ドキドキはあまりないかもしれませんが…カナタとレインちゃんの誕生日限定のエピソードを楽しんでもらえると嬉しいです!
では、本編をどうぞ!!
※あいも変わらず展開めちゃくちゃだけど許してね(土下座)
メイド喫茶なのになんであたしだけ執事なんだ…?(レイン誕生日記念)
【自宅マンション】
西暦2026年 6月 21日 日曜日。
窓から差し込む日の光とそよ風の心地よさにあたしはスーイスイッと気持ちよく眠りの海を泳いでいるときにBGMとして聞こえてきたのがいつも起きる時に使っているアラームだと気付き、続けて昨日"とある事をあるプレイヤー"と約束した事を思い出して、あたしは急いで眠りの海から覚醒する。
「すぅ……すぅ……」
「……ん?」
覚醒して気がついたのはなんだか左側が暖かく柔らかいで、目をゆっくりと開けて、左側へと視線を向けると見えたのが焦げ茶色のショートヘア…そして前髪の奥に見える長い睫毛に縁取られた少し垂れ目がちな瞼とすやすやと寝息を部屋へと響かせている桜色の唇に思わず笑みが溢れる。
“詩乃より先にあたしが起きるなって珍しいことがあるんだな”
あたしに抱きつくように眠りにつく詩乃の焦げ茶色の髪をよしよしと手櫛してから少し背伸びする。
「ふわ〜ぁ……さーて、どちらさんからのお呼び出しかな?」
頭またに置いてあったスマホを左手で掴み、目の前に持ってくると気怠げにホームを開くと電話のマークがついた所をタッチすると着信履歴を確認する。
そして、その着信履歴に《虹架》という二文字を見つけるとかけ直してみると二回"プルルゥ……"と呼び出し音が聞こえた後に可愛らしい声が聞こえてきた。
『もしもし』
「もしもし」
『眠たそうな声だね、陽菜荼くん』
『クスクス』と可愛らしい笑い声が聞こえた後に申し訳なさそうな色を全面に出して問いかけてくる虹架へとケラケラと笑う。
『もしかして、ついさっきまで寝てたのかな?』
「流石、虹架だね。ご明察だよ」
『ごめんね、まだ眠いのに早い時間に起こしちゃって……」
左側で寝ている詩乃を起こさないように静かに左手でスマホを支えながらベットから降りたあたしはまずは洗面所へと向かう。
「いいっていいって。昨日約束したもんね、明日の虹架のバイトをあたしも手伝うって」
『でも、本当にいいの? 今日って日曜日だから、シノンちゃんとデートの約束とかーー』
「ーー 一緒に暮らしているからね、あたしは毎日がデートだと思ってるし……詩乃も虹架が困っているのならそっちに行ってあげてっていうと思うよ」
『うん、そうだね……。あと一時間後に迎えに行くね』
「了解!」
元気よく返事してから電話を切ると眠気を追っ払う為にバシャバシャと顔を洗い、近くに置いてあるタオルで顔についた水気を拭いた後に冷蔵庫を開けてから左人差し指で顎をトントンと叩きながら朝御飯の献立を頭に思い浮かべてから材料を取り出すと食べやすいサイズに切っては炒めていく。
「……んっ? あれ? 陽菜荼?」
「おはようさん、詩乃。朝御飯、丁度出来た所だよ」
眠たそうに右目を越すしながら身体を起こす詩乃へと箸を渡しながら、出来たての朝御飯と日課のはちみつレモンを飲んだ後に歯磨きした後にタンスから適当にワイシャツと短パンを取り出すあたしへとコーヒーを優雅に飲んでいる詩乃が問いかけてくる。
「…今日は虹架のお手伝いだっけ?」
「そうだよ」
「……貴女はどの世界でもモテモテね」
“なんか嫌みの要素がそのセリフにより深く入っているように思える…”
肩をすくめるとチビチビとコーヒーを飲む詩乃の前にしゃがみ込んでニコッと笑いかける。
「早めに帰ってくるから、その後にどっか遊びに行こう」
「えぇ、そうね。そろそろ冷蔵庫の素材を補充しないと」
その後、詩乃へとパタパタと手を振ってからマンションから出た後に虹架と待ち合わせをしているところに向かい、合流した後に虹架がバイトしているメイド喫茶へと向かう。そして、虹架によって店長に目通しされたあたしは今顔から冷や汗を流しているのだった。
「ふーーん」
“何がふーーんなのだろう……”
さっきからあたしの周りをぐるぐる回るだけで何も言ってくれないし、しきりにふむふむうなづくだけで怖いんですけど!? 虹架もそこで微笑んでなくてあたしを助けてよ!?
知らない人を全身を舐めるように見られること、実際の時間は30分、体内時計では3時間という永遠とも思える時を過ごした後にやっと変な緊張感を抱くそこから解放された。
「貴女はこれね」
「…………へ?」
ニコニコ笑顔の店長さんから渡されたのは白いカッターシャツにピンクのネクタイ、茶色のタキシードに長ズボンという四点セットで……目の前で目をまん丸にしている虹架が着用している茶色のオーソドックスで可愛らしいヒラヒラが実に女の子らしいメイド服ではなく、あたしの手に持たされているのは明らかに"執事服"だった。
「いやいやっ!?ちょっ、まっ 待ってください、店長さんっ。あたしが今ここにいるのはメイド喫茶ですよね!?」
「? そうだけど」
“何でそこで不思議そうな顔をする〜ぅ?”
あたしがしたいんだけどその顔! 後、さっきから虹架がソワソワ落ち着きなーーって他のメイドさんも落ち着かなくなってきたなッ! なして!?
「ここにいる子たちもこれから店を訪れてくれるお客様も貴女のその姿を期待しているのよ」
「ーー」
そんな事言われて、周りの全員(虹架も含む)がうなづいちゃったなら仕方ないじゃん。
“しゃーない、やるかっ”
でも、周りがメイド服なのに一人だけ執事って……なんか浮いてる気がするんだけど……と予想していた男装路線にガックシとしながらも頭の中で想像したメイド服姿の自分が余りにも似合わないと思った為、"まー、こっちの方があたしらしいか"と結論づけながら、カッターシャツとタキシードへと腕を通していく。
「ふぅ……思えばきっちりした服ってGGOでしか着た事ないな」
ま、GGOもきっちりとしているがあたしの着崩しのせいでだらしなさを相手に伝えてしまうのは性格上仕方ない事だろう。
「あっ、陽菜荼くん。着替え終わったんだ」
「まー、ネクタイの締め方とかはGGOでも現実でもやったしね」
「って言ってる側からネクタイを緩めないの。私たちは接客業なんだから、いつもみたいにだらしなくしたらいけな……い……………よ……………………」
と言い、爪先立ちをしてグイッとピンクのネクタイを直してくれている虹架の顔がみるみるうちに真っ赤に染まっていく。
「さんきゅー、虹架」
「ど、どういたしまして」
プイっとあたしから顔を背けた虹架の茶色の髪から覗く耳が真っ赤になっているのを見つけたあたしはそっと小首を傾げると仕事の内容を説明してくれている虹架の話を一生懸命聞いた後に早速実践となったのだがーー
“何でこんなことに……”
「私はこのメイドさんオススメふわとろオムライスが食べたいな」
「なら、あたしもそのオムライスにするわ」
「あたしも食べたいです」
「なら、私も」
ーーあたしのメイド喫での初めてのお客さんはあたしのお嫁さんと愉快な仲間たちでした。
「誰が愉快な仲間たちよ!」
「お客様。他にもお客様がいらっしゃいますので声を小さくしてもらえるでしょうか?」
「なっ……それはあんたが変なことを考えているからでしょっ」
「変なこととはどんなことでしょうか? ぼく、お客様の言ってることがわかりません」
澄まし顔をしてみると里香がヌグググ……と悔しがっているのが分かるのでしてやってりとほくそ笑むのを見上げるのはツインテールを青色のゴムで結んでいる珪子である。
「陽菜荼さん、この店では一人称が"ぼく"なんですね! かっこいいです」
「店長さんの意向でね。執事なのに"あたし"っておかしいから"ぼく"にしろって……」
“そういう細かいところは気にするのに、なんでメイド喫茶で執事服を着せたんだろ……ま、メイド服に未練はないけど……”
そんな事を思いながら、心しれた仲間たちの注文を取っていると熱視線を感じて、そちらをみるとうちのお嫁さん……ではなくて恋人殿が黒縁メガネ越しに鋭い視線を向けていた。なので、恋人殿へと問いかけてみると
「ーー」
「あーと、詩乃さん?」
「……なんでもないわ」
と勢いよくそっぽを向かれた。
“今日って本当ついてない……”
変な店長には絡まれるし、突然来た恋人殿や仲間たちからはよく分からない態度されるし、注文されるし……しかし、それも後少しで終わると自分に奮い立たせると次に来たお客さんへと教えられた通りに頭を下げる。
「おかえりなさいませ、お嬢様」
そのお客様の後に数十人対応した後にやっとあたしは執事服から解放出来ると思ったのだがーー
「陽菜荼くんさえ良ければ一緒に写真を撮って欲しいの」
ーーと顔を真っ赤にした虹架に呼び止められ、一緒に撮った写真を眺めてみるとよっぽど早く執事服を脱ぎたかったのか…あたしの顔が強張っていた。
ということで、レインちゃんの誕生日エピソード おしまいです!
レインちゃんの誕生日っぽくない内容となってしまいましたが……満足してもらえたかな?(苦笑)
また、メイド喫茶行った事ないので、想像で書いちゃいましたが……これでいいのかな?(苦笑)
最後に、余談なのですが……レインちゃんは陽菜荼と撮った写真を待ち受けにしているそうですよ。また、『虹架の誕生日だからあたしのできることなんでも一つ叶えてあげるよ』という陽菜荼の言葉にレインちゃんは『毎週1回、二人っきりでクエストしたい』とお願いしたそうです(微笑)
地味に思えますが、毎週1回 好きな人と二人っきりになれるって幸せなことですし、嫌なことがあってもその日のために乗り越えられそうですよね(微笑)