sunny place 〜彼女の隣が私の居場所〜   作:律乃

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今回のかなり、長めです(汗)
戦闘シーンも迫力あるように書いたので…良ければ、ご覧ください(礼)

では、本編をどうぞ!!


6/6〜誤字報告、ありがとうございます!


2章017 三人の絆と不穏なメッセージ(カナタside)

(あお)碧い床に、白い光が伝う壁が薄暗い廊下に浮かぶと何処か、幻想的な気がする。あたしは場違いと思いながらも…溜息を着くと呟く。

 

「本当に、綺麗なところだよね〜。ここって」

「そう言いながら、あさっての方向に行かない!こっちだからっ」

「あはは…ごめんね〜、フィー」

 

違う方向へと向かおうとするあたしの左手を掴むと、自分の方へと引き寄せてくれる金髪碧眼の少女・フィーことフィリアに頭を下げると、その頬が何故か 赤く染まる。

 

“何故、お礼を言っただけで…そんなに照れるんだろ?フィー…”

 

あたしは小首を傾げつつ、フィーに連れられて…神秘的な通路を進むとある部屋へと辿り着く。先頭を歩いていたルクスことルーが、白銀のウェーブの罹ったロングヘアーを揺らして振り返ると、あたしたちを止める。部屋にある私の右手に浮かぶ不思議な紋章と同じ模様が刻まれている石板を指差すと…小声で話しかけてくる。

 

「カナタ様、フィリア。準備はいい?あの石板、見ての通り…敵に囲まれて、一筋縄ではいかないみたい」

「ルーの言う通りだね。さて、気合い入れていこう!」

『オォー!!』

 

あたし達は其々の愛用している武器を構えると石板に群がる敵たちを倒していった…

 

 

γ

 

 

石板を触れて向かった先には…ピンクの螺旋を描く柱があり、それに近づくと不思議な空間へと飛ばされる。半透明な板の上に三人で呆然として立っていると…夜空のような空間から全身を白と赤、黒の三色で決めている竜のような姿をしたモンスターが現れた。まるで、ガーディアンみたいな成り立ちに、赤い爪が付いている手の下にある赤く光る剣に…あたしは目を輝かせると興奮気味に言う。

 

「うわぁ〜、カッコいい〜!何、こいつ!スゲェ、カッコいい!!」

「アホなの、あんたは!少し危機を感じなさいよ!」

「カナタ様、構えてください」

 

ハイテンションのあたしに、他の二人は呆れたような表情を浮かべると冷たい声で指示する。そんな二人へと振り返ると、あたしは左手に刀を持ち…右手に小太刀を持つと構える。

 

「心配しなくてもいいよ、フィー、ルー。あたしがふざけてる時は…基本、楽勝で勝てる」

「自信満々だね、カナタ様」

 

ルーのそのセリフにあたしは胸を叩くと、ニカッと笑うと二人を守るように一歩前へと踏み出す。

 

「だって、あたしとフィー、ルーの三人でこのラスボスと闘うんだよ?あたし達の強い絆と連携に勝てる敵なんて居ないよ。それに…二人を攻撃なんてさせない。二人を守るって約束したし…誓ったからね。だから、攻撃宜しくね♪フィー、ルー」

「ッ。あんたって…なんで、そんなにカッコづけるのよ、もう!」

「それがカナタ様の素敵なところだよ、フィリア」

「そうね。……本当に…無駄にカッコいいんだから…」

 

呆れ声でそう呟いたフィーの声の後に、頭上に【オカルディオン・ジ・イクリプス】と書かれた竜形モンスターは、あたし達のいる場所から離れると黒い玉を放ってくる。

 

「ルー、フィー!離れて!!その玉に触れると…体力を持ってかれる!」

「了解!」

「うん、カナタ様」

 

其々、黒い玉を避けながら…近づいてくるオカルディオン・ジ・イクリプスへと走り寄ると、ソードスキルを放つ。

 

「はぁあああ!!!」

「やぁあああ!!!」

「うぉおおお!!!」

 

其々の愛用している武器の刀身が淡い光を放ち、オカルディオン・ジ・イクリプスの身体に紅い切り傷を付けて行く。最初にあたしが二天一流スキル【紫雲英】でその身体を切り刻みにいく。【紫雲英】は、防御力DWの効果と刀スキルや小太刀スキル特有の出血効果も追加されるので…割と使い勝手がいい。真っ正面で、ソードスキルを放つあたしの右側からオカルディオン・ジ・イクリプスに近づいたフィーが短剣スキル【トライ・ピアース】を放つ。このスキルも高命中の上に、AGI低下効果を敵に付けることが出来る優れものである。そして、最後に攻撃したルーの片手直剣スキル【メテオ・ブレイク】は重攻撃技なので、三人合わせて…四つあるHPの一番上を全部減らせることが出来た。

 

「がォおおお〜ッ!?」

「口が開いた!二人とも離れて…何か、来るかもしれないッ!!」

「うん、分かった。離れるね!」

「ルーも」

「うん、カナタ様」

 

二人ともが離れたのを確認すると、あたしもその場を離れて…様子を見る。そして、オカルディオン・ジ・イクリプスが空気を吸うのを見て…眉を顰める。

 

“空気を吸うか…?相手は竜形モンスターだから…空気を吸うって事は…。…ヤバッ!?”

 

ブレスの準備行動と分かったあたしは、その場から急いで離れるとその瞬間…あたしの居た場所が真っ白な光のビームで覆われた。それに冷や汗をかきながら…攻撃をする為に、オカルディオン・ジ・イクリプスへと近づく。

 

“二人を援護するために…あたしが一番、ヘイト値を稼がないと”

 

左手に持つ刀を辻斬りの形に動かし、右手に持つ小太刀を右上から左下へと動かす。そして、両方の手を横へとスライドし…上へと持ち上げて、真ん中を斬り裂き…左右へと開くーー二天一流スキルの奥義技で二つある内の一つ、奥義【緋衣草】…この奥義技には、攻撃力UPという効果が付いているので実にありがたい。

凄まじいエフェクトと効果音の後、オカルディオン・ジ・イクリプスの三つのHPを全部削ると、離れようとする敵へと左右から二つの影が近づいてくる。青いマントをはためかせながら…走ってくるフィーは同じく、左から走ってくるルーに向けて叫ぶ。

 

「ルクス、合わせて!」

「分かった、フィリア!」

 

其々の愛剣が淡い光を放ち、オカルディオン・ジ・イクリプスの身体へと短剣と片手直剣が変幻自在に動き回り、紅い線を作っていく…短剣スキル【シャドウ・ステッチ】と片手直剣スキル【バーチカル・スクエア】によって、麻痺状態に陥ったオカルディオン・ジ・イクリプスへと追い打ちをかける。

 

“ナイス!援護、二人共!!”

 

二人の連携に心で拍手を打ちながら、白い光を放つ刀と小太刀を【天竺牡丹】の形へと構えるとーー

 

「これで決めさてもらう!痛いかもだけど…悪く思わないでね?」

 

ーー刀を左上から右下へ、小太刀を右上から左下へと移動すると…クロスした両手を左右へと思っ切り振り切る。その場をクルッと回って、小太刀を横一線に動かすと…振り返ると同時に右上から左下へと斬りつける。垂直線に刀と小太刀を動かすと…相手の足元を足で払い、相手の胸へと両手に持つ刀と小太刀を突き立てると…小太刀は下へ、刀を上へと動かす。そして、刀で斬りつけながら…前を向くと、背後でパッリンというポリゴンの欠片が砕け散る音が聞こえた。

途端、流れるアナウンスに…思わず、張り詰めていた息を吐く。

 

“ふぅ…終わった…”

 

あたしへと歩み寄ってくるフィーとルーの身体がアナウンスが流れた後に、動かなくなる。動かなくなった二人に慌てるあたしの前に現れたのはーー

 

[《システムガーディアン》の討伐を確認。最終シークエンスに移行]

「な…に…?」

「うごか…ない…」

「フィー!?ルー!?どうしたの!?」

 

ーー肩まで切りそろえられている癖っ毛の多い栗色の髪、そして 翳りのある蒼い瞳は大きい。橙の羽織は身動きする度に揺れ…左右に持っている刀と小太刀は、不気味な光を放っている。

 

“…!?あたしやん!?”

 

不穏なオーラを漂わせて、虚ろな表情を浮かべているのは…瓜二つの他人、というわけではなく…明らかにあたし自身だった。

 

「え!?なんで…あたし!?すごい!もろあたしじゃん!!オォ〜、よく出来てる!!」

「カナタ…」

「カナタ様…」

 

ホロウ・データのあたしを目の前にはしゃいでるあたしに、二人は呆れを通り越して…心配の表情を浮かべていた。その表情はどこか可哀想な子を見るような憐れみを含んだもので…あたしは苦笑いを浮かべると二人へと声をかける。

 

「二人揃って…そんな目で見ないでよ…。至って真面目…あたし、真面目だからさ…」

「どこが真面目よ…」

「思っ切り、はしゃいでたよね…?」

「うぐっ」

 

二人の冷静のツッコミに息を詰める私は…微笑むと、ホロウのあたしが構えてるように構え直す。

 

「心配しないでよ、二人共。…あたしは勝つ。絶対に…フィーの為、ルーの為…あっちで待っていてくれるキリ達のためにも…。そのために、この二天一流スキルをものにしてきたんだから…ここで負けたら、男が廃るってね」

「カナタ様は…女なのでは?」

「あはは…なら、女が廃るだな。さて…」

「ーー」

 

ルーのツッコミにへらへらと笑ったのを最後に顔を引き締めると、あたしはホロウのあたしを睨む。

 

[《ホロウ・エリア》実装テスト、最終シークエンス開始します。なお、テスト終了後《ホロウ・データ》のアップデートが開始されます]

「ふーん、ということは…あいつ、知らぬ間に…こんな面倒なことやってやがったのか…巫山戯てやがるな…、たく。あいつの思い通りになるのも、させるのも嫌だな…。ここは意地でも勝ってやる。

 

ーーかかってきな、あたし」

「…」

 

くいくいと手招きするあたしに、ホロウのあたしが二刀を振りかざしてくる。いきなり、二天一流スキル【君影草】を放ってくる。クルッと左右に持っている武器を振り回すだけの技だが、当たると低スタンという効果がつく。

 

“くっ…流石、あたしってとこか!だが…それくらいで、あたしに勝った気になるなってなッ!!”

 

「ッ!はぁーッ!!」

 

身体を逸らして…何とか攻撃を避けたあたしは、その波動で二天一流スキル【篝火草】を放つ。左右に持った武器を敵の上からで振り下げて…一歩下がると、左右に持っている刀と小太刀を前にいる敵へと突き刺すという技だが…効果が暗闇L2というものがつく。しかし…ホロウのあたしも素晴らしい反射神経で、あたしの足を払うと両手持った二刀を突き立ててくる。あたしはくるくると床を転がると…なんとか、その攻撃をさせると…立ち上がる。

 

「ーー」

「なかなか…強いじゃん、あたし。流石ってとこかな?でも…君とあたしでは、背負ってるものが違う…」

「ーーッ!」

「くっ!はぁッ!!」

 

無言でソードスキルを放ってくるホロウのあたしの攻撃を防御で受け止めると、その華奢な身体へと蹴りを入れる。僅かに体制を崩したホロウのあたしの隙を逃がさない。

 

“ここで決める‼︎”

 

奥義技ソードスキル【緋衣草】。白い光を放つ刀身が華奢な身体へと紅い線を作って行き、HPを三分の二持っていく。衝撃で後ろへと飛ばされるあたしへと…眉をひそめながら、“動け動け!”と身体へと呼びかけて…体を動かす。

 

“くそ…重ッ!”

 

硬直状態を無理矢理動かしているんだ…それは重いはずと思いながら、その身体へと最後のスキル放つ!

 

「天竺牡丹ーーッ!!」

 

白い光を放つ二つの刀身がホロウのあたしの体を引き裂き…その身体を青白いポリゴン片へと変化させた時には、胸に何とも言えない気持ちが湧いた。

 

“…フィーもこんな気持ちだったのかな…?”

 

目を瞑り、天井へと登っていったもう一人のあたしの事を思い、目を開けると…アナウンスが流れ、身体が動かなかったフィーとルーの身体が動けるようになった。

 

[ホロウ・データのアップデートが高位ユーザー権限により停止されました]

 

あたしへと歩み寄ってくる二人へと振り返ると、下を指す。恐らく、この下にお目当てのコンソールがあるはずだ。

 

「さて、行こうか?二人とも」

「うん、カナタ」

「カナタ様、こっちです」

「ん」

 

フィーとルー共に、下へと向かうと碧い床を進み…コンソールに触れて、操作すると…アナウンスが流れ、エラーを解除する。

 

[エラーが解除されました。エラーの種類はデータの重複。原因は…]

 

「よし、これで…みんな、元通りだね!」

 

あたしがフィーとルーへと視線を向けると、二人共のカーソルが緑に変わっていることに安堵する。

 

「これも、カナタのおかげでね。ありがとう」

「いやいや、みんなのおかげだよ。あたしは何もしてないよ〜」

「いえいえ、カナタ様は本当に凄い方だよ。あのホロウのカナタ様を倒しちゃうなんて」

「…まぁね、あたしは約束は守る主義だからね〜。…ん?メッセージ…だ」

 

目の前にメッセージが来たことを知らせるウィンドウが開くのを見て、あたしの右にいたフィーが問いかける。

 

「誰から?」

「…キリからだね…。何々」

 

キリことキリトから届いたメッセージには、以下のことが書かれていたーー

 

ーーシノンが今朝早く、一人で出掛けたっきり帰ってこない。今、仲間たち総出で探し中

 

“はぁ…?シノン…詩乃が行方不明?一人で出掛けたっきり…?帰って…こ、ない…?”

 

何これ、凄く嫌な予感がする…。冷たい手で心臓や肺を握られているような…不思議な感覚が続く。目の前がボヤンとしてくる…脳裏に浮かぶのは、最悪の事態ーー目の前で詩乃の身体が青白いポリゴン片へと変化して…泣き叫んで、そのポリゴン片へと手を伸ばし、掻き集めるあたしの手をすり抜けて…天井へと吸い込まれていく詩乃だった…ポリゴン片ーー

 

“…やだよぉ…やめてよ…なんで、そんなものを想像するんだよ…あたし!詩乃に限ってそんなこと…”

 

でも、ここはそういう世界なんだ…HPが無くなると自分の命もなくなる。あたしは…詩乃が死んでしまったら…耐えられるのだろうか?それの衝撃に…

 

“…そんなこと、想像したくもない…。行かなくちゃだ…”

 

「カナタ…?どうしたのよ、顔色が悪いわよ?」

「…フィー、ルーごめんね。あたし、先に行かなくちゃ…。詩乃が…行方…不明って…。あ

「カナタ様…?しっかり!歩ける!?」

「…行かなくちゃ…行かなくちゃ…行かなくちゃ…行かなくちゃ…イカナクチャ…」

「ちょっ、ちょっと…カナタ!そんなフラフラでどこに行くのよ!」

「ーーシノノトコ…イカナクチャ…。ヤクソク…シタンダカラ…」

「「……」」

「だから…ごめんね、二人共。先に帰ってるから…」

 

あたしは、頭の中に浮かび続ける最悪の事態のシーンを頭を振って、振り払うと…凄まじいスピードで管理区の迷宮を駆け抜けると、アインクラッドへと向かった……




次回はもう一話ほど短いものを書いた後、いよいよ…詩乃と陽菜荼の再会です!長かった…(涙)

しかし、本編はまだ続きます(礼)レインさんやまだ、登場してない皆さんが登場したから…息抜き編を書き進めて行こうと思います!では!!

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