sunny place 〜彼女の隣が私の居場所〜   作:律乃

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今回の視点は、リーファとなってます。そして、今回の話でシノンさんはほとんど出番がありません。
そして、オリジナルの話なので…所々、おかしなところがあるかもしれません……。百合度もそれほどではないかもですが…どうぞ、ご覧ください。

そして、最後にお願いしたいことがあるので…そちらの方にもご協力のほどをよろしくお願いしたいと思います(礼)

※4/17〜誤字報告ありがとうございます!


好感度ーFavorability ratingー
Leafa001 正夢?


ゆさゆさと誰かがあたしの身体を揺さぶっている。まどろみの中にいるあたしは、ウトウトした意識の中でその誰かの声を聞き取る。

 

『…ー、おきて』

 

“ん?この声って…”

 

微かに聞こえたくらいだが、聞き間違えるわけがない。あんなに恋い焦がれている相手の声なのだから…。でも、その人があたしの部屋に来ることは皆無に近いのに…なんで、あたしの部屋にその人が?

 

『っ!?カナタさん!!?ななななんで、あああたしの部屋にいるですか??』

『リー、なんではひどくないかなっ。流石のあたしもその言い草には怒るよ』

 

アルトよりの声に不機嫌さを所狭しと詰め込み、あたしへと迫る空と同じくらい澄みわたっている蒼い瞳が無言で文句をあたしに言っている。

 

“カナタさんも…こんな表情するんだなぁ…。なんだか、可愛い”

 

少し頬を膨らませている様子は、まるで幼い子供が両親に遊んでもらえなくて拗ねているような表情にそっくりなその表情を見ていると、自然と頬が緩んでしまう。

しかし、あたしのその表情を見たあたしの想い人・カナタさんはさらにその幼稚な怒り顔を強くする。

 

『リー?あたしは怒ってるんだよ』

『あっ、ごめんなさい。でも、あたしが混乱するのも当然と言いますか…。本当に…カナタさんがあたしの部屋にいる理由が見当たらないと言いますか…。こんなことして、シノンさんに怒られないんですか?』

 

あたしの質問に眉を顰めるカナタさんは、不思議そうな顔をして、あたしの顔を覗き込んでくる。蒼い瞳は心配そうに、あたしの黄緑色の瞳を見つめている。

 

『シノンって、シノの事だよね?なんで、シノの名前が今、ここで出てくるの?今はリーとあたしの話だよね?』

『へ?だって、シノンさんとカナタさんって付き合ってるんですよね?』

『…リー、本当にどうしたの?何処かで頭うったの?』

『うっ、打ってないですよ!カナタさんも十分、失礼ですよ!』

 

あたしが怒った声を出すと、カナタさんは笑いながら、あたしから身を離す。そして、ベットに座るあたしの隣に腰掛ける。

 

『あははっ、ごめん。でも、あたしもそんな意地悪は言いたくなかったんだよ。全ては大事なことを忘れちゃってる、リーが悪いんだと思うんだけどな〜』

『あ、あたしが悪いんですか?』

『うん、だって…あたしが付き合ってるのは、今目の前にいるリーファだもん。確かに、シノは幼馴染で仲良しなのは認めるけどさ〜』

『ーー』

 

“へ?カナタさん…今、なんて言ったの??”

 

アタシガツキアッテルノハ、イマメノマエニイルリーファって言ったよね……。へ?あたし、いつの間にカナタさんと?へ?へ?へ?

軽いパニック状態に陥るあたしの耳もとに、カナタさんが何かを囁く。あたしが弾かれたように、そちらを見ると蒼い瞳が意地悪な光を含んでキラリと光る。

 

『そんな忘れん坊なリーファには、あたしからお仕置きがあります』

『ひぁっ、か…なたさん…?』

『っ。……やばいなぁ…、怯えてるリーファもいいかも…』

『あ、あの…カナタさん?あたしに何をするんですか?』

『んー。忘れん坊なリーファが、あたしのことをもう二度と忘れないようにする為にね』

 

そういうとカナタさんはあたしへと顔を近づけて、あたしは近づいてくるカナタさんの整った顔にドキドキしながら、そのお仕置きの時を待っているとーー

 

『ん…』

『!??』

 

ーー頬に広がる柔らかい感触に、あたしの顔はゆでダコのように真っ赤になり、キスされた右頬を抑えて…口をぱくぱくさせる。しかし、そのぱくぱくした口からは、思っているような言葉が出ることはなかった。

 

『なぁっ、¥$€°×÷〆』

『あはは、何言ってるかわかんないよ、リー。それより、早く着替えておいで。あたしは先に下の酒場にいるからさ』

『は…はい…』

 

あたしの慌てふためきっぷりを堪能したらしいカナタさんは、ベッドから立ち上がるとひらひらと左手を振って、部屋から出ていく。

そして、取り残されたあたしはというとーー

 

『〜〜っ』

 

“シノンさん、よくこんなのに耐えられるなぁ…。あたしにはもう…心臓に悪くて…”

 

今だにドキドキしてる心臓を抑えながら、カナタさんの無意識?の攻めを動じずに対応しているシノンさんの偉大さに気づかされていた…

 

その後、いつもの戦闘着に着替えたあたしはカナタさんが待つ下の酒場へと階段をおりていくとカウンター席に座っている、橙と黄色を基調としている戦闘着を着用している癖っ毛の多い栗色の髪の後ろ姿を見つけて、その後ろ姿を追いかけるように小走りでカウンター席にいく。

 

『カナタさんっ』

『あっ。リー、横においで』

『はい』

 

あたしの声に振り返ったカナタさんが、隣のカウンター席を指差すのを見て、そこへと座る。そんなあたしへと声かけるのは、さっきまでカナタさんの陰で姿が見えなかった焦げ茶色の髪をショートヘアにしている少女・シノンさんであたしは心で少しがっかりして挨拶する。

 

『おはよう、リーファ』

『あっ…。おはようございます、シノンさん』

『リー、なんか頼む?』

『えーと、あたしは……。あたしもカナタさんが食べてるもので…』

『ん、了解。すみません、彼女にもオムライスセットを』

『かしこまりました』

 

店員さんへと注文したカナタさんは、あたしの方を見ると

 

『でも、本当にオムライスセットで良かった?』

『はい、いいんです。その…あたしも…カナタさんの好きなものを食べてみたいなぁ〜って思って…』

『そっ、そう。ん…ここのは、美味しいから…オススメだよ』

 

頬を赤らめて俯くあたしとカナタさんの隣で、わざとらしい咳払いが聞こえてくる。

 

『あの、そこのお二人さん。私もいるってこと、忘れないでくれるかしら?』

『なあに?シノってば、あたしがリーファに取られたからって嫉妬〜ぉ?』

『ーー』

『すいません、巫山戯ました。だから…その目はやめて…、本当に…怖いからぁ…』

 

ニヤニヤして、シノンさんをからかおうとしたカナタさんが、シノンさんの凄みをきかせた一瞥により…あえなく撃沈。すごいスピードで掌を返すと、ジト目で見てくるシノンさんに頭を下げつづけている。そんな二人の様子を見ていたあたしはこう思うのだった。

 

“あっ、いつも通りのカナタさんとシノンさんだ”と

 

…ということはあたしとカナタさんが付き合ってるっていうのは…事実であり、あんなに羨ましいと思っていたシノンさんの立場をあたしは手に入れたということになる。

なら、カナタさんと…あんなことやこんなことも出来るってこと?なぁっーー

 

“ーーあっ、あたしってば…なんてことを…”

 

『リーファ?顔が赤いみたいだけど、こいつになんかされたの?』

『シノンさん。幼馴染をこいつと呼ぶのは…関心しないといいますか…』

『彼女がいる身で、いろんな子を無意識でたらしこんでる色ボケを幼馴染に持った覚えは、私にはないんだけど?』

『すいません…、全くその通りです…。シノンさんに異論はありません』

 

足を組み直して、鼻で笑うシノンさんに返す言葉が見つからずに項垂れるカナタさん。

 

『まぁ、こんな奴のことはほっておいて。食べてしまいましょう、リーファ』

『あっ、はい…』

 

いつの間にか、あたしの前に運ばれていたオムライスセットを口に含んでみて、目を丸くする。

 

『どう?美味しい?』

『はい!すごく美味しいです!』

『美味しいですって、良かったわね、カナタ』

『わざわざ、報告ありがとう、シノン。それより、リーファのはデミグラスソースなんだね。あたしのはケチャップなのに……。む〜、ねぇ…リーファ』

 

シノンさんの掛け声で、気を取り直したらしいカナタさんがなんだか羨ましそうにあたしのオムライスを見ている。オムライスのあまりの美味しさに、夢中になってほうばっていたあたしはカナタさんの呼びかけにスプーンを止めて、隣を見る。

 

『なんですか?カナタさん』

『その…リーファのオムライスちょうだい?あたしのもあげるからさ』

『別にいいですけど…』

『じゃあ、あ〜ん』

 

こっちに向けて、大きな口を開けてくるカナタさんにあたしはフリーズする。

 

『こら、カナタ。リーファが困ってるでしょ、それくらい一人で食べなさいよ』

『あ〜ん』

『無視ね…ふーん、いい度胸してるわね、カナタ』

 

シノンさんの声に無視を決め込んで、変わらずに大きな口を開けてくるカナタさんの口へとあたしは皿から一口ほどオムライスをすくって、その口の中へとゆっくりとスプーンを近づけていく。

あと5センチ…あと1センチ…あとーー

 

 

γ

 

 

ーー差し込んできた日差しによって、目を覚ましたあたしはまだ重たい瞼をこするとさっきまで見ていたものが夢であったことに気づいた。

 

「ん?ここ……ああ…夢か…」

 

あと少しでカナタさんとあ〜ん出来たのに…と落胆しつつも、着替えようと思い、右手を横へとスライドする。そこに出てきたウィンドウの一番上にある【EQUIPMENT】を押して、服を着替えるために今来てる緑のパジャマを解除して、いつもの戦闘着をセットしようとした時だった。

トントンとノック音が聞こえたと思うと、そのドアの向こうからアルト寄りの声が聞こえてくる。

 

『リー?少しいいかな?』

「え?え?カナタさん?いいですよーーって、カナタさんダメっ」

 

さっきまで見ていた夢のせいで、変に動揺してしまってドアのロックを外してしまったあたしは慌てながら戦闘着をスライドしようとするのと、ドアから入ってくるカナタさんを妨害しようとして…その二つの行動を同時に行えるほど、器用なわけがなくあたしの身体はゆっくりと前のめりに倒れてしまう。

 

「リー!?何か…大きな音が聞こえたけど、だいじょ…」

「痛たた…。…!?」

 

ドアから入ってきたカナタさんが見たのは、下着姿で前のめりに倒れているあたしの姿で……カナタさんは数秒間、放心状態だったが…スゥーとあたしから視線を逸らすと部屋から出ていく。

 

「あー、ごめんね。あたし…下の酒場にいるからさ。着替え終わったら…話しかけてよ」

 

ドアが閉まった瞬間、あたしは羞恥心から顔を真っ赤にして…テンパって変な行動をとってしまったあたし自身に怒りを感じる。

 

「とりあえず…着替えよ…」

 

いつもの戦闘着へと着替え終わったあたしは、酒場にいるカナタさんへと声をかける。すると、なぜか顔が赤いように思えるカナタさんは、あたしを見て視線を一瞬そらすと微笑む。

 

「さっきはごめんね。変な時にあたしが声をかけちゃったからさ」

「いえ、カナタさんは悪くないんですよ。あたしが驚いちゃって…しちゃった行動なんで…」

「でも、あたしにも非があるしさ…。だからさ、リー…いまから、あたしとデートしませんか?」

「…!?!?!?」

 

“なっ、あっ…えぇえええ!?”

 

口をパクパクさせるあたしに、カナタさんが照れくさそうに癖っ毛の多い栗色の髪を撫でる。

 

「まぁ、デートっていっても…単にあたしの相談に乗ってもらいたいだけなんだけどね」

「相談ですか?」

「ん。最近、シノン頑張ってるみたいだからさ…。なにか、おくりものしたいなぁ〜って思ってね。あたしはそういうおくりものに関して、いつも迷ってばっかりだから…」

 

頬を朱に染めて、そうボソボソと呟くカナタさんの姿にあたしは心の底でため息をつく。

 

“あー、そういうことだと思ってましたよ…”

 

期待していたわけじゃないけど、もしかしたら…と心の中では思っていた分…ショックな気持ちが強い。

 

“シノンさんが羨ましいな…”

 

こんなにカナタさんに思えてもらって…、あたしは少しシノンさんにジェラシーを感じながら、感じてしまった自分の心を恥じた。

ので、せめてものお詫びということで、あたしは不安そうにあたしを見ているカナタさんに頷く。

 

「いいですよ、カナタさん。あたしで力になれるのなら」

「ありがとう!リー。すっごく嬉しいっ。じゃあさ、早速行こうか?シノンが帰ってくるかもだから…」

「えっ!?カナタさんっ」

 

右手であたしの左手をつかんだカナタさんは、そのまま商店通りに向かって歩き出す。商店通りについて、あたしたちはあちこちにある店を歩き回った。

そして、最後に立ち寄ったアクセサリー屋で見つけた子猫みたいなものをかたどったネックレスをあたしへと見せる。

 

「これとか、どうかな?リー」

 

“STR+12 命中+8 回避+6か…”

 

シノンさんのプレイにもあってる気がするし…、このデザインも可愛い。

あたしは、カナタさんへと頷くと

 

「可愛いですね〜。効果もあるみたいですし…、それにして見たらどうですか?」

「ん、そうしようかな…」

 

そう呟いたカナタさんは、それに決めたようで店員のNPCへと声をかけると、そのネックレスを購入する。

店先で待っていたあたしのところまで歩いてくると、

 

「今日はありがとうね、リー。おかげで、すごくいいのが手に入った」

「いえ、カナタさんのお役に立てたみたいでよかったですよ」

 

あたしがそう言うと、カナタさんは辺りを見渡して、あるものを見つけたらしく、そこを指差す。

 

「歩き回ったし、リー…すこし、あそこに寄っていかない?」

「あそこ?」

 

カナタさんに連れられるままに、そのお店に入って近くにある席へと腰掛けると、カナタさんが店員さんを呼ぶ。

 

「オムライスセット、二つで」

「かしこまりました」

 

注文を終えたカナタさんは、あたしの方を見ると照れくさそうに笑う。

 

「あたし、リアルでもオムライスが好きでね。よく自分でもオムライスを作っては食べてたんだ。シノ…、シノンにはよく呆れられていたんだけどね」

「そうなんですか…」

「ん、そんくらいオムライスにうるさいあたしの舌をうならせたのがここのオムライスセットでね。隣のメイドカフェのオムライスも美味しいって聞くけど…流石に、そこに行くのは気が引けるからね…。シノンに怒られそうだし…」

「確かに、シノンさん怒りそうですね」

「シノン怒るとおっかないから…」

「シノンさんを怒らせるようなことをするカナタさんが悪いんですよ」

「リーもみんなと同じこと言うんだね。全部、あたしが悪いってわけじゃないと思うんだけどな…」

 

その後、オムライスセットを食べながら…カナタさんと食事したあたしは宿屋に戻る途中で、噴水のある公園に立ち寄った際にカナタさんからブレスレットを受け取った。唖然とするあたしに、カナタさんは微笑みながら、あたしのブレスレットと色違いのものを見せてくる。

 

「今日はリーをいろんなところに連れ回しちゃったからね。せめてもの、お礼ってことでね…。それにほら、あたしとお揃いなんだよ」

「……」

「リー?」

 

心配そうに覗き込んでくる蒼い瞳に映っているあたしは、今どんな顔をしているのだろうか?多分、何かを我慢してるような…みにくい顔をしているだろう。

 

“この人は優しい…優しすぎる”

 

シノンさんが好きで、あんなに大事にしてるのに…なんで、他の人にまでこんなことをするのだろうか?こんな大切に思ってるみたいなことをされてしまうと…勘違いをしてしまう。

ゆっくりと顔を上げたあたしは、そんなあたしを見て目を丸くしてるカナタさんの頬へと唇を押し付ける。

 

「リー、なんで泣いてるの?もしかして…別のが良かっーー」

「ーーん…」

 

ゆっくりと顔を離すと、まん丸な瞳に驚きを多く含んでいる蒼い瞳を見て言う。

 

「りーぃ?」

「カナタさんは…優しすぎます。そんなに優しいと勘違いしてしまいます…。今日は楽しかったです、おやすみなさいっ」

「………。待って、リーファ」

 

あたしは、くるっと向きを変えると…自分の部屋へと走り出して行く……




ーーーウラバナシーーー

その後、カナタはリーファに謝るために部屋に訪れて…少しはなしをしたそうです。
そして、リーファはカナタからもらったブレスレットを大事に使っているそうで、この一件でさらにカナタが好きになったそう。

ーーーーーーーーーーー


※前書きが書かせていただいた皆さんにお願いしたいものというのは…、この息抜き編のことでして。
お恥ずかしながら…、百合ん百合んな案が出てこず、手詰まりな感じでして…そこで!みなさんの力をお借りしたいなと思った次第でして…

詳しいことは、活動報告の「息抜き編のリクエスト」をご覧ください。

みなさんの案、お待ちしております(礼)

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