そして、今回は最初ということで、かなり短めです。では、どうぞ!
※お気に入り登録・224名!評価を新たに二名の方につけていただきました。本当にありがとうございます!
そして、誤字報告ありがとうございます!
「陽菜荼、遅いな…。もしかして、道草とかうってるんじゃないんでしょうね」
架空空間にあるベンチへ腰かけて、もう10分くらい経つが…幼馴染の姿が見当たらない。いくら、辺りを見渡しても、癖っ毛の多い栗色の髪が見つからない。
この空間は白を基調としていて、本来はカンセリングをするために使われているらしい。メディキュボイドを使用する患者がVRMMOへログインする前に、一旦ここで説明を受けて、そこからやっとVRMMOへとログインすることができるそうだ。
それは決定事項であり、他のメディキュボイドでログインした陽菜荼も迷わずに、私が今腰掛ける所まで一直線で来られるようになっている…はず、なのだがーー
“ーーまさか、待ちきれなくなって…先にログインしたとか?いえ、それは…だとしたら、本当に道草を…”
ベンチから立ち上がり、陽菜荼を探しに行こうと一歩踏み出した時だった。それが現れたのはーー
「ここは探して行った方がーーへ?」
ーー下を向くと、ぽっかりと空いた穴を色付けるように様々な色が目に眩しい光を放っている。そこへと、身体が沈んでいくのを感じて、私は手を伸ばす。
「いやっ、待って…陽菜…荼……」
いつも私のピンチに駆けつけてくれる彼女は姿を現すことはなく、私は眩しい光が円を描くように回る穴へと落ちていった……
τ
ドンッ。そんな衝撃によって、目を覚ました私は見知らぬ場所にいることに目を丸くする。
草木が生い茂っているところを見ると、どうやらここは森林のようだけど…。でも…私、なぜ森林にいるの?
“……。だめ、思い出せない…”
「痛たたぁ…」
そんな声が真下から聞こえ、私はそこで誰かを下敷きにしていることに気づいた。慌てて、身体をどかすと、そこから金髪をポニーテールした少女が身体を起こす。私の方へと振り返ると、ニコッと笑う。
「びっくりしたぁ。いきなり、ぶつかってくるから」
「ご、ごめんなさい。怪我はない?」
「大丈夫、大丈夫。あたしもあんなところに立っていたのが悪いんだし…。ん〜?そういえば、あなた何処から来たの?」
「何処って?」
不思議そうな顔をして、私へと問いかかる少女に私も眉を顰める。
「あたし、耳はいい方だから。物音がしたから気づくはずなんだけど…あなたがあたしにぶつかった時、音がしなかったように思えたから」
「……」
“どこ?私はどこから…ここに来たのだろう…。ッ…ダメ、頭がグラグラして…っ”
頭を押さえて苦しみ出す私に、少女が心配そうにこちらを見ては謝る。
「大丈夫?ごめんね、あたしが余計なこと聞いたから…」
「いえ、私こそごめんなさい。私…ここに来る前後のこと、覚えてなくて。思い出そうとすると、頭がクラクラして…モヤがかかったようになって、何も思い出せないの」
「へ?」
少女は唖然とすると、驚いた顔のまま問いかけてくる。
「じゃあ、ここがどのゲームの中なのか?分かってないの?」
「げーむ?」
首を傾げる私に、少女は身振り手振りで教えてくれるが私にはどれも聞いたことがなく、小首を傾げ続けるのみである。
「あー。ここはね、〈ソードアート・オンライン〉っていってVRMMOで、現実に近いのはーー」
「ーーキリトくん、あそこ」
そんな声に遮られて、後ろへと振り返った私たちが見たのはーー全身を黒で染めている少年と全身を白と赤で染めている少女であった……
さて、詩乃と少女が見た二人組とは?