ので、読んでいて、もう終わってしまったか。と思われる方も多い思います(苦笑)
互いの気持ちを相手に伝えたその日の昼、私は定期に通っている病院へと足を踏み入れていた。いつも一人で通っている病院だが、今日はもう一人どうしてもということで、着いてきている。
そのもう一人ーー癖っ毛の多い栗色の髪に、透き通る空のように大きく蒼い瞳が特徴的な幼馴染は嬉しそうに私の手を握りながら、物珍しそうに辺りを見渡している。その様子に思わず、嘆息をつきそうになるが…
“…そういえば、陽菜荼って幼い頃からあまり病院に行ってなかったわよね…”
ならば、このはしゃぎようも仕方ないかもしれないかな?と思いながらも、はしゃぎすぎて違うところへと行こうとする陽菜荼の手を引っ張って、自分の方へと近づける。
「へぇ〜、あそこなんだろ〜」
「ちょっ、陽菜荼っ。こら、離れない。迷子になるでしょう」
「はーい」
と怒ると、元気良く返事を返す彼女に母性を感じてしまうのは何故だろうか?
“いつもなら、立場が逆なんだけどね”
私のピンチには必ず駆けつけてくれるヒーローみたいにカッコいい彼女はどこへやら、今まで甘えられなかった分を埋めるかのように、思いを伝えた後に甘えてくる彼女を世話が焼ける子供のように思いながら、彼女の手を引いてズンズンと歩いて行く。
「ほら、行くよ。こっちだから」
「ん」
γ
私の後をちょこちょことついてきた陽菜荼が、別室にあるあるベッドへと視線を向けて驚いている。
「おぉ〜、これがメディキュボイド?あれに詩乃、いつも入ってんの!?いいなぁ〜!!」
蒼い瞳に映るのは、白いベッドの上に大きな機械が設置されているもので、それを《メディキュボイド》という。VR技術を医療用に転用した世界初の医療用フルダイブ機器で、他のゲーム機よりも安全かつより高度なフルダイブが出来るとやらでテレビに取り上げられていたのを見た。私としてみては、それでこの病気・PTSDを克服できるとは思ってないので…あまり乗り気ではない。
が、私の幼馴染はこのはしゃぎっぷりから想像できるように、その手のものが好きである。本人曰く、ミーハーではないとの事だったが、話題なれば何でも欲しがるところを見ると、やはりミーハーなのでは?と思ってしまう。
メディキュボイドに対して、想像以上に興奮している幼馴染の手を引っ張って、無理矢理その場から離れさせる。
「好きで入ってるわけじゃないんだけどね…。それより、騒がないの。黙って、ついてきて」
「はーい」
二人で受付の人に言われた場所に向けて、トボトボと歩いていると、向こう側から担当医らしき男性が歩いたきた。
「朝田 詩乃さんかな?」
「はい、今日はよろしくお願いします。万里先生」
「うん、よろしくね。そっちの子は?」
「あっ、詩乃…じゃない…朝田さんの付き添いの香水です」
「香水さんですか。では、こちらへと」
その後、医師から私の病気に対する様々の効果やらを説明された後、いよいよメディキュボイドに入るというところで、隣に座る幼馴染が勢い良く手をあげて、先生へと意見する。
「詩乃が入るなら、あたしもしたいです!」
「陽菜荼!?ちょっと…」
「いいけど、それなら香水さんも診察しないとね」
みたいなノリで、陽菜荼までメディキュボイドへ入ることになってしまった。そんなに簡単に入れていいのか?と思ってしまうが、陽菜荼が一緒だと思うととても心強いと思うので、これはこれで良かったのかもしれない。
「それじゃあ、朝田さん。香水さん、じっとしていてくださいね」
メディキュボイドへと横たわった私たちは、先生たちの指示により、VRゲームへと身を投じた…
γ
「えーと、名前?」
あたしは、周りが真っ暗な空間の中に一人立っていた。さっきまで、隣で寝ていたはずの幼馴染の姿はそこにはなく、かわりにただ終わりの見えない真っ暗な闇があたしを360度包み込む。
そんな闇の中、あたしは突然現れたウィンドに向かって、頭を悩ましていた。
“普通にヒナタで…いや、今からゲームするんだから。自分の名前はまずいよなぁ…うーん、うーん”
悩んだ結果、あたしがそこへ入力したのは【Kanata】という文字だった。女の子にしてみれば、変わった名前だがこれ以外思いつかなったので仕方がない。その後も、性別や表示などの細かな設定を終え、あたしは幼馴染が待つであろう場所へと向かおうとした時だった。
「よいしょ、よいしょっと。流石、VRっ。動きやすーーへ?」
調子に乗って、ぴょんぴょんとジャンプしながら走っている最中にぽっかりと大きな七色の光が目をおかしくさせる穴が現れたのだった。運悪く、そこへとジャンプしたあたしはそのまま その穴の中へと落ちていった……
次回からホロウ・フラグメント編の始まりです!
ここから、どんどん原作キャラと関わっていくつもりなので、お楽しみ!では!!