遠藤さんたちとの因縁?の戦いの最終決戦です!クズへとランクアップした遠藤さんたちがヒナタに向けて、どんな復讐を行うのか?ヒナタはそれに屈してしまうのか?
果たして、最終決戦は以下にーー
途中、お見苦しい表現もあるかもしれませんが…最後まで読んでいただければなぁ〜と思います。
※お気に入り登録・96名!ありがとうございます!!感想の方も三件も頂いて、嬉しい限りです(礼)
これからもよろしくお願いします!
その日、あたしは母と一緒に雪が降る夜道を歩いていた。真っ暗な空からふらふらと揺られながら、降りてくる雪の結晶がまだ幼かったあたしには綺麗に思えた。
なので、その綺麗な結晶を捕まえようと思って、夜空へと手を伸ばす。
「あっ…きえちゃった…」
だが、その白い綿毛みたいなものは、あたしが近くで見るよりも早くに溶けてしまう。掌に残る水滴に、あたしは難しい顔をして、再度チャレンジするが……
「むぅ〜、とれない…。つまんない…」
結果としては、失敗に終わってしまったのだった。あたしは頬を膨らませて、俯くと積もり始めた地面の雪を蹴飛ばす。暫くすると、雪を蹴飛ばすのも飽きて、あたしは母の方を見上げた。
「……」
癖っ毛の多い背中まで伸びた栗色の髪に、同色の切れ長な瞳。桜色の唇は薄く、背丈はほっそりと長い。
ーー子供のあたしから見ても、母はとても美しかった。
母と街を歩けば、本当に数人が振り返るし、そんな母の子供ということがとても誇らしかった。
だが、時折母が浮かべる疲れたような表情だけは好きになれず、その日もそんな顔をしている母が心配になり、母へと声をかけた。
「ままっ!」
あたしは遠い目をして、なかなかこっちを見てくれない母と繋いでいる手を強く下へと引っ張る。
すると、一瞬はっとしたような表情を浮かべた母は淡く微笑みながら、あたしへと問いかける。
「……なあに?ひなちゃん」
「まま、つかれてるの?あたま、いたいの。それともおなか?」
「ふふ、大丈夫よ、ひなた。あなたは本当に優しいのね」
「えへへ」
母が繋いでない方の手で、頭を撫でてくれるのがくすぐったく、あたしは目を細めて笑う。母は暫く、あたしを撫でるとまた前を向いて歩き出した。
ーーその時、母は何を考えていたのだろうか?
前を向いて歩く母は決意と複雑な気持ちを瞳へと漂わせていた。あたしはそれを理解するにはまだ幼かったし、理解していても母を止めようとは思わなかっただろう。
ーーだって、母の苦しみを。母がどれほど思い悩んでいたのか…ずっと近くで見ていたのだから……
そして、その時が来る。
母はあるベンチの前で立ち止まると、あたしの目の高さまで腰をおって、あたしの目をまっすぐみるとそっと肩へと手をおいてくる。
「ひなちゃん。ママね、少し忘れ物をしちゃったみたい。すぐに戻ってくるから、ここで待っててくれる?」
「ん、あたしまってる」
「ごめんね…すぐに戻ってくるからね…」
そう言って、立ち去っていく母の表情はなぜか罪悪感で染まっていて、今思えばあの時の〈ごめんね〉はあたしを捨てて行ってしまうことに関してだったのかもしれない。
そうとも知らず、幼いあたしは律儀に母を待ち続けた。ベンチに座り、プラプラと脚を動かしながら、もう帰ってこない母を待ち続ける。
「はぁ〜はぁ〜。まま、おそいなぁ…」
母が歩いていった道の方へと視線を向けながら、もう既に手の感覚が無くなりつつある両手へと息を吹きかける。スリスリと両手をすり寄せながら、帰ってくるであろう母を待ち続けたあたしはその後、親切なおじさんにベンチの上で意識を失っているところを見つけられて、急いで病院へと運ばれた。
医師曰く、もう少し遅ければ命を失っていたかもしれないと。
その他にも、なんやら色々と難しいことを言っていたがあたしには理解できなかった。けど、あたしは自然と理解したことがあった。
“ーーあぁ、あたし…ままにすてられちゃったんだ…”
と。
まぁ、そんな理由があり、あたしは暗いところと寒いところが苦手だ。幼馴染には、よく呆れられるが夜のトイレとかも一人ではいけない。本当に…情けないことだ……と思う、我ながら。
γ
遠藤たちがあたしたちの部屋へと男を連れ込んだあの事件から数週間が経つが、遠藤たちはあたしと詩乃へと何もしてこない。
“まぁ、しようとしたところで返り討ちにするんだけど…”
そんなことを思いながら、高校の生徒玄関へと入ると、複数の突き刺さるような視線を感じる。そちらの方を見ると、さっと周りの人があたしから視線を外す。
“なんなんだ…?”
嫌われることには慣れているし、こういった視線も慣れているつもりだった。しかし、そういった視線とは違う気がした。
あたしと何かをチラチラと交互に見ては、距離を取るように後ろへと下がる。
“意味がわからんな…なにをみ…て………”
周りの人たちの視線を辿り、何かを探り当てたあたしはそれを見た瞬間に凍りついた。
【香水 陽菜荼は殺人鬼の娘】
とデカデカと大きなマジックペンで題されたその張り紙には、古い新聞のコピーが貼られているようだった。その新聞の見出しを見た瞬間、あたしはその張り紙に向かって走り出す。
「陽菜荼?ちょっとっ、陽菜荼どこ行くのよ!」
背後から幼馴染の声がするが、気にしてられない。
“あの張り紙を外さなくてはいけない!”
そんな責任じみた思いが湧き上がり、張り紙を毟るように剥がしにかかる。
周りの人たちから見れば、今のあたしの行いは奇行に見えるだろう。だが、それでもかなわない。大切な人にあの事件を知られるくらいならーー
“見ないで詩乃みないでし乃みないでしのみなイデシノミナイデシノ”
うわ言のようにそれだけを思い、自分の過去を隠すように貼られていた張り紙を毟り取ったあたしは、それを拾おうと手を伸ばした時ーー
「○○村…殺人事件……?」
ーー凛としつつもどこか幼い感じを思わせる声が震える声で、あたしが知られたくなった事件の見出しを一番あたしが見られたくない人に読まれてしまった。
震えるように上を見上げたあたしを黒縁眼鏡の奥から焦げ茶色の瞳がいろんな感情を浮かばせて見ている。
“ーー知られてしまった”
詩乃にーー知られてしまった…。あたしの過去を、母の過去をーー
「ーーで、詩乃…」
「ひ…なた?」
詩乃から張り紙を奪い取って、自分の胸の中へと抱え込んで廊下へとうずくまる。
「そんな……ないで……の」
“そんな目で見ないでよ…詩乃。あたしをそんな目で見ないでよ…っ…そんな目で見ないでよ…。お願い、見ないで……ままーー”
ガタガタと身体が震えるので、両手で二の腕をさする。
“怖い怖い怖い怖いこわいこわいこワイコワイコワイ”
ママがあたしを見る目がコワイ、コワイ。このままじゃあ捨てられる。捨てられる…ママと居られなくなる。
「まま…ままっ」
そんなあたしの様子に詩乃はしゃがみ込んで、震え出すあたしの背中を撫でる。
「陽菜荼、大丈夫よ。だから落ち着いて、ね?」
「……で、………ないで…しの…。……で…まま……」
「私はあなたをそんな目で見たことなんてないわ。だから、落ち着いて。ほら、深呼吸。出来るでしょう?」
「すぅ〜、はぁ〜」
詩乃の言う通りに、深呼吸したあたしはゆっくりと顔を見上げると、淡く微笑む詩乃の顔がある。そんな幼馴染の顔を惚けた表情で見るあたしの耳へと、もっとも憎むべき者の声が聞こえてきた。
「ふふふ、どう?香水、あんたが知りたがっていたママのこと調べてあげたわよ〜。お気に召したかしら?」
あたしはその声がする方へと振り向くと、ニヤニヤと卑しい笑みを浮かべている女子生徒を睨みつける。そんなあたしの視線に女子生徒の方は気にしてないようだった。
「遠藤ーーッ!!」
「ちょっと、何怖い顔してんのよ。大好きなママとパパのことをみんなに知ってもらえて良かったじゃない」
詫びる気もないその言い方に、あたしは立ち上がるといつものように憎まれ口を叩く。そんなあたしの憎まれ口を明るい感じの笑い声で打ち消した女子生徒・遠藤はポケットから何かを取り出すとあたしの前へと放り投げた。
「人の過去を勝手に暴いといて、白々しいと思うだけどね。あたしはそんなこと、あんたに頼んだ覚えないけど?」
「ふふふふっ」
「何がおかしいのさ…」
「いえ?これを見ても…香水が同じことを言えるかしらと思ってね」
「……」
あたしは前に投げられた写真と何かをメモったような紙を交互に見た。
メモったような紙には次のようなことが書かれていた。
『わたしはあの子が恐ろしかった…。あの子を見ているとっ、あの男の顔が浮かんできて……。あの蒼い瞳がっ…とても怖いんです…。だから、わたしはあの子をーー捨てました。後悔はしてません…あの子とこのまま一緒にいれば、わたしの気が狂ってしまいそうでしたから』
「……」
“ナンダコレ…。コウカイシテナイ?キガクルイソウ?”
確かにそのメモを書いたであろうその人は、写真の中であたしの見たことない笑顔を浮かべて、可愛い赤ちゃんを抱っこしていた。その隣には旦那さんらしい人が映っている。
“ホント…ナンダコレ……。アタシ…シンジテタノニ……”
その人は癖っ毛の多い栗色の髪を腰まで伸ばしており、同色の切れ長の瞳が幸せそうに細められている。
そう、その人とはーー紛れもなく、あたしのママその人だった。
「…あはは……あはははっ…」
瞳から流れる透明な雫が頬を濡らしては、廊下を汚していく。
“滑稽だな…。もうとっくに諦めたはずなのに…こんなに涙が出るなんて…”
笑いながら泣くあたしに遠藤はニンヤリと笑いながら腕を組んで、見下ろす。
「あんたのママとやらもバカな女よね。産みたくないなら産まなきゃいいのに、あんたみたいな悪魔みたいな子をさ〜。犯人に脅されてたからって…逃げようと思えば逃げられたでしょうに。ホント、バカな女よ。あんたのママはね」
その言葉にあたしの何かが壊れた。
ゆっくりと立ち上がると、今だにようようと何かを言っている遠藤の右頬をおもっきり殴る。
「……何よ、なんかいうこーーがぁ!」
「ママの悪口を言うなぁーーッ!!」
あたしは遠藤へと馬乗りになり、感情のままに彼女を殴る。そんなあたしを止めようと、詩乃が後ろからあたしを引き剥がそうとするが、暴れるあたしによって断念。
「陽菜荼!?何してるの!やめて!お願いだからっ」
「離せ!離せっ!こいつが!!ママの悪口言うんだ!あたしの悪口は許せてもママの悪口はーー」
「ーーそのママに裏切られたんでしょうが。今だにあんな女を庇ってなんになるのよ。親が親なら子も子ね」
遠藤が吐くその言葉に、あたしの頭の血が沸騰するくらいに煮えたぎる。
「ダマレ」
冷たい声で、そういったあたしは無表情で彼女を殴り続ける。殴っている途中で、血が流れたり、歯が折れた気がするがそんなの気にしない。ただ、ひたすらにあたしのママを侮辱したこいつを排除するためだけに拳を握る。
「がぁっ、やめ……わたしがわる……っ」
「ーー」
「ひなたっ」
「何してるんだ!離れなさい!!」
騒ぎに駆けつけた先生によって、遠藤から引き剥がされたあたしは暴れるともう一度遠藤へと跨り、拳をその頬へと埋める。
が、それもすぐに同じ先生に邪魔されて、三発ほどで終わってしまった。
「うっさい!こいつがっ、こいつがママの悪口をッ!!」
「何を言っているんだ。こら、暴れんじゃない」
「うっさい!離せよ!!離せ!!こいつがっ!こいつがっ!!」
「あぁ、分かったから…校長室でゆっくり聞くから。いいからきなさい」
「ッ!?離せよぉおおおお!!あぁあああああ!!!」
数人がかりで、あたしは校長室へと連行されーーそこであたしは退学を言い渡された……
途中で出来た張り紙↓
【香水 陽菜荼は殺人鬼の娘】
『○○村殺人事件』
12月24日、○○村で当時16歳の少女の家へと強盗が押し入った。強盗は少女をリビングにあった椅子へと縛り付けて、その前で次々と少女の家族を殺害。衝撃のあまり、声が出ない少女を今度は強姦し、そのまま少女を誘拐して今だに逃げ回っている様子。
『○○村殺人事件で行方不明だった少女発見』
○○村殺人事件で、行方不明となっていた少女が犯人と共に身柄を確保された。少女の他にもう一人、産まれて間もない乳児も見つかり、この乳児は状況と本人らの証言から犯人と少女の間に出来た乳児と判明した。少女は深い心の傷をおっており、暫くはその治療に専念ために乳児は一時的に施設へと預けられる。