それでは、本編をどうぞ!
アインクラッドチームとホロウ・エリアチームが其々に自己紹介を終えた後、シノンはカナタを誘い、噴水のある公園へと来ていた。近くにあるベンチへと並んで座った二人は、暫く無言で黙っているとーー
「……」
「……」
ーーカナタがベンチの上に無造作に置かれているシノンの右手をギュッと握りしめる。驚くシノンの焦げ茶の瞳を見つめながら、カナタはトーンを低めた声で呟く。
「…カナタ?」
「…ずっと、シノに触れたかった。シノ…会いたかった」「私もずっと、ヒナタに会いたかった。ヒナタの声を聞きたかったのよ」
「あたしもだよ。あはは、やっぱり…あたし達って、息ピッタリだよね?」
「えぇ、そうね」
互いに笑いあいながら、ただ繋いでいた手を恋人繋ぎへと変える。互いの指と指を絡めて、ギュッと握りしめると今まで会えなかった時の寂しさが消えていくように思えた。暫く、掌から広がる互いの暖かさを感じていると、シノンがカナタへと問いかける。
「ねぇ、ヒナタ。私、ずっと聞きたいことがあったんだけどいい?」
「ん?いいよ」
「ヒナタって、私を助けてくれた時にキリトみたいに二つの剣を持っていたわよね?あれは何?」
「あぁ、あれ。…あれは、『二天一流|にてんいちりゅう|』っていうユニークスキル」
「ユニークスキル!?ヒナタ、いつの間にそんなものを取得してたの?」
「ん〜、いつの間にか スキルツリーに出てた。そういうシノこそ、あたしに隠してるスキルがあるんじゃない?助けた時、弓を持ってたよね〜?」
「あれはヒナタと同じようなものよ。私のは『射撃』スキーー」
「ッ!?」
自身のユニークスキルを説明しようとするシノンの両肩へと、いきなり両手を置いたカナタは目を驚愕でまん丸にするシノンへと問いかける。
「さっき『射撃』って言った?」
「えぇ、言ったけど…」
「大丈夫なの?シノ。そんな言葉を口にして…あの出来事を思い出しちゃうんじゃあ…」
「ふふふ、大丈夫よ、ヒナタ。心配しないで」
「心配しないでって…。手が少し震えてるよ?本当に、大丈夫?」
「震えてるのは…少し風が寒いからじゃないかしら?本当に大丈夫よ。あの出来事はこのお守りのおかげで思い出さないもの」
「?」
シノンが自身の首に巻かれた蒼いマフラーをヒラヒラと揺らすと、にっこりと笑う。一方のカナタはシノンのその仕草が意味指すことが分からず、首を傾げる。
「その《蒼》は、私の大切な人の瞳の色よ。私が辛い時や現実から逃げ出したいと思った時に、何処からともなく現れて…私を救い出してくれる、そんなヒーローみたいな人の優しい瞳の色」
「!?」
「やっと分かった?」
「…シノってば、照れ臭いことするね」
「だって、このアインクラッドでも現実でも…私を助けてくれる人はヒナタだけだもの。それは何があっても変わらない事実だわ。…私が抱えきれなくなったものを一緒に背負ってくれて、私の歩幅に合わせて、隣を歩きながら寄り添ってくれるーーそんな優しくてカッコいい人…この世界に来てからも、私はヒナタしか知らないわ」
「ーー」
「ヒナタ?」
「…チュッ」
「!?」
頬にいきなりキスするカナタにシノンは目を丸くする。そんなシノンを抱き寄せながら、カナタは耳元で囁く。
「急に愛おしくなるようなことを言われても反応出来ない。あたしもシノと同じ気持ちだよ…。シノは、あたしの過去を知っても、離れていかなかった。ママみたいに…突然、居なくなるようなこともしなかった…っ、泣きじゃくるあたしをギュッと抱きしめて、背中を撫でてくれた。こんなあたしを好きって言ってくれた」
「…」
「シノのおかげで、あたしの世界はあの夜から動き出したんだと思う。冷たく凍ったあたしの心をシノが溶かしてくれたんだよ…」
「…ヒナタも照れ臭いこと言ってるじゃない」
「シノから言い出したんだよ?」
「ふふふ、そうね」
ギュッと抱きしめてくるカナタの背中へと両手を回したシノンは、カナタの胸元へと顔をうずめる。すると、カナタから伝わってくる香りや体温が心地よく感じられた。
“ヒナタの香りって…なんで、こんなに落ち着くのかしら?”
自分よりも華奢な身体からは、その名に恥じないお日様の香りが漂っていた。
前に、本人に「何か香水を付けてるか?」と尋ねたことがあるが、不思議そうな顔をした時にカナタは首を横に振ると「いいや、何も」と簡単に答えた。あまりにも素っ気なく答えるものだから、少しばかりムカッとしたが…本人に悪気はないと怒りを抑えたものだ。
目を閉じて、スリスリとカナタの胸元へと甘えるように顔を摺り寄せるシノンのショートヘアーを優しく撫でながら、カナタはシノンへとある質問を投げかける。
「…ねぇ?シノ」
「なに?ヒナタ」
胸元へと顔を押し付けながら、そう答えるシノンの息が肌を撫でて、カナタはくすぐったそうにブルブルと身体を動かした後、その質問をシノンへと聞く。
「あたしのどこが好き?」
「……。はぁ!?なんで、そんなベタな事を聞くのよ。今更でしょ!?」
「いやぁ〜、なんとなく?今まで聞けなかったしさ〜」
「聞けなかったしさ…って、もうっ」
顔を上げて、カナタを睨むシノンに癖っ毛の多い栗色の髪を撫でて、曖昧に笑うカナタを見て、深くため息をついたシノンは短く答える。
「全て」
「へ?」
「だから、全て。
癖っ毛が酷い栗色の髪の毛や私を優しい眼差しで見つめてくれる蒼い瞳。力強いのに、何故かほっそりした腕や弱々しそうに見えて逞しい身体とか…全て、好きよ。ヒナタの全てを愛してる」
「あはは…あんがと」
照れたように、シノンから視線を逸らすカナタを一瞥するのは、耳まで真っ赤にしたシノンだった。
「ちょっと、私だけ言わせて…自分は逃げる気?」
「あたしは言わなくても分かってるでしょう?」
「ーー」
「ん。言う、言うよ!」
シノンの鋭い視線に耐えきれなくなかったカナタが、シノンへと向き直ると真剣な眼差しで言う。
「あたしもシノの全てが好きだよ。
焦げ茶の短い髪ももちろん好きだし、素朴だけど綺麗な顔立ちも好き。凛々しいけど、幼さが残った声も…クールなところが多いけど、あたしのことを一番に考えてくれるそんなシノをあたしは愛してるし、これからもずっと大好きだよ」
カナタの告白を聞いたシノンは、真っ赤な顔を更に赤く染めながら…ベンチから立ち上がると、宿屋へと向かおうとする。そんなシノンの右手を利き手で自分の方へと引っ張った。そうすると、バランスの崩したシノンがカナタへと倒れてくるのは必然でーー
「きゃっ」
「ーー」
ーー倒れてくるシノンを上手に抱きとめたカナタは、びっくりしてるシノンの唇へと自分のを押し当てる。目を丸くして、無意識に離れるようとするシノンを強く抱きしめて、動きを封じたカナタは目を閉じるとシノンの唇を貪る。
数分後、唇を外した後に待っていたのは…シノンの鋭い視線だった。カナタは硬い表情になりながらも、にっこりとおどけたように笑う。
「ーー」
「キスしていいって、シノが言ってくれたから」
「…だからって、こんな人目に付くところでする必要なかったんじゃない?」
「…だって、したかったんだもん…。ダメだった?」
「うっ」
捨てられた子犬のような目で見てくるカナタにシノンは何も言えなくなり、押し黙ると…深くため息をつく。
「……二人きりの時と誰も周りにいない時なら、いつでもしていいから…。私も…嬉しかったから…」
「ん!シノ、大好きっ」
弾けたような笑顔を浮かべて抱きついてくるカナタに、シノンはやれやれといった感じに肩を竦めると、何処か嬉しそうに微笑んだのだった……
ー完ー
ということで、久しぶりとなるヒナタ&シノのラブラブトークでした〜(o^^o)
やっぱり、この二人はお似合いの二人ですね!書いてると、改めてそう思ってしまいます(^◇^)
固い絆で結ばれた二人はこの先何があっても大丈夫でしょう!もちろん、ヒナタハーレムの入会者が増えても!正妻の位置はシノンさんで揺るがないんですからっ!(^ω^)
しかし、改めてですが…ヒナタはシノが好きで好きでたまらないですね(笑)ここまで、大好きすぎると…ヒナタハーレムに入会者してくれてる皆さんへと気持ちが向かないのでは?と不安になるほどです…(汗)
誰か、このヒナタの価値観を変えてくれる人は現れるのでしょうか?現れてくれたらいいですね…そしたら、改めて ヒナタハーレムが本当の意味で起動するような気がします。
そして、この二人の話となるとーーしょっちゅう、キスシーンになるので…Rー15タグつけた方からいいかな?って真剣に考える作者でした(o^^o)
ではでは( ̄^ ̄)ゞ