sunny place 〜彼女の隣が私の居場所〜   作:律乃

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大変、お待たせ致しましたm(__)m

今回は黒ミノタウロスさんと金ミノタウロスさんとの戦闘となります。
この二匹もまさかの瞬殺となってしまうのか…?それとも、まさかのカナタ達が苦戦となってしまうのか…?

本編をどうぞ!


016 A man of high caliber

薄暗いダンジョンの中、あたし達パーティとキリト達パーティは分かれて、其々の相手となる敵なる牛頭人身(ミノタウロス)と対峙していた。

本来であれば、瞬時に決着がつくものだと思っていた…だがしかし、その予想は反してーー

 

「クッソ!あの金の奴、物理耐性高すぎ!あの黒も魔法耐性ありすぎだし…こんなんどうしろっての!」

 

ーー絶讚苦戦中かつあたしはというと終始イライラしっぱなしであった。

 

何故、イライラしてるのか…?

それは上に書いていた通り、ミノタウロスが二匹居るから。

何故、二匹いるとイライラするのか…?

それは簡単。上にあるあたしのセリフに書かれている通りで…全身を真っ黒に染めているミノタウロスが有り得んほどに魔法耐久が付いており、もう一方の全身を金色に染めている方が攻撃耐久が付いているからだ。

そして、昔このミノタウロス達に何があったのか知らないが…この二匹はあたし達程に固い絆でむすばれているらしく、二匹のうちのどっちがピンチーーHPが真っ赤になるとーー相棒が駆けつけ、その相棒があたし達の相手をしている最中にピンチになった奴が瞑想ポーズを行い、やっとのこさで減したHPがぐーんと緑へと戻ってしまう…

 

以上が、あたしがイライラし…瞬時に終わるであろう戦闘を苦戦させている理由であった。

 

「ガルルルルゥ!」

「っ…そんな雑な攻撃に当たるわけないだろ!きんきらりん」

 

音楽妖精族(プーカ)特有の小柄な身体を生かし、迫ってくる金ミノタウロスの攻撃をフィールドを駆け回り、交わしたあたしは唇を噛み締めていた。

 

“こんなんじゃ…あっという間にリミットが来てしまう”

 

さっき金ミノタウロスの攻撃を回避している最中に、キリト達の方から『メダリオンがもう六割以上黒くなっている』と聞こえてきた。

 

【メダリオン】

《湖の女王ウルズ》から与えられ、今はリーファが首から下げているそれには綺麗にカットされた巨大な宝石が嵌め込まれており、さっきの発言からそのカットされた部分は今は六割以上が漆黒の闇に沈んで、光を跳ね返さなくなっているのだろう。

ウルズ曰く、あの宝石が全て暗黒に染まる時は地上にいる動物型邪神ーートンキーやキーボウの仲間達、又はウルズ達《丘の巨人》の眷属ーーが1匹残らず狩り尽くされ、ウルズの力もまた完全に消滅してしまい、あの霧の巨人族の王・スリュムの思い通りになってしまうらしい。

 

そんな事してはならない!断じて!!

こんな小癪な手を使い、あたしの大切なあの二匹の仲間を傷付けた…王スリュムを許すわけにはいかない!

例え、カーディガンやらカーディナルとかいうあのSAOを管理していたスーパーシステム様が許しても、あたしが許さん!!

 

自分の欲の為に国一つを小癪な手で滅す王が支配するそんな間違った世界、このあたしがぶった切ってやる。

 

“あぁ〜ッ!色々考えてたら、更にムカついてきた!”

 

「ふん!」

 

愛刀を光らせ、ソードスキルを打ち込むあたしを援護するように金ミノタウロスの頭上へと無数の矢の雨が降り注ぎ、ソードスキル特有の硬直を味わっているあたしの横を短剣をかまえたフィリアが影妖精族(スプリガン)特有な真っ黒な髪を揺らし、素早くダッシュし、すれ違いざまに標的へと上にえぐるような攻撃を行う技【ラピッド・バイト】をミノタウロスの逞しい肉体へと叩き込む。

 

「カナタ、イライラしないで!今、キリト達が黒を押さえ込んでくれてるから」

「そうよ、あんたが私たちのパーティでの頼みの綱人だから!」

「シノンにフィー、言われなくても分かってる!隙見て、ソードスキルか魔法をぶち込もうと思うけど…どうにもならん!」

 

援護してくれているフィリアとシノンには悪いが、全く持って隙がない。あの黒ミノタウロスへと近づけまいとしようとするが…やたらめったに振り回してくるバトルアックスにより断念せずにおれない感じとなってしまう。

 

“こっちでも魔法を積極にあげてるのは居ないし…。あたしも上げてはいるが…どれも威力は弱いし…”

 

かといって、ヒーラーがいるわけでもない。

簡単な回復魔法はみんな使えるが…アスナみたいな強力なものは誰一人とした習得してないので、あっちのパーティに比べ、こっちのパーティはゴリ押しパーティなのかもしれない。

しかし、何故か支援魔法や妨害魔法の方は充実しており…今のレインが【プロテクション】【シャープネス】をかけてくれている。

 

【プロテクション】は自身と仲間の防御力を一時的に飛躍的に高くさせてるもので、【シャープネス】はそれの攻撃力バージョン。

 

だかしかし、それくらいであの牛達の耐性を壊せるものではなく…

 

“いかんな…どうも、突破口が見つからない…”

 

手詰まりに、思わず奥歯をガリと噛み締めてしまう。そんなあたしを暫し見ていたユウキが何かを思いついたように、あたしの右手首を引っ張ると後方へと向かう。

その際にレインにも声をかけていたが…一体何を思いついたのだろうか?

 

「カナタ!僕、いいこと考えちゃった…ちょっといい?レインも、こっちきて」

「ちょっ、ユキ…!?」

「ユウキちゃん?どうしたの?こんなところに私とカナタ君を呼んで」

 

ユウキによって、部屋の隅へと連れてこられたあたしとレインは当人へと視線を向けると…まさかのウインクで返されてしまった。

いや、ユウキさん…ウインクではなく、答えを早くおっしゃってください。あたくし達の時間は限り少ないのですのよ?

 

「さっき言ったでしょう?いい事思い付いたって」

「ん、言ってたね。で、そのいい事って?」

「ここにいる三人には共通点があるでしょう?ほら、カナタもさっき使っていたでしょう?」

 

ニコニコと邪気を感じられない笑顔を浮かべてそうおっしゃる闇妖精族(インプ)様を見て、あたしは冷や汗が背中を伝うのを感じた。

あたしとレインがそれを口にすると、うん!と元気よく頷くインプ様にあたしは空いた口が塞がらない。

 

「…まさか…」

「OSS?」

「そう、正解♪僕たちのOSSって、威力抜群だし…ゴリ押し出るんじゃないかってね。ほら、魔法とかまどろこしいものって、僕とカナタって嫌いじゃない?」

 

“確かにそうですが…ユウキさん、それは無謀というものでは?”

 

もしOSSを使うのであれば、ユウキとレインはまだいいとして…あたしがもう一つ隠し持っているOSSはキリト側にも被害を与えかねない。とにかく、大規模なのだ。そんなものを容易く行うわけにはいかない!

 

だかしかし、アレを使うことを危惧しているのはどうやらあたしだけらしく。

隣にいるレインはくすくすと口元を隠して笑った後、あたしへとウインクしてくる。

何故、二人揃ってウインクしてるんですかっ!なんですか、流行りなんですか!

 

「あはは、ユウキちゃんらしいね。それにもし、私たちで仕留められなくても…カナタ君がいるしね、やって見てもいいんじゃないかな」

「ん…?……いやいや!流石のあたしもトドメをさせるほどのOSSはもう無いよ、鬼魅呀爲(きみがため)以外!」

「そうなの、カナタ君?まだ、アレが残ってると私思うんだけど…。もう一つと鬼魅呀爲は使っちゃったけど…、アレはまだ使ってなかったと思うから」

「そうそう、アレアレ。アレがあれば…僕たちの勝ちだって」

「そういうあなた達があの技を封印させたんですよ!?」

「だから、今日その封印を解き放つ時が来たんだよ」

「絶剣様が仰っている意味がわかりません!」

 

必死にこの無謀な賭けに出ようとする戦友達を止めようとするあたしから先に離れたこの賭けを提案した本人は、イキイキした様子でキリト達へと走り出していった。

そんなユウキの様子に愕然とするあたしの方を叩いたレインはこれまた素敵な笑顔を浮かべて、あたしへとエールを送るのであった。

 

「さーて、カナタも了承してくれたし…。僕、みんなに話してくるね!」

「ちょっ…あたしはやるとは一言も」

「カナタ君、頼りにしてるよ」

「…レイまで…」

 

“くそ!やるしかないってか”

 

アレを行なった後にくる精神的ダメージは想像するに凄まじいものと思うが…鬼魅呀爲もあともう一つもMPが足りてない故にアレしか使えない。

あたしは深くため息をこぼし、愛刀を握りしめる。

 

“アレを作り出してしまった時から…もう後戻りはできないと分かってた”

 

「さぁ、もうひと暴れしましょうか?相棒」

 

こうして、《黒ミノタウロスさんと金ミノタウロスさんをOSS所用者による一斉攻撃で纏めて倒してしまおう!作戦》が始まったのであった。

 

まず、繰り出していったのはユウキとレインであった。ユウキは黒ミノタウロスさん、レインが金ミノタウロスさんを相手して…自慢のOSSを存分に相手へと放っていた。

 

「いっけ!マザーズ・ロザリオォオオ!!」

「サウザンド・レイン!」

 

OSS【マザーズ・ロザリオ】

ユウキが生み出したこの技は、全てが前に突き出すものであり…また、それ故に強力なものでもある。

まず、前に突き出された刃先を避けられなかったならば…あとは怒濤のダッシュが待っている。十文字を描くような10連撃の後に続くトドメの強烈な一撃は…安易に黒ミノタウロスさんのHPを持っていく。

 

“これなら…黒の方は大丈夫だな”

 

だかしかし、やはりというか…金ミノタウロスさんの方はなかなかに手こずっているらしい。

無数に降り注ぐ青い剣をその身に受け止めても、金ミノタウロスさんのHPはまだ三割を切ったところ。

 

OSS【サウザンド・レイン】

レインが生み出したこの技は、本来ならば鍛冶として使う魔法を戦闘に取り入れた離れ業らしい。

まず、空間の狭間に自分が鍛え上げた最高傑作を潜ませ、レインの合図により…その最高傑作は無数にに群がり、やがて雨となり…標的に降り注ぐといった具合だ。

 

黒ミノタウロスさんの方はもう残り僅か、金ミノタウロスさんは半分を何とか切ったところで…あたしへとバトンがパスされる。

 

「あとは任せたよ、カナタ」

「カナタ君、お願い」

 

戦場から離れていく二人を見送ったあたしはアレを解禁した。

 

「んじゃあ、いっくよー♡えいっ」

 

OSS【愛虜(らぶ)

自分のことながら…こんなものを作り出した奴はアホなんじゃないかと思う。恐らく、徹夜続きで自分だけのOSS作りに熱中してしまい…眠たさも限界と来た時にやってしまったのだろう、このおバカさんーーいわゆる、あたしが。

 

この頭がおかしいんじゃないかと思う名前をしたOSSの内容も至ってシンプルで…

マギアで自分と味方の魔法の効果を倍増させ、続けて自分の周りに虹色の魔法の球で出現させ…『えい!』とあたしが刀を振ったら、前にその七色の魔法の球達が手当たり次第に前に飛ばし、敵のHPを減らしていくといった具合だ。

 

そして、何故か知らないが…この技を発動したあたしは当初のやらかしてしまったあたしへと成り代わり、その痛々しい言動を周りへと振りまく。自分でもウザいと思う甘ったるい声音で魔法の球でHPを削られ、フニッシュとして…刀を振り回したあたしにより、HPを削られたミノタウロスさん達は悔しそうな声を漏らして…天井へと登っていった。

 

「もう、これに飽きたら…おいたはダメだよ、牛さん達っ」

『ガルルルぅ……』

 

“ァアアアアア!!!!”

 

OSSも発動終わり、あたしは床へとへたり込む。

そして、顔を羞恥心で真っ赤に染めると…コツンコツンと頭を氷で出来た床へと叩きつける。

 

「死にたい死にたい死にたい死にたい…、今すぐこの羞恥心から解き放たれたい。あっ…今からあそこにいるモンスターさんの前に出ていっていいですか?」

「ダメに決まってるでしょ、カナタ。ほら、まだあと三層残ってるのよ、しっかり!」

「流石です、カナタ様!素敵なOSSでした」

「…もうしない、アレは永久封印する」

 

想像通り、羞恥心で精神面をズタボロにされたあたしは…暫し、シノンとルクスに励まされ続けたのだった…




前の後書きに書いたとおりとはなりませんでしたが…今回の戦闘でも大活躍(いろんな意味)だったカナタですが…

次回はやらかします!今回以上(笑)

いえ、やらかしてるのは…いつものことなんですけどね(大笑)


また、次回の更新は木曜日となってます。
内容は、今の今まで整理してなかった主人公のプロフィールとアバター、ユニークスキル、OSSなどなど…上の方に更新します。

そして、このあとの話は来週の火曜日を目標としてます!

→木曜日に予定していたプロフィールなどは、来週の火曜日の更新と一緒に投稿します。遅れてすいません…

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