5/2〜間違っていたところを直しました。
5/2〜誤字報告、ありがとうございます!!
一眠りした後に、フィーことフィリアと共に、遺跡城へと
足を踏み入れた途端…あたしはどうやら、迷ってしまったらしい。
“んー、ここ…あたし、通ったよね?”
キョロキョロと辺りを見渡しながら、部屋に続く廊下を歩いていると冷たいものを首筋に突きつけられる。
「君は誰だい?なぜ、ここにいる?」
「……」
“…あぁ〜、デジャブ…”
唯一、動かせる目で首筋に当てられているものを見ると、いつかの時のように…刀身が磨き上げられた片手直剣が首筋に当てられており、あたしは人知れず…溜息をつく。そして、遠い目をすると、いつかもこのように誰かに襲われたことを思い出していた。
そんなあたしの様子に痺れを切らしたのか、片手直剣を押し付けてくる何者かは、アルトよりののんびりとした口調で、もう一度 あたしへと問いかける。
「答えて、君は誰?」
「…あたしはカナタ。君の敵ではないよ」
いつの日かも、こんな風に答えたなぁ〜と考えていると…あたしへと剣を突きつけていた何者か、恐らく少女が動揺で震える声で訪ねてくる。
「!?カ…ナタ……。さっき、君はカナタって言ったのかい?」
「? そうだけど…」
「っ。君、逃げーー」
そう答えたあたしから、慌ただしく剣を外した少女は…あたしから離れようとして、息を飲んだ。
少女の視線の先にいるものに、あたしは眉を顰める。
「ーー何か見つけてこいとは言ったが、とんだ拾いもんをしたもんだな〜、ルクスぅ〜」
「ぁ…」
「ッ」
「おいおい、嬢よ。そんな怖い顔してたら…兄弟が悲しむぜ〜」
黒いポンチョを揺らしながら歩いてくる男の声音、目ぶかく被れた顔からチラチラと覗く顔には、見に覚えがあった。どうやら、それは黒いポンチョの男も同じだったようで…少女に捕まったままで居るあたしをニヤニヤと笑いながら、見てくる。あたしはその男から顔を背けると素っ気なく言う。
「ふん。あんな人を父と思ったことは一度もない」
「ありゃ〜、これが反抗期ってもんかねぇ〜、参った参った。兄弟はあんなに嬢のことを心配してたってのにさぁ〜。まぁ、いいさ…。嬢には、暫くの間…大人しく俺のところに来てもらうってことでさ、ルクス。そのまま 嬢を捕まえてろよ」
「ーー」
黒いポンチョの男に命令されて、震えながらもその命令通りに動く少女から逃れようと暴れるあたしだが、少女の方が力が強いのか…はたまた、必死なのか…少女から逃れようとしようにも、逃げれなかった…。
変わらないスピードで近づいてくる黒いポンチョの男を睨みつけながらも、暴れるあたしの耳に見知った声が聞こえてくる…
「くっ、嫌に決まってんだろ!誰がお前なんかのところなんかにーー」
「ーーカナタ〜!!何処にいるの〜?カナタっ!!」
「と、お仲間さんか?」
黒いポンチョの男が振り返った先には、息を切らしているこちらを睨んでいる金髪碧眼の少女がいた。少女が息をするたびに、揺れる青いマントを動かして…黒いポンチョの男たちに向き直った少女はこう言い放つ。
「あんたら、誰?カナタを離して」
「ーー」
「聞いてるの?カナタを離して」
ジッと金髪碧眼の少女・フィリアことフィーを見たまま、微動だにしない黒いポンチョの男が次の瞬間、ニンヤリと不気味な笑みを浮かべる。
「あんた、誰かと思ったら…オレンジプレイヤーのフィリアじゃあねぇーか。なんだよ、おめぇ…あんなことしときながらぁ、嬢を取り込む気だったのかよぉ。人間ですらないデータの分際でさぁ〜〜〜〜〜」
「…ぁ…ぁぁ……」
「でーたぁ?」
首を傾げるあたしに、黒いポンチョの男はニンヤリと笑いながら…顔を強張らせるフィーへと一歩一歩近づいていく。そして、固まるフィーを思いっきり、蹴飛ばすと…床に転がるフィリアのお腹を踏みつける。
「がぁっ、っ…」
「おらおら、なんか抵抗してみろよ〜。最初の威勢はどうしたよぉ〜。ン?」
抵抗しないフィーに飽きた様子で、最後にフィーの身体へと凄まじい一発を蹴り入れた黒いポンチョの男の行動に、怒りの限度が超えたあたしは取り押さえている少女へと怒声を浴びせる。
「離せっ!離せって!!あたしはフィーをっ。フィーを助けないといけないんだぁ!!」
「ーー」
「聞いてるのか!?離せって言ってんだろ!!」
荒れ狂うあたしに、黒いポンチョの男は自分の数メートル先に寝そべっているフィーとあたしを交互に見て…あることを思いついたような表情を浮かべると、腰にある剣を取り出す。そして、無抵抗に寝転がっているフィーを突然 手に持った武器で斬りつける。
「オマエェエエエ!!!」
「ふ、嬢はこの人殺しがそんなに大切なのか?」
あたしの表情を楽しむように、フィーを斬りつけていく黒いポンチョの男を睨みつけると…あたしは一瞬、緩んだ少女の束縛を外すと…フィーと黒いポンチョの男の間に入り込む。黒いポンチョの男は、突然 現れたあたしにびっくりしたような表情を浮かべると…視線だけで、さっきまであたしを取り押さえていた少女を見る。男の濁った瞳に映るその少女の外見は、白銀のウェーブのかかったロングヘアに、垂れ目の瞳は床を見つめていて…ガタガタと震えている。
「おやぁ?なんで…嬢、こんなところにいるのやらぁ?やはり、ルクスは役立たずかぁ〜。まぁ、いい…」
ニヤニヤとわざとらしい笑みを浮かべる黒いポンチョの男へと、刀を構えながら言う。
「フィーを傷つけたこと、後悔させてやる」
「後悔?嬢は面白いことを言う〜。この世界には、殺していい人間ってのが存在するんだ。そいつらを一人、葬ったくらいで…誰が俺を裁くってんだぁ?」
「人間とか…人間じゃないとか、そんなの何の意味も持たないよ。第一、あたしがお前みたいな奴の言うことを信じるわけないだろう?フィーが人間でなかろうが、あろうがそんなの関係ないっ。
あたしはフィリアを信じてる!!それは出会った頃から今に至るまで変わらないし、これからだって…その信頼が変わることはない。これは約束っていうか、誓いだよ。その誓いに、過去の行いとか関係ない!関係あるのは、今のフィリアが何したいかだよ」
あたしは振り返って、フィーの方を見ると問いかける。
「ねぇ、フィー。フィーはどうしたいの?あたしといたいの?それとも…こいつに屈する?」
「わたしは…カナタと……っ、居た…い……」
涙を流しながら、そう言うフィーにあたしは頷いて…フィーを守るように、愛刀を構えると黒いポンチョの男に鋭い視線を向ける。そんなあたしに、黒いポンチョの男は終始呆れ顔を作っていた…
「OK。フィーなら、そう言ってくれるって思ってた」
「ククク…困ったもんだなぁ〜、嬢も。なら…嬢よ。俺と一勝負しないか?」
「勝負?」
「ああ、俺が勝ったら 嬢は俺の言う通りにすること。嬢が勝ったら…そこに転がってる二人の事は嬢に任せるさ。いい条件だろ?」
「ふっ、屁理屈を。でも、それで二人をあんたから救えるんなら…あたしはする!あんたをキルッ!」
そう言って、手に持った武器を構えた黒いポンチョの男にあたしは手に持った愛刀をギュッと握りしめて、走り出した……
次回は、黒いポンチョの男との決戦
久しぶりのイケメンヒナタ回ーーこんなヒナタに惚れない人はいないですよ(笑)
普段はだらけているが、決める時は決めるーーそれが香水 陽菜荼という子なのです!