三人は、???の罠から無事に脱出することができるのか!?
それでは、本編をどうぞ!
ーちょっと補足ー
フィリア、ルクスは親しい人のホロウ・データで、難易度のダンジョンへと突き落とされ…カナタはそんな二人を探している最中に、寄った部屋に潜んでいたPoH本人の武器で斬りつけられて…麻痺状態になってしまいました…(汗)
そんな話が前にあり、本編が始まります(礼)
6/2〜誤字報告、ありがとうございます!
“クソっ!騙された…っ”
ダンジョンの床に横にさせられているあたしは、唇を噛み締めると…左上にある自分のHPを見る。すると、あたしのHPのところに麻痺マークが付いている。
そんなあたしの周りには…もう二人の人影がある一人目は、この部屋の入り口付近を陣取ってる深緑色のポンチョ姿の男。そして、二人目は麻痺により身動き出来ないあたしを監視するように、虚ろな垂れ目がこちらを向いている。
“…まさか、こんな罠に騙されるなんて…”
二人を探すのに、焦っていたとはいえ…入り口の近くに人が潜んでいることぐらい察するべきだった。自分の迂闊さがここに来て…こんな事態を引き起こしていることに、あたしは歯がゆく感じる。
「おい、ルクス。そいつ、見張っとけよ」
「…はい」
深緑色のポンチョ姿の男から飛んできた指示に素直に頷いた白銀のウェーブのかかった髪と垂れ目が特徴的な少女は、あたしが自分の方を見ていることに気づくと短く尋ねる。
“…この人は…ルーの〈ホロウ・データ〉との事だったけど…確かに似てる。虚ろな目以外だけどね…”
「…何?」
短く、何処か淡々とした感じにも聞こえるその声にあたしは今まで思っていたことを聞く。
「あんたは、ルーの〈ホロウ・データ〉なんだろ?こんな事に加担して…心が苦しくないの?」
「ふ。無意味だぜぇ〜、嬢。そいつは、俺のいいなりだぁ〜」
割り込んでくる腹立たしい声は無視し、虚ろな瞳でこちらを見つめてくるルーことルクスと瓜二つの少女へと再度問いかける。だが、帰ってきた答えは期待しているものとはかけ離れていた…
「お前には聞いてない。ここに居るルクスに聞いてる…。ねぇ、君は苦しくないの?」
「…分からない。苦しいとか…そんな事…」
「ほらなぁ〜」
「黙れ。お前の声なんか聞きたくない」
「お〜ぉ〜、怖い怖い」
ニヤニヤと薄気味悪い笑顔を浮かべて、あたしからわざと距離を取るそいつの行動がいちいち、あたしを苛立たせる。だが、今はこの腹立たしい男から情報を得るしかない…あたしは小さく空気を吸い込むと、入り口の付近にいる深緑色のポンチョ姿の男を一瞥して低い声で問いかける。
「お前は…あたしをこんなとこに閉じ込めて、麻痺させて…どうするつもりだ?ルーとフィーを何処へやった?」
「嬢のお友達ならぁ〜、そうだなぁ〜。嬢が思っている通りになってるかもなぁ〜。いや、もっと酷いことに…下手すれば、くたばってるかもなぁ〜」
「キサマァアアアア」
“くたばってる…だと!?やっぱり…こいつが二人を…っ!!”
あたしは怒りで目尻を釣り上げると…動かないからだに力を加える。そして、何とか立ち上がると男へと近づいていく…。
そんなあたしを見て、深緑色のポンチョ姿の男・PoHが嬉しそうに口笛を吹く。
「ひゅ〜。その目だよ、その目。もっと、俺を楽しませてくれぇ〜」
「ふん、そんな事 知るかっ。それよりもそこをどいてくれないかな?あたしは、二人を助けに行かないといけない」
睨みつけるあたしをニヤニヤした不気味な笑みを浮かべながら、入り口の付近で友切包丁をパンパンと叩きながら…部屋を出て行こうとするあたしを邪魔する。
「そんなこと言って、はいはいそうですかって俺様が従うと思うかぁ〜?嬢…いや、カナタよぉ〜」
「…お前は、ヴァサゴの〈ホロウ・データ〉なのか?なぜ、あたしを狙う?」
右腰から愛刀を抜き取ると構える。そんなあたしに、不気味な笑みを強めながら…PoHがトボけたような声を出す。
「おいおいぃ〜、そんなに質問攻めさせても答えられないぜぇ〜。俺は〈ホロウ・データ〉なんだからなぁ〜」
「今更、白々しいな。さっきまで、流暢に会話してたじゃないか…あたしと。なんだ?苦しくなったからとか言って…逃げるのか?」
「逃げねぇ〜よ、俺はただ あんたとマジの戦いをしたかったんだからなぁ〜」
「マジの戦い?」
眉を顰めるあたしに、PoHは少しため息をつくと…あたしに問いかける。その問いに、前の戦闘を思い出したあたしは吐き捨てる。
「あんたなら分かるだろうぅ〜?俺様と一回戦ったあんたならさぁ〜」
「…殺し合い…てか。するわけないだろう、そんな巫山戯たこと」
「そういうと思って…あの二人をあんなところに入れたんだ。早く助けに行かないと…あの二人が死んじまうぜぇ〜。二人を助けに行きたかったんなら…ここに居る俺様とルクスを殺していけ」
「くっ、卑怯なことを…」
「戦闘を避けようとしても…ダメだぜぇ〜っ!さぁ、ルクス そいつをコロセ」
「…はい」
「チッ」
PoHの指示で、斬りかかってくるルクスの斬撃を愛刀で防御する。防御に徹するあたしに、ホロウのルーは無慈悲に片手直剣ソードスキルを叩き込んてくる。
「…」
「っ!クソォっ」
ソードスキル【ホリゾンタル】からの【スラント】。次から次へと休む暇なく叩き込まれるソードスキルの雨は、あたしに反撃する余地も与えない…。
“まぁ、あったとしても…あたしは躊躇っちゃうな。さっきだって…躊躇ったし…”
ようやく出来た隙に愛刀を薙ぎ払い…ホロウのルーから距離をとったあたしは入り口の辺りで傍観者を決め込んでいるPoHへと怒声を投げかける。
「お前、卑怯だぞ。あたしを殺したいんなら…お前が来い!」
「あんたのHPかルクスのHPが赤になったら…入ってやるよ。それまで、精々 頑張りな」
「くっ」
そういうPoHの瞳は、捉えた獲物をどう料理しようか?と考えている蜘蛛のようだった。
“なるほど…あたしは、蜘蛛の巣にまんまっと引っかかった蝶々…いや、虫といったところか…?”
舐めた真似をしてくれる、恐らく相手はあたしがルクスを攻撃出来ないと分かって…この対決をやらしている。
“…ッ!だからって…あたしも負けるわけにはいかないんだよ!”
「はぁあああっっ!!!」
迫ってくるルクスに向って、愛刀を構えると…刀身が淡い水色に光る。刀ソードスキル【辻風】、低いスタンと出血効果がつくこの技を使えば…少しはこのホロウ・ルーも動けなくなるだろう…。中腰に構えて、走ってくるホロウ・ルーに向かって 【辻風】を放つ。だが、見え透いたそんな技が相手に通じるわけもなく…横腹に蹴りを加えられるとあたしは床を転げた。
「ーー」
「…っ」
“こんな子供騙し通じるわけないか…”
よろめきながら、立ち上がると…愛刀を構える。そんなあたしの動きをしばらく見ていたホロウ・ルーは、痺れを切らしたらしく…片手直剣を軽く振ると、凄まじいスピードで近くに駆け寄ってくる。
「来ないのかい?いくよ」
「…っ」
放ってくるスキルと攻撃を何とか、防御しながら…あたしは隙を見つけては、反撃しようとするが…身体がうまいこと動くことがなく、見る見るうちにHPが緑から黄色へと下がっていく…。
唇を噛み締めるあたしを感情が消えた垂れ目で見つめるホロウ・ルーの攻撃の嵐が止むことは無かった…。
遠くで、そんな二人の決闘を見ているPoHはニンヤリと嗤う。
“やはり、あの女は…あの垂れ目の女に似たデータを殺すことはできない…。そうと分かれば…、この決闘の決着は付いたも当然だ…”
恋い焦がれるほど、思っていたあの強敵の呆気ない最期を想像したPoHはため息を着く…。まぁ、仕方がない…、所詮 あの女はその程度だったということだろう…。そんな弱い者を相手するまでもない、ここであの女が悔しそうな表情を浮かべて…死ぬのを見るとしよう。
「さて、割とこっちは…早く決着がつきそうだなぁ〜。あの二人の方はどうなったか…?順調に死んでてくれば…嬉しいんだがなぁ〜」
PoHの呟いたその声は、鉄と鉄が奏でるカッチーンカッチーンというその音に掻き消されていった…
次回は、そんなホロウ・PoHの罠にハマってしまったフィリアさんとルクスさんを書きます(礼)