sunny place 〜彼女の隣が私の居場所〜   作:律乃

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さて、まさかの続編となってしまった+α編ですが…今回は酔っ払った女性陣がカナタのところに訪れるところから始まります。

キリトとユイちゃんが居なくなった今、カナタと彼女たちの間を邪魔するものは居りません!
さぁ、女性陣の皆さん ここまでデレデレされられた分の仕返しをカナタへと思う存分、ぶつけちゃってください!!(笑)

それでは、本編をどうぞ!!


003 バッカスジュースの嫉妬+α

「カァ〜ナタッ!」

「うわ!?」

 

後ろから突然抱きつかれて、癖っ毛の多い栗色の髪と空のように透き通った蒼い瞳が特徴的な少女・カナタは危うく、スプーンに乗っけている今度はきのこの入ったトマトソースのオムライスを落っこちそうになる。おっとと、とバランスを取りながら、なんとか落とさずに皿の上にスプーンを置けた際に思わず「ふぅ〜」と溜息をついたカナタは、右腕へと抱きつきながらスリスリと右肩に顔を摺り寄せる金髪碧眼の少女・フィリアへと微笑を浮かべながら、甘えてくるフィリアの頭を優しく撫でると注意するような口調で言う。

 

「もう、フィー。抱きついてきたりするのは嬉しいけど、今は食事中なんだから…。あんな思いっきり抱きつかれたら、流石に驚く。今度は声をかけてから、ね?」

「だって、今カナタにくっつきたかったんだもん〜」

「だってってーー」

 

“あれ?今日のフィー、なんか変だな?”

 

呆れたような口調でそこまで呟いたカナタは、頬を膨らませてこっちを睨んでくるフィリアの表情がいつもと違うことに気付く。いつもはしっかり者という雰囲気というか、凛々しい感じを受ける水色の瞳が今はとろ〜んとしている。眠たそうな感じで開かれた瞳の端には少しだけ涙が溜まっており…頬を赤く染めて、そんな瞳で上目遣いしてくるフィリアがカナタには妖艶に映った。小さく呼吸を繰り返す艶っぽい光を放つ桜色の唇に思わず視線が向いてしまい、ゴクリと生唾を飲んでしまう。そのまま、その光に導かれるようにカナタはフィリアの唇へと顔を近づけていきーーあと、一センチでくっ付くといった所でハッとしたように顔を離して、勢い良くフィリアから顔を逸らす。首を傾げるフィリアを視界の端に捉えながら、 カナタは首をブンブンと振る。

 

“いかん。あたし…今、フィーに何をしようと!?”

 

普段とは違う雰囲気を漂わせたフィリアに理性が一瞬で吹っ飛び、危うく恋人の前で他の女性とキスするところだった。カナタは胸に手をおき、心の中で“今度は惑わされない…惑わされない…”と念じて、フィリアへと向き直ろうとして、自分目掛けて近づいてくる大勢の女性陣にギョッとする。

先頭を切って、カナタとフィリアへと近づいたリーファは滑舌の回ってない感じでフィリアを怒ると、左腕へと抱きついてくる。驚くカナタへ密着しようして、ムギュと胸を押し付けてはフィリアと同じようにスリスリと甘えてくる。両腕を塞がれたカナタは、次々と現れる女性陣に忽ちに埋められていった。

 

「あぁ〜!フィリアさんずるいですよ!あたしもカナタさんに抱きつきたいです」

「リー?へっ、みんなどうしーー」

「ーーリーファやフィリアばかりずるいです。わたしもカナタ様に甘えたいです!」

「カナタさん、あたしも〜」

「えへへ〜。カナちゃんの匂いって…とっても落ち着く」

「アスナの言う通りだわ。この匂いは癖になるわね」

「あぁ!みんな、ひどい!私もカナタ君にスリスリする!」

「わっ!わわぁ!?」

 

驚きの声を上げるカナタの両腕にはフィリアとリーファが、思い思いに両肩へと顔を近づけては甘える子猫のようにスリスリと顔を摺り寄せている。そして、両膝の上にはシリカとアスナが乗っかっており、カナタの胸元に顔を押し上げてはスゥースゥーと香りを楽しんでいる様子だった。続けて、他のリズベット・ルクス・レインは後ろ側からカナタへと抱きついては、匂いを嗅いだり密着しようと身体を押し付けたりと思い思いの行動を取る。

そんな大勢の女性に囲まれて、ハーレム状態を満喫してるようにも見えるカナタは自分を取り囲む女性陣を見渡しは、冷や汗が一滴、二滴と頬を流れる。それくらい、カナタの置かれた状況は危ないものだった…。とろ〜んとした瞳と赤い頬で子猫のように甘えてくるみんなは、とても可愛らしくかつ妖艶だった。目で追わないと心に決めつつも、女性陣が取る一つ一つの行動が何故か色っぽく映り、自然と生唾を飲み込んでしまい…その都度“あたしは何をしてるんだッ!”と自己嫌悪と罪悪感に苛まれる。カナタはみんなから視線を逸らすと、ゆっくりと目を閉じて…考えをまとめる。

 

“あかん。これは非常にヤバイ状況だ…。みんな、目がとろ〜んとしてるし…普段は頼りになるアッスーもリトもこの状態。このままじゃあ、あたし 本気でみんなに食われかねないーーというか、その前にあたしの理性が壊れる!”

 

こうなったら、一番頼りにしてる恋人にこの状態を助けてもらうしかないと思い、カナタは目を開き、目の前にいる最愛の恋人・シノンへと懇願の眼差しを向けるがーー

 

「シノ助けーーって、居ないしッ!!!」

 

ーーさっきまでいた恋人の姿は無く、もぬけの殻となった椅子のみがこの騒ぎの中、物静かに鎮座してあった。カナタは、グッと泣きそうになるのを我慢して、暫くの間は女性陣に揉みくちゃにされていた。その際に思ったことは、シノンには決して言えないが思わざるおえなかった…

 

“シノの裏切り者ぉーーー!!!”

 

 

γ

 

 

一方、件のシノンはフィリアがカナタへと抱きつき、みんながこっちに向かっていることに気付いて、カルボナーラを手に持つと茶色のフードを被っている知り合い・アルゴの近くへと腰を落とすと、騒がしい右端の席へ視線を向けながら、カルボナーラを優雅に足を組んで口に含んでいた。そんな落ち着き払った感じのシノンを珍しいものを見るような感じで見つめているアルゴに、シノンは片眉を動かして、アルゴに問いかける。そうすると、アルゴは肩を竦めると騒がしい右端の席ーーシノンの恋人・カナタのいる席を指差しながら言う。

 

「シーちゃん、カー坊のところにいなくてよかったのカ?」

「えぇ、まぁね」

 

シノンは女性陣に囲まれて固まるカナタを見ながら、肩を上下に動かすとカルボナーラへと視線を落とす。そんなシノンの様子にアルゴは心底驚いた様子だった。

 

「驚いたゾ。シーちゃんはカー坊と片時も離れたくないのかとオネーサンは勝手に思っていたからナ」

 

カルボナーラをフォークでクルクル巻き取りながら、シノンは淡く微笑みながら、アルゴの問いに答えていく。確かに、最初の頃はカナタをフィリアやルクスなどに取られると思ったが、カナタはどんな事があってもシノンの事を愛してると言ってくれたし、一番に思ってくれていた。それはシノンも同じで、カナタの変わらない気持ちがとても嬉しかった…ので、あまりカナタを縛るのはやめようと決めていたのだった。カナタには、カナタの関係の築き方があるだろうし…この世界に来てから、判明されつつある〈無意識女たらし〉の件もこうも日常茶飯事だと相手につっかかるのも疲れるし、カナタもシノンを悲しませないように(?)行動してるようだし…まぁ、少し羽を伸ばすくらいいいかと多めにみている。

 

「…最初は取られるかもって不安にもなったけど。私はどんなカナタも愛してるし、信じているもの。だから、今はみんなにカナタを譲るわ」

「にゃハハハ。シーちゃんは優しいナ〜、そんなシーちゃんを恋人にしたカー坊は果報者だナ」

「まぁ、本当に浮気しようものなら…いくら、カナタでも許さないけどね。矢を身体中に突き刺さないと気が済まないと思うわ」

 

女性陣に囲まれて、赤く染まっているカナタを一瞥して、シノンは目の前にいるアルゴへとウィンクすると、もぐもぐカルボナーラを食べる。そんなシノンのウィンクに苦笑いを浮かべたアルゴは、シノンを怒らせないようにしようと心に決めると、再びカナタへと視線を向ける。

 

「にゃハハハ、シーちゃんは怒らせると怖いんだナ〜。オネーサンもシーちゃんを怒らせないように気をつけることにするヨ。しっかし、カー坊の姿が埋れてしまったが、あれはシーちゃんの中では浮気にならないのカ?」

「あの子は無意識に人を惹きつける魅力を持っているのよ…それも主に女性を。あんなの日常茶飯事だから…もう、見慣れちゃったわ」

「シーちゃんも苦労するナ。おっ、みんながカー坊から離れていくゾ〜」

「……」

 

アルゴの言葉につられるように上を向いたシノンは、最後の一口となったカルボナーラをもぐもぐと咀嚼しながら、事の成り行きをアルゴと共に眺める。

 

 

γ

 

 

シノンとアルゴに見られていることを知らないカナタは、女性陣の好き勝手な行動に悩まされていた。

例えば、アスナがカナタの胸元に顔をうずめて、カナタの匂いを嗅いでいると…ふとした疑問を口にする。それを聞いたみんなは、カナタへと顔を押し付けると匂いを一斉に嗅ぐ…それがくすぐったくて身じろぎするカナタ。そんなカナタを気にした様子もなく、口々にアスナの疑問へのコメントをする女性陣。

 

「カナちゃんの匂いって…お日様の匂いともう一つ甘いけど爽やかな匂いがするのよね?何の匂いかしら?」

「はい、何かのお花のような…そうじゃないような…。ん〜、果物の匂いなんでしょうか?」

「今の今までオムライスとか食べてたからじゃない?あたしにはわからないわよ」

「違いますよ、リズさん。オムライスの匂いも付いてますが…もう一つ、匂いが確かにします。…ん〜、あたしも好きな物の匂いなんですけど…なんでしょう?」

「ん〜、リーファも好きなものか?なんだろうね、私も一度はこの匂いを嗅いだ気がする…」

「私も嗅いだことあるわ、この匂い…。ここまで出てるのに…わからないわ」

「私も嗅いだことある。…フィリアちゃんと同じでここまで来てるのに…なんだろ?わからないのが悔しいな…」

「ちょっ…みんな…くすぐった…」

 

そのまま、思う存分匂いを嗅いだみんなだったが、結局匂いの状態が分からなかったのか…それとも、その匂いにつられて食欲がそそられてしまったのかーー1回大きく深呼吸するとタイミングを見計らったように、七人の小さな口がカプリとカナタの柔肌へと噛み付いた。

 

『かぷ』

「ひゃあ!?ちょっと、みんなでなにしてんの!!」

 

その七人の行動に痛みよりも先にゾクゾクと謎の電流が身体中を走り、これはヤバイと悟ったカナタは噛み付いてるみんなにやめるように呼びかける。それに応じたみんなは何故か頬を膨らましていたが、こればかりは譲るわけにはいかずに、カナタは心労から深くため息をつく。

 

「何って…カナちゃんを食べてる?」

「ダメでしょう!?普通に考えて!噛み付くとか何を考えてるの!?あと、背中に今だに噛み付いてるのレイでしょう?そんな行動はやめましょう」

「え、カナタ君が美味しかったから。もう一回、食べたいなぁ〜って…」

「欲望に忠実すぎ!!そういうところもレイの魅力だと思うけど、少しは自制しようね!!」

「えぇ〜」

「えぇ〜じゃありません!もう…はぁ……」

 

噛みつきはしなくなったが、今だに自由な行動をとるみんなへとカナタはお願いする。それに、不服そうなみんなはカナタの必死なお願いにしぶしぶと離れていく…

 

「みんな、聞いて欲しいんだけど。取り敢えず、あたしから離れよう。お願いだから」

『えぇ〜』

「えぇ〜じゃなくて、あたしもこのままだと身動き取れないしさ。離れてくれたら、個人的にみんながして欲しいことするから…この通り、お願いですから…離れてください」

『ーー』

「あんがと、みんな!」

 

弾けるような笑顔でそう言うカナタを見て、みんなの頬が赤く染まるのをーーみんなが離れたことに安堵するカナタは見逃し、遠くで騒ぎの成り行きを見ているシノンとアルゴはバッチリと見て…同時に肩を呆れたようにすくめる。そんな中、一息つくカナタの袖を引く者が居た。可愛らしい羽根つき帽子をちょこんと頭に乗っけた少女・レインは上目遣いで伺うようにカナタを見る。そんなレインの仕草に、ドキッとしつつもカナタはグッと理性を強く持つと、レインにニッコリと笑いかける。

 

「カナタ君、さっき離れてくれたら…個人的に、私たちのして欲しいことをしてくれるって言ってくれたよね?」

「あぁ、ん…だね」

「そのして欲しいことって…どんなのでもいいのかな?」

「?」

 

レインの薄焦げ茶色の瞳に映る変な期待の色に不思議に思いながらも、カナタは“まぁ、いいか”と頷く。

 

「ん、あたしに出来ることなら何でもしてあげるよ」

 

カナタの言葉に、女性陣がニンヤリと笑い…カナタは小首をかげる。この時のカナタはまだ、自分があんなことをすることになるとは思いもしなかっただろう…

 

 

ーまさかまさかの続ー




まさかまさかの続編となった今回の+αですが、本来はここまで伸ばす予定は無かったものなんです(微笑)
ですが、酔っ払ったみんなと正常運転(?)のカナタとのやりとりを書くのが面白くて…ついつい筆が進んでしまい、まさかまさかの続編となってしまったということです(o^^o)

さて、今回の話のカナタは酔っ払ったみんなに押され気味でしたが、次回もみんなの勢いに押されて…もしかしたら、押し流されて…あんなことやこんなことをしてしまうことしれません(^ω^)
それで、シノンさんに怒られてしまうかどうかは…まだ次回のお楽しみということで(o^^o)

ではでは( ´ ▽ ` )ノ

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