sunny place 〜彼女の隣が私の居場所〜   作:律乃

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ホロウ・フラグメント編へと突入しましたが、皆さんにお知らせをさせていただきます…。
本作のメインヒロインの詩乃さんですが、暫くの間は登場致しません…、タイトルと原作の内容を知っている方ならお分かりになられるかもしれませんが…皆さんのお察しの通り、そういうことです。

なるべく、早く二人を再会させられるように頑張っていきたいと思います!


そして、ヒナタ編となるこの回は〈ホロウ・エリア〉というところを攻略する話となっております。



※お気に入り登録・107名 ありがとうございます!

4/5〜誤字報告四件、ありがとうございます(礼)
本当に読みづらい上に、誤字ばかりで申し訳ないです…。こんな私の作品ですが、完結まで付き合っていただけると嬉しいです(礼)


4/7〜感想にて、ご指摘がありましたので…ご指摘されたところを直しました。



ーーー少し補足ーーー

〜ヒナタのSAOでのアバターについて〜
・アバターネーム【Kanata/カナタ】
・服装は、ファンタジー感を出しつつも和服ーー和風SAOでリーファ/直葉が着ている服のオレンジ色バージョンと思っていただければと思います

ーーーーーーーーーー


2章001 金髪の少女と黒ずくめの少年との出会い(カナタside)

七色の光が眩しい穴の向こうには、緑色が美しい森林が広がっていた。周りを見ると、青と水色のグラデーションが美しい空が続いておりーーん?そ、ら?

あたしはそこで眉を顰める。

空が横を見ると広がってるって、なんかおかしくないか?まるで、空を飛んでるみたいーーいや、落ちてるのか?

そこまで考えて、下を見ると目を丸くした。

 

“って…えっ?うっおおおお!?”

 

落ちてんじゃん落ちてんじゃん落ちてんじゃんっ!!

どんどんと近づいていく森林に、あたし自身の死を決意する。しかし、ダメで元々の気持ちでフサフサしてそうな木の上に落下出来るように、空中を泳ぐ。

 

“良しっ、この辺りがいいな。あとは運任せ”

 

次の瞬間、視界が真っ黒に染まった…

 

 

γ

 

 

「……どうやら無事だったみたいだね、あたし」

 

あんな高いところから落ちたというのに、少し痛いと感じる程度で済んでいるところを見ると、流石VRMMO…ゲームの中というべきか。

でも、もうあんな怖い思いはしなくないなぁ…と密かに思ったあたしであった。

 

“しっかし、何処だここ?”

 

辺りを見渡してみると、生い茂る草木に、鮮やかな色を付ける花たちがあちらこちらに生えていた。近くに咲いている花を見ると、どこかファンタジーっぽい……ということはーー

 

“ーーいつの間にか…何かのVRMMOにログインした…のか、な?”

 

じゃないと、色々と説明がつかないもんね。あたしのこの服装も和服みたいだけど…どことなくファンタジーっぽいし…、ということは最近流行っている〈アルヴヘイム・オンライン〉の中なのだろうか?しかし、なぜ そのゲームへとーーそこまで考えて、ふと 見知った雰囲気がないことに気付く。

 

“そういえば…詩乃は?詩乃がいないっ”

 

見知った焦げ茶色のショートヘアがないことに、あたしは焦る。そして、ここに来る前に彼女と別れたままだったのに気づき、痛む身体に鞭打って立ち上がる。

 

“早く詩乃と合流しないと”

 

なぜか、そう思ってしまった。どうしてそう思ったのかはわからない。でも、早く彼女と合流しなくては彼女ともう二度と会えない気がして……

そんな不思議な思いに追われるままに、その場から更に奥へと進もうとした時だったーー

 

「ーーあんた、誰?」

「!?」

 

首筋に当たる冷たい感触に、あたしの背筋が凍る。

なんとか動かせる目で、突きつけられているものを見てみると磨き上げられた鉄の表面があたしの顔を映し出している。

 

“へ?へ?あたし…剣首筋に当てられてんのっ!?”

 

軽くパニック状態に陥りかかるあたしの首筋へと、剣を更に突きつけながら、背後から冷たい声が聞こえてくる。

 

「…早く答えて。あんたは誰?あいつらの仲間なの?」

「あっ、あたしはカナタって言って、君の敵ではないよ。ここに来て間もないし…第一、君のこと知らないし…」

「ここに来て間もない?どういうこと?」

 

いやぁ…どういうこと、と言われましても…それが事実ですので…。それにあたし自身、混乱しておりますので…とそこまで思ったところで、ゾクンと何か嫌な予感が全身を駆け巡る。

 

“なんだあ…れ……”

 

あたしへと刃物をつきつけている金髪の少女の後ろに、ピカッと何かが光っている。それが大きな鎌だと分かると、あたしは金髪の少女へと抱きついて、それを交わす。

 

「危ないっ!」

「!?」

 

“ふぅ〜、なんとか…あれに当たらずに済んだかな?”

 

「…なんで?」

「?」

 

真下から聞こえる困惑を多く含んだ声に、あたしはそちらへと視線を向けると、あたしを見上げる空色の瞳と重なり合う。その瞳には色々な感情が波を立てているように、あたしには思えた。

 

「…どうして、わたしを助けたの?わたしのカーソルがあんたには見えてるんでしょう?」

 

“かっ、かーそる〜ぅ?”

 

何?そのかーそるって、あたし知らないんだけど…と思っていると、押し倒す形になっている金髪の少女の上にあるひし形の物体に気づく。

 

“あっ、もしかして…これがそのかーそるってやつ?”

 

そのひし形を塗りつぶすように、雄黄色と橙のグラデーションが鮮やかに色をつけている。

それと金髪の少女の表情には何か見覚えがあった。何かに怯えるような…それを必死に隠そうとしているようなそんな悲しい表情。

そんなに、このかーそる?を見られるのが嫌だったのだろうか?そこまで、恥じるような…隠すようなものではないと思うけど。そればかりか…あたしは普通にーー

 

「ーー綺麗だと思うけど。あたしの好きな色だし」

「……」

 

へ?何その鳩が豆鉄砲食らったような顔、あたし悪いこと言った?

と金髪の少女の反応のなさに、困っていると件の少女がクスっと微笑む。

 

「ふっ。オレンジカーソルを見て、綺麗なんて…あんた変わってるね」

「そっ、そうなんですか?」

「そうだよ。普通の人なら、もっとわたしの事をけいべーー危ない!」

 

今度は金髪の少女に押し倒され、その上を通る鎌を見て、呑気に話している場合ではないことに今更ながら気付いた。そう思ったのは、金髪の少女も同じらしく あたしの右手を握ると走り出す。

 

「とりあえず、ここは逃げるよ。カナタ」

「え?はっ…って、早!?そんな早くはしれなーー」

「カナタなら大丈夫だよ」

「……」

 

“そのあたしに対する信頼はなにゆえ!?”

 

疾風の如くスピードで、森林を駆け抜ける金髪の少女がこちらを振り返って言う言葉に、あたしはただただ驚くばかりである。

さっきまで敵意丸出しだった金髪の少女の態度が、今じゃあ完璧に緩和されている。あたしのどの言葉で、彼女がここまで心を許しているのか分からないが、もうこの金髪の少女に襲われることはもうないだろう。それだけが、今のあたしが唯一安心できる出来事であった。

そんな金髪の少女に引っ張られて、森林を走っているとやはりここがどこなのか?と疑問が浮かんできてしまう。

 

“…き、聞いていいよね?”

 

前を走る金髪の少女へと問いかけようとした口を開いた時には、足元に根をはっている根元へと右脚が引っかかっていた。ぐらっと傾く視界に、あたしはやってしまった…と苦笑いを浮かべるしか出来ない。

 

「あの、そもそも ここって…うわぁ!?」

「へ?」

 

金髪の少女の唖然とした声が聞こえたかと思うと、あたしは根元に躓き、突然現れた真っ黒い何かにぶつかっていた。ぶつかった衝撃で、真っ黒何かとあたしが後ろへと弾かれる。

 

「カナタ!?」

「ぐふっ」

「うおっ!?」

 

ゴロゴロと転がって、起き上がったあたしが見たのは真っ黒い服装で身を包んだ少年と金髪の少女が剣を重ねあっているところだった。

 

“うわぁ…火花まで出ちゃってるよ…”

 

白熱する二人の対決に、蚊帳の外のあたしはいうと完全に傍観者的ポジションで眺めていると、そんな二人の後ろから例の鎌が姿を現すのを見て、二人へと声をかける。

 

「あのー、後ろに何かいますよ!」

「「!?」」

 

あたしの呼びかけに、後ろへと振り返った二人は全く同じ動作で後ろへと飛び去った。そして、姿を現した大きなモンスターを見て、全身黒い少年が呟く。

 

「スカルリーパーだと!?」

 

“すかるぅりーぱーぁ?”

 

またわけわからん単語が出来たぞ…。ここまで、次元の違う単語が出てくると頭が痛くなってくる。

ていうか…すかるりーぱーだっけ?なんだそれ、聞いたことないぞ…。そんな名前のもの。

ん、ひょっとして…それってこのムカデの胴体に骸骨の頭をくっつけてるこの化け物の名前なの?そうなの?

 

あたしのモヤモヤに答えることなく、その骸骨頭のムカデへと武器を構えた黒髪の少年はあたしたちの方へと向くと、声をかけてくる。

 

「おい、そこの君たち。一時休戦としよう、まずこいつを倒さなくてはな」

「……」

 

少年の言葉には答えずに、黙って骸骨頭のムカデへと武器を構える金髪の少女にあたしは苦笑を浮かべる。

 

“返事してあげなよ…。困ってんじゃん…黒い人”

 

あたしと同じく苦笑いを浮かべる少年には、あたしが金髪の少女の代わりに返事する。そして、やる気満々の彼らにあたしはあることを伝えなくてはいけない。

 

「あっ、はい。それでいいと思います…で、その…非常に言いにくいんですんが…。あたし武器持ってないんです」

「「ーー」」

 

“うわぁ…二人して変な奴みたいな顔してる…”

 

胸がっ、胸が痛い。それと罪悪感でいっぱいですので…どうか、その呆れたような表情はやめて下さいぃ…お願いしますから。だって、仕方ないじゃん。ここに来て、間も無くでこんな大きいモンスターと戦う羽目になっちゃったんだもん!

縮こまるあたしへと、少年が右手を横に振って、何かを操作するとあたしの目の前に半透明なウィンドが現れる。

 

「なら、これを使いなよ。丁度余ってたし、要らないからさ」

「あっ…ありがとうございます」

 

“この黒い人、優しいな…”

 

名前も知らないあたしへと無料で武器を提供してくれる心やさしき少年に頭を下げながら、送られてきた武器へと視線を向けた時にあたしは固まった。

 

【太刀】

 

“ぅん?”

 

「右手をスライドして、一番上のボタンの武器のところにさっきあげた奴を挿入したら使えるようになるから。

それまで、こいつは俺らが食い止めるからっ!」

 

戸惑っているあたしのことも知らずに、少年は例のすかるりーぱーとやらと刃を交えていた。

 

“あのぉ…あたしそもそも、この武器の使い方も…ここでの戦い方も知らないんですが…”

 

「カナタっ、早く!もたないっ」

 

固まっているあたしへと、今度は金髪の少女の声が飛んでくる。もう、ここまでくれば仕方がないっ、腹を括ろう。

 

“あぁ〜っ!!もうぉっ、なんとかなるでしょうっ!!”

 

やけになりつつ、少年に言われた通りに右手を動かす。そして、現れたメニューに驚きつつも、一番上にある【EQUIPMENT】というところを押す。

 

“えぇ〜と、この【MAIN】ってとこに入れたらいいのかな?”

 

恐る恐るそこへと入れてみると、さっきまで存在してなかったものがあたしの右腰横へと確かに存在を現していた。その右へと視線を向けると、黒い鞘から顔を出す赤紫色の柄が顔を出していた。

その柄へと左手を添えて、鞘から刀を抜き取る。すると磨き抜かれた刀身があたしを映し出していた。

 

“…よしっ、いこう”

 

少年からもらった黒い刀を構えながら、あたしはすかるりーぱー?が待つ戦場へと走り出した…




今回の話でカナタ(陽菜荼)が手に入れたもの

・金髪の少女からの信頼
・【太刀】という名の刀を手に入れた

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