sunny place 〜彼女の隣が私の居場所〜   作:律乃

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お久しぶりです…皆さん。
そして、ここまでお休みしてしまいすみませんでした(土下座)

そして、こちらもすごく久しぶりな本編更新となります。

久しぶりすぎて、読者の皆さんも展開がわからないと思うので…簡単なものを書かせてもらいます。
まず、陽菜荼が何故か幼児化してしまい、その陽菜荼をレインさんがお世話をしてくれることになります。新米ママとなったレインさんと陽菜荼のそんなほのぼのとした日常が続いたある日のこと、陽菜荼が『ままのおむらいすがたべたい』と駄々をこねてしまいます。その駄々に頭を悩ませたレインさんがアスナさんとオムライスを作っている最中に陽菜荼が勝手に街の外に出てしまいーー

から、この話が始まります。

では、短いと思いますが…楽しんで頂けたらならば幸いです。

では、本編をどうぞ!!


007 まま、だいすきっ!

“はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…”

 

全力で走っているはずなのですが、町の外が走れば走るほど遠く感じます。気持ちばかり焦り、脚がうまく動かなくて、絡まってはアークソフィアの街へと敷き詰められているタイルへと全身をぶつけます。

 

「くっ…ひな、ちゃ、ん…」

 

アバターに擦り傷がつくことがなくとも衝撃による痛みはあります。

私は痛みに顔を歪めながらも立ち上がり、街の外へと走っていきます。

 

“お願い、どうかひなちゃんが無事でありますように”

 

 

 

τ

 

 

 

私が街を後にしてから早1分…アインクラッドの大気には青白いポリコン片が舞い散っていました。

 

「……」

 

そのポリコン片を見つめ立ちつくす私へとドッシーンと強い衝撃が身体へと走ります。

その衝撃が走った方へと視線を向けると…そこにいるのは、癖っ毛の多い栗色の髪を腰近くまで伸ばして、私が映る空のように透き通ったまん丸な蒼い瞳は涙の膜できらきらと輝いており、私にはまるでサファイヤのように思えました。

そして、私の戦闘着をギュッと掴む紅葉の葉のように小さな掌が震えているのに気付いた私は腰を折るとそっと泣きじゃくるひなちゃんを抱きしめました。

 

「ゔぅぅ…まま、まま…っ」

 

嗚咽交じりに私の名前を呼ぶ腕の中の小さな小さな暖かい命に愛おしさが溢れてくるのと同時に湧き上がるのが心配とこんな小さな彼女に怖い思いをさせてしまった事でしょうか。

私はそっとひなちゃんを離すと彼女を抱き上げる。

 

「…あっ、まま…」

 

抱き上げたひなちゃんのお尻の部分がびっしょりと濡れているのはきっとそういう事でしょう。

さらに泣きそうになるひなちゃんの頭を空いた手で優しく撫でます。

 

「大丈夫だよ、ひなちゃん。怖かったんだもんね…ママ、助けに来るのが遅くなっちゃってごめんね」

 

髪を撫でていた掌を後頭部に添え、私はひなちゃんを胸元へと抱き寄せると同時に私の後頭部に添えられる紅葉のような小さな掌はゆっくりと私の頭を撫でます。

 

「…まま、ないちゃやだよ…」

 

悲痛な声が耳元から聞こえ、私はそこでやっと自分自身が涙を流していることに気づきました。

 

「ひっぐ…ゔぅぅ…」

 

間にあったという安堵からでしょうか?

彼女の幼い心にトラウマとなる出来事を受け付けてしまった罪悪感からでしょうか?

もっと早く彼女を助け出せなかった事による自己嫌悪でしょうか?

きっと、この三つでもあり、三つ以外でもあるのでしょう。

 

「…まま、おなかいたいの?」

「ううん、違うよ。違うから大丈夫なんだよ」

 

強く抱きしめていた力を緩め、もう一度ひなちゃんを抱き直すと私は歩き出します。

 

そして、アークソフィアに辿り着いた私とひなちゃんは今まで懸命に探してくれていた仲間達へとお礼を言って回り、アスナちゃんと一緒に作ったオムライス、アスナちゃんが作ってくれたサラダやスープをひなちゃんとアスナちゃん、ひなちゃんを探してくれた仲間達と食べる事になりました。

 

「んまい」

 

パクパクと子リスのように頬を膨らませて、私の作ったオムライスを咀嚼するひなちゃんの頬に付いたケチャップをハンカチで拭きながら…今日も夜が更けていきました。

 

 

 

τ

 

 

 

“えぇ…と、これはどういう状況なんだろ?”

 

まず目を開けた先に広がるのは白い天井、そしてちらっと横を見ればあたしに抱きついて眠るさらさらとした茶色い髪をシーツへと広げ、ゆるくダボっとしたネグリジュを身につけた少女がいる。

 

“何故、レイがあたしの部屋に…?”

 

そこであたしは気づく。

可愛らしい小物やぬいぐるみ、そして壁紙もあたしが貼っているものとは違う…ということはーー

 

“ーーもしかして、あたしがレイの部屋に来ていた!?”

 

そう結論づけると動揺しすぎて、冷や汗とこれから訪れるであろう愛する恋人殿との矢の雨の中での逃走劇(おしおき)に苦笑いが止まらない。

 

“いかん、いかんぞ、これは…。どうすればいい?どうすれば、あたしは生き延びられる?”

 

頭をフル回転させて、恋人殿から逃げる作戦を練っていると身動きして、あたしの方へと更に顔を近づけたレイがそろそろ起きるのか、瞼をパチパチとつぶり、ゆっくりと瞼が完全に開く。

 

「おはよう…ひなちゃーー」

「あぁ、ん…おはよう、レイ」

「ーーひゃあああああああ」

 

乙女らしからぬ悲鳴を上げた後、レイは凄まじい動きでベッドから飛び降りるとあたしを指差す。

 

「な、なななんで、戻ってるの?ひなちゃ…ううん、カナタくん」

「なんで戻ってるのって?」

 

レイの問いかけに眉をひそめるあたしを見て、ある事を思いついたのか、また問いかけるレイ。

 

「もしかして、これまでの覚えてないの?カナタくん」

「…あはは」

 

唖然とするレイに苦笑いするあたし。

その後、レイに連れられてみんなのもとに向かったあたしはそこでこれまでの事を聞かされるのだった……




という事で、無事戻った陽菜荼ですが、この『まま、だいすきっ!』はもう少しと続きます。
ので、最終回まで楽しんでもらえたらと思います(礼)




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