sunny place 〜彼女の隣が私の居場所〜   作:律乃

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さてさて、どの種族がこの初回ドッグファイト・バウトに勝利するのでしょうか?

どの種族が勝利するのか、想像しながらご覧ください。あと、所々読みにくいと思います。

では、少し長めですが…本編をどうぞ!!


027 ドッグファイト・バウト(完)

「お覚悟ーッ」

「フン!」

 

片手直剣を振り下ろしてくる褐色の肌を持つ土族妖精(ノーム)の男性プレイヤーの鋭い斬撃を体を横にスライドしてから、あたしは左手に持っていた愛刀を振り下ろす。

 

「ぎゃあ」

「あれぇ〜〜」

 

あたしへと次から次へと襲い掛かってくるプレイヤー達の斬撃をダンスステップを踏むように避けて、確実にカウンターを決めては、あたしの周りに倒れこんでいく他種族のプレイヤー達の脱け殻…HPが10%残っているので、脱け殻とは言えないけど。

そんなくだらないことを思いながら、切りかかって来たら避けて、斬りかかるを延々と続けていると後方でサポートに回ってくれているプーカ(うち)の姫様がボソッと独り言を呟く。

 

「これは何かの時代劇なのかしら」

 

確かにこれは何かの時代劇と言われても仕方ない戦いだと思う。

あたしに斬りかかる前に律儀に「我は○○領の○○也。プーカ領、カナタお覚悟也」と言うのが当たり前となっている様で、あたしの周りがちょっとしたカオスな空間となっている。

 

まるで捨て駒のように溢れかえっているプレイヤーの戦闘着は選んだ種族よって代わってくる…髪や服装が赤基調なのは火族妖精(サラマンダー)鍛冶族妖精(レプラコーン)。青基調なのは水族妖精(ウンディーネ)。緑基調なのは風族妖精(シルフ)といった具合に服装によって、わざわざ名乗らなくてもどこの領はわかる。

 

“しかし、まさか仮想世界で時代劇が出来るとは思えなかった”

 

つい、口元を笑みの形に変えてしまうのは、あたしがよっぽどの"和"人間ということだろう。

 

“でも、好きな料理はオムライスなんだよな…。こういうところをシノは矛盾してるっていうのかな?”

 

まぁ、そんな事はどうでもいいとして…もう、参加者の三分の二くらい斬り捨てたと思うのだけども…。

明らかにプーカの有利なのだろうけども、このまとわりつく様な…なんとも言えない違和感というか、得体のしれないものに徐々に首を締め上げれる様なこの妙な感覚はなんなのだろうか?

 

“そういえば、ここまで斬り捨てた中にみんな居なかったな”

 

念の為に周りを見てみるとやはりみんなはいない。しかし、地面に伏せてるのって、赤や青、緑に茶色とか色とりどりだな。

 

“…あれ?”

 

色とりどりだ、な…?

そういえば、なんでこんなにも色とりどりなんだ?

この種族サバイバルバトルはそもそも各種族が協力するなんてないはずだ。何かの重要な理由がない限り------あっ…

 

「チッ!そういうことッ!!くそったれッ!!!」

 

あたしはあることを思いつき、悪態を吐く様に舌打ちすると襲い掛かってくるプレイヤー達をうっとおしそうに蹴飛ばすとセブン姫様とみんなに向かって走り出す。

 

「…なんでそこでライダーキック…。和が好きじゃないのか…」

 

なんか、後ろでそんな呟きが聞こえてくるけど、今は知らんッ!そんな些細な事に時間を割いている暇すらも惜しいんだから。

 

「姫様ァァアアアアアアアアアアアアアアアア」

「なっ!?カナタ!?」

 

うちの姫様は薄桃色の瞳をまん丸にしていた。

まぁ、そりゃそうか。自分に向かって血相を変えた仲間が猪突猛進の勢いで突っ込んでくるのだから。

しかし、姫様。今だからあたしのこの行いを許してほしい、あとプーカの勇者のみんなほんとごめん!!あたしが突進して押し倒せるのって、せめて二人しかいないから!!って…押し倒すと考えてる時点で犯罪者臭がする…。

 

つくづくあたしって---と考えていると黒いオーラが出てきそうなので、一旦ここで考えるのをやめて、今は姫様をお守りするのだけに集中しよう。

 

“もし姫様が酷い目にあったならば、イコールでスメラギ氏が激怒し、その怒り発散にあたしが使用されるだろう”

 

それだけは是が非でも避けたい。

 

「姫様、すいません!」

「ッ!?」

 

セブンに突進し、その場を離れた瞬間、降り注いでくる剣の雨にあたしが砂漠の上に押し倒している様な形になっている姫様が目をまん丸にしてる。

 

降り注いでいく剣の雨は器用にプーカの勇者達のHPを10%まだ削ると止む。

さっきのOSSはサウザンド・レイン。

本当は鍛冶に使う魔法を戦闘に用いた離れ業で作られたそのOSSを使うのは技名にも入っている通り、鍛冶族妖精(レプラコーン)領に属しているレインである。

 

“見た感じ…レインは居ないか”

 

ひとまず、姫様だけは救えた事に安堵の溜息をついて、真下にある姫様へと声をかける。

 

「姫様、怪我はありませぬか…?」

「えぇ、無いわよ…ありがとう…。……あと、顔が近い

 

なんだが、うちの姫様が苦笑いを浮かべていらっしゃる上になんか顔がほんのり赤い?

ハッ!?

もしかして、毒っ気の含んだ刃にでも触れてしまったのだろうか?

 

「ひめ、さ…ま…っ、すみません…っ。あたしが付いていながら…」

「死んでないわよ。オーバーね」

 

あたしはその言葉に安堵していると、姫様がなんか言いにくそうにモジモジしている。

どうしたというのだろうか?

 

「そうですか…ならばいいのです。姫様はあたしから離れぬように」

 

本当に離れないで。離れて、セブンが他のプレイヤーに斬り裂かれでもしたら、あたしがスメラギ氏に斬り裂かれるから。

 

「えぇ、分かったわ。だから…その…」

「…その?」

「もう少し離れなさい!顔が近いわよ!」

 

あぁ、なるほどそういうことか。

 

「…姫様は照れ屋さんなのですね」

 

ニヤニヤしながらそうお茶目を最大限加えて言うあたしに何かカチーンときてしまったのか、見惚れるほどの笑顔でゾッとする事を言う姫様は本当に怖かった。

 

「そう、カナタはその身体に最上魔法の全ての属性を受けたいのね」

「いえ滅相も無いです」

 

凄まじいスピードで離れたあたしは呆れ顔の姫様に起こされ、残る他種族の中でも実力者となる仲間達との戦いに身を投じた。

 

 

τ

 

 

「…な、なんとか勝ったぁ…」

 

へたり込むあたしへと最後の戦闘相手であるキリトとフィリアが抱き起こしてもらう。

 

「あはは、お疲れ様だったな、カナタ」

「まさか、最後は自分の腕を盾にするとは思わなかったわ」

「まぁ…HPが10%切らなかったらいいわけだし、前後に挟まれてしまったならばどうにもならないからね」

 

疲れたようにそういうあたしのこれまでの簡単な軌跡を書くと、まず最初に突っ込んできたのが火族妖精(サラマンダー)のクラインと水族妖精(ウンディーネ)のスメラギであって、あたしは愛刀で二人を相手しているときに姫様が自慢の魔法で二人のHPを10%へと減らし、続けてきた風族妖精(シルフ)のリーファ、ルクス。鍛冶族妖精(レプラコーン)のリズベットの三人はあたしを相手するよりも姫様の方をまず討ち取った方がいいと考え、リズベットがあたしの斬撃を耐えて、ルクスが攻撃するというスタンスの裏でリーファが姫様に近づき、討ち取ろうとしたときに駆け込むのは決死な表情をしたあたしで、あたしの後ろにはHPが10%以下となり、『こら、カナタ!それは卑怯じゃないの!』『カナタ様がそんな人とは思いませんでした』と悲痛な叫び声を響かせる二人がいた。そして、びっくりした顔をしたリーファがまず後ろに飛んで距離を取ると読んで、そこに向けて一撃を浴びせて…もう、一太刀をリーファに向けて振り下ろす前にあたしの体を貫くのは矢で、あたしはそこから乱闘に巻き込まれることになる。

リーファに怒涛の太刀筋を避けながら逃げる中、猫族妖精(ケットシー)のシリカ、シノンの援護攻撃に混ざり、闇族妖精(インプ)のユウキがニコニコしながら、乱闘に混ざって来る。リーファの鋭い太刀筋を避け、追い打ちをかけて来るユウキの太刀筋を避け、シリカのピナとのコンビネーションで放ってくる攻撃を飛んだり横に転がって避けたり、シノンの絶妙なタイミングで放ってくる矢を鏡様倍返(カウンター)で返したりとフル回転でアバターの身体を使いきり、何とか砂場の砂を顔にかかって蹴り上げ、顔をしかめるリーファとユウキへと刀スキルを叩き込み、シリカとピナはこの砂漠でも動き回れるレア装備をゲットした様なので、後回しにして、今は確実に鏡様倍返を決めて、シノンを撃破するのに専念し、シノンの矢が飛んでこなくなってから、あたしは決死の覚悟でシリカに突っ込み、無事撃破。

そこから土族妖精(ノーム)のエギルとストレアの二人の重い一撃を交わしつつ、その一撃で舞い上がる砂埃に苦戦しつつも鏡様倍返と刀スキルを組み込みつつ、攻めて攻め切って撃破し、その後は鍛冶族妖精(レプラコーン)のレイン。影族妖精(スプリガン)のキリト、フィリアとの戦いが待っており、二刀流のキリトとレインを相手にするのは疲れた。フィリアも懐に入り込み、絶対避けられない様な太刀筋を放ってくるし、キリトとレインは見事なコンビネーションで二つの剣を振り回してくるし…あたしは何とか歌いながら、フィリアを撃破し、運悪く足場の悪いところに足を踏み入れてしまったレインの隙を確実につき、キリトとの戦いに持ち込む前に姫様が抜群のタイミングで魔法を放ってくれたというわけだ。

 

「ああぁ…喉が痛い、ヒリヒリする…。あんなに歌を歌ったのは、初めてかも…」

 

喉を抑えながら、そう言うあたし。

姫様がサポートしてくれたとはいえど、足場の悪い砂漠をあんなに走り回ったのだ。

 

「あんなに過剰にあたしを守らなくても、あたしなら大丈夫なのに」

「姫様は何にも分かってないッ!御身に何かあればあの過保護ウンディーネにあたしが始末されるのですよ!?」

「所々、時代劇を挟んでくるのやめてくれる?何が言いたいのか分からないわ」

 

まず、姫様が無事で良かったというわけか…はぁ…もう疲れたよ。今日は早く晩御飯を食べてから、寝たい…って、今日は---

 

「…はぁ…」

 

---そういえば、今日はあの人に会う日だったな。

 

「折角勝ったのに、何辛気臭い顔してるのよ、カナタ!」

「ダッ!?」

「リズちゃん、叩く力強すぎるよ」

 

バッシンと背中を叩きつけられ、振り返るとそこにはリズベットとレインが立って居た。

 

「まぁ、そうだね。折角有言実行出来たんだから、喜ぶべきだよね」

 

この後の憂鬱な事は今は忘れよう。

今更、あの人に会っても何とも思わないのだから。




ということで、不思議なところで終わった今回の話ですが…次回のGGO編は陽菜荼が憂鬱と思っている人との待ち合わせから始まります。

短めの話となるかもですが、よろしくお願いします(礼)

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