今回は、王女様ゲームの第三回、第四回、第五回を書いております。果たして、王女様は誰なのでしょうか?そして、ヒナタへと下される命令は?
本編をどうぞ!
ヤケクソになりながら、割り箸をひいた陽菜荼だったが、その割り箸に書かれていたのは赤く塗られた先っちょではなく、先っちょに黒いマジックで2という数字であった。それを見て、陽菜荼の表情が目に見えて悪くなる。しかし、だからといって、この王様ゲーム元い王女様ゲームが終わるわけはなく、無情にも里香の「せーの」が部屋へと響き、陽菜荼は泣きそうになりながらもみんなへと自分の数字を見せる。そして、今回の王女様は、珪子であった。
珪子は陽菜荼の数字をジッと見ると、恥ずかしそうに頬を染めながら、陽菜荼へと命令する。
「えっと…2番さんがあた…王女様を膝の上に座らせてください。そして、出来れば…王女様の好きなところとかも…」
「珪子王女様。どうぞ、こちらへと」
右隣にいる珪子のしどろもどろの命令を聞きながら、陽菜荼は一歩後ろに下がり、足を組むと、ポンポンと珪子を自分の膝の上へと招く。
最初と二番目の経験から抵抗しても無駄と悟った陽菜荼は、王女様の命令を素早く実行して、次の王女様ゲームへと進めることに重点を置いていた。それ以外のものは、もう最初の頃に捨てた。
ので、珪子が遠慮がちに自分の上へと座ると、そんな珪子の頭をごく自然に撫でる。その際に、珪子がもぞもぞとくすぐったそうに動くので、陽菜荼もくすぐったくなってしまう。
「その…失礼します…」
「珪子王女様、そんなにもぞもぞ動かれるとこしょごったいんですが…」
「あっ、ごめんなさい…」
上目遣いで陽菜荼の方を向きながら謝る珪子の髪の毛を優しく梳いながら、陽菜荼は柔らかい声音で珪子の好きなところを述べる。突然始まった陽菜荼のセリフに珪子の戸惑いは目に見えて深くなる。
「謝らなくていいよ。珪子は小さくて可愛いよね、毎日癒されてます」
「へ?あの…」
「ドジっ子なところもあるけど、それは人一倍頑張ろうと思っている証拠だとあたしは思ってる。だけど、ピナとの連携は珪子だけのものだから…大切にして欲しい。ピナと珪子が一緒に戦ってるところを見てると癒されるからさ…ね?あとは、ん〜、そんなひたむきで頑張り屋さんな珪子はこれからあたしなんかよりもずっとずっと強くなるよ。そうなったら、二人っきりでどっかクエストとかいこうね」
「…ありがとうございます、そうなれるように頑張りますっ!」
「ん、その意気だよ」
自分の膝の上で小さく意気込む珪子をナデナデしながら、陽菜荼は柔らかく微笑む。そんな二人を遠くから見ていた他のメンバーは、陽菜荼をジト目で見る。
しかし、陽菜荼は珪子を撫でることに夢中な様子でみんなから向けられている不本意な視線に気づくことはなかった。そんななんとも言えない雰囲気が漂う中、里香が突然大きな声を上げる。
「はーい!ストップ〜!!三回目はここまでよ。はいはい、珪子はすぐに陽菜荼の上からおりなさい」
陽菜荼の上に座っている珪子を指差しながら言う里香に従い、陽菜荼の上から降りようとする珪子を何を思ってか、後ろから突然抱きしめた陽菜荼はびっくりしてこっちを見てくる珪子へと問いかける。そのセリフに、珪子は瞬時に頬を赤く染める。
「えー、別にこのままでもいいよ〜。ねぇ?珪子」
「え?あの…陽菜荼さーーあっ、迂愚さんがいいって言うなら」
「珪子も琴音と一緒で言い直すんだね…地味にショック」
「……あたしはあんたを思っていってるのよ。あんたには、詩乃のどす黒いオーラが見えないっていうのかしら?」
里香は自分の右隣に座る焦げ茶色のショートヘアと黒縁メガネが特徴的な少女・朝田詩乃から漂ってくるどす黒いオーラをひしひしと感じながら、冷や汗が背中を伝う中、珪子を今だに膝の上に乗っけて、楽しそうに頭をナデナデしてる陽菜荼へと憐れみの視線を送る。恐らく、右隣に座っている少女が王女様へとなった時はこの場所は地獄と化すだろう…。
“陽菜荼…どんまいだわ…”
里香は密かにそう思い、四回目となるくじをみんなへと配る。
そして、四回目の王女様となったのは虹架。案の定、指名されたのは、もちろん五番の陽菜荼であった。
しかし、その使命は今までと比べて優しいもので、一緒に歌を歌って欲しいというものであった。珪子を右隣へと下ろした陽菜荼は緊張した様子の虹架へと向き直ると、その虹架の右手を握る。続けて、視線で合図をすると息を吸い込み、二人同時に歌い始める。
「「♪〜赤い糸で結ばれた二人を照らして この恋が終わることなく続くように…」」
陽菜荼は虹架と共に歌いながら、思う。
“確かに、今までよりも優しい命令だけど…”
出だしを見ての通り、虹架がリクエストしたデュエット曲があまりにも鬼畜であった。
しかし、それくらいでへこたれる陽菜荼ではない。もう前の命令でこれ以上のことをさっきまでしでかしているんだ、もはや恐れるものなどない!
陽菜荼は吹っ切れたように、虹架の薄茶色の瞳をジッと見つめながら歌う。虹架は恥ずかしそうに目を逸らしていたが、陽菜荼はジッと虹架を見つめる。
「♪〜「君のことは俺が守るから」」
「♪〜「あなたのことは私が支えるから」」
最後に差し掛かり、ギュッと強く手を握り締めると、最後のフレーズを歌い終える。
「「♪〜いつまでも ずっと 永遠に寄り添っていこう」」
歌い終わり、拍手と共に送られる胸を抉る視線に陽菜荼はトボトボと自分の席へと座ると、五回目となるくじを引く。そして、五回目の王女様は直葉で、言わずとも指名されたのは1番の陽菜荼であった。
「一番さんが王女様を後ろから抱きしめて欲しい…かなって、その…」
「これでいいかな?直葉」
命令を口にしてしまって、羞恥心が襲ってきてしまったようで、尻窄みしていく直葉のセリフを遮るように陽菜荼は直葉の後ろへと回るとギュッと抱きしめる。突然のことで、ビクッと身体を動かした直葉だったが、すぐに陽菜荼へと体を預ける。
そんな二人を見て、里香は呆れ顔を作りつつ言う。
「だんだん躊躇も何も無くなってきたわね、あんた」
「みんながあたしをいじめるからね!」
里香のそのセリフに頬を膨らました陽菜荼はそう叫ぶと、陽菜荼は五回目の命令を全うしようと直葉をギュッと抱きしめるが、その際にむにゅ、と左腕に触れるものがあり、陽菜荼はそれを確認するために下を向く。そして、その些細な振動でも揺れる年不相応に実った双丘。プルンプルンと揺れるそれを思わず、ガン見してしまう陽菜荼。
“にしても…大きいな…、いつ見ても…”
「あっ、あの…陽菜ーー迂愚さん、見つめられると恥ずかしいです…」
陽菜荼の視線に気づき、恥ずかしそうに身をよじる直葉。そんな直葉の言葉を夢うつつに聞きながら、陽菜荼はついにポロッとそれを言ってしまった。
「ごめんね、直葉。そんなにガン見するつもりはなかったんだ…、ただいつ見ても、直葉の胸って大きいな〜って思って…」
「〜〜っ!?」
陽菜荼の発言に、顔をゆでダコのように真っ赤に染める直葉。上目遣いで睨んでくるその顔を見ながら、陽菜荼はやっと自分の過ちに気づいた。だが、時は既に遅し。陽菜荼へと周りにいるメンバーが批判の視線を向けてくる。その視線に居たたまれなくなる陽菜荼は罵詈雑言を投げかけてくるみんなへと泣きそうな顔を浮かべる。
「わー。迂愚、さいてー」
「あたしも里香さんの言う通りだと思います!最低ですよ、迂愚さん」
「迂愚、最低よ、最低」
「迂愚様、最低です!女性をそんな目で見るなんて」
「迂愚くんがそんな人だとは思わなかった。最低だよ!」
「やめてよ、みんなでこんな時だけ一致団結して、批判してくるの!?」
「最低よ、陽菜荼。人として底辺だわ」
「詩乃はなんでこんな時だけ名指しで切りかかってくるのさ!」
「…うん、流石にさっきのは最低かな、迂愚ちゃん」
「今まで中立を保っていたアッスーまで、あたしを批判だと!?」
ガクッと崩れ落ちる陽菜荼から直葉を助けるように立ち回る他のメンバーに胸をグサグサと短剣で傷つけられ、陽菜荼は一人部屋の隅へと追いやられる。そして、里香は陽菜荼へと批判の視線を向けながら、くじを片付ける。
「この王女様ゲームはここでおしまいよ。どっかの変態な迂愚がよからぬことを企んでるかもしれないから」
「そうね、しまってしまいましょう」
「まだ、時間があるし…。もう少し、遊べるね。何する?」
「何かあるかしら?」
「………」
里香や他のメンバーの会話を聞きながら、陽菜荼は膝を抱えて思う。
“理不尽だ”と……
虹架とヒナタが歌ったデュエット曲は『赤い糸 feat.ハジ→』という曲です。
いい歌詞ですよね…、陽菜荼には鬼畜なリクエストですが…(汗)
そして、突然の終わりを迎えた王女様ゲームですがーーまぁ、理不尽ですよね、全くもって…(苦笑)
しかも、同性なのに、みんなからあんなに批判されるとは…もう、みんなの中ではヒナタは女性ではなく男性なのやもしれませんね(笑)
では、次回は新しいゲームの回となります。ヒナタは参加するかどうかはわかりませんね、みんなのご機嫌次第です(笑)
暑い日が続きますので、読者の皆様 お身体にお気をつけて。ではでは〜( ´ ▽ ` )ノ