FAIRY TAIL ◼◼◼なる者…リュウマ   作:キャラメル太郎

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ついにあの決戦です。
めっちゃ長くなっちゃった…




第三八刀  頂上決戦 模倣能力の脅威

 

 

バトルパート第一試合は、試合中にアスカが人質に取られたりなどありながらもルーシィとフレアの試合はルーシィの完全勝利で幕を閉じた。

 

ルーシィはその事を、自分のAチーム観覧席に戻った時に話したのだが…当然ナツ達は激怒した。

しかし、それをどうにか宥めているうちにバトルパートの第二試合が始まっていた。

 

第二試合は、青い天馬(ブルーペガサス)のレンVS人魚の踵(マーメイドヒール)のアラーニャだった。

 

戦っている最中、実況席にいるジェニーによってシェリーとレンが婚約しているという情報をサラッと言われ、レンのファンにダメージを与えつつも試合は進んでいく。

 

「べ…別にあんな奴…ただの腐れ縁だよ!ただの!いっつも傍に居やがって鬱陶しい!」

 

「ヒドイ!?」

 

アラーニャが放つ魔法から避けながらそう言い放つレンだが、忘れてはいけない…

 

「けど…お前が傍にいねぇと調子が出ねぇよ…」

 

「もぉ…レンったら♡」

 

 

  『『『うわ~…すっごいデレた~…』』』

 

 

…この男はものすごいツンデレで有名だ。

 

そんな男に惚れたシェリーは面倒くさい相手に惚れたな…と、同じギルドのメンバーに言われるも、目がハートと化して全く聞こえていない。

てかトリップしている。

 

「お前が居る前じゃ無様は晒せねぇな…『エアリアルフォーゼ』!!」

 

「うああああああああ!!!!!」

 

レンは空気魔法を巧みに扱い、アラーニャの魔法をかいくぐりながら本人を攻撃して戦闘不能にした。

 

『勝者ブルーペガサスのレン・アカツキ!これでブルーペガサスは14ポイント!マーメイドヒールは3ポイントです!』

 

これは余談の話になるのだが、外見や性格や気持ち悪さなどを抜きにすると、ブルーペガサスの最強の魔導士は…あの一夜だったりする。

 

第二試合に続き、第三試合は四つ首の猟犬(クワトロケルベロス)のウォークライと、剣咬の虎(セイバートゥース)のオルガ・ナナギアであった。

 

ウォークライは、とても珍しい涙魔法という魔法を使用する。

それは意外に避けづらいと評判なのだが…

 

「ウオオオオオ!!涙の分だけ人は強くなれ──」

 

──ドオォォォォォォォォォォォォン!!!!

 

オルガの強力な黒雷によって一撃で倒されてしまう。

これでセイバートゥースは18ポイントとなり、クワトロケルベロスは2ポイントとなる。

 

オルガは呆気なく終わってしまったことをスティングに指摘されて、態々闘技場の真ん中まで戻り、何処からかマイクを取り出して大音量で歌い出す。

それは恒例となっているのか、観客達は笑って楽しんでいた。

 

「黒雷か…どうであった?ラクサス?」

 

「ケッ…お前に一度叩き込まれた()()の方が断然強力だったぜ」

 

「あれ?リュウマって黒雷が出せるの?」

 

「まぁな、威力は流石に純粋な雷を使う魔導士には及ばんがな」

 

──よく言うぜ、あんなのオレですら見たことねぇ威力だったぞ。

 

リュウマの謙遜的な言葉に、心の中でそう言葉にする。

ラクサスは昔、まだ小さかった(反抗期の)頃にリュウマに喧嘩をふっかけてボコボコにされた記憶があった。

その時に一瞬使った雷の色は黒だったのだ。

自分にとっては苦い思い出であるので未だに覚えていた。

 

『さぁ…いよいよ本日の最終試合となりますが、残っているのは妖精の尻尾(フェアリーテイル)Bと蛇姫の鱗(ラミアスケイル)ですね』

 

『そうだねぇ…』

 

『昔はこの2つのギルドの実力は均衡していたので面白い試合になりそうね』

 

実況で言われた通り、7年で大分名が堕ちてしまっているが、7年前は実力が均衡していたとされている。

フェアリーテイルと均衡させる程の力を持っている筆頭は、もちろんのこと聖十のジュラだ。

 

ジュラは聖十大魔道でありながら真面目で自分に厳しく、鍛練を怠ることはしなかった。

そんなジュラは期待の声が大きいため…

 

『選手は蛇姫の鱗(ラミアスケイル)…ジュラ・ネェキスVS──』

 

バトルパートで当たることは簡単に予想がつく。

対するフェアリーテイルBからの選手は…

 

『フェアリーテイルB…リュウマ!!』

 

「キターーーー!!!!」

 

「ジュラだーーー!!」

 

「すげぇ!リュウマが相手だ!!!」

 

「聖十大魔道と聖十大魔道の戦いか!?」

 

まさかの選手の采配に盛り上がりを爆発させる。

観客達はこれから始まる試合がどれ程高レベルの戦いであるのかを理解していない。

 

この場にいる実力者達はみんな…この2人から得るものがあると確信して、他の試合以上に緊張している。

 

「おいおい…まさかあのオッサンかよ」

 

「ギヒッ!運がねぇな。まぁ、テメェの実力を見させてもらうぜ」

 

「まぁ…こうなるだろう事は分かってはいた。しかし…クカカ…中々如何して面白い」

 

リュウマはニヤリと嗤いながら席を立ち上がり、闘技場へと向かおうとする。

 

「リュウマ!あの…」

 

「…?どうした、ミラ」

 

「えっ…えっと…あの…が、頑張ってね。応援してるから」

 

ミラはジュラの実力を自分の目で見たことはないが、噂では良く聞いていたので不安になっていた。

リュウマが負けるとはもちろん思っていない。

しかし、負けるとは思っていないのと不安にならないのは別物なのだ。

 

リュウマはそんな不安そうにするミラに少し笑って見せた。

 

「案ずるな。お前は信じて待っていろ、他でもない…この俺の勝利を。俺にはそれだけで大きな力となる。…では、行って来る」

 

リュウマはそう言うと、その場を後にして闘技場へと向かって行った。

 

ミラにはもう不安は無かった。

 

他でもないリュウマが信じろと言ったのだ、ならば私が信じなくてどうすると心の中で言い放った。

 

まぁ、ちょっとトキめいて顔を少々赤くしているので締まらないが…。

 

ラクサスとガジルは呆れた顔をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

──フェアリーテイル応援席

 

「まさかジュラが相手とは…リュウマは大丈夫なのかのぅ…」

 

「リュウマ兄を信じようぜ!」

 

「私は心配などしていませんよ?6代目」

 

「初代…そうですな…ガキを信じずにどうするというんじゃ…!おいガキ共!リュウマを応援するぞ!」

 

「リュウマー!!頑張れよーー!!!!

 

「絶対勝てよなーーー!!!」

 

「リュウマー!!ファイトーー!!!」

 

「リュウマお兄ちゃんがんばれー!」

 

 

 

 

 

 

 

──フェアリーテイルA観覧席

 

「あのめっちゃ強ぇオッサンか!?」

 

「おいおい…大丈夫かよリュウマの奴…」

 

「リュウマなら勝つに決まってるでしょ!」

 

「そうだぞ。リュウマなら勝つに決まっている。私達はその為にも応援するぞ」

 

「…そうだな。何だかんだ負けるところが想像出来ねぇや。頑張れよリュウマー!!」

 

「ウオォォォ!!!負けんじゃねぇぞーー!!!」

 

「頑張ってねリュウマーー!!!」

 

「ふふ、リュウマ!お前の力を見せてくれ!」

 

 

 

 

 

 

 

──ブルーペガサス観覧席

 

「これからイケメンのライバルの試合だ!目を離すなよ!」

 

「「「はい!師匠!!」」」

 

「さぁ見せてくれたまえ…君の力を…」

 

「あの人の戦いは見たことがないから楽しみだね」

 

「オラシオンセイスとの戦いの時には、何だかんだ見れなかったからね」

 

「チッ…負けんじゃねぇぞ」

 

 

 

 

 

──ラミアスケイル観覧席

 

「頑張れー!!ジュラさーん!!」

 

「この勝負は貰ったな」

 

「まだ試合始まってねぇし、相手は聖十大魔道のリュウマだよ!!」

 

「キレんなよ…」

 

 

 

 

 

 

──マーメイドヒール観覧席

 

「あの人がカグラちゃんのお師匠さん?」

 

「そうだ。私には師匠が負けるところなんぞ想像出来ない」

 

「カグラにそこまで言わせるとはね。相当強いんだね」

 

「楽しみだわ」

 

「ぽっちゃり舐めちゃいけないよ!」

 

「(この試合で師匠の力を拝見出来るとは…見逃さないように気をつけねば…)

 

 

 

 

 

──医務室

 

「ジュラさんとリュウマさんが試合を…?お、応援しなきゃ…あう!」

 

「こら!まだ完全に治っちゃいないんだ。安静にしてな」

 

「リュウマさんがあのジュラさんと戦うんです!応援させて下さい!」

 

「……ハァ…まったく…行かせてもいいが、私も同行するからね」

 

「ありがとう!グランディーネ!」

 

「ポーリュシカだよ」

 

ポーリュシカに車椅子に乗せてもらい、Aチーム観覧席へとやって来た。

 

「ウェンディ!?大丈夫なのか!?」

 

「はい、大分良くなりました。ここにはリュウマさんの応援に来ました。ジュラさんと戦うって放送で聞いたので…」

 

「そうか、リュウマの相手はジュラのオッサンだからな、応援してやれよ」

 

「はい…!リュウマさん!頑張ってっ…!ケホッケホッ…!?」

 

「ほら言わんこっちゃないよ」

 

「大丈夫?ウェンディ。でも…ウェンディの声は聞こえてたみたいよ」

 

リュウマはウェンディが少ししか声が出せなかったにも関わらず、その場で振り返りウェンディに向かって小さく手を振っていた。

 

ウェンディはそれを見てぱあっと表情を明るくさせた。

 

「よっしゃ!オレ達でウェンディの分も応援してやるぞ!」

 

「そうね!」

 

「ま、しょうがねぇか!頑張れよー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──闘技場

 

 

 

 

 

リュウマとジュラはお互いに正面から向かい合っていた。

両者は遠目から見るとお互いがリラックスして自然体に見えるが、魔導士には分かる。

2人の体からは夥しい量の魔力が溢れてぶつかり合っている。

 

「お久しぶりですな、リュウマ殿」

 

「然り、俺からしてみれば一年と経っていないのだが…ここは7年ぶり…と言っておこうか」

 

 

『さぁ、今ここに今大会最強候補の2人がぶつかります!どちらも聖十大魔道の魔導士であるため、期待が膨らみますね!』

 

『きっとスんごいスあいになるよ』

 

『私も楽しみ~!』

 

 

「個人的には妖精の尻尾(フェアリーテイル)に頑張ってほしいのですがな…ウチのオババがうるさくてのぉ…」

 

「ほう…?それは大変だな」

 

 

『さぁ、本日の最終試合…開始!!!!』

 

 

「なので相手がリュウマ殿でも手加減は出来ませんぞ」

 

実況の開始の合図が上がり、ジュラはその服の上からでも分かるほどの屈強な体に、更に魔力を纏わせて強化しながら構える。

 

しかしリュウマは構えず…

 

 

「……ふ…フ…フフ…フハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!」

 

 

──突如笑い出した。

 

その事に観客はおろか、他の選手達や実況の人、相手であるジュラですら呆気にとられるが、リュウマはそんなことは気にしておらず…心底可笑しいと言わんばかりに笑っている。

 

「ハハハハハハハハハハハ!!…ハァ…手加減…?手加減だとォ?…クッ…クハハハハハハ…!…よもや勘違いを起こしているようだなァ?ジュラよ」

 

「か、勘違いとは…?」

 

「それは無論──」

 

ジュラはリュウマが笑ったり、自身の問いに答える時にも一切警戒を解いていなかった。

それは、当然リュウマが自他共に認める強者であると知っているからだ。

だというのに…

 

 

 

「貴様は俺に勝つことなんぞ出来んということだ」

 

 

 

「───ッ!!??ぐあッ!?」

 

「ジュラさん!?」

 

全く知覚できない速度で懐に潜り込まれ…ジュラの腹に蹴りを入れた後振り抜き、闘技場の壁を破壊しながら叩きつけたのだから。

 

ジュラは体を強化していたのでダメージは少ないが、あまりの速度に驚愕しながらも直ぐさま立ち上がり、リュウマを見据える。

 

「来るがいい。この戦い…俺の勝利に揺らぎはない」

 

その言葉にジュラが感じたのは…圧倒的な歓喜。

そしてリュウマという強者に対する戦闘意欲。

 

フェアリーテイルの主要メンバーが消えての7年間、鍛練を積みながらも色々な相手と戦ってきたが、終ぞ自身が満足するほどの相手と戦う事が出来ず、長期間による不完全燃焼を食らっていた。

 

元々強者との手合わせをするのが趣味と言っても過言ではない程の戦闘狂である。

心躍らない筈がなかった。

 

「『岩錘(がんすい)』!!」

 

円柱状の岩がリュウマの周りから何本も隆起し、逃げ道を塞ぎながら押し潰さんと迫る。

 

しかしその全てを見切りながら避けていき、岩錘が挟み撃ちをして迫ったと思ったら飛んで回避して岩錘の上を駆けていく。

 

リュウマは隆起した岩から更に伸びてくる岩を背にしながら足に魔力を纏わせた。

そしてその場で軽く膝を折り、力を入れる。

 

「…!『岩鉄壁(がんてつへき)』!!」

 

ジュラはリュウマが最初のような超スピードで走り寄ってくると睨んで、自身の前方に複数のブロックを積んだような岩の壁を建てる。

 

この壁はオラシオンセイスの戦いで見せたように、とても頑丈であり、今のところこれを破壊した者は数人しかいない程の強度を誇る。

 

「誰が真正面から行くと言った?」

 

背後から未だに近づく岩錘が当たるとなった瞬間に、縮地を使ってその場から消えた。

 

「なっ…は、速ぇ!!」

 

スピード系の魔法を使うジェットが驚きの声を上げる。

周りからは消えたようにしか見えない速度で移動し、次に姿を現したのはジュラの背後からだった。

 

「何!?しまっ──」

 

「食らえ…『衝底(しょうてい)』!!」

 

背中に衝撃を伝える掌底を受けたジュラは、魔力で強化されたにも関わらずダメージが通った事に驚きながらもどうにかその場で吹き飛ばずに踏みとどまる。

 

振り向き様に拳を入れようとするが、拳に手を当てられた後に軽く横に逸らされ、その後に肘を掴んでジュラの勢いを使いながら投げ飛ばされる。

 

しかし空中にいるうちに地面の岩を隆起させて自身の着地地点を作り出した。

 

着地に使った岩をそのまま伸ばし、一緒にリュウマへと向かっていく。

 

ジュラは岩から飛び上がり、岩はそのまま激突させようとするが、リュウマの下から掬い上げるような回し蹴りによって無理矢理に進行方向を上に跳んだ自身へと変えられて狙われる。

 

しかし曲げられたその岩を少し離れている所でピタリと止めて足場として着地したあと、リュウマに向かって跳躍する。

 

リュウマはそんなジュラを見据えており、自身に振るわれる拳に対して同じように拳を叩きつける。

 

お互いの拳の威力によって周囲に衝撃が走るがどちらも引かず、均衡していたがジュラの上からの落下によるエネルギーが殺されて地面に着地する。

 

リュウマとジュラはお互いに目を合わせて見ていたが、お互いは同時に後ろへと跳んで距離を離す。

 

 

一瞬の攻防を見ているうちに忘れていた呼吸をする観客達。

それ程までにその一瞬に魅入られていた。

そして直ぐ後に、盛大な歓声が上がった。

 

 

 

 

──実況席

 

「な、何という高レベルな戦いでしょう!?これが聖十大魔道同士の戦いなのかーー!!??」

 

「いや~…相変わらずスんごいねぇ…」

 

「す…すごい…私達とはレベルが違い過ぎる…」

 

 

 

 

 

──Aチーム観覧席

 

「リュウマやっぱり強ぇ!!」

 

「ジュラのオッサンの攻撃を受け流して投げたぞ…後ろ向いてる状態からいきなりだったのによ…」

 

「私は1番最初の攻撃が気になるな…まったく見えなかった」

 

「ジュラさんとあそこまで…スゴいです…!」

 

「あの男…なかなか強いんだね」

 

 

 

 

 

──Bチーム観覧席

 

「ありゃ様子見って感じか?」

 

「ギヒッ!だろォな。あいつは確か武器を出して戦ってた筈だ」

 

「リュウマは武器も使うけど、素手でも戦えるのよ?」

 

「なんだそりゃ…弱点無しかよ」

 

「ま、何にせよこれからってことだ」

 

「リュウマさんはやっぱり強いんですね」

 

 

 

 

 

──セイバートゥース観覧席

 

「どっちもハンパねぇな」

 

「スティング君の方が強いですよ!」

 

「フローもそう思う」

 

「この戦い…しかと記憶しよう」

 

「さっさとデケェ魔法使えばいいのによォ!じれってぇぜ!」

 

「(ポーッ)」

 

「ユキノなんてずっと上の空だしよ」

 

「昔に一度だけ出た週刊ソーサラーのイケメンランキングと彼氏にしたいランキング同時1位だったと記憶しているよ」

 

「あぁ…なるほどな」

 

「(ポーッ)」

 

 

 

 

 

 

 

──ラミアスケイル観覧席

 

「ジュラさんが投げ飛ばされた!?」

 

「ジュラさんやられないよね…?」

 

「だ、大丈夫だ…!オレはジュラさんこそがフィオーレ1の魔導士だと思ってる。ジュラさんは負けん」

 

「そうだね。ジュラさんをいっぱい応援しよ!」

 

「もちろんだ」

 

 

 

 

 

──マーメイドヒール観覧席

 

「わ~!カグラちゃんのお師匠さん強いね~!元気最強?」

 

「師匠の力はこの程度ではない。これは単なる様子見と相手の分析をしているだけだ」

 

「すごいのね。あなたの師匠は」

 

「これが聖十大魔道の力なんだねぇ!」

 

 

 

 

 

──ブルーペガサス観覧席

 

「強いなあいつは」

 

「当時も連盟の最大戦力って言われてたしね」

 

「べ、別に…最初からやられなくてホッとしてるんじゃねぇからな」

 

「君達よく観察したまえ…あれはただの探り合いだ。これからの戦闘はもっと激しくなる…よく見て技術を盗むんだ!」

 

「「「はい!先生!!」」」

 

 

 

 

 

──フェアリーテイル応援席

 

「リュウマ兄すげぇ!」

 

「お兄ちゃんかっこいい~!」

 

「どうやら少し様子見といったところですかな?初代」

 

「それもありますが、岩を駆けていくときに目が隆起する瞬間の岩も観察していました。恐らくどれ程の速度で作り上げ…どれ程の速度で迫ってくるのか見極めていたのでしょう」

 

「なるほど…そこまで見ていたのですかリュウマは…」

 

「さっすがリュウマだぜ!」

 

「リュウマ兄はやっぱり強ぇ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──闘技場

 

 

 

 

リュウマもジュラも周りが自分達のことで盛り上がっている事に気づかず、いや…そんなものを気にしていられる程この戦いは甘くは無い。

 

両者はお互いの一挙一動を観察している。

 

応援席や観覧席で何人かが気づいていた通り、今までの戦いは相手の戦闘能力の探り合いだ。

 

相手がどんな体勢からも立て直すことができるのか、癖はどんなものがあるのか、苦手とする型は何か。

 

そんなものを先の戦闘で見極めようとしていたのだが、どちらも強者。

 

片やイシュガル四天王を除くと人類最強の男、片やフェアリーテイル最強の男。

 

自分のことを悟らせまいと戦うのは基本中の基本だ。

 

 

しかし…その探り合いも終わりを迎えた。

 

 

「ジュラよ、探り合いはもう十分であろうよ」

 

「そうですな…時間も限られております。これからは少し本気でいきましょうか…」

 

『な、なんと!?今までのはただの探り合いですとーー!!??一体この2人はどれだけの強さを隠し持っているのかーー!!??』

 

『解説もいいが、ちゃんと見ておきなさい…はズまるよ…頂上の戦いが』

 

『どれだけ強いのよ…!』

 

リュウマ達の声を拾った実況が盛り上がるが、ヤジマに指摘されたのでこれから始まる攻防を見逃さんと集中した。

 

それに伴い観客達も全員静かになり…2人は動き出す。

 

「…此処らで教えておこう。俺と戦うにあたっての警告を」

 

「…それはどういったものですかな?」

 

「俺と戦うにあたって…魔法を使えば使うだけ不利になるぞ?」

 

「…?」

 

「今は分からなくとも良い…今から知る事となるのだからな…征くぞ?…()()()()()()──」

 

「あ、あの構えは…!?」

 

「おいおい…何の冗談だよ…!?」

 

リュウマはどこか見たことのあるような、右手を握りこみ…開いた状態で左腰に持ってきている左手にトンッと添えた。

 

その構えに身に覚えがありすぎるグレイとリオンは驚きの声を上げる。

 

「──『槍騎兵(ランス)』!」

 

「なんと!」

 

12本の氷の槍が向かってくるが…ジュラは冷静に判断して見極め、自身に当たりうる6本の槍を下から隆起させた岩で防ぐ。

 

「それだけで終わりにはせんぞ?アイスメイク・『大猿(エイプ)』!『大槌兵(ハンマー)』!」

 

「オレの造形もだと!?」

 

氷で出来た大猿と大槌がその場に造形されるが、ジュラに向かっていく訳でもなく、頭上から降ってくる訳でもないので失敗か?と、誰もが思う中…大猿が大槌に向かっていく。

 

「クカカ…合技(ごうぎ)──」

 

「合体した!?」

 

「そんなことも出来たのか…!」

 

氷の大猿が氷の大槌をその手に掴み取った。

 

すると、ただの大きな猿を形取っていた大猿の体に氷で出来た鎧と兜が装着され、手にした無骨な大槌が所々が鋭利な物へとなり、凶悪な物へと変化した。

 

これぞ技と技の合わせ技…故の合技。

 

「『氷仕掛けで大槌使いの王猿(キングコング・アイスバトラー)』」

 

大猿はそのままジュラへと駆け出して、その手に持つ巨大な大槌を横凪に振り抜いた。

 

ジュラはその大槌が来る前に岩を複数本隆起させて防ごうとするも、大猿の力が予想以上に強く、岩を砕かれながら直撃して吹き飛ばされてしまった。

 

「ぬぅ…!何というパワーか!ワシも負けてはおれんな!『岩鉄竜』!」

 

岩で胴が細長い竜を作り出して大猿に向かわせる。

 

大猿は大槌を叩きつけて破壊するも直ぐに再生し、大猿の体にとぐろを巻くように締め付けていき…締め壊した。

 

岩の竜は次にリュウマに向かっていき、またも締め付けようと周囲を回りながら距離を詰めていく。

 

「やはり破壊するか。…天より落ちて灰燼と化せ──」

 

「お前にそれは1回しか見せてねぇよ…」

 

右腕を天に上げてそう口にする。

その体からはかなりの魔力で出来た雷が帯電しており、バチバチと音を立てている。

 

空には膨大な雷のエネルギーが固められており、今にも落ちてきそうだ。

 

そして岩の竜がいざリュウマを締め付けようと一気に詰め寄った瞬間に…放った。

 

「『レイジングボルト』!!」

 

空中に固められていた雷のエネルギーが落ちてきて大爆発を起こし、岩の竜を粉々に破壊した。

 

「なるほどのぅ…他者の魔法を使うことが出来るということか」

 

「然り、それに制限などない。強いていうならば、複雑過ぎるものは無理だがな」

 

──なんという技術力…!クックック…!血が滾るわい!

 

ジュラは獰猛な目と顔をしながら腕を上に振り上げて岩のブロックを複数投げつける。

それを紙一重で避けながら足場として踏み台にして空中へと逃げていく。

 

そしてリュウマはある程度上昇した空中で静止して、両手を頭に持って行き、構えた。

 

記憶造形(メモリーメイク)──」

 

「…!これは記憶にないね。ヒドゥンの時に記憶されたようだ」

 

ルーファスが競技パートの時に使っていた魔法であり、これを使った時は一気に他の選手を攻撃した、対多勢に向いた魔法だ。

 

「──『星降ル夜ニ』」

 

下から突き上げてくるブロックの一つ一つに向けて放ち、爆散させた。

そのうちの一つをジュラに向けたのだが、下から自身を覆うように岩を展開させることで苦も無く防ぐ。

 

覆っていた岩を退かして空を見るが、そこにはリュウマは既にいなかった。

 

「──何処を見ている」

 

「…!!『岩鉄壁』!」

 

突如気配も無しに後ろから声が聞こえたので咄嗟に岩鉄壁を後ろへと展開する。

 

しかし…リュウマはジュラの真ん前…詳しく言うならば懐に潜り込んでいた。

背後からした声は、レイブンテイルに警告した際にやった音弾で、本体は真っ正面にいたのだ。

 

「『火竜の──」

 

「オレの滅竜魔法まで!?」

 

既に腕は振りかぶられており、ジュラは驚きで体を一瞬硬直させていたため…防御に間に合わなかった。

 

「──鉄拳』!!」

 

「グハァ!!」

 

ジュラの腹に、炎を纏ったリュウマの拳が深々と突き刺さった。

 

その威力に負けて後方へと吹き飛ばされてしまうが、リュウマはそれだけで終わらせる気は毛頭無い。

 

「天を駆ける俊足なる風を…『バーニア』!」

 

「え…!?」

 

リュウマは速度を上昇させて吹き飛ばされているジュラの後ろへと瞬時に移動した。

 

「天を切り裂く剛腕なる力を…『アームズ』!」

 

「…!アームズまで…!」

 

飛んでくるジュラに対して構えながら攻撃力上昇の魔法をかける。

 

「『天竜の──翼撃』!!」

 

「私の滅竜魔法…!」

 

「ぐぅっ!…!『岩鉄剣』!!」

 

両手に纏った風の力を使ってジュラを更に吹き飛ばすが、ジュラもただではやられるつもりはないため、岩で作られた巨大な剣をリュウマの頭上から振り下ろす。

 

「スゥーーーーッ……『鉄竜の──」

 

「ギヒッ!…あいつオレの滅竜魔法まで覚えてやがったのか」

 

迫る巨大な剣に向かって大きく息を吸い込むと、狙いを定めて吐き出した。

 

「───咆哮』!!」

 

鉄の破片などが入り混じる咆哮によって、剣はあっという間に削り切られてしまった。

 

岩鉄剣を破壊している間にもジュラは体勢を立て直してリュウマを見ていた。

その瞳は最高の相手との手合わせにギラリと光っている。

 

リュウマはそれを見てニヤリと嗤った。

 

『な、何ということでしょう!?リュウマ選手、他の選手の魔法を淡々と真似て使っていくーー!!??これはどういうことなのかーー!?』

 

『リュウマ君は見た人の魔法を使えるようだねぇ』

 

『しかも途中ではアレンジされているのもあったわ。一体なんて魔法なのかしら』

 

実況席の3人が盛り上がりを見せていると同時に、観客達もざわついていた。

 

それも当然とも言えよう。

 

前試合に見た魔法を…全く違う人間が使っているのだから。

 

それも中にはセイバートゥースのルーファスの魔法だって含まれていた。

 

そんなことに驚きながらも、高レベルの戦いが更に激しさを増したことから、尚歓声は大きくなっていった。

 

「いやはや…、まさか滅竜魔法まで使い出すとは思いもよりませんでしたぞ」

 

「まぁな…滅竜魔法は選ばれた者以外が使うと()()()()()()()()()()からな、俺とて多用はしない。使うこと自体は初めてだが、上手くいったな」

 

「そうなのですか…それで、何時までも()()()()の戦いをしていては決着はつきますまい。制限時間も残り15分といったところ…どうですかな?決着をつけるのは」

 

「クカカ…いいだろう…そろそろ幕引きだ」

 

 

──ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…!!!!

 

 

『な、なんだぁ!?両者の計り知れない魔力に闘技場全体が揺れているーー!!??』

 

『本当にスんごい魔力だね』

 

『こ、これ闘技場壊れないわよね!?大丈夫よね!?』

 

 

 

 

 

 

 

──フェアリーテイルAチーム

 

「とうとう2人が本腰を入れてきたぞ」

 

「リュウマとジュラのオッサンの魔力でとんでもねぇことになってんぞ」

 

「オレもこの喧嘩混ざりてぇーー!!!」

 

「ナツあんた死ぬわよ!?」

 

「す、スゴい魔力です…!」

 

 

 

 

 

 

 

──フェアリーテイルBチーム

 

「やっと本気でやるみてぇだな」

 

「ここまででも十分バケモンみてぇだがな」

 

「どちらも譲りませんね」

 

「私はリュウマを信じるわ」

 

 

 

 

 

 

 

──フェアリーテイル応援席

 

「両者とも凄まじい魔力じゃのぅ…それにリュウマが他の奴等の魔法も使えるとは思いもせんかったわい」

 

「リュウマ兄色んな魔法使えんだな!」

 

「本気で弱点無しなんじゃねぇか?」

 

「だけどこれからだよな…どっちの魔力もとんでもねぇことになってるしよ…」

 

「お兄ちゃんすご~い!」

 

「そうねぇ、スゴいね?」

 

「アスカもあれ位強くなってくれれば安心なんだけどな~」

 

「アスカもお兄ちゃんみたいに強くなる~!」

 

 

     『『『可愛いな~…』』』

 

 

「(あの魔法のコピー…いえ、模倣能力…凄まじいですね…まるで本人の魔法のような完成度…流石は────といったところですね)

 

 

 

 

 

 

 

──ラミアスケイル観覧席

 

「ジュラさん楽しそうだね」

 

「そうだな…ジュラさんが満足して戦うほどの相手だということだろうな」

 

「あの男色んな魔法使いこなしてたしな」

 

「なんでそんなことできんだよ!!」

 

「キレんなよ」

 

 

 

 

 

 

 

──マーメイドヒール観覧席

 

「にゃー!?カグラちゃんのお師匠さんの魔法っていっぱいあるんだねー!」

 

「師匠にはあの程度簡単にやってのける」

 

「カグラの師匠なだけあって個性的ねぇ」

 

「この魔力もすごいし」

 

「これからの試合運びが楽しみね」

 

 

 

 

 

 

 

──セイバートゥース観覧席

 

「ルーファスの魔法真似やがったな」

 

「私の魔法を見ただけで使う人物は記憶にないね」

 

「どうなってんだか…」

 

「それでもセイバートゥースの敵ではありませんよ!」

 

「フローもそ思う」

 

「オレなら一瞬で片づけられるぜ」

 

「(あの男…まだ何かあるな…)」

 

「格好いい…」

 

「ユキノ?」

 

「ハッ!?なんでもないです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───闘技場

 

 

 

両者の魔力は天井知らずとでも言うのか、更に更にと上昇を繰り返して周りの物を浮かせたり破壊したりと…闘技場内で天変地異が起きていた。

 

互いはニヤリと笑い、嗤いあいながら構えていく。

 

「少々お遊びが過ぎた事に謝罪の代わりとし…お前に一つ良い物を見せてやろう」

 

「それはどういったものですかな?」

 

 

「何…少し力を出すだけだ…封印…第一門──」

 

 

「───ッ!!!!」

 

今この瞬間に…闘技場はリュウマが出す魔力によって全てを支配された。

 

あまりの魔力にジュラは大きく目を見開いて固まっている。

 

それは観客も選手も応援席にいる者も全て全て全て…等しく同じであった。

 

先程までの魔力の鍔迫り合いがなんだったのかと言わんばかりに…リュウマの体から黒い黒い真っ黒な純黒なる魔力が溢れ出る。

 

 

 

 

 

          解…!

 

 

 

 

 

 ここから先は何人も逆らうことを許さぬ領域

 

 

 

 

      心ゆくまで堪能するが良い

 

 

 

 

 

 

       そう言って嗤った。

 

 

 

 

 

 

 




滅竜魔法はナツ達じゃないとドラゴン化してしまうのでそう使うことはありませんよ?
今回はこんなのも使えるんだぞーってことですから。


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