神威君に助けられ保健室に連れられベッドに寝かせてもらうと先程の鷹岡が言っていた事を神威君に聞いた。
すると神威君に背中を押され、それと同時に意識がなくなり目の前が暗闇になった。
あれから数分間 私はずっと暗闇の中を彷徨っていた。すると、徐々に目の前が明るくなり暗闇が薄れていった。
「(え……?なに…これ…?)」
突然 自分の目の前にある映像が映し出されていた。それは一つの部屋だった。何も無い一つの空間。その空間の中に一人の子供がいた。
身長からしてまだ幼い。何故こんな小さい子がこんな所に…?
そう思っていると突然 部屋の入り口が開かれ 一人の男の人が入ってきた。
その男は入ってくるやいなやその男の子をいきなり殴った。
私は目を瞑ろうとしたが瞑れなかった。
その男の人は何発も男の子を殴り 時には鳩尾に膝をいれ、また時には壁に顔を叩きつけていた。
その男が出て行くとまた男の子一人になった。
その男の子は涙を流していた。すると、先程まで聞こえなかった声が突然聞こえてくるようになった。
「痛い……痛いよう……」
その子の顔からは血が一滴ずつたれていた。私は駆け寄ろうとしたが全く前に進む事が出来なかった。
それでもその男の子の声は聞こえてくる。
「ごめんなさい……ごめんなさい……お姉ちゃん……」
その子は何度も「お姉ちゃん ごめんなさい」と言う言葉を繰り返していた。見ているたびに私の心が深く縛り付けられる感覚に襲われた。
その瞬間 目の前の景色が真っ暗になった。
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「___花ちゃん……桃花ちゃん!」
「ッ!」
名前を呼ばれ私は目を覚ました。目の前には親友である陽菜乃ちゃんと横には神崎さんがいた。
「よかった〜!!」
陽菜乃ちゃんに抱きつかれながらも何があったのか聞いた。
話によると鷹岡は渚君と勝負して負けた。そして今まで通り烏間先生が担任が受け持つ事となったらしい。
陽菜乃ちゃんは「よかったよ〜!」と大喜びしていた。私も嬉しい。
「矢田さん、さっきはごめんなさい…叩かれた場所 大丈夫?」
「うん。大丈夫だよ神崎さん。気にしなくていいから」
そう言うと神崎さんは笑顔で「ありがとう」と言ってくれた。
「でも…どうしてさっきは私を庇ってくれたの…?」
「あぁ……」
その問いに私は切羽詰まりながらも答えた。
「私には弟がいたんだ」
「弟…?」
「そう。名前は『桃矢』 私と年が変わらないけど私が先に産まれて弟は後から産まれたらしいの。桃矢は小学校の頃 イジメられててさ、泣いて帰って来た時がよくあったの。それで次の日私は桃矢がいじめっ子に殴られそうになった時に守るために前に出て代わりに殴られちゃったんだよ。まぁそのシーンが通りかかった先生に見られて次の日からその子 大人しくなったけどね。
神崎さんが叩かれそうになった時 昔の事を思い出して勝手に体が動いちゃったんだ」
「そうだったんだ…で…弟さんは…?」
その言葉に私と陽菜乃ちゃんは俯いてしまった。酷だけど私は話した。
「それが…私がE組行きになった2年の終わりの頃の朝に突然行方不明になっちゃったんだ…原因が何なのか分からない」
私は一筋の涙を流した。あの時の悲しみは凄まじかった。三日三晩泣き 眠れない夜が幾日も続いた。
「ごめんね。暗い話しちゃって…そうだ!神威君は!?」
私は話をそらせ、自分を気絶させた張本人である神威君の姿を探した。
「それが探してもいないの。帰っちゃったのかな…」
「そっか…まぁいっか明日また会えるしね!」
そう言い私はベッドから跳ね起きた。
「あ!そうだ桃花ちゃん!烏間先生が皆にスイーツ奢ってくれるらしいよ!」
「ほんと!?行こ行こ!」
「待ってよ〜!!」
私達は笑い合いながら皆の元へと戻っていった。桃矢、早く帰って来て。お姉ちゃんはいつでも待ってるから。