FAIRY TAIL ◼◼◼なる者…リュウマ   作:キャラメル太郎

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ラクサスどう突っ込めばいいのかすごい悩みました…。

まあちゃんと出しましたがね?



第三十刀  臆するな…妖精達よ

 

 

ギルダーツとブルーノートの戦いは一瞬で片が付いた。

 

ブルーノートは自分の拳がギルダーツに競り負けたことに驚きながらも好戦的に戦い、超重力の球を作り出してギルダーツを吸い込もうとするが、その魔法をギルダーツは破壊し、魔力を乗せた拳で殴り抜くことで倒した。

 

同時刻の違う場所では、グレイが七眷属の長であるウルティアと戦っていたが、接戦の末に倒しきることが出来た。

 

今はある程度回復したナツ、グレイ、エルザ、ルーシィ、ウェンディ、ハッピー、シャルル、リリーでマスターハデスを打倒しようと向かっていた。

 

「じっちゃんやったハデスはオレがぶっとばす!」

 

「勢いはいいがナツ、相手は悪魔の心臓(グリモアハート)のマスターだ。油断せずにいくぞ」

 

「そうだよナツぅ~オイラ達まだ回復したばっかりなんだから」

 

皆は走りながら舟へと向かって行くが、実は皆心の中では不安が少なからずあった。

 

いくらか回復したとはいえ、七眷属には全員が手こずっていたのだ。

その七眷属の更に上、トップにいるのがマスターハデス。

 

流石に強いというのが分かる。

 

だが、それでも皆はマスターハデスの所に向かう…。

 

喧嘩を売られたからには倍以上にして返すのが妖精の尻尾(フェアリーテイル)だからだ。

 

そして、森の中を進んで行くとグリモアハートの舟を発見した。

だが、みんなは足を止めた。

 

それは何故か?

 

舟の中から継続する爆発音が聞こえ、舟の中から膨大な魔力が感じられたからだ。

 

それぞれは理解した。

 

何処にも居ないと思っていたリュウマは一足先に来て、マスターハデスと戦っていたのだ。

 

ナツ達はハッピーとシャルルとリリーに舟の中にある動力源を破壊してくるように頼んだ。

それに三匹は了承し、先に飛んでいった。

 

ナツ達はグレイが作った氷の階段で舟へと登り中へ入って行く。

 

中へ進むほど爆発音は増し、肌で感じられる魔力も…桁違いに上がっていった。

 

みんなの肌がピリピリするほどの魔力…。

 

ここまでの魔力を出して戦っているリュウマは初めてで、魔力が感じられる扉を…開けた。

 

そこで見た光景は…

 

「おいおい…こりゃあぁ…」

 

「な、なんて戦いだ…」

 

「す、すごいです…リュウマさん…」

 

「これが本気のリュウマの戦い…」

 

「すっげーーーーー!!!???」

 

みんなが驚くのは当然だった。

 

リュウマとハデスは互いが離れれば魔法で攻撃し、近づけば近接格闘で戦う。

 

どれもこれもナツ達が入り込めない程の攻防だった。

 

 

「お前達!!しゃがめ!!!!!!」

 

 

「「「「「!!!!????」」」」」

 

 

 

 

 

 

だがそれも、直ぐに崩された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──ナツ達が来る数十分前

 

 

 

リュウマとプレヒトの戦いは他者が入り込む余地が無いほどに鮮烈を極めていた。

 

「ハッ!」

 

「フッ!」

 

リュウマとハデスは近距離で体中に魔力を張り巡らせながら殴り合いをしていた。

 

「どうした?プレヒトよ、その程度か?」

 

「ぐっ…舐めるでないわ!」

 

殴り合いといっても一方的なものであった。

リュウマがプレヒトを殴り飛ばしたと思えば何時の間にか背後に回り込んでおり、また殴り飛ばされる。

体勢を立て直し、前を向き直った瞬間にはもう目前にリュウマがおり、蹴りを入れられた。

 

「グハッ!?何という速さ…!」

 

プレヒトが殴りかかるも、リュウマは持ち前の超直感と長年の戦闘による未来予知にすら勝るレベルの先読みで全ての攻撃を回避し、カウンターを入れる。

 

「うぬは未来予知でも出来るのか!?」

 

「限りなくそれに近い事ならばな」

 

「くっ…!」

 

これでは一方的にダメージを受けるだけだと判断したプレヒトは後方へと下がり魔法による攻撃に移行した。

 

「私は魔法と踊る!」

 

子供が小さい時にやるように指を銃に見立てて指先から魔力の弾を多数発射する。

 

それに対してリュウマは手元に二丁の拳銃を召喚した。

 

「そんなもの、いくらでも撃ち壊してくれるわ」

 

プレヒトが発射した魔力の弾を寸分の狂いもなく銃で撃ち壊していくリュウマ。

10…20…と撃ち合っているにも関わらず彼は銃のリロードをしようとしなかった。

するそぶりすらも見せない。

 

召喚した銃はただの銃ではなく魔導銃であった。

 

この魔導銃に弾は一発も入ってなどいない。

 

では何故弾を現に撃ち出せるのか…?

 

籠められているのは全てリュウマの魔力…。

この魔導銃は使用者の魔力を媒介に魔導銃の中で弾を生成し撃ち出す仕組みになっている。

故に籠める魔力によっては高火力の魔弾を撃ち出すことも可能なのだ。

 

「クカカ…『チャージショット』」

 

「何!?ぐあっ!!」

 

左に持つ銃で迫り来る魔弾を弾き、右の銃に魔力をチャージして一気に放った。

魔弾にチャージショットが当たるが、魔弾を突き抜けてチャージショットはプレヒトの土手っ腹に直撃して爆発した。

 

プレヒトはチャージショットが腹に当たる瞬間に体を捻り当たり所をずらし、威力を殺していたのでダメージは少ないものの、爆発の余波を少し受けた。

 

プレヒトはリュウマが持つ魔導銃の危険性と厄介性を理解した。

 

片方で牽制し、もう片方で溜めた魔力を放つ。

百発百中の絶技を繰り出してくるだけあって実に効果的で、相手にするならばやりづらいことこの上なかった。

 

「出鱈目な技術をしおって!ハァッ!」

 

リュウマに向かって鎖状の魔法を飛ばす。

 

「あぁ、貴様はその魔法が得意だったな」

 

だが、それを余裕を持って避けていくリュウマ。

手に持った銃を消して新たに一本の刀を召喚した。

 

「召喚・『無限刃(むげんじん)』」

 

とある歴史に名を残すほどの刀匠が鍛えた最終型殺人奇剣にして、刀でありながら不殺を貫く逆刃刀・真打の兄弟刀と言うべき刀。

 

この刀の特徴は、刀の連続使用による刃毀れで切れ味が鈍っていく刀から発想を逆転させ、刃を鋸歯状にする事で殺傷力を常に一定に保っているというもの。

実質的な研ぎの動作を省略化しているのだ。

 

手に持った無限刃を使って飛んでくる鎖を素速い動きと一緒に斬り落としていく。

そしてその鎖を斬るインパクトの一瞬…

 

──ギャリン!

 

彼は力を少し込めると…無限刃から力強くも荒々しい黒き焔が舞い上がった。

 

無限刃の刃の先にある鋸歯を物と擦ることで刀を発火させ、相手に刀による斬撃と焔による追加ダメージを与えるというものだ。

 

しかもただの発火による焔では少し弱火だと思い、彼は焔に己の魔力を混ぜ合わせることで難点だった部分の火力を爆発的に上げているのだ。

 

その他にも焔を一瞬の目眩ましに使うことも出来る。

何にでも応用することのできる魔力は何かと便利であった。

 

「征くぞ…壱の秘剣・『焔霊(ほむらだま)』!」

 

「ぐあっ!あァァァァ!?」

 

飛んでくる鎖を斬り払い、避けながらプレヒトに近づき、近くに来たところで床に無限刃の刃を擦らせて黒い焔を発火させてから斜め下からの斬り上げで斬った。

だが、それでは終わらせずに斬り上げた無限刃を切り下ろして第二閃にて又も斬る。

 

プレヒトはあまりの熱量を持つ黒き焔と二度の斬り込みの痛みに苦渋の顔をしながら叫んだ。

 

「ぐうぅぅ!!??小癪なァァァ!!!!」

 

「そんな物は俺には届かんぞ」

 

斬られた事と焔の痛みから怒りの表情を作るプレヒトは、零距離から鎖を幾十も伸ばして拘束しようとするも、そのすべての鎖を超人的動きで回避され距離をとられた。

 

距離をとられても尚鎖を伸ばし、数を増やしていく。

伸ばしてくる鎖が増えたのでリュウマも斬り払いながらも、また違う物を召喚した。

 

「鎖は貴様だけの専売特許ではないぞ?神器召喚・『地獄鎖の篭手(じごくくさりのこて)』」

 

召喚したのは名前の通り篭手である。

黒い色をした片手用の篭手を右手に付けた。

 

そしてこの篭手から伸ばされる鎖はまさに地獄の鎖。

 

使用者が思った通りの変幻自在な動きにも全て応え、あまつさえその鎖は千切ることも斬る事も出来ない。

 

リュウマはそれを伸ばしてプレヒトをガチガチに拘束した。

 

最初はプレヒトも鎖をはたき落とそうとするも、己の鎖を生き物の如く避けていく。

逃げようとするが時既に遅く、体を拘束された。

 

「ぐっ…こんなもの…!くっ…ぬうぅぅぅぅ!!!!な、なんだこの鎖は!?千切れぬ!?」

 

「その鎖は地獄にいる咎人を拘束する絶対の鎖…千切ることも斬る事も不可能だ」

 

「だが魔法は使える…!抜かっングッ!?」

 

「俺がそれを許すとでも?」

 

プレヒトがしゃべり終える前に口元を、無限刃を持っていない左手で鷲掴んだ。

だが、その掴んでいる左手には何時の間にか真っ黒な手袋を付けていた。

 

この手袋を付けた状態で魔力を纏わせる。

すると、手袋が自動的に魔力を少しの衝撃で起爆する起爆性のある魔力に変換させる。

 

リュウマはプレヒトに向かって突きの構えをとるが、狙いはプレヒトではない。

勘の良い者ならば理解するであろうことを、プレヒトも理解し、焦る。

 

だが、動くことが出来ない。

 

「吹き飛ぶが良い…弐の秘剣・『紅蓮腕(ぐれんかいな)』!!」

 

──ギャリン!

 

「─────ッ!!!!!!!」

 

リュウマの流した魔力を起爆性のある魔力に変換させた()()()()()()()無限刃を突き、鋸歯の部分で擦り上げる。

 

手袋は外からの衝撃に、リュウマの魔力のブーストもあって大爆発を起こし、プレヒトを後方の壁まで吹き飛ばした。

 

そしてこの手袋は、使用者に爆発の威力がいかない特殊な魔法をかけてある。

一度使うと文字通り消し飛ぶので、1回限りの技なのだが、リュウマの武器庫には予備が山ほどあるので使用切れの心配はない。

 

リュウマは吹き飛んでいったプレヒトの元まで行き、冷たい眼と表情で見下ろしながら言い放つ。

 

「さっさと立て。この程度では終わらせんぞ」

 

「…ガフッゲホッ……やはり強いな…だが…あの者共はどうだ…?」

 

「何?──まさか!?」

 

プレヒトが目を向ける先には此方を覗き見ていたナツ達だった。

リュウマはプレヒトが言った言葉を瞬時に理解してナツ達の元へ駆け出す。

 

「お前達!!しゃがめ!!!!!!」

 

「えっリュウマ!?」

 

「なっなんだ!?」

 

「うおぉぉ!?」

 

「えっえっ?」

 

「なっまさか!?」

 

 

「うぬの鎖に拘束されている時に仕掛けさせてもらった…。さぁ、いかようにするリュウマよ!『天照(アマテラス)100式魔法陣』!…それも三重重ねだ…!フフフ…フハハハハハハハ!!!!」

 

 

マスターマカロフが最大防御をしたにも関わらず、一度でほぼ戦闘不能に追いやった魔法陣が三つも重ねがけされている。

その威力たるや…想像も絶する…。

 

──間に合え…っ…!!

 

リュウマは叫んだとおりに固まってしゃがみ込んでいるナツ達の所に駆け出す。

 

 

 

──ドゴォォォォォォォォォォン!!!!!!

 

 

 

全員を巻き込み、舟を大きく揺らす程の巨大な大爆発がみんなを呑み込んだ。

 

 

 

 

「ゲホッゲホッ!どうなったんだ?」

 

「分かんねえ…こっちにリュウマが来たと思ったら…」

 

「すごい衝撃だったが…衝撃だけで爆発の威力は来なかったな…」

 

「なんなのよもぉ~…!」

 

「うぅ…ぁ…リュウマ…さん…!!」

 

「「「「!!!!????」」」」

 

それぞれが困惑しながらも立ち上がる。

 

その中で立っていた所が、比較的扉の所と近かったウェンディは顔を上げて目の前にいる人物に気がつき震えた声で言った。

それに気づいた他のメンバーもそれに驚きその場所に目を向けた。

 

そこには…

 

 

「……………………。」

 

 

爆発からナツ達を守るように前に立ちはだかり…両腕をクロスさせた状態で静止しているリュウマがいた。

 

体は至る所が傷だらけで血が流れている。

誰の目から見ても重症であった。

 

「…………っ…ゴプッ…無事な…よう…だな…?よもや…一日に…二度も同じことを…することに…なる…と……は…─────」

 

静に後ろを振り向いてナツ達に声をかけるが、とうとう前に倒れ込んだ。

 

「「「「「リュウマ/さん!!」」」」」

 

ナツ達はまさか自分達を庇ってやられてしまうとは思わず駆け寄り口々に謝っていくが、リュウマは意識を手放していた。

ノーガードで強力な魔法を三重で全部受けたので仕方なかった。

その証拠に、リュウマの後ろはほとんど無事だが、リュウマが居なかった所の後ろは抉り飛んでいた。

 

「フハハハハハハ!!やはり庇りおったか!!うぬ等には感謝しよう…危うくやられるところであったが、うぬ等がいたおかげでこうして──」

 

「黙れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

──ドガッ!!!!!!!!

 

「ぬあぁっ!」

 

ナツはプレヒトに向かって一気に飛び掛かり殴り飛ばした。

 

「じっちゃんやっただけじゃなく、リュウマまでやりやがって!!オレが灰にしてやる!!!!」

 

「てめぇはぜってぇ許さねぇ!!」

 

「リュウマをやりおって…剣の錆にしてやる!!」

 

「あなたのことは許しません!!」

 

「あんたなんかすぐにやっつけてやるんだから!!」

 

ナツ達はリュウマをやられたことから怒り、各々が魔法で攻撃していく。

 

──カチカチカチカチカチ…

 

故に気がつかなかった…。

 

「………………。」

 

服に隠れて見えなかったが、下の肌には幾十もの複雑な線が走り…自己修復魔法陣が刻まれ…リュウマの体を超高速再生させていることに。

 

リュウマはガードする上で魔力で覆うことを捨て、自己修復魔法陣を予め発動させていた。

このままいけば、僅か数分で全快する。

 

それを知らないナツ達はプレヒトに立ち向かっていくが、いくらリュウマとの戦闘でダメージが入っていたとしても、相手は悪魔の心臓(グリモアハート)マスターであると同時に、かつて…妖精の尻尾(フェアリーテイル)2代目マスターであり、妖精の尻尾(フェアリーテイル)創設メンバーの1人であるので、攻撃が入ってもダメージは全く入れられなかった。

 

流石最強チームなだけあって連携は素晴らしく、プレヒトの攻撃が誰かに当たったら他がサポートして助け、他のメンバーが攻撃する。

 

ウェンディが使う付加(エンチャント)でみんなの攻撃力やスピードなども上がっているが…

 

「ちょこまかと…フンッ!」

 

「「「うああああああああ!!!!」」」

 

やはりプレヒトにはまだ敵わなかった。

 

──クソッ…こいつ強えぇ…!

 

──全く本気出してない…!?

 

──なんという強さだ…リュウマはコイツを1人で…

 

──あたし達じゃやっぱり…

 

──うぅ…つ、強いです…

 

心の中ではみんなが悔しがっていた。

自分達が邪魔をしなければリュウマは絶対に勝っていた。

そして自分達がいざ戦ってみるとこの通り、やられてしまう。

力が無い自分達が悔しかった。

 

「なかなか持った方だが…うぬ等は消えよ…!」

 

とどめをさされそうになった瞬間…舟に雷が落ちてきた。

 

「よぉ…お前ら。随分こっぴどくやられてるみたいだな」

 

「「「ラクサス!!!!」」」

 

直感で感じ取った友のピンチに現れたのはラクサスだった。

 

「てめぇがじじぃをやりやがったのか…」

 

「うぬは…まさかマカロフの…小僧──」

 

──ドカァ!!!!!

 

ラクサスは破門の原因になったバトルオブフェアリーテイルの時とは見違える程の力でプレヒトを圧倒していった。

 

「『雷竜の咆哮』ォォォォォォォ!!」

 

「ぐおおおおお!!??」

 

だが、それでも最初だけだった…やはりプレヒトは強く、時間が経つに連れてラクサスが押され始め…ラクサスが強力な魔法によってやられてしまった。

 

「うぬはもう消えよ!!」

 

「ぐっ…ガアアァァァ!!」

 

だが…

 

「…ッ!オレの奢りだ…受け取れナツ…!」

 

やられる瞬間にナツに対して自分の魔力をすべて明け渡した。

 

ナツはその雷を吸収し、自身を新たなステージ…『雷炎竜(らいえんりゅう)』へと至った。

 

その力は凄まじく…高火力の炎の打撃に続き、強力な雷による追加ダメージを与えていく。

プレヒトは反撃を許されず、ナツの新たなモードによってダメージを与えられていく。

そしてナツは最後に魔力をすべて籠めて最大の攻撃を放った。

 

「消えろォォォ!!『雷炎竜の咆哮』ォォォォォォォォォ!!」

 

「グアァァァァァァァァァァァ!!!!」

 

その一撃は舟を突き抜け…海の更に向こうまで飛んでいく程の威力だった。

 

みんなはプレヒトを倒した!と喜びを噛み締める…。

 

「マカロフめ、まったく恐ろしい小僧どもを育ておるわ」

 

だが、プレヒトはまだ倒し切れていなかった。

 

「『悪魔の眼』開眼…!うぬ等には見せてやろう…魔道の深淵…ここからはうぬ等の想像を超える領域だ」

 

プレヒトが悪魔の眼を開眼した途端、元々途轍もなかった魔力が更に跳ね上がる。

まるで留まることを知らないとでも言うような魔力に、ナツ達は恐怖し体を震わせる…。

 

「魔の道を進むということは、深き闇の底へと沈んでゆくということだ…そしてその先に見つけたるや“一なる魔法”…あと少し…あと少しで辿り着く…!故に私が一なる魔法を手に入れてみせる」

 

──一なる魔法…やっぱりどこかで聞いたことが…!ママ!?

 

ルーシィは一なる魔法というものについて少しずつ思い出してきた。

 

「だが、うぬ等はここで終わりだ…」

 

プレヒトはどこか不吉なものを感じる構えをとった…。

 

「ゼレフ書…第四章十二節より…裏魔法・『天罰(ネメシス)』」

 

そう唱え終わるや否や…戦闘で破壊され飛び散っていた土塊から、一体一体が途轍もない魔力を持つ化け物が生み出された。

しかもそれが凡そ数百体…。

 

「深淵なる魔力を持ってすれば…ただの土塊から悪魔をも創造することが出来る。悪魔の踊り子にして天の裁判官…これぞ裏魔法だ」 

 

あまりの事態に全員が体を震わせている。

 

──一体一体がなんと絶望的な魔力の塊…あ、ありえん…!

 

──怖い…!!怖い!!怖い!!

 

──瓦礫から化け物を創ったのか…!

 

──か、体が…動かねぇ…!!

 

──怖くて…もう…ダメ…誰か…あたし達に勇気を…助けて…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     「何を恐れる必要がある」

 

 

 

 

    「「「!!!!????」」」

 

 

 

突如後ろから聞こえた声に全員が驚愕した。

本来は立ち上がる事すら出来ないと思われたリュウマが立ち上がって、自分達を見据えていたのだから。

 

「確かに一体一体は高い魔力を持っている…だが、()()()()()。あの塵共に意思などない、ただの動く土塊に過ぎない。さぁ…立ち上がれお前達、決着をつけてやれ」

 

 

──それにプレヒトよ…貴様には一なる魔法は手に入らない…無論…俺にもな…。

 

 

リュウマの言葉で足の…体の震えは止まった。

何故ならば…こんなにも頼もしい男がいるのだから!

 

「だが今のお前達には辛かろう。故に少し力をくれてやる」

 

そしてリュウマはナツ達に向かって手を向けた。

 

「五分間だけお前達に俺の力を貸してやる…『同調する我が力(リンク・フルバースト)』」

 

リュウマの手から放たれた黒い力の塊は()()()胸元まで飛んでいき、吸い込まれていった。

 

──ドクンッ!!!!

 

「「「「「────ッ!!!!!」」」」」

 

これは五分間という限られた時間だけ、使用者の力を対象者にリンクさせる魔法。

つまりこの瞬間…リュウマは7人になったも同じということだ。

 

──なんだこの魔力…!!??

 

──力が…止めどなく溢れて来やがる!!

 

──これがリュウマの目線…!

 

──すごい力!!

 

──なんて魔力なの…!!

 

「征け!お前達の全魔力は俺から全て供給される!好きなだけ使え!『封印…第一門・解』!!」

 

そして更に自分に施した封印を一つ解き放ち…ただでさえ膨大だった魔力が凡そ()()()()()膨れ上がり、全員の体から純黒の魔力が溢れ出した。

ナツ、グレイ、エルザ、ルーシィ、ウェンディは確信した…勝てる!と。

 

「そんなもので思い上がるなガキ共ー!!!!踊れ!土塊の悪魔よ!!」

 

背後に待機していた悪魔達が一斉に彼等に向かっていくが、そんなもので彼等の前進は止まらない。

それぞれが悪魔を一瞬で蹴散らしていく。

それには流石のプレヒトも目を見開いて驚愕した。

 

──なんだ…なんだあの力は…!!

 

今のナツ達の力は封印を解いたリュウマと同等、いや、そのもの…!

たかが土塊から創られただけの悪魔が彼等に歯が立つわけがなかった。

 

──俺も準備しておくか。

 

リュウマは空に手を向けてある剣を呼び出した。

 

「神器召喚・『金属器』」

 

剣からは途轍もない魔力が感じられるが、これは全快ではない。

 

「久方ぶりにやるな…魔装バアル!!」

 

リュウマの体に水色の鎧が装着され、腕は水色の竜の鱗のようになり、腰には尻尾のようなものが生える。

その姿はまさに半竜半人といったものであった…。

 

そしてそのまま静かに魔力をその剣に溜め始めた。

 

一方ナツ達は悪魔を全滅させて、プレヒトに攻撃を加えていく。

 

 

「うおおお!!『氷刃七連舞(ひょうじんななれんぶ)』!!!!」

 

「ぐうっ!!!」

 

 

「換装!『天一神の鎧(なかがみのよろい)』!征くぞ!『天一神(なかがみ)星彩(せいさい)』!!!!」

 

「ぐっくああ!!」

 

 

「えぇい!『アームズ』!『天竜の翼撃』!!」

 

「ぬあああ!!」

 

 

「これならいける!五体同時開門!!お願い!『タウロス』!『キャンサー』!『アリエス』!『ジェミニ』!『スコーピオン』!」

 

「この数の星霊を!?ぐあぁぁぁぁ!!!」

 

 

「うおおおお!!滅竜奥義・『紅蓮爆雷刃(ぐれんばくらいじん)』!!!!」

 

「カアアァァァァァァァ!!??」

 

 

「全く人使いが荒いぜ…食らえ!滅竜奥義・『鳴御雷(ナルミカヅチ)』!!」

 

「なっ貴様等は!?グアァァァ!!??」

 

 

それぞれが攻撃し、吹き飛ばされるプレヒトは反撃をしようとするが、力が抜けたことに困惑した。

 

──なんだ!?私の魔力が…まさか…!私の心臓を…!

 

舟にある動力源である“悪魔の心臓”…これはプレヒトが作ったプレヒトの心臓そのもの。

ナツ達よりも先に行ったハッピー達が見つけて破壊したのだった。

故にいきなり力が抜けて上手く体が動けなくなってしまったのだ。

 

その先に攻撃準備を整えたリュウマがいるのにも関わらず…。

 

「先はよくもやってくれたな?とっておきの返しをしてやるわ!!……憤怒と英傑の精霊よ…汝と汝の眷属に命ず…我が魔力を糧として我が意志に大いなる力を与えよ!」

 

「なっその魔力は…!」

 

リュウマは更に膨大の魔力を籠め、その魔力量に完全に危機感を持ったプレヒトはどうにか避けようとするも…もう手遅れだった……

 

 

「極大魔法……」

 

 

正面から飛んでくるプレヒトに向かって剣を向ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   「『雷光滅剣(バララークインケラードサイカ)』!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

剣に集めた莫大な魔力の極雷が巨大な剣を形作り、舟を一刀両断しても尚進み…遙か遠くにある雲をも突き抜けていった。

 

 

 

 

 

極大魔法を放たれたプレヒトは当然戦闘不能へとなり、この瞬間をもって…悪魔の心臓(グリモアハート)との戦いは幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 




リクエストに答えて極大魔法使いましたが…実はマギってそこまで詳しくないので、技が違う感じだったらすみません…。


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