欲しいものっ!だから、お願い…カナタ、そんな事言わないで…。わたしたちと生きようよ…、ね?」
泣きすがるフィリアを力なく振りほどいたカナタは、淀んだ瞳でフィリアを見つめると…また、机へと顔を沈めた。
「…フィー、あたしは…もう、この世界で生きていく元気が無いんだ…。…この世界で生きてても…希望なんてないんだから…。もう…いい…?一人にさせて…」
「……。…ッ、…分かった…」
机へと伏せるカナタからフィリアは離れると、カナタは静かに呟く…
「…あぁ…死にたい…」
ー続ー
ということで、ダークカナタでした。
ifストーリーとはいえ、ここまで沈んだ様子のカナタを書くのは…かなり辛かったです…(涙)
尽くしてくれてるフィリアを悉く避けるカナタは、カナタじゃないようでしたね…(微笑)
早く元のカナタへと戻って欲しいです!
さて、次回はそんなカナタがある歌い手と出会うシーンです( ̄▽ ̄)
その歌い手とは誰なのか!?その歌い手はカナタにとっての希望となるのか…?
次回をお楽しみに、です(((o(*゚▽゚*)o)))
そんな本編の後に、続く雑談コーナーは少し明るめでいこうと思います!
私、この小説を書き始めて…SAOの関連の小説やコミックを集めているんですが…その中でも、面白かったコミックの紹介です( ^ω^ )
一つは【ガールズ・オプス】。
本作で登場してるルクスさんとシリカ、リーファ、リズベットが冒険する話です。ルクスさんの過去の話や、戦闘シーン…四人の友情は何度も読んでも感動しますし、面白いです(微笑)
そして、次のコミックが一番のオススメの【キリトの千夜一夜物語】というものなんですが…これがエロ面白んです!(興奮)
《ホロウ・フラグメント》での話が舞台で…キリトがアスナ達のヒロインから添い寝を攻められて、逃げまくるって話なんですが…何というか…何回目が分からないんですが、面白んですっ(≧∇≦)
基本的に、ユイちゃん視点で描かれてるんですが…ユイちゃんのゲーム内でのあのちゃっとダメなところとか、いい具合にストーリーに反映されてて…。他にも、みんなの普段見えない顔とか見えては…一人、勉強しつつ爆笑してます(微笑)
では、長くなりましたが…以上!雑談コーナーでした〜m(_ _)m