FAIRY TAIL ◼◼◼なる者…リュウマ   作:キャラメル太郎

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評価や感想お待ちしてます。

今回は過去最長です。
書くこと書いたら長くなりました…。

みんなユキノ好きすぎィ…!
ということで少しサービスを…。




第四二刀  破門された少女 真夜中の襲撃

 

 

ミラVSジェニーのバトルでフェアリーテイルが勝ったということで、観客席は大賑わいを見せている。

だがそれも当然のことなのだろう。

 

フィオーレに住む人々の中での共通認識とは、セイバートゥースこそ最強というものなのだから。

 

それが今やどうであろうか?

 

予選ではフェアリーテイルBがそのセイバートゥースを押しやって堂々たる1位通過。

競技パートでは2日続けて大それた順位や記録を残せなかったものの、バトルパートでは完勝続き。

 

ルーシィによる星の超魔法のパフォーマンス。

ミラとジェニーの元モデル同士の変則試合からの圧倒的な力によるミラの勝利。

そして、この大会だからこそ叶えることが出来た、聖十大魔道たるリュウマとジュラの白熱した闘い。

 

堕ちたはずの妖精の力強い羽ばたきは観客を魅了し引き込んでいく。

そしてついには…フェアリーテイルを応援する観客が大多数を超えた。

 

勿論のこと他のギルドを応援する声はある。

しかし…しかしだ。

 

最底辺の存在であった者達が…頂上に居座っていた者を喰い漁るとなれば…誰しもが胸を熱くはさせないだろうか?

 

それ故に今や大賑わいを見せてフェアリーテイルに大歓声を贈っていたのだ。

 

そしてこれから始まるのはセイバートゥースとマーメイドヒールとのこの日最後のバトルパートだ。

 

『さぁ!今日の残すところ最後の試合は…剣咬の虎(セイバートゥース)のユキノ・アグリアVS人魚の踵(マーメイドヒール)のカグラ・ミカヅチ~!!!!!』

 

『どちらも強いからねぇ、楽スみだよ』

 

『どっちも美人でCOOOOOOL!!!!』

 

カグラは美人であり沈黙的な性格からクールで凛々しいと世間から言われて週間ソーサラーで一押しの女魔導士である。

 

対するユキノはセイバートゥースに所属する女魔導士でありながら今大会に初出場…ということで観客からは期待する目がある。

 

そんな2人は闘技場の中心で互いに見合っている。

 

「よろしくお願いいたします」

 

「あぁ、こちらこそ」

 

ユキノが丁寧に礼をしながら挨拶をしたのでカグラも礼を返しながら言葉も返す。

それから直ぐに試合が始まるかと思われたが、2人は互いを見つめたまま動かなかった。

 

「…あなたからは私と同じ匂いがします」

 

「…奇遇だな。私も思っていたところだ」

 

2人は何かを相手から感じ取ったのかそう口にした。

そこでユキノから提案が出された。

 

「…前の試合からの流れに則り、私達も何か賭けましょう」

 

「…私は軽はずみな賭け事などしないが…今回に限ってはいいだろう。私が、いや…私達が賭ける()など決まっている」

 

リュウマに対して勝ったら結婚しろと言ったことを棚に上げながらそう口にするカグラに対し、ユキノは首を縦に振って肯定した。

 

2人が賭ける物…それは───

 

「私は──(コレクション)を賭けましょう」

 

「私は──(コレクション)を賭けるとする」

 

互いにギラリとした目つきで睨み合いながらそう告げた。

 

観客や実況席、他の選手達がその発言に驚愕している。

だがそれも当然と言えるものだ。

 

2人は()()()コレクションに命と魂を捧げているのだから。

 

そんな深読みが出来ていない観客やその他は、ただ普通に命そのものという不穏なやりとりをしているようにしか見えないのだから。

 

因みに、どこかの観覧席にいる男がこの時に悪寒を感じていたらしい。

 

『な、なんとも不穏な賭け事か決まってしまいましたが…2日目のバトルパート最終試合…開始!!!!』

 

実況席から開始の合図が上がり、2人は同時に後ろへと跳んだ。

己の宝物(コレクション)がかかっているために慎重になっているのだ。

 

緊迫した空気の中で先に仕掛けたのは…ユキノだ。

懐から金に輝く鍵…黄道十二門の鍵を取り出して掲げた。

 

「開け…双魚宮の扉・『ピスケス』!」

 

「あたしと同じ星霊魔導士…!?」

 

観覧席で自分と同じ星霊魔導士の存在にルーシィが驚いている中、呼び出された二匹の巨大な魚のよう星霊はカグラに向かって突進していく。

 

突進してきたピスケスを上空に避けることによって回避し、そのままピスケスの体の上を駆け出していくカグラ。

その姿に対する既視感に…誰もに見覚えがあった。

 

そう…ジュラとの戦いにて、岩錘の上を駆けたリュウマの姿によく似ていたのだ。

刀を持っているだけあって尚更そっくりだった。

 

そんなカグラを見てこれだけではダメだと悟ったユキノは更にもう1本の鍵を取り出した。

 

「開け…天秤宮の扉・『ライブラ』!」

 

出て来たのは踊り子のような格好をした美人な星霊のライブラ。

その美人さに観客も違う意味で盛り上がりを見せる。

 

「カグラ様の周りに超過重力力場を展開」

 

「了解」

 

「むっ…!」

 

ライブラが両の手に持つ天秤が光り輝いたと思うと、カグラの体に周りよりも10倍以上の重力がかかった。

 

体の上を駆けられていたピスケスが体を捻ったと同時、足場が無くなったことによって闘技場の地面へと猛スピードで落ちていった。

 

着地には成功したが、着地した地面は超過重力が上乗せされたカグラの荷重の着地に耐えきれず、陥没するように割れる。

 

だが…それでもカグラは立っていた。

 

「重力か。──私に重力系統の攻撃は効かん」

 

そして何ごともないかのように駆け出し始める。

それには流石のユキノも驚く。

何せ周りの重力を10倍以上にしているのに動いているのだから。

 

「私に重力魔法教えたのはカグラだからねぇ、カグラを舐めちゃあいけないよ!」

 

マーメイドヒール観覧席にいるリズリーが叫んだ。

競技パートの戦車(チャリオット)の時、戦車の側面を走るという芸当をしたリズリーが使うのは重力魔法。

そしてリズリーにその重力魔法を教えたのはカグラだ。

 

ここで気づく者もいるやもしれない。

その証拠にフェアリーテイルBチームではリュウマ以外の4人が気がついている。

 

何故ならば…ガジルとジュビアと自分を浮き上がらせる為にリュウマが使った重力魔法と同じだったから。

それも…ピスケスの上を駆けるカグラの姿、その姿とリュウマとの類似性。

これで気づかない訳がない。

 

「なるほど…私に開かせますか──13番目の門を…」

 

そう言って同じく懐から真っ黒な鍵を取り出した。

 

 

その鍵は世界に十二個しかないが故に強力な黄道十二門よりも更に…強大な魔力を秘めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

──フェアリーテイルBチーム観覧席

 

 

「13番目の門…?黄道十二門だから12個だけじゃなかったの?」

 

「恐らく蛇遣い座だろう」

 

何でも無いように答えたリュウマにみんなが視線を向けた。

 

「蛇遣い座の星座は黄道上にはない故に黄道十二門という括りでの意味では無いのだろう。しかし、強力な鍵という意味での13番目の鍵…という言い回しならば合っていると思われる」

 

「リュウマさんはそんなことも知ってるんですか」

 

「リュウマは物知りなのね」

 

「そんなことも知ってんだな」

 

「お前…頭いいんだな…」

 

「ガジルよりは良いと断言しよう」

 

「喧嘩売ってんのか!!」

 

リュウマの弄りを本気にしたガジルはジュビアが宥めて止めた。

そういう所の事を言われているということを…ガジルはまだ知らない。

 

「つーか、お前の動きに似てたが…カグラっつうのはお前と何か関係あんのか?」

 

「あぁ、隠すことでもないが、1年程彼奴の師匠というものをしていた。故に戦い方が似ていたのだろう」

 

「…本当にそれだけ?」

 

「そうだが…どうしてだ?」

 

「…ううん!何でも無いわ♪(どこか同じ匂いがするのよね…あとセイバートゥースのユキノって子からも少し…)」

 

ちょっと勘が鋭いミラだった。

そんなミラに、リュウマは心の中で冷や汗を流していた。

 

 

 

 

 

 

 

──闘技場

 

 

「開け…蛇遣い座の扉・『オフィウクス』!」

 

呼び出した途端に現れたのは…上空に長く且つ巨大な体をうねらせている機械的な体を持つ蛇であった。

その体から滲み出ている魔力は他の黄道十二門の星霊とはかけ離れていた。

 

それを見たカグラは…躊躇いなど無く、オフィウクスに向かって一気に駆け出した。

そして腰に差していた刀を鞘ごと引き抜く…。

 

「大きければ良いという訳ではない…それはただ単に的を大きくしたに過ぎない。怨刀不倶戴天──」

 

跳び上がったことによって目前に迫るオフィウクスに向かって鞘に納めた刀を構え──

 

「抜かぬ太刀の型・『三閃』」

 

巨大なオフィウクスの体を頭から尻尾までを三分割に斬り裂いた。

斬り裂いた後はユキノへと急接近し、抜かずの太刀で斬った。

 

「わ、私が…セイバートゥースが…負けた…?」

 

「貴様の(コレクション)は私がいただ…預かる。良いな」

 

「…グスッ…仰せのままに…(折角集めた私の…コレクションが…うぅ…)」

 

『勝者はマーメイドヒールのカグラ・ミカヅチーーー!!!!セイバートゥースのユキノを圧倒的な力で破り10ポイント獲得です!!』

 

『中々スごい戦いだったねぇ』

 

『どっちもCOOOOOOL!!COOOOOOL!!!COOOOOOOOOL!!!!今日は最高だったよ!!』

 

闘技場中に観客の大歓声が上がる中、勝負は決した。

2日目最後の試合はマーメイドヒールの勝利でセイバートゥースの敗北で終わったのだ。

 

 

この試合を別の場所から見ていたこの国の王国騎士長はユキノを…歓喜溢れる顔で見ていた。

 

「星霊魔導士がもう1人…!これで計画はより完全なものとなる…!!」

 

 

また別の場所にて、変装しながらクロッカスの街の中で、毎年感じる筈のゼレフに似た魔力を探していたジェラールは呟いた。

 

「おかしい…。2日目だというのにあの魔力の反応がない…どうなっているんだ…」

 

 

これにて大魔闘演武2日目は終了となる。

それと同時に運命の日まで静かに…しかし着実に近づいていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2日目が終了しての夜。

エルザとリュウマは、変装して街の中でゼレフに似た魔力を探していたジェラールと落ち合っていた。

リュウマは行かないと言ったのだが、エルザに無理矢理連れてこられた。

 

そして落ち合ってからジェラールが口にしたのは、ゼレフに似た魔力が未だに感知出来ていないというものだった。

 

「どういうことだ?」

 

「毎年感じていたのだろう?」

 

「…可能性は絞られる。人物ならばこの街にいないのか、この街にいるが魔法を使っていない。魔力の正体が装置などであった場合は装置が稼働してないか、魔力を外部に漏らさないようなフィルターのようなものがあるのか…」

 

「俺も主催者側に探りを入れてみる。ウェンディ達を攫おうとしていた王国側も気になるからな」

 

リュウマの言葉に2人は頷いた。

ジェラールには先程、ウェンディを連れ去られそうになっていたことを話しておいたのだ。

 

「いくら変装しているとはいえ、目立ったことはするなよ?」

 

「お前は指名手配されているし、この大魔闘演武には評議員も紛れている」

 

「分かってる。ここに来るとき、ウルティアに大分釘を刺されたよ」

 

ジェラールの言葉にリュウマとエルザはクスリと笑った。

 

「じゃあおやすみ、エルザ、リュウマ」

 

「うん」

 

「あぁ、おやすみ」

 

ジェラールは暗い街の中に溶けるように消えていった。

その場に残されたリュウマとエルザは、フェアリーテイルが先に宴会しているために戻ることにした。

 

「それにしても、良かったのか?」

 

「ん?何がだ?」

 

「…ジェラールと折角会えたのだ。もう少し話しておいても良かったではないか。見張りならば俺がやっても良かったというのに」

 

「いや、いいんだ。元々はこんな普通に話せるはずではなかったんだ、十分だ」

 

エルザはそう満足そうに答えるが、リュウマの目は…エルザに対して可哀想な子供を見ているようなものを宿していた。

 

「…やはり…気がついていないんだな」

 

「ん?どういう意味だ?」

 

リュウマの少しいつもと違う雰囲気を感じ取り、足を止めてリュウマを見る。

 

「…この際だから言っておこう。エルザ、お前が俺にしているのはただの穴埋めだ」

 

「…それはどういう意味だ。具体的過ぎて私には分からないのだが…」

 

リュウマは少し顔を俯かせ、頭の中で今言おうか言うまいかの選択をし、告げることを選んだ。

 

「いいかエルザ…お前が俺に対して想っているのは違う。先も言った通りただの穴埋めだ。お前はジェラールのことが───」

 

リュウマがいざ確信的なことを告げようとしたとき…

 

 

「やーーっと見つけたーー!!!!」

 

 

「「……っ!!」」

 

リュウマ達がいる所よりも高い位置から声が響き渡った。

それに驚き言葉を止めてしまう。

 

「貴様は誰だ」

 

「ウフフ…元気最強?」

 

フードを被っていて分からない相手に警戒を示すエルザだが、フードの人物の言葉を聞いてハッとした。

 

「お、お前は…ミリアーナ…か?」

 

「エルちゃん。久しぶり♡」

 

エルザの小さい頃に一緒に楽園の塔で奴隷をして、何時ぞやの楽園の塔の事件以来、時の呪縛も入れれば…かなりの間会っていなかったミリアーナだった。

 

ミリアーナは高い段差から飛び降り、着地と同時にエルザへと抱き付いた。

エルザもミリアーナを受け止めて抱きしめ返す。

 

「会いたかったよ…エルちゃん…!」

 

「わ、私もだ…!ミリアーナぁ…!」

 

2人は目の端に涙を浮かべながら強く抱き締め合って感動の再会を喜んでいた。

 

そこでエルザはリュウマがいることを思い出してミリアーナの肩越しに目を向けると…リュウマは優しく微笑んでおり、口元に人指し指を添えていた。

 

まるで俺のことはいいから、話してこいと言っているようだった。

 

ミリアーナはリュウマがかつて、一緒に労働していた仲間のトラであることを知らない。

あれはたまたまショウが気がついただけで、楽園の塔ではミリアーナと会っていなかったのだ。

 

それにショウには他の人に言わないようにと釘を刺しているために知られていないということもある。

 

リュウマはエルザとミリアーナに背を向けて帰って行った。

折角会えたんだから積もる話もあるだろうというリュウマなりの配慮だった。

エルザはそんなリュウマに心の中で感謝の言葉を述べる。

 

 

しかし──感動の再会により、先程リュウマが自分に何を言おうとしていたのか…エルザの頭からは既に抜けてしまっていた。

 

 

リュウマは暗く涼しい夜の街を散歩しながら小さく言葉を溢す。

 

「タイミングが悪かったか…。エルザ…お前は本当に穴埋めをしているに過ぎないんだよ…しかし…近々気づくだろう。その時俺は…いくらでも祝福しよう。()()()()()()()()()()

 

彼の言葉は静かに夜の街へと消えていく。

この言葉を影で聞いているような者も…ましてや偶然聞いてしまった…なんて者もおらず…本当に静かに溶けるように消えていく。

 

そんな中、彼の顔は珍しくも…悲しそうであった。

 

「…今日は満月か…()()()()こんな風な静かな夜によく見える満月が見えた。どれだけ時が経とうと…月は変わらないのだな…クカカ…らしくもない…さて、こっちに行ってみよう。こっちの方角に何かあると俺の勘が告げている」

 

まるで彼に対して語りかけるような月の光が照らす中、彼は街のいりくんだ道を迷い無く進んでいく。

 

空を見上げていた時に浮かべていた悲しそうな表情は消え、何時もの彼へと戻っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

リュウマが適当な道を歩いている同時刻。

再開を果たしたエルザは、ミリアーナからジェラールに憎しみを抱いていることを告げられていた。

 

そしてマーメイドヒール最強の魔導士であるカグラが持つ刀…。

不倶戴天という物騒な刀が、必ず殺すと決めた相手にしか抜かないと決めた怨刀であること…。

 

そしてその相手が…ジェラールであることを知った。

 

 

 

 

また別の所では、街の中を歩っていたナツとハッピーとルーシィの所にユキノが訪ねてきた。

 

最初こそセイバートゥースということで警戒していたのだが、ユキノは礼儀正しい姿勢でルーシィに話を持ち掛けたのだ。

 

内容は、自身が持つ2つの黄道十二門である天秤宮のライブラと双魚宮のピスケスを受け取って欲しいとのことだった。

 

ユキノは元々大魔闘演武が終わったら、自分よりも鍵のオーナーに相応しいルーシィに鍵を託そうと考えていたらしい。

しかし、肝心のルーシィはその申し出を断った。

鍵のオーナーはそう簡単に変えて良いものではないし、その黄道十二門はあなたのだと言って受け取らなかった。

 

話が済んだら早々にユキノは帰って行ったのだが、ナツとハッピーは夜の街を駆けていた。

最後まで礼儀正しく接していたユキノに対して、自分達の方が態度が悪かったから謝りたかったのだ。

 

そして走って追いかけること数分。

目的のユキノを見つけては頭を下げて謝った。

自分達は酷い態度をとったと告げて頭を下げるナツ達に対し、ユキノは涙を流した。

謝ったのに泣き始めてしまったユキノに焦る。

 

「何かあると思って来てみれば…夜の街で女を泣かせているとは…ナツ…」

 

「あれっ!?リュウマがいる!?」

 

「ちょっ…!?オレじゃねぇ!謝ったら泣き始めちまったんだよ!!」

 

「リュウマ様…?」

 

そしてそんなところに突如現れたリュウマ。

まるでナツが1人の女性を泣かせているような場面に来たために、ナツが泣かせたのかと思って目を細める。

 

目が冷たくなったリュウマにガクガク震え始めたナツだが、ユキノが待ったをかけてくれたのでホッとする。

 

「リュウマ様…ナツ様達のせいで泣いているのではないのです…」

 

「お前は…今日の試合でカグラと戦っていたユキノ…だったな」

 

ナツの方を見ていたので気がつかなかったが、女の方を見て初めて相手がユキノであることを知った。

それと同時に何故、セイバートゥースがこんな所にいるのかも疑問を感じた。

 

そんな彼の疑問に対して答えるようにユキノは話し始める。

 

「私が泣いていたのは悲しいのではなく、嬉しかったのです…私はこんなに気を遣われた事が無かったので…」

 

「…何故だ?」

 

今の一言で大体のことは察したリュウマだが、ユキノに話しの続きを促す。

ユキノは悲しみからなのか、地面へとへたりこみながら話し始める。

 

「…私は辞めさせられたのです…ずっと憧れていたセイバートゥースに去年…やっと入れたのですが…たった一度の敗北で辞めさせられたのです…」

 

その時点でナツは苦虫を噛み潰したかのような顔をする。

しかしユキノの話しは続いた。

 

セイバートゥース全メンバーがいる広場で裸にさせられ、自分の手でギルドの紋章を消させられたのだそうだ。

その間、他のセイバートゥースのメンバーは無関心を貫いていたのだそうだ。

 

「悪いけどよ…他のギルドの事情は分かんねぇ…けどよ、同じ魔導士としてなら分かるぞ…!辱しめられて…自分の手で紋章を消させられて悔しいよな…仲間を泣かせるギルドなんて…そんなのギルドじゃねえ!」

 

「ナツぅ…」

 

「仲間…」

 

「リュウマ!そいつ頼むな!行くぞハッピー!!」

 

「あいさーー!!」

 

ナツは怒りの表情でハッピーと一緒に何処かへと駆け出して行った。

 

「ハァ…勝手に行きおって…。もう辺りは暗い、送って行こう」

 

「あ…ありがとうございます…」

 

立ち上がらせるために手を伸ばし、ユキノは何故か分からないが顔を赤くさせながら手を掴んだ。

 

「宿は近いのか?」

 

「はい…ここから直ぐです」

 

とりあえずユキノを送って行くために歩き出す2人。

ユキノはチラチラとリュウマを…正確にはリュウマの手を見ていた。

 

「…?どうした、俺の手に何かあるのか?」

 

「あっ…えと…そ、その…」

 

その視線に気がついたリュウマは何かあるのかと首を傾げながら問う。

 

問われたユキノはほんのり頬を赤く染めながら、おずおずと手をリュウマに差し出す。

 

「あの…て、手を…握ってくれませんか…?」

 

おずおずと手を出しながら頬をほんのり赤く染め、恥ずかしそうにしながらも上目遣いで聞いてくるユキノに、リュウマは思わずドキリとした。

 

「…っ…あぁ…構わないが…」

 

「あっ…ありがとうございます…///」

 

ユキノは手を握ってくれたことから嬉しそうにはにかみながらお礼を言った。

 

その後2人は手を繋ぎながら夜の街を歩ってゆく。

 

身長が182と普通の人よりは大きいリュウマは、もちろんのこと足も長い。

鍛え抜かれ、極限まで引き締められたその体は…まさに黄金律の調和を持っている生ける彫刻のようだ。

 

そうなれば必然的に身長が違うユキノと歩幅が合わないはずなのだが、ユキノはとても歩きやすく歩くことが出来ていた。

 

こっそり足下を見ると、彼はユキノの歩幅に合わせながら歩ってくれていた。

 

そんな彼のさり気ない優しさがとても嬉しく感じた。

 

セイバートゥースを辞めさせられたのは確かに悲しいが、今の状況は自分にとってはお釣りが出てくる程の嬉しい状況だった。

 

「あの…リュウマ様…」

 

「ん?どうした」

 

「リュウマ様は昔に出られた週刊ソーサラーのモデル仕事は、もうなさらないのですか?」

 

「……あれか…」

 

突如の質問に答え辛そうにする。

それはそうだ、少し撮って終わるはずが…完全カラーで表紙にデカデカと載せられ、あまつさえ中のほとんどがリュウマの写真だったのだから。

 

ユキノは7年前、その週刊ソーサラーに出ているリュウマを見て憧れていたのだ。

他のモデルの人は全員カメラ目線なのだが、リュウマだけは恥ずかしそうに、それに不服そうにしながら撮られていたのだから。

 

それを見て…

 

「あ…この人、他の人達と違うし…格好いいなぁ」

 

と思うのは当然だった。

 

いつの世も、小さい頃は年上のお姉さんやお兄さんには憧れを抱くのだ。

ましてや、相手は大陸に認められた優れた魔導士…聖十大魔道の内の1人。

憧れるなという方が無理な話しだ。

 

「あれは色々あって一度出ただけだ。恐らくもう一度出ることはない。…今も声をかけられるが…。お前はあの雑誌を読んだのか…」

 

「はい!私は当時まだ10と少しだったのですが、その時に写真集で見たリュウマ様のお姿がとてもかっこよくて…!当時は何か落ち込むようなことがあるとリュウマ様の写真集を見て自分を優しく慰めてくれるリュウマ様を妄想───ハッ!?」

 

ここで漸く自分が誰に誰の話をしているのか気が付いた。

それも少し自分の恥ずかしい事まで…。

 

ギギギと錆びたブリキ人形のように首を曲げて隣のリュウマを見る。

 

「ぅ…ぁ、あぁ…役にたっていたのならば…撮って良かったというものだな…うむ」

 

ユキノから顔を背けてそう口にしているため顔は見えないが、チラリと見えた耳が真っ赤であることから、顔が真っ赤であることが窺えた。

 

「ふ、ふぁい…へ、変なこと言って…すっ…すみませんっ」

 

そして、顔が真っ赤になっているリュウマにつられてユキノも顔を真っ赤にした。

 

「い、いや良い。高々写真程度だ、気にするな」

 

「あ…ありがとう…ございます」

 

2人は互いに顔を少し背けながら会話をする。

しかし…繋いでいる手は最初からずっと離していなかった。

 

片や極度の緊張と羞恥、片や多大な羞恥から手汗をかいてしまっており、繋いでいる手は手汗がすごかった。

 

それでも、2人は何故か離さなかった。

 

そんな何とも言えない空間を作り出しながら歩くこと数分後、ユキノが取ったという宿に着いた。

 

「ここまで送っていただきありがとうございました」

 

ユキノは名残惜しそうに…本当に名残惜しそうに繋いでいる手を離した。

 

「気にするな、夜の街を1人で歩かせたくなかっただけだ。…ではな」

 

「あっ…お待ち下さい…!」

 

ナツ達の所へ向かおうとしたところ、呼び止められたので振り返った。

呼び止めたユキノは玄関の前でモジモジとしながら、何処から取り出したのか色紙とペンを持っていた。

 

「あの…良ければでいいのですが…サインを下さいませんか…?」

 

「クカカ…サインだな?良いぞ」

 

頭の中では断られませんように…!と連呼しながらのお願いだったのだが、リュウマは優しく微笑んで軽く了承した。

ユキノはOKを貰えたことにぱあっと嬉しそうな表情をした。

 

リュウマは慣れた手つきでサインを書き上げて色紙をユキノへと返す。

とうとう手に入れる事が出来たリュウマのサインに感激し、本当に大事そうに胸元で抱き締めながらお礼を述べた。

 

「ありがとうございます…!家宝にします…!」

 

「うむ、家宝は言い過ぎだな」

 

嬉しそうにするユキノを見てから、もう良いだろうと思ってリュウマは踵を返してその場から去っていく。

 

その後ろ姿を見ていたユキノは頭の中で一瞬の思考をした。

 

──リュウマ様に手を握っていただき、サインも貰った。これ以上を求めたらバチが当たりそうだけど…頑張れユキノ…!こんな機会は滅多に来ないのよ…!うっ…うぅ…!い、行っちゃえぇぇ…!!

 

ユキノは後ろ姿…自身に背を向けているリュウマに向かって駆け出して行く。

その足音に気が付いたリュウマは再度振り返った瞬間…

 

──ぽすんっ

 

自分の胸元にユキノが抱き付いてきたので慌てて身動ぎ(みじろぎ)するが、ユキノはそんなリュウマの背に腕を回して服をきゅっと掴んで離れないようにした。

 

「な、なんだ…どうし──」

 

「リュウマ様、ここまで送っていただき、手を握っていただきありがとうございました…嬉しかったです…お、おやすみなさいっ」

 

至近距離から赤くなった顔でニコリと微笑んだユキノに固まった。

そこでユキノも流石に我慢の限界だったのかサッと離れて猛スピードでホテルへと帰って行った。

 

そんな後ろ姿を見ていたリュウマは少しの間固まっていたが、再起動した。

 

「…………………柔らかかったな…あ……ナツ達を追いかけよう」

 

ついつい言葉を溢してしまったことにしまったと思い、誰かに聞かれていないか周りを見渡し、誰も居ないことにホッとしてからナツ達を追いかける為に縮地を使い、その場から一瞬にして消えた。

 

 

 

一方部屋に急いで帰ったユキノは…ベッドの中で悶え転げていた。

 

「~~~~~~っ!!!!や、やってしまいました…!抱き付いてしまいました…!」

 

やり遂げたは良いが、いざ先程までの光景を思い出すと恥ずかしくて仕方なかった。

 

「で、でも…体すごい逞しかったし…すごい良い匂いが…ハッ!?」

 

そしてまた思い出して悶え転げるというやりとりを繰り返すこと10度。

やっとのことで落ち着きを取り戻した。

 

「…今日は色々あって疲れました…。今日のところはもう寝ましょう…おやすみなさい…リュウ…マ…様…──」

 

リュウマから手ずから書いて貰ったサイン入りの色紙を大事そうに抱えながら眠りについた。

直ぐ眠ってしまったことから、今日一日の疲労が大きかったということが分かる。

 

 

 

 

この時…ナツとリュウマがセイバートゥースの拠点を襲っていることをまだ知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──剣咬の虎(セイバートゥース)の宿・クロッカスガーデンにて

 

 

みんなが寝静まる中、セイバートゥースの宿を大きく揺るがす轟音にセイバートゥース全メンバーが目を覚ました。

スティングやローグなども飛び起きて相棒のレクターやフロッシュと一緒に駆け出した。

 

「侵入者だ!!」

 

「侵入者だと!?セイバートゥースの全メンバーがいる宿だぞ!!一体何者だ!?」

 

「分からん…だが、ここから生きて帰る気はないんだろうな…」

 

騒ぎの原因たる広場へと辿り着いたスティングとローグが見た光景は──

 

「テメェ等のマスターはどこだコラァァァァァァ!!!!」

 

セイバートゥースの雑魚兵を次々となぎ払い、吹き飛ばしながらマスターを探し回るナツの姿であった。

 

「間に合っ…てはないな…ハァ…」

 

そして次に声が聞こえた所に目を向ければ、分からない者はいないであろう人物…リュウマが破壊された扉の所に立っていた。

 

「このワシに何か用か、小童共」

 

ナツが派手に入ってきた時の騒ぎを聞き付け、セイバートゥースのマスターであるマスター・ジエンマが姿を現した。

ナツは現れたジエンマを睨み付け…

 

「たった1回の敗北でクビだって?アァ?随分気合いはいってんじゃねーか───じゃあお前もオレに負けたら…ギルド辞めんだなァ!!」

 

ナツとリュウマの2人を前にして、セイバートゥースの大会出場メンバー達は驚きを隠せないでいる。

 

しかし…ナツの叫びを、ジエンマは興味ないとばかりに無視し…リュウマの方へと顔を向けて言葉を投げた。

 

「ふむ、昨日の貴様の試合…実に見事であったわ。貴様のその力は我がギルドにこそ相応しい。そんなゴミのようなギルドなんざ辞めてセイバートゥースへ来い」

 

ジレンマの上から目線の勧誘にナツが怒り狂って殴りかかろうとするが、リュウマが手を上げて止める。

 

「クカカ……貴様のギルドに入っていた()()()()は貴様等の前で裸にされる辱めを受け…己の手でギルドの紋章を消させられた。…それを強要した貴様とそれを黙って見ていたその他塵共に過ぎん奴等がいるギルドに俺が入るだとォ?フンッ…冗談も程々にせよ───俺は綺麗好きなんだ」

 

俺はお前達のような汚れた連中と一緒の空間にいたくない…ということだ。

言葉の意味を理解したセイバー全メンバーは怒り狂う。

もっとも、リュウマは態と怒らせるように言ったのだが。

 

「自分のギルドの仲間を…仲間とも思わねぇ奴は許せねぇんだよ…!」

 

「貴様等のような者を見ているだけで反吐が出る」

 

──まさか、ユキノのことを言っているのか…?

 

──アンタ等には関係ねえだろ…!そんな事で乗り込んでくるかよフツー!!??

 

ローグとスティングや他のメンバー達は、リュウマ達が一体誰のことを言っているのか察しがつき、内心驚いている。

しかし、当の本人たるジエンマはユキノに対して全く興味なかったのか首を傾げている。

 

それを見たナツは完全にキレて、ジエンマへと殴りかかった。

 

「ドーベンガル、相手をしてやれ」

 

「お前はジエンマの方に行け。他の奴等は俺がやる」

 

ナツはリュウマの言葉に頷き、ジエンマへと走っていった。

ジエンマに命令されたドーベンガルはナツから標的をリュウマに変える。

 

「無理ですよ!ドーベンガルはウチのギルドで10番目に───」

 

「『眠れ』」

 

走り寄ってきたドーベンガルに言霊を使い眠らせた。

走っている途中であったドーベンガルはそのまま倒れながらも引き摺られるように進み、リュウマの足下まで来た。

 

「──10番目に…なんだと?良く聞こえんぞ」

 

足下にいるドーベンガルを一瞬見てから視線を外して足を振り上げた。

そして…

 

「ほれ、返すぞ」

 

──バキャッ…!

 

ドーベンガルの顔を蹴り抜いてセイバーが固まっている所へ向かって蹴り飛ばした。

 

蹴り飛ばされたドーベンガルは顔が見るも耐えない状態になりながら吹き飛んで、メンバーを数十人巻き添えにして止まった。

 

あまりの非道な攻撃手段に顔を青くさせた。

しかし、ジエンマがいる以上敵前逃亡など以ての外。

 

後退すれば地獄、進めば殲滅。

 

既にセイバーは追い詰められていた。

 

「そら、さっさとかかってこい。今だけならば骨折程度で済ませてやろう」

 

目前のセイバーに向けている人指し指をクイッと曲げて挑発しながらニヤリと嗤った。

 

「ち、調子に乗ってんじゃねぇぇぇぇ!!」

 

「数で押せぇ!!!!」

 

大会メンバー以外のメンバーの内、20人程の人間がリュウマへとけしかけていく。

だが所詮は雑魚兵に過ぎず、手刀一撃を首に叩き込まれ…皆等しく床へと沈んでいく。

 

「オオォォォォラアァァォァ!!!!!」

 

その中で一際筋骨隆々の男が猛スピードで迫り、リュウマに手を伸ばした。

伸ばされた手を握り返してその場で力による力勝負になる。

 

「ムウマはセイバーで一番の怪力なんですよ!お前の腕なんか直ぐに折っちゃいますよ!」

 

レクターがリュウマと力勝負をしているムウマという男について自慢話のような解説をするが、ムウマの様子がおかしかった。

 

「ふっ……グッ…オォォォ…!!!!」

 

「…なんだ。一番の怪力は()()()()なのか?」

 

ムウマが顔中から汗を滝のように流しながら腕にありったけの力を籠めている。

その証拠に、丸太のように太い腕には青筋が浮かび上がっている。

 

それでもリュウマには遠く及ばない。

 

そもそも、ありとあらゆる武器を使いこなすリュウマに腕力及び力が無いわけが無い。

封印を施していることもあって、出せる力なんて全盛期に比べれば雀の涙…無いにも等しい。

 

だが、それでも…他の人間にとっては規格外もいいところであった。

 

リュウマは指にゆっくりと力を入れていく。

それに伴いムウマの手からはミシミシと音を立てていく。

 

「ぐっ…アァアアァアアァアァアアァアア!!!潰れるゥアァアァァアァ…!!!!」

 

「ハァ…最近溜め息が多くなった気がするぞ。そこまで力を入れていないというのにもうダメか。ならば──失せろ」

 

「ガッ…!?あァ…───」

 

その場で腕を自身に向かって引っ張ることで勢いをつけ、腹に蹴りを入れた。

蹴りは鳩尾に綺麗に入り、大男であるムウマは白目を向いて気絶した。

 

「…で?次は誰だ?一人で来るのが恐いならば…全員一斉に来ても良いぞ」

 

徒手空拳に構えながらそう告げた。

本来舐めきっている発言故に激昂して殴り込むところだが、一歩が踏み出せない。

 

踏み込んだら駄目だ…早く逃げろ…と、人間に残された原始的な本能が叫んでいた。

 

 

リュウマが次々と雑魚兵を倒していっている中で、ナツはジエンマの目前へと躍り出ていた。

 

そこでスティングがナツに対応しようとするが、ジエンマがスティングを下がらせ、ナツと相対した。

 

ジエンマの強い魔力の衝撃によって一度吹き飛ばされそうになるが、足を踏み込んで耐えた。

至近距離にいるので拳に炎を纏わせ、ジエンマに火竜の鉄拳による連撃を叩き込んだ。

 

マスターであるジエンマにダメージを与える光景をセイバーは呆然としながら眺めていた。

 

「ウオォォォォ…!!モード・『雷炎竜』!!」

 

「図に乗るな小童めが…!!」

 

ナツが体中に炎と雷の魔力を漲らせ、己の物とした雷炎竜モードとなり、ジエンマも魔力を溜めて攻撃へと移った。

 

「『雷炎竜の撃鉄』!!!」

 

「何ッ…!?」

 

しかし、ジエンマの攻撃はナツの強力な一撃によって掻き消されながら自身へと迫り、余波だけだというのにも関わらず宿の一部を爆発で吹き飛ばした。

 

空いた穴から入ってきた風によって爆発による塵煙が晴れる。

するとそこには…一人の女が片手をナツに、片手をジエンマへと向けて()()()立っていた。

強力なナツの攻撃をどうやってかこの女は打ち消したようだ。

それだけで高い実力の持ち主であることが分かる。

 

「ミネルバ…!?」

 

「お嬢!!」

 

間に割って入った女は、マスタージエンマの実の娘であるミネルバであった。

ミネルバはナツとリュウマを見てから提案を持ちかけた。

 

「今宵の宴もここまでにしまいか?」

 

「ア″ァ?」

 

「このまま続ければ父上が勝つのは確実…。だが、大魔闘演武に出場する選手を殺したとなればセイバートゥースたる妾達に立つ瀬がない。ここは1つ妾の顔に免じて引いてはくれんか、さすれば此方の部下がやられたことは口外せず不問にしよう」

 

「ふざけんじゃねぇ!!誰がそんな提案呑むか!!」

 

ナツは直ぐさまミネルバに反論するが、ミネルバは意地悪い表情を作り、何処からかハッピーを取り出した。

 

「これでもか?」

 

「ナツぅ…オイラ捕まっちゃったよぉ…」

 

「ハッピー…!!」

 

ナツはハッピーが囚われていることに顔を顰めて悔しそうな顔をした。

 

「…引くぞナツ」

 

「あぁ、分かってる…これ以上は無理だ」

 

ナツは取り返したハッピーと一緒に出口へと向かって行った。

リュウマはナツに続いて出口へと行く前にミネルバへ向かって斬り殺されるところを幻視してしまいそうな殺気と視線を向ける。

 

それに対してミネルバは妖艶な笑みを浮かべてリュウマを見返していた。

その殺気はレイヴンテイルの面々を緊急気絶へ持ち掛ける程のものであるのに関わらず平気そうだ。

 

「フフフ…そのような熱い視線を送ってくれるな。妾の体がゾクゾクしてしまう」

 

「…フン」

 

今度こそ踵を返し、ナツとハッピーと共に出口へ向かって行った。

すると、背中にジエンマとミネルバの声が掛かった。

 

「なかなか骨のある小童共だ」

 

「大魔闘演武にて決着をつけようぞ…思う存分と…な」

 

「お前らなんかには負けねぇよ。つーかオレ達には追いつけねぇ」

 

「貴様等は痛い目を見るだろう。その時まで…精々覚悟しておくが良い」

 

ナツとリュウマはセイバートゥースに向かってそう言い残し、さっさと宿を去って行った。

 

ローグはリュウマ達が言っていた仲間…という言葉について自分なりに考える。

スティングは、小さい頃に憧れたかつての自身の目標であるナツがこんなにも強かったとは…と心の中で歓喜していた。

 

「フフフ…フェアリーテイル。面白い。リュウマという男もいい男であった。それにユキノの代わりも必要…か。ここは1つ…妾も遊ばせてもらおうか」

 

 

 

 

今ここに…剣咬の虎(セイバートゥース)の真の最強が出揃った。

 

 

 

これからもたらすのは…一体何か。

 

 

 

フィオーレ1に輝くのはまたもセイバートゥースか…

 

 

 

または復活を遂げたフェアリーテイルか。

 

 

 

 

 

      結末はまだ…分からない

 

 

 

 

 

 




甘っっっっっっったるい!!!!!

か~ら~の~…

少し戦闘…!!

なんかよく分からない愉悦…!

以上でした。

ユキノにキュンキュンきた人はちゃんと報告しなさい?笑笑
因みに、書いた私も想像してキュンキュンきました。


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