sunny place 〜彼女の隣が私の居場所〜   作:律乃

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大変遅くなりました(汗)
リトさんことリズベットさんとの〈二人きり〉の素材集めですが…今回は【ソーマ鉱石】を奪った赤い竜との闘いがあります!その戦闘中に起こるハプニングとは!?

それでは、本編をご覧ください(礼)


5/15〜誤字報告、ありがとうございます!


Lisbeth002 その武器の名は○○○○

あの謎の老人NPCの話から、赤い竜の居場所を突き止めたリズベットは相棒となる少女がいる居場所をFRIEND LISTから探し出し、その少女がいる酒場へと足を踏み入れる。そして、カウンターのところで見知った橙の和服が座っているのを見て、小走りで歩み寄る。

 

「ここに居たのね、カナタ。探したわよ!」

「むぐ?」

 

リズベットはスプーンを加えたまま、振り返って小首をかしげる癖っ毛の多い栗色の髪の少女・カナタにガクッとコケる。そんなリズベットを見て、カナタの隣に座る焦げ茶のショートヘアーの少女・シノンがカナタを叱る。

 

「こら、カナタ!リズに失礼でしょうっ」

「いいのよ、シノン。あたしはカナタの事をこういう奴だって分かってるから」

 

リズベットはシノンに苦笑いを浮かべながら、そして二人並んで仲良く昼食を食べているシノンとカナタにニヤニヤとからかうような笑いを向ける。

 

「ごめんなさいね、リズ。カナタも悪気があるわけじゃないのよ」

「分かってるわ。それよりも〜、何よあんたたち。こんな真昼間からデート?」

「デデデデ、デート!?ち、違うわよっ!これはカナタが私の作ったものが食べたいからって言うから……」

「おお、思った以上に動揺しとる動揺しとる」

「してないわよ!それ以上言ったら、矢で撃ち抜くからね!」

「言わない、言わないわよ…」

 

リズベットにからかわれて、顔を真っ赤にして動揺しているシノンにカナタは顔を覗き込むと眉を顰める。心配げに声を掛けるが、昼食をモゴモゴさせたまま喋っているので…言ってることが分からない上に、橙の和服の上へとポロポロと食べかすが落ちていっている。それを見て、シノンはカナタを叱りながらも甲斐甲斐しく世話をする。そんな二人を見ながら、リズベットは深くため息をつく。

 

「むーぐむぐ、むぐ?」

「カナタは食べてから喋りなさいよ!行儀が悪いでしょう!もうぉ〜、ほら零してる…」

「あはは、シノンも大変ね〜。カナタ、それ食べ終わったら…約束の素材集めに付き合ってもらうわよ?」

 

リズベットが声を掛けると、スプーンを咥えたまま意気込むカナタにシノンの怒声が飛ぶ。

 

「むぐ!!」

「こらっ!食べたまま、返事しないのっ」

「あはは…」

 

その後、昼ご飯を食べ終わったカナタを連れて、転移門に向かう途中でリズベットは立ち止まるとカナタへ話しかける。

 

「あんたたちっていつもあんな感じなの?」

 

リズベットの問いかけに、首を傾げたカナタはさっきのシノンとのやりとりを思い出して…にっこりと笑って頷く。そんなカナタを見ながら、リズベットは密かにシノンがカナタの世話による疲労で倒れないか…本気で不安になる。

 

「ん?あ〜、ん。あんな感じだよ?」

「……シノンがいつか疲労で倒れないか心配だわ」

「???」

 

だが、隣で幼児のようにあどけなく小首をかしげるこの少女を見ていると、そんな心配をするのもバカらしくなる。あのシノンのことだ、上手にするであろう。そう考えたリズベットはカナタへと目的地を話す。

 

「まぁ、いいわ。カナタ、例の【ソーマ鉱石】なんだけどね。78層にある〈魔を孕む石窟〉にあることが判明したわ」

「おぉ〜っ!流石、リトだね。ちなみにどこの部分からそれを?」

「それはダンジョンに着くまでに教えてあげるわよ。さて、行くわよ」

「はぁい」

 

元気良く返事するカナタに苦笑いを浮かべながら、リズベットは78層の分かれ道の左側にあるダンジョンへと向かって歩き出す…

 

 

γ

 

 

ダンジョンに着いたリズベット達はオークウォーリアやフレンジーボブとの戦闘を経て、目的地となる赤い竜が住処としている奥地へと足を踏み入れた。岩の裏から全身を真っ赤に染めている竜を見る。

 

「あれが例の赤い龍ね。確かに真っ赤だわ」

「ん、だね。レベルも…なるほど、108ね。なかなか強いかも…」

 

そう呟くカナタは渋い顔を浮かべながら、赤い竜の頭上に浮かぶ文字を見つめる。そこには【Mutter dragon】と書かれていた。

 

「ん〜っ?ムッタードラゴン???面白い名前だね」

 

右の鞘から愛刀を取り出したカナタがそう呟くのを聞いて、リズベットが小さく咎める。そんなリズベットに振り返って、ニヤリと笑ったカナタはカウントする。

 

「面白いって…。あんた、それからそのムッタードラゴンに攻撃しかけるんだから…思い出し笑いとかでヘマしないでよねっ」

「OK、OK〜。んじゃあ、3・2・1で。行くよ?」

「…本当に大丈夫なんでしょうね?不安だわ…。あたしはいつでもいいわよ」

 

三本立てたカナタの指がゼロになった瞬間、カナタとリズベットはムッタードラゴンへとソードスキルを叩き込む。水色の刀身と藍色のメイスが赤い身体を傷つけた瞬間、ムッタードラゴンが悲鳴を上げて…【ソーマ鉱石】を手に入れるための戦闘が幕をきった…。

ターゲットのタゲをカナタがしてくれるため、リズベットは安心して攻撃出来た。四つあったHPがみるみるうちに半分になったその時…ムッタードラゴンの真っ黒だった目が怒りの色を含み、真っ赤に染まり 攻撃モーションも乱暴なものへと変わっていく。そして、後ろにいったリズベットに向けて、いきなり 尻尾を振り回すという攻撃に出たムッタードラゴンよりも早くそれに気づいたカナタがリズベットに指示するが、それは一足遅くムッタードラゴンの一撃を食らったリズベットの身体が後ろへと転がる。

 

「リト!危ないっ!?そこを離れてっ」

「何言ってるのよ!今、危ないのはそっちーーきゃあっ!?」

「チッ、だから離れろって言ったでしょうに!」

 

このダンジョンの敵を倒して、さっきレベルが105に達したリズベットにとってムッタードラゴンの攻撃は思ったよりも重く深いものだった。左上にあるHPを見ると、ムッタードラゴンの尻尾の攻撃だけで三分の一、HPが持っていかれている。しかし、ムッタードラゴンの新しく加わった尻尾の攻撃は威力が強いだけではないみたいだったーー

 

“え…、…何よ、これ…。身体が動かない…っ”

 

ーー全身に走る電撃のような痺れに、自身が麻痺したことを知った。そして、そんなリズベットの耳に入ってくるのはドッシンドッシンという体重が重いものが近づいてくるもので…それは必然的に、あのドラゴンを指すものだった。リズベットは何とか、距離を取ろうとするが…意思とはうらはらに身体はピクリとも動こうとしない。

 

“動いてよ!動いて…っ”

 

そんなリズベットに近づいたムッタードラゴンは、大きく開けた口から炎を吐こうとして…辺りの空気を吸い込む。その攻撃モーションを見て、リズベットは悔しそうに唇を噛みしめると目をギュッと瞑る。

 

“うそぉ…あたし、こんなところで死ぬの…?”

 

「がぉおお」

「っ」

「うぉおおおおお」

 

ドッシンと何かがリズヘッドへと体当たりをして、そのまま近くにある岩の裏へと身を隠す。ゆっくりと目を開くと…荒く息をする癖っ毛の多い栗色の髪の少女の整った顔が近くにある。

 

“へ?…カナ、タ……”

 

「ーー」

「ふぅ〜…、なんとか間に合った…。リト、大丈夫だよね?HPは…」

 

桃色の瞳を驚きで丸くするリズベットに、安堵のため息をつくと…心配に眉をひそめて問いかけるカナタ。そんなカナタと至近距離で見つめ合いながら…リズベットは目の前にある蒼い瞳を見ながら、こう思うーー

 

“ーーこんなに透き通った美しい瞳を見たことがないと…”

 

前に、女性陣だけで女子会を開いた時にカナタの瞳の色が綺麗と話題が出たが…確かにこれは綺麗、いや美しい。その大きな瞳は磨き抜かれたベニトアイトのようで、ずっと見ていると…スゥ〜とその魅力に引き込まれそうになる。

しかし何故だろう、じっと見ていると蒼い色の奥深くに光が届かなく影が差しているところがある…それが途轍もなく気になる。こんなに綺麗なのに…もったいない、そう思いリズベットはゆっくりとカナタの頬へと手を伸ばす。もっと近くでその影の正体を探るために、もっと近くでその魅力的な蒼い瞳を堪能するためにーー

 

「あぁ〜、リト?そんなに見つめられると恥ずかしいんだけど…」

 

ーーしかし、そんなリズベットの行動も遠慮がちに囁いてくるアルトよりの声により邪魔される事となる。邪魔された後に、冷静になった視界に収まるのは彼女の頬へと触れている自身の右手で……

 

「はぁ!?ご、ごめんなさいっ…あたしったら」

 

“あたしは何を?何を考えていたの?カナタの頬を無意識に触れようとして!?あ、あたしにはキリトっていう心に決めた人がーー”

 

右手を瞬時に引っ込めたリズベットは、さっきまで自身が無意識に行っていた行動による羞恥心で頬を染める。そんなリズベットにニヤニヤと見ているカナタは冗談めいた声音で言う。

 

「ーーいやいや、いいんだけどね。あたしも滅多に見れないリトの赤顔を堪能しましたので」

「〜〜ッ!いいからっ、早くあたしから離れなさいよ!!シノンに言いつけるからねっ!あたしに抱きついてきたって」

「はいはい、リト様の仰せのままに〜」

 

ひらひらと両手を揺らしながら、リズベットから離れたカナタは岩陰からムッタードラゴンの様子を見ながら、片手でポーションの栓を弾くとクビっと一気に飲み干す。その様子が黒衣の剣士と重なり…リズベットは自身の心拍数が早くなるのを感じる。

 

“あたし…、カナタにドキドキしてるっていうの?キリトとは違うのに…今まで比べたことすらなかったのに…”

 

「ーーリト、ポーションは飲んだかな?そろそろ、反撃に出るよ」

 

でも、そう言って振り返ってくる橙の和服姿の少女に胸が高鳴るのを感じて…リズベットは赤い顔を隠すように横を向く。

 

「…って、リト?顔が赤いけど大丈夫なの?」

「大丈夫よ。……たく、そうなったのは誰のせいだと思ってんのよ…」

「???」

 

首を傾げるカナタにリズベットはため息をつくと、メイスを掴む。

 

“あたしはカナタ自身にドキドキしてるの?それとも、あいつ…キリトとカナタを重ねて、ドキドキしてるの?今は分からなくてもいい…でもーー”

 

「まぁ、よくわかんないけど…いけるなら、いくよ!よし、今だよっ、GO!!」

「えぇ、倒しましょう!」

 

“ーーいつか、どっちか分かるといいわね…”

 

先に敵にかけていく橙の和服に身を包む少女の頼もしい背中を見ながら…リズベットはそう思う。

 

 

γ

 

 

無事にムッタードラゴンを倒して、【ソーマ鉱石】を手に入れたリズベットとカナタは並んで歩きながら…78層の転移門に向かっている途中でリズベットが遠慮がちにカナタへと問いかける。

 

「カナタのその…蒼い瞳ってさ…」

「ん?あたしの目がどうしたの?」

 

この世界でリアル…現実のことを聞くのはマナー違反だ。しかし、違反してもいいと思うほどにあの時に見た影が気になる…、リズベットは息を吸い込むとゆっくりと口を開く。

 

「その…現実の色なのかなって」

「あぁ…、ん…現実の色だけど…やっぱ、変かな?」

 

カナタはリズベットのその問いに苦虫を噛み潰したような顔をすると、悲しげな笑顔を浮かべる。そんなカナタにリズベットは聞かなければよかったと後悔しつつも…ここまで聞いちゃったんだからという気持ちで、更に質問を重ねる。

 

「いや、そんな事ないわよ!?た、ただね…現実なら…珍しいなぁ〜って思ってね…」

 

リズベットの問いに、カナタは視線を僅かに下に向けると小さく呟く。その瞳の奥には、静かに憎怒の色が浮かんでいる。

 

「……簡単に言うと父の方がね、アメリカ人なんだよ。この目はその父から貰ったもの…不本意なんだけどね」

「不本意?」

「あたし、あの人……父のこと、嫌いなんだ。あんな男の娘ってこと自体が気に入らない。だからね、正直…この目も好きじゃないんだ。だから、近いうちに栗色にでも染めようかなってね」

「そんなっ!もったいないわよ、こんなに綺麗なのに!!」

「へ?綺麗」

 

カナタのポカーンとした表情を見ながら、リズベットは思わず滑ってしまった自分の口を恨んだ。

 

“は!?あたし…また…っ。なんてこと言ってるのよ!カナタは嫌いって言ってるのに…”

 

「ぷっ、綺麗って…そんな事初めて言われた。シノンにも言われたことないのに…」

 

あたふたしてるリズベットを見て、カナタはプッと笑うと…嬉しそうに呟く。そして、リズベットに向かって問いかける。その問いはあまりにも失礼なものだったが…

 

「リトもあたしと同じで変わりもの?」

「あんたと一緒にはされたくないわね…」

「ごめんごめん、ジョークだよ。でも…少し、心が軽くなった気がする。あんがとね、リト」

「〜〜ッ!?…べ、別に…対したことしてないわよ……」

 

“そんなの反則よ…”

 

礼を言いながら、照れたように微笑むカナタの笑顔にリズベットは不意をつかれて、顔が赤くなるのを感じて…横を向くと早足で転移門へと向かう。

 

「へ?ちょっ、リト〜?おいてかないでって〜」

 

リズベットは暫く、カナタの方を見れなかった…

 

 

 

ー その3へ続く ー




というわけで、リトさんことリズベットさんとの素材集め旅ですが…リトさんがヒナタハーレムへと入会しかけですね〜(微笑)
そして、何気なくヒナタの秘密を知ってしまったリズさんですが…次回はどんな旅が待っているのでしょうか?

乞うご期待!!

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