ififとついているのはベースをリコリスにしているからです。
原作だとイチャついている場合ではないと思うので……(笑)
ということで、シノンちゃんとイチャつきたかったという不純な理由で始まるifのifから始まるもう一つのストーリーを始めます!
※更新のペースは適当の気のいくままに…
※間違えていた箇所を直しました。
【対策本部・カナタの天幕前】
央都の中にある北セントラル修剣学院の敷地内。
広い庭の隅々に白い幕をはった天幕があちらこちらに鎮座している。数にして、10かそれ以上。
その中の一つ、校門の近くにある天幕列の一番端の前に少女が一人立っていた。
冷水を思わせる透明感のある水色の髪を揺らすたびに、顔の横で括っている房が揺れ、その房をくるくると弄るのは人差し指だけ空いている黒い手袋。
軽く伏せられ、タイルを見つめ続ける瞼を縁取る睫毛は長く髪と同色で、続くのは氷山の一角を思わせるほどに涼やかな印象を受ける藍色の瞳。
腕を組んでいる少女の小柄な身体を隠しているのは、彼女がこの世界…《アンダーワールド》へリンクする時に使用したハイレベルアカウント
上半身は胸部を包み込む白い服に動きやすいようにデザインされた青のジャケット。左胸に当てられた黒い胸当て。それらに続くのは白いベルトやらが巻きついている雪を思わせる白い肌、形良いお臍が続く。
下半身は横にスリットが入った白い短パン。そこから覗く藍色のスリット。細っそりした脚を包み込む左右不対称のブーツ。
そのブーツでトントンと地面を突く事、約30分。
それでも天幕から待ち人が現れる様子は無く、青い少女・シノンは藍色の瞳を横にスライドすると入り口を見る。
“ヒナタ、遅いわね…”
「シノ、ごめんね。ばたついちゃって」
これ以上待っても埒があかないと入り口の白い布を掴んだ瞬間、待ち人が困った顔を晒しながら現れた。
肩にかかるまで伸びた癖っ毛の多い栗色の髪を後ろで動きやすいように束ね、入り口の布を掴んでいるシノンを見つめる瞳はシノンの藍色よりも蒼い。
“?!”
突然、現れた待ち人に藍色の瞳を大きくしながら布を離したシノンに待ち人・カナタは形良い眉を近づける。
「シノ、どした?」
「いいえ、別に」
カナタから投げかけられる純粋な疑問を数回の瞬きと素っ気ない声音で返したシノンはカナタが通れるように後ろに一歩下がる。
その好意に甘え、天幕から現れたカナタは大きく背伸びをするとシノンへと振り返り、にっこりと笑うのだった。
「それじゃあ行きましょうか」
「ああ」
シノンの後に続くカナタを横目で見ている藍色の瞳には僅かな動揺が滲んでいた。
理由は彼女が身につけている戦闘服が出会った時に着ていたものと異なるからだ。
“上級修剣士の制服かしら? いいえ、でもデザインが違うわね“
シノン達の横を通り過ぎる北セントラル修剣上級剣士……黒をこよなく愛する友人とその親友から聞いた話だと、色が付いた制服を着れるのはその中でも選ばれた数十名であるらしい。
その選ばれた数十名に友人・キリト。その親友であるユージオとメディナ。隣を能天気歩いているカナタも入っていたそう。
だが、今着ている服は横を通り過ぎる上級剣士の服とはまた違うし、デザインがそもそも異なっているように思える。
“デザイン的にはキリト達が着ている騎士服に似ているわね”
そう、上級剣士が身につけている制服のようにビシッとした印象を受ける彼女の服はキリト達が着ているような騎士服のように思えた。
猫の尻尾のように気のいくままに揺れる房が擦れているのは白い襟首、そこから続くのは彼女のリアルネームを表しているかのような明るい橙の布生地に水色の線が走る……腰に巻いているベルト、時々剣の紋章が入っているところも含めて、キリトの騎士服を橙にしたような服を彼女は身につけている。
異なっているところはキリトよりもダラシなく着こなしているところだろうか…。上から二個外している騎士服から覗くのは橙のTシャツ。足元を覆うまで伸びた騎士服を蹴飛ばす脚を包むのはスリットが入ったロングスカート。
そこまで見たところで頭上から笑い声が響く。
「あはは、突然こんな格好で来たらびっくりしちゃうよね」
「いいえ、そんな事はーー」
「ーーその顔が何かいいだけと言わないでなんというのかな」
シノンの前に駆け出したカナタは人差し指をシノンへと突き出す。
とんと眉の間を小突いたカナタは藍色の瞳をまっすぐと見つめる。
「ここ。さっきからシワが出来てるよ……たく、何十年君の幼馴染してるって思うのかな。あまりあたしの目を見くびらないでくれますかな、シノン君」
そう言って、自分が着ている橙の騎士服を左手の指で摘むと上下に揺らす。
「この服に着替えたのは
「別に。小父さんでも構わないわよ」
「いいや、小父さんは会議の時とかだけにする。アリスもあたしもシノンやキリト達と行動を共にするのならば、整合騎士の肩書きは邪魔でしかなくなるからね」
カナタのセリフを聞きながら、シノンは自分の胸がチクチクと痛むのを感じる。
それは何に対してか分からないまま、シノンはカナタへと相槌を打つ。
「そういえば、貴女ってアリスと同じでベルクーリさんの指導を受けていたんですって?」
「そうそう。その時の癖がやっぱり直らないんだよね…」
“まただ”
チクッと痛む胸を抑え込もうとした利き手を胸当て越しに押し当て、止まるように念じながら……カナタの話を聞いていく。
痛む理由には気づいていたが……それは個人的で仕方ない事だとシノンは心で吐き捨てる。
だが、揚々と語るカナタの出で立ちや話を聞いているとチクチクが増していく……。
「んで。話を戻すけど。そのベルクーリさんに言われたわけですよ。カナタの嬢ちゃんはもっと身分を隠すってことを知るべきだなってね」
「あー、なるほど。確かに貴女の戦闘服っていつも珍妙だものね。あの姿はこの世界の人では見たことがないわ」
「あはは、そんなにあたしって常に珍妙な姿してるかな……まー、シノの言った通りであってるよ。あたしの整合騎士の服……リアルでいうと和服を着ている人は村人も貴族もあまり居ないんだよね。なので、整合騎士の任務の時は和服。キリ達との任務、普段過ごす時は今着ている服って分けているわけですよ」
そう言うカナタは大きく背伸びをする。
「といっても、あまりこの服好きじゃないんだよね……」
「そう? 私はにあーー」
最初こそは驚きはしたが、彼女がビシッとした騎士服を着ているのは新鮮で目新しく、シノンの目から見ても彼女は騎士服でも似合っていると思う。
それを言葉にしようとした瞬間、背後から凛々しい声が二人の背中へと投げかけられる。
「ーーここに居ましたか、カナタ」
振り返る二人の目に映るのは、純金を溶かしたような金を緩やかに三つ編みにしている少女。
此方を見ている蒼の瞳はカナタを透き通る空と例えるならば、彼女は透き通った氷……いいや、澄み渡った湖と例えるべきか。
凛々しさを感じる蒼の瞳から視線を下に向けると重量感を感じる金の鎧や籠手、ブーツが
ダラシなく着こなしているカナタと違い、しっかり首元までボタンを留めている蒼い騎士服、シミ一つないロングスカートからも少女の几帳面さ、生真面目さが垣間見えた。
「お? どしたの? アリ」
そんな少女・アリスに向かって放った一声がそれで。
アリスの蒼の瞳がより一層嫌悪さを増していき、細められる瞳からは威圧感すらも感じ取れる。
「どしたの? ではありませんよ、カナタ。今日は私と貴女で任務があるのですよ」
「にんむ?」
初めて、言葉を覚えた乳児のようにたどたどしくアリスの言葉を復唱するカナタにアリスはつめ寄る。
息をするのを忘れてしまうほどに凛とした美しさをのぞかせるアリスの美貌を間近で見られるのは眼福であるだろうが……全身から不機嫌さや威圧感等を放出しているアリスは高圧感は感じても眼福とは思えなかった。むしろ、冷や汗が出てくる……カナタは確かにアリスの後ろに般若を見た。
故に詰め寄ってくる興奮したアリスを落ち着けるために彼女の肩へと両手を添えるとそっと自分から遠ざかる。
「初めて聞きましたって顔をしないでくださいよ。私はちゃんと言いましたよ、昨日の晩に」
「分かってる。分かってるってアリス様。確か、東の方でモンスターが増えて、人害が出てるんだったよね。近衛兵では太刀打ちできないからってあたしとアリスが向かうんだったよね」
「そうです。分かっているのなら、準備をしますよ」
そう言って、金色の籠手が橙の騎士服を掴むのを捉えた蒼の瞳が困惑したようにアリスを見た後、隣に佇むシノンを見る。
計4つの蒼の瞳から発せられる視線を受けたシノンは利き手を左右に揺らす。
「私なら気にしなくてもいいわ。私との約束とこの世界の人たちの命なら天秤にかけるまでもないわ……それにその任務はカナタでしか解決出来ないのでしょう? なら、行ってあげて」
「ごめんね、シノ! 必ず埋め合わせするからっ」
「シノン、すいません。カナタをお借りします」
金の籠手に引っ張られるままに左手を顔の前に立てて、勢いよく頭を下げるカナタ。そのカナタを引っ張りながら、頭を下げるアリスへと笑みを浮かべる。
「アリスもカナタも気をつけてね」
カナタの天幕にかけていく二人の後ろ姿を見ていると数分後には初めて会った時に着ていた橙の和服に腕を通した彼女がアリスと共に飛竜の元にかけていく。
“まだ続いている……胸のチクチク……”
気にしたって仕方ない。
だって、この世界で二年間暮らしてきたカナタは自分が良くしてる《蒼目の侍》のカナタではなく……《整合騎士》のカナタなのだから……。
この世界で、人界の人々に、整合騎士の仲間から必要とされている彼女を独り占めするのは……きっと浅ましく惨めな事だろうし、きっとそんなことをすれば自分は後悔する事だろう……。
“だけど、少しでいいから。二人っきりでどこかお出かけしたいな……”
もう姿形も見えない橙の後ろ姿を思い浮かべながら、シノンは突然空いてしまった予定をレベリングと弓の修練に当てようと思い、外の草原に続く道に向けて歩いている時だった。
後ろから見知った声がして、タイルを軽やかに蹴って、自分に近づいてくる足音が聞こえたのはーーーー。
「シノン!」
振り返ったシノンの瞳に映るのは、黒い短髪を揺らして走ってくる友人だった。
白い襟首と裏生地に黒い布地、金色の線があしらわれた黒い騎士服。彼の筋肉質だが細い焼けた肌を包むのは同色のズボンで地面を蹴っているブーツも黒と……この世界でも黒をこよなく愛している友人に淡い笑みを浮かべたシノンは彼を出迎える。
「こんにちわ、キリト。これから街の外に出かけるの?」
「ああ。丁度、魔獣と《カラント》の討伐依頼が届いてな」
友人・キリトが口にした《カラント》は《カラミティ・プラント》の略称だったりする。
央都の中央に聳え立つ《セントラル・カセドラル》に突如生えた大樹《カセドラル・シダー》と関連するものと推測されている。
そして、カラントはかつてこの人界を支配していた最高司祭・アドミニストレーターの《心意》を纏っており……彼女に忠誠を誓っている整合騎士では切らないという仕様になっている。
つまり、カラントを切れるのは外の世界《リアルワールド》から来たシノンやキリト達。
右目の封印《871コード》を自力で解除し、アドミニストレーターと対峙したユージオとアリスの数名となっている。
“キリトの実力を疑うまでもないけど……”
カラント。そこから生まれ出る魔獣を相手するのは一人では厳しいだろう。
それに丁度修練に出かけようとしていたのだ。魔獣だけを狩るよりかはカラントも倒した方が人界のためになるだろう。
「そうなの。なら、私がご一緒しましょうか?」
「いいのか? だが……」
「大丈夫よ。カナタなら任務があるからってアリスと一緒に東に飛んで行ったわ」
「そうか。なら、シノンにもお願いしようかな」
「も?」
眉を細めるシノンはキリトの後ろから歩いてきている友人達を視界に収める。
「シノのんも一緒に来てくれるの?」
そう言って、ほわわんと笑うのは栗色の髪を腰近くまで伸ばし、優しい色をたたえたはしばみの瞳を細めている少女・アスナ。
白い騎士服の上から銀色の胸当てを着用し、ピンク色のスカートを揺らしている彼女に「ええ」と答えるシノンはキリトの後ろに立っている少年にも頭を下げる。
柔らかそうなカーブした亜麻色の短髪。彼の人の良さを表している碧の瞳から続くのは生真面目に首元までビシッと着こなした白の襟首に青……いや、水色の騎士服とズボンにブーツを着用した少年・ユージオはシノンを視界に収めると柔らかい笑みを浮かべる。
「シノン、今日はよろしくね」
「ええ、よろしく。ユージオ」
キリトが予め声をかけていたメンバー、ユージオとアスナにシノンを加えた四人はカラントが発生したと報告があった東帝国へ向けて、出発するのだった。
余談ですが……8/21は詩乃ちゃんことシノンちゃんの誕生日ですね……!!
どんなエピソードにしようか迷う……(思案)