さて、ヒナタが最後に迎えるのは…幸せか?それともーー
ーーー今回の登場する人物ーーー
カナタ、フィリア、リーファ、ルクス、アスナ、キリト、シノン
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※4/17〜誤字報告ありがとうございます!
「あの…フィー、そんなにくっつかなくても…あたしは大丈夫だから、ね?」
あたしは隣に腰掛ける、青と水色を基調とした戦闘着に身を包む金髪の少女へ困った表情を浮かべて話しかけると、金髪の少女がなぜか怒った表情を浮かべる。
「ダメだよっ、カナタ。カナタにもしもの事があったら、どうするの?」
「いや…でもさ、それを守ったからって…占い師が言ってたことにならないとは思わないんだけど…」
「もう、なんでカナタはそんなに占いに否定的なの?」
「……いや、否定的…ってわけじゃないけどさ…って、フィー だから近づきすぎだって!!」
「このくらい近づかないと…効果が現れないかもしれないでしょ?」
そう言って、さらに距離を縮めてくる金髪の少女・フィリアにあたしは何度目となる問いを心の中に流す。
“あぁ…どうしてこうなってしまったのだろう…”と。
フィーことフィリアが、こうなってしまったのは遡ること…一時間前のことだった。フィーに誘われ、消耗品・ポーションや回復結晶などを買い出しに行こうと立ち寄った公園にて、真っ黒なケープを被った変なプレイヤーに声をかけられたあたしはそのプレイヤーの言っていることを信用してなかったのだが、なぜか フィーの方がそのプレイヤーの言っていることに乗り気になってしまって…そのプレイヤーにあった後からこんな調子なのだ。
“あの…プレイヤーのこと、どっかで聞いた気がするけど…いい話じゃなかった気がするんだよな…”
なので、あたしはそのプレイヤーがあたしを占った結果を信用しなくていいとフィーを説得してるのだが、妙に熱がこもった水色の瞳から察せられると思うが…フィーはあたしにもしもの事があったらいけないからの一点張りで身体を離そうとしてくれない。むしろ…あたしの腕を抱いて、密着度を高めていく。ちゃっかり、抱いている手を繋いでいるところを見ると…このフィリアという少女は侮れない気がする。
“うぅ…誰か…助けて〜”
「……何してるんですか?カナタさん…フィリアさん…」
酒場の入り口から呆れているような…困惑しているような声が聞こえてくると思い、そちらへと視線を向けるとあたしたちの方へと一人の女性プレイヤーが近づいてくる。白と黄緑を基調とした戦闘着に身を包むそのプレイヤーは、黄緑色の瞳を笑顔がこわばっているあたしをジト目で見ている。
「あ…、リー」
「あっ、リーファ」
「フィリアさん、何してるんですか?カナタさんが困ってるじゃないですか。離れてくださいっ」
「ダメだよっ。こうしないと、カナタが不幸になっちゃうんだよ」
「?」
フィーの言葉に、小首をかしげるリーことリーファにあたしがフィーの説明に言葉を付け加える。
「朝にね、占い師からあたしが今日一日 親しい女の子と行動を共にしないと不幸になるって言われたもんだから。フィーの方がその気になっちゃって…」
「…なるほど……、それなら……ってわけですか…」
「へ?」
小さな声で何かをつぶやいたリーが、あたしの右側に座り…なぜか、フィーを止めてくれることもなく、右腕をフィーと同じように抱く。その際にムニュっと、何かが形を崩してあたしの身体へと押し付けられる。柔らかいそれの正体がわかった瞬間、あたしの頬が真っ赤に染まる。チラッとそちらの方を見るとーー
“ーーうわぁ…あたしの腕が埋まって…”
なるべく、リーの方は見たい方がいいな…。目のやり場に困るし、あたし自身が虚しくなるから…。それよりも、二人の暴走を止めないとっ。
「ちょっ、なんで…リーまであたしに近づいてくるの!?」
「だって、カナタさんにもしもの事があったら…お兄ちゃんじゃない。キリト君に迷惑がかかりますから…あたしが責任持ってカナタさんを不幸から守らないと」
“だから…そのもしもの事って何?!”
さっきから何度も出てきているもしもの事とは何なのだろうか?街にいれば、HPが減ることはないはずなのだが…
「いや…このまま、街で過ごしていれば…大丈夫だと思うからさ。一旦、離れよ」
「ダメだよ!」
「ダメです!」
“成してーー!?”
「街の中だといっても、安全ではないとお兄ちゃんが言ってましたよ!」
「そうそう、いきなりデュエル申し込まれたりするかもしれないんだし」
「いや…断るからさ…」
「取り敢えず、ダメです!」
「そう、ダメ!」
“もう…ダメだわ…”
あたしは二人を説得することを諦めて、成り行きに任せようと項垂れる。そして、抵抗する力がなくなったことをいいことに…更に、距離を詰めてくる二人に心の底で嘆息する。
そんなあたしたちの耳へと、アルトよりの声が聞こえてくる。アルトよりといっても…あたしやシノよりかは声に可愛らしさを感じる。
「カナタさま…?どうして、フィリアとリーファとくっついているのですか?」
「ーー」
そして、そんな声の主とあたしを呼ぶ特徴的な呼び方から…この宿屋へと次に帰ってきた人を理解したあたしは項垂れながら、そちらへと視線を向ける。
“…どうしよ…厄介な人が帰ってきちゃった…”
そこには、あたしの予想したとおり…白に近い銀髪をウェーブの罹った感じで腰まで伸ばしている少女が同色の垂れ目気味の瞳を大きく見開いている。
「や、やあ…ルー」
「ルクス、おかえりなさい」
「ルクス、おかえり〜」
軽く手を上げて、銀髪の少女・ルクスへと挨拶したあたしに、あたしの腕を抱いている二人もルーことルクスの姿を見つけたらしく、帰ってきたルーへと声をかけている。そんな二人へと、律儀正しく頭を下げるルー。
「あ、うん。ただいま、フィリア、リーファ。で、カナタさま、これはどういった状況なんですか?」
「んー、どういった状況っていうか…成り行きでこうなってしまったといいますか…」
「?」
あたしのしどろもどろの説明に小首をかしげるルーに、リーが説明してくれる。
「ルクス。カナタさんはね、今日1日こうやって女の子にくっついてないと不幸になるんだって」
“それの言い方だと、色々と誤解を招くんだけどーっ、リー!?”
「そうなんですか!?カナタさま?」
「あー、うん…占い師が言うにわね…。でも、街にいれば大丈夫だと思うって二人に伝えてーー」
「ーーなら、私にもカナタさまを不幸にさせない手伝いさせてください」
“どうしてそうなるの…。お願いだから…、これ以上 状況をややこしくしないで…”
意気込むルーに、フィーが抗議する。
「ルクスの場所ならないよ。両腕はわたしとリーファで埋まってるんだから」
抗議するフィーを爽やかに笑って、あたしの後ろへと回り込んだルーはそのまま後ろからムギュ〜っとあたしへと抱きつく。
「なら、私は後ろからカナタさまに抱きつくだけです」
「ーー」
「あ〜ぁ!ルクス、ズルい〜!」
「カナタさんも、鼻の下を伸ばさないでください!」
「いや…、伸びしてないけどさ…。その…衝撃が強くて…」
“本当、ルーといい…リーといい…、何を食べたら…こんなに大きくなるんだろう…”
後頭部に感じる二つの膨らみの感触を髪の毛越しに感じながら、あたしは自分のスタイルにいよいよ自信が持てなくなってくる。
そして、何よりもルー参戦により、なぜか白熱しているこの謎の張り合いも終わりを迎えることになる。突然、響いた二つの声に、あたしは今度こそこのカオス状態を脱することができると喜ぶ。
「何やってるんだ?」
「カナちゃん…」
「…キリ、アッスー…助けて…、お願い…この三人を止めて…」
帰ってきた二人の人影にあたしは助けを求める。三人に埋もれるような形になっているあたしを見て、呆れ顔が固まるのは…全身を黒の一色でコーディネートしている黒髪の少年と白と紅の二色で騎士服をコーディネートしている栗色の髪の少女で、なぜか二人とも呆れ顔から同情するような顔に早変わりするとーー
「ーーその…助けたいのはやまやまなんだが、カナタ…どうやら、何もかもが手遅れらしい」
「へ?」
黒髪の少年・キリトことキリの言葉に目を丸くするあたしの耳に聞き慣れた声が聞こえてくる。
「キリトとアスナ?こんなところで何してるのよ?中に入らないの?」
「あ…シノのん…」
その凛々しくも幼い声を聞いた瞬間、あたしは余命宣告をされた気がした。
“あたしの命もここまでか…。短い人生だったな…”
心で涙を流すあたしに、その声の主は微妙な顔で固まる栗色の髪の少女・アスナことアッスーに眉をひそめて、そのアッスーの視線の先にいるあたしたちに表情を固まらせる。
「アスナ?なんで、そんな顔してーー」
「ーーやあ、シノ。おかえりなさい」
「……」
固まった表情のままから突然、にっこりと笑った声の主・シノンは逃げ遅れた三人とあたしを見渡すと
「さて、それでは。これはどういった状況なのか、説明してもらいましょうか?ヒナタ」
「…はい…」
あたしたちは椅子に並んで座り…その後、延々とシノンの説教を受けた…
結論、シノンを怒らせたらいけないということですね(笑)
そして、ここから雑談といいますか、補足したいと思います。
今回、初めて登場した【ルクス】という子ですが…オリジナルキャラではありません。彼女はSAOの〈ガールズ・オプス〉という漫画に登場する子でして…原作では、キリトに憧れている子となっています。この小説では、ある理由からカナタに憧れているーー好意を抱くようになっております。その話は、本編が進めているうちに現れると思いますので、お楽しみに(笑)
そして、なんでこのルクスという子を登場させようと思ったのかと思うと、単純に可愛い子だなぁ〜と私が思ったからです(笑)
シノンの気持ちになると、これ以上 ヒナタハーレムを作るのはどうかと思うのですが…、なぜかキリトには勝ちたいな〜と思い、彼女を登場させてしまったというわけです…。これ以上、可愛い子が増えるとシノンさんの苦労が凄いことに…(汗)
しかし、カナタさんにとって一番はいつだって、シノンさんなので…そこだけは、唯一安心できることかもしれませんね。