sunny place 〜彼女の隣が私の居場所〜   作:律乃

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あけておめでとうございますm(_ _)m

今年も【sunny place〜彼女の隣が私の居場所〜】と【R-18版】をよろしくお願いします!

と言いつつ…R-18版の方はまだ書いていませんので、もう暫くお待ちください…

では、本編をどうぞ!

*読みにくい上に長めですので…ご注意を。


015 A man of high caliber

トンキーとキーボウの背中部分の後ろ方面へと、突然現れたひとつの人影は女性であった。

それもどえらい美人ときて、あたしはあんぐりと口を開く。

そのどえらい美人さんの服装はローブふうで、背中から足許まで流れる波立つ金髪は鮮やかな光を放ち、優雅かつ超然とした美貌を放つ顔立ちとローブの上からでも分かる見事な曲線美を描く女体に色んな意味で目を奪われていると、あたしの頬をむぎゅ〜と捻るしなやかな両手があった。

手袋と呼ぶには頼りない深緑色のリボンで作られたそれがチラッと見えた事から、どうやらあたしは山猫系猫妖精族(ケットシー)殿にこのような仕打ちを受けているようだった。何故このような仕打ちを受けねばならないのか?些か、不満だ。

 

「ひゃい!ひゃいれす、ひのんしゃん」

 

いつになく本気で頬を引っ張るケットシー殿にやめるように…目頭に涙を溜めて訴えるが、ケットシー殿はにっこりと目だけが笑ってないという不思議な笑顔を浮かべると、あたしの目をじっと見つめてこう仰った。

 

「なぜ、私に頬を抓られるのか?ヒナタは胸に手を置いて、考えてご覧なさい」

「………。ひひえ、えんへん…わありまへん」

「へぇー、そうなの。残念だわ」

「ひゃい!ひゃい!ひゃいれすっ!!ひのんひゃんっ!!ひゃんま、ひゃんまれふはら!!!」

「いいえ、やめないわ。ヒナタが自分の罪に気付くまでは。

………………ヒナタばか。ヒナタが鼻の下を伸ばすからでしょ。ここにもっと素敵な女性(ひと)がいるっていうのに」

 

あたしは何処で何を間違えてしまったのか…?

我がパーティで弓使い(スナイパー)を務めるケットシー殿に前よりも強く頬を引っ張られ、あたしは悲鳴をあげる。

 

そんなあたしとシノンのはたから見れば、カップルのイチャつきへと視線を向けて…名乗って、無口になる《湖の女王》ウルズへと申し訳なそうに頭を下げるのが…腰で伸びた紫が掛かった黒髪に赤いカチューシャを付けている闇妖精族(インプ)ことユウキであった。

 

「……」

「…あの、先に話を進めてください。あの二人には、僕たちが責任持って、話をするから」

ユウキのセリフで事情を話し始めたウルズの話をあたしは頬を万力で引っ張られながら聞いていた…

 

 

 

γ

 

 

「ふん!ハァーーッ!!!」

 

音楽妖精族(プーカ)の小柄な体躯を活かし、自分の数百倍ある人型邪神モンスターの懐を駆け回ると振り下ろされるゴツゴツした剣を寸前で交わして、その振り下ろしてきた腕へとカウンターを決める。

 

「カナタ様っ!」

 

そこへと走り寄ってくる影がある。

薄暗いダンジョン内でも柔らかな光を放つ銀髪を揺らして走り寄るシルフの右手に持つ片手直剣が鮮やか光を放ち、腕へと片手直剣スキル【ホリゾンタル・スクエア】を見事に決める。

どうやら、あたしの愛弟子が駆けつけてくれたらしい。

 

片手直剣スキル【ホリゾンタル・スクエア】

ターゲットの周囲を巻き込みながら、正方形を描くように移動しては斬りつけると…最後に、範囲の広い攻撃を行う技であり、武器熟練度200で習得出来るそれはあたしの目から見ても使いやすいものであろう…と思えるものであった。なおかつ、HIT数が5というのが憎らしい。

 

あたしが使う刀スキルも使いやすいものはあるが…プーカ特有の歌と使用するときはアレンジを聴かせているため、我が恋人殿や仲間達にはカナタの太刀筋はデタラメすぎて、逆に扱いづらいとのご指摘を何度か承っており、故にあたしのOSSことオリジナルソードスキルは人気がない。

 

“刀スキルをMAXまでしたら…今度は、片手直剣を極めるのもまた一興かも”

 

迫ってくる剣を体を屈めて避け、チラッと愛弟子へとアイコンタクトを取ると、コクリと頷いてくれる。

最後に攻撃した愛弟子をダーゲットにすることしたらしい人型邪神へと愛刀を光らせたあたしが迫る。

 

「ぼうぼうぅ!」

「あんたの相手はあたしだよ。sunny placeへとご来店頂き、ありがとうございます。お客様♪ご注文は緋扇で宜しかったですか?」

 

刀スキル【緋扇】

右上からの斬り落としからの横切り、終わりがくるっと回ってからの左上からの斬り落としとなっているこの技は、あたしがよく使用している技だ。

単純にカッコいいから使っているというのもあるが…個人的に刀スキルの中でこれが最も使いやすいと感じているのが、主な理由だったりする。

 

緋扇を決めたあたしの脇から素早くダーゲットに走り寄る愛弟子が力任せな一撃を前に突進しながら繰り出す技【ヴォーパル・ストライク】を放つのを見て、ソードスキル特有の硬直が溶けたあたしはすぐ様攻撃モーションへと入る。

 

「はっ!」

「続けて、メインディッシュの当店オリジナルソードスキル・鬼魅呀爲(きみがため)にございます」

 

OSS【鬼魅呀爲】

あたしが生み出したこの技はMPの消費が激しいのと使った後に無駄に疲れるのを除けば、一撃必殺といっても過言ではない威力を持つものである。

 

まず、戦いの歌なるもので自身と仲間を強化している際に…敵には虹色に光り輝く無数の光線が降り注ぐ。その光線の対処や回避に集中しているであれば、後ろにご注意を。やっと光線が済み、気を休めているところへと今度は背後からやたらめったらに切り裂いてくる斬撃が光線でズタボロになっているあなたへとまた、降りそそぐことだろう。

 

ということで、上を見てもらってわかる通り…MPが減るのは魔法を良く使うから、無駄に疲れるのあたしが考えなしに刀を振り回して…敵に攻撃をするからというわけだ。

これを初めて、仲間達に見せた時には口々に「そんなんありかよ」とか「チートじゃんか」などなど言われたものである。

 

まぁ、これもプーカという種族を選んだからこそ出来る力技なので……あたしのこのOSSは初代で終わることであろう。

 

あたしOSSによりHPは大きく削られた邪神がよろめくのを見て、あたしは片眉を上げる。

 

「おやおや、お客様。さっきのでお腹いっぱいになってしまわれましたか?」

「え…と、まだデザートが残ってます」

「そうですよ。折角、わたくし達が微力を尽くして作ったデザートです故、どうぞ召し上がってからお帰りくださいませ」

 

ニンヤリと笑うあたしとは対照的に、あたしの小芝居に付き合う事になってしまった愛弟子は頬を朱に染め、恥ずかしそうに右手に持つ片手直剣と左手に持つ短剣を構える。

 

「…ぼうぅ…」

 

男のくせに情けない声を上げる人型邪神(おきゃくさま)へとあたしと愛弟子は無動作に振り上げた愛刀と愛剣を鮮やかな光りを纏わせるとーーその鍛え上げれた身体へと斬撃を与えていった…。

 

「またのご来店をお待ちしております、お客様」

 

そう言い、後ろを振り返ると…そこには、ポリゴン片が舞っていた。

それをしばらく眺めていたあたしは前を向くと、こちらの世界ではあたしよりも身長が高めな愛弟子を上目遣いで見る。

そんなあたしへと柔らかな笑みを浮かべるのが、我が愛弟子ことルクスである。

 

「お疲れ様です、カナタ様」

「ルーもサポート、あんがとね」

「いいえ、これくらいお安い御用です。最も私がサポートには入らなくても、カナタ様なら大丈夫だと思いますが…」

 

自信無く、そう呟く愛弟子へと少し屈んでとジェスチャーした上で、その銀髪を小さい手で撫でる。

 

「いや、そんな事はないよ。ルクスは充分強くなってる。いつ、師匠のあたしを抜いてもおかしくないくらいだよ」

「いえ…まだまだです。さっきの戦闘だって、カナタ様に助けられてばっかりでした」

 

“そんな事は無いと思うけどな…?”

他者に優しく、自分に厳しい愛弟子の姿勢は師匠たるあたしも見習わなくてはならいと思うところが多々ある。

気持ちよさそうに垂れ目がちな瞳を細めるルクスへと微笑みながら、あたしはこれからもっともっと強くなるであろう愛弟子へと声をかける。

 

「じゃあ、その日が来るのを楽しみにしてるよ、愛弟子のルクスさん♪」

「はい!いつかはこの剣でカナタ様をお守りできるくらい強くなってみせます」

 

そう言って、可愛らしく右手を握りしめるルクスを見て、微笑ましくなったところで…あたしはさっき湖の女王・ウルズから聞いた話を思い出していた。

 

ウルズが言った言葉通りに示し、尚且つ簡単に記すとこうなる。

 

まず、《ヨツンヘイム》も昔はあたし達が住む妖精の国《アルヴヘイム》のように、世界樹イグドラシルの恩寵を受け、美しい水と緑に覆われていた事。

ウルズとその妹さんは《丘の巨人族》と呼ばれる者という事。

そして、その丘の巨人族とその眷属ーートンキーやキーボウ達。その仲間を示すーーは、このヨツンヘイムで穏やかに過ごしていたらしい。

だがしかし、ある時ここよりも更に下層に位置する氷の国《ニブルヘイム》を支配する霜の巨人族の王《スリュム》がオオカミに姿を変えて、ここへ忍び込み、鍛冶の神ヴェルンドが鍛え上げれた《全ての鉄と木を断つ剣》エクスキャリバーを、世界の中心たる《ウルズの泉》へと投げ入れ、その剣は忽ち、世界樹のもっとも大切な根を断ち切り、その瞬間からヨツンヘイムはイグドラシルの恩寵を受けられなくなってしまったとの事。

また、かつての力を失ったヨツンヘイムへと王スリュム配下の《霜の巨人族》が総勢力で攻め込み、多くの砦や城を築いてはウルズたち《丘の巨人族》を捕らえ、幽閉して、王スリュムは《ウルズの泉》があった大氷塊へと居城《スリュムヘイム》を築き、このヨツンヘイムを支配した事。

辛うじて、ウルズと妹さんたちは凍りついたとある泉の底へと逃げ延びたが、ヨツンヘイムを取り返すほどの力は無い事。

ウルズたちを追いやり、ヨツンヘイムを支配するだけでは飽き足らずにこの地で生き延びるウルズたちの眷属を皆殺しにすれば、ウルズの力は完全に消滅し、スリュムヘイムを上層のアルヴヘイムへと浮かび上がらせることができるからとの事。

そんな事をすれば、アルヴヘイムが滅んでしまうのだが…王スリュムの目的はまさにそれらしい。

あたしたちの国・アルヴヘイムをまた氷雪で閉ざして、世界樹イグドラシルの梢まで攻め上がる事で…そこに実る《黄金の林檎》をその手中に収まるとこが目的との事。

ウルズの眷属たちがなかなか滅びない事に苛立った王スリュムが見た目がエクスキャリバーとそっくりな《偽剣カリバーン》を報酬にあたし達妖精の力を借りて、眷属を狩り尽くそうとしている事。

 

これは要らない情報かもだが、王スリュムは狡さこそが最大の武器であり、その王は眷属を狩り尽くそうと焦るあまり…自身の城の強化をゆるめてしまっているとの事だった。

 

 

【加護の護り】を歌い、みんなのスタミナが減らないように配慮しながら…あたしはさっきから議論を行なっているキリト達の後につづき、眉をひそめる。

 

“《神々の黄昏(ラグナロク)》か”

 

「しっかし、そんな事ってあり得るのかしらね」

 

もちろん、ウルズやユイちゃんを疑うわけでもないが…いきなり、そんな壮大な事を聞かされても反応に困るだけだ。

あたしは『純粋に楽しければいい』とか『仲間を傷つけられたから、やり返す』など…実に単純明快な思考回路を持っている。

 

故に今は、キーボウの仲間達を大勢で囲み、狩っていくという方法に出た霧の巨人族と、この状況を生み出した王スリュムをぶん殴ってやらなくては気が済まない。

 

と意気込むあたしの呟きを耳にした主にトレジャーハントに精を出している影妖精族(スプリガン)ことフィリアが顔をしかめる。

 

「ちょっと、カナタ。なんて言葉遣いしてるの、あんたにそんな気持ち悪い言い方が似合うわけないでしょう」

「あのフィリアさん?ダイレクトに気持ち悪いは胸にくるのでやめていただけませんか!」

「あんたが急に変な喋り方するからでしょう!今でもこの辺が痒くなるわ」

「ちょっとそれは言い過ぎじゃない!?」

 

いつに増して辛辣なフィリアさんにツッコミを入れつつ、扉の向こうから現れた黒い牛さんと金色の牛さんを一瞥し、ニンヤリと笑った。





本当は、あの二匹までいきたかったのですが…やむ終えず、ここまでにおきます(笑)

また、色々と話をへし折ってしまい、すいません…。へし折ってしまった話はこの後の話で書きたいと思ってます!
……書かないかもですが…


次回こそは、あの黒さん金さんが現れますので…お楽しみです!

あっ…でも、カナタさんのチートであの二匹もすぐにポリゴンへと変わることでしょう(笑)


ではでは、読者の皆様が素敵な一年を過ごせます事を祈り…後書きを終えたあと思いますm(_ _)m



1/3〜【R-18版】を更新しました。
宜しければ、ご覧くださいm(_ _)m

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